- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022630445
感想・レビュー・書評
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王室に生まれたのは望んだことではないとしても、その責を懸命に果たそうと奮闘したオットー・フォン・ハプスブルグ=ロートリンゲンの生涯を追う。
ナチスドイツに占領され、一度は地図から消えたオーストリアの復興を願いつつ、亡命に次ぐ亡命を繰り返し、アメリカのルーズベルトやイギリスのチャーチルといった面々と粘り強く交渉を進め、ソ連や国内の反対勢力とも戦いつつ戦後にドイツの傀儡でなく、自立した国家としてオーストリアを取り戻した。
のみならずベルリンの壁崩壊に繋がるパン・ヨーロッパ・ピクニックを画策するなど、戦後もヨーロッパの精神的な統合に尽力した。
わずか4歳で皇太子となったが、ただ翻弄されるだけのボンボンではない、その責を十分に理解し全うした生き様は、それ自体が欧州現代史でもある。
続きが気になって慌しく読み通してしまったが、改めてしっかりと順を追って読んでいきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第1次大戦後の皇帝廃位後も、オットーと弟たちは表舞台で活躍し、第2次大戦後のオーストリアの独立、復興に尽くした。1918年に6歳で故国を終われ、ポルトガルのマデイラでの家族再会。1922年には父カール1世の平安な死。長期の亡命生活、ヒトラーとの闘い、スペイン通過ビザ取得で数百人に及ぶ多くの社会主義者、ユダヤ人を救い、戦後は「自由なオーストリア」の復活のために弟ローベルト大公たちと奔走。そしてなんと1989年のベルリンの壁崩壊を導いたハンガリーのパン・ヨーロッパ・ピクニックを主宰し、東西欧州の統一に貢献!過去の人物として不遇をかこったのではなく、ルーズベルト、チャーチル、ドゴールらとも親交を築いたというのは驚くべき人生!最後の皇帝カール1世の信仰的な死、そして復位を求めないオットー兄弟。爽やかな本だった。ヒトラーを遠くから見た印象、フランコ総統の寛容さなども興味深い描写。現代史をここまでリアルに表現できるのはこの人物にしてできたことだろう。1912年生れ、2011年死去の激動の現代史の生き証人だ。
オットーが「カトリック擁護者は普段、無神論者であり、イスラムに対抗する場合に、《キリスト教徒》のふりをする。逆に一神教のもとでの自明の仲間意識が存在する」!と語る。イスラム教徒への視線は優しい。今の時代への貴重な助言である。ローベルトとチトー元帥の偶然の出会いの場面の逸話「大公殿下、参上いたしました」(P279)が実に愉快!! -
現代ヨーロッパ史、いや現代世界史を個人(ただし庶民ではない)の視点から、また政治家としての視点で切り取った素晴らしい一冊。激動の時代を生き抜いてきたから語れる言葉の数々に、学ぶところが多い。
歴史「を」学ぶのではなく、歴史「から」学べとはよく言われるが、まさにオットー大公の言動がそれである。
ただ小説ではなく伝記のため、いささか唐突に終わる。もちろん人生にオチなどないのでそれが普通なのだが、まだ続きがあると思って頁をめくってすぐ終わってしまったので、そこが残念、もっと読みたかったとの感想を込めて、星をひとつ減らした。 -
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