日本戦後史論 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022620439

作品紹介・あらすじ

右傾化する世界、日本社会を覆う反知性主義、親米保守という矛盾など、現代日本に潜む戦後史の問題の本質とは。『街場の戦争論』の内田樹氏と、『永続敗戦論』で注目を集めた白井聡氏が、縦横無尽に語り尽くす。文庫化にあたり、安倍政権の終わりとアメリカ大統領選、東京オリンピック、日本の少子高齢化などを中心とした新たな対談を追加!

感想・レビュー・書評

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  • 書評『日本戦後史論』内田樹、白井聡著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2015040200071.html

    『日本戦後史論』文庫版あとがき - 内田樹の研究室
    http://blog.tatsuru.com/2020/12/29_1313.html

    朝日新聞出版 最新刊行物:文庫:日本戦後史論
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=22627

  • 単行本で読んだのが 2015年
    あれから もう七年経った
    哀しいことに
    ここで 言い募られた
    「こんな国になってしまった」は
    まだ そのまま
    いや 
    ますます 悪く加速している気がする

  • 日本戦後史論 内田樹×白井聡

    白井氏の提唱する永続敗戦レジームなどの新しい概念があり、面白かった。日本は、歪な戦後史を辿っているという認識のもと、現代の諸問題を読み解いていく。戦後、アメリカの冷戦対応に伴い、日本は戦前の官僚体制を温存したまま、戦後を迎えた。そして、東条英機をはじめとする戦犯の首を挿げ替えただけで統治機構を温存させたまま戦後レジームが形成される。その際、白井氏が「敗戦の否認」と呼ぶような、敗戦へのごまかしを進めてきた。ごまかしとは何かと言えば、日本は米国に負けたという感覚を少しずつ減らしていくというもの。これはなるほどなとも思ったのであるが、普通、戦争に負ければ臥薪嘗胆として次は必ず米国に勝つと、日本独自の国家の在り方を考えるはずである。しかしながら、日本は米国に歯向かうというオプションを最初の段階からなくしていた。これは主権国家の敗戦後の姿ではなく、属国化の過程で起こるべき現象である。戦後、日本は米国との歴史的な同化を通じて、アジアへの戦争責任もまた否認した。戦前の日本は軍部という悪玉に支配されており、戦後の日本は米国との同化を通じて浄化されたという認識は、戦前と戦後日本のシームレスなつながりを無くしてしまった。永続敗戦レジームは、この敗戦に否認を通じて敗戦の戦略的な無反省を招き、本来の主権国家としての戦後の在り方を模索しなかったことに起因する歪な精神構造を指していると思われる。ただ、内田老師も補足していたが、この敗戦の否認を行わず、対米経済戦争勝利を信条とした世代が、1920年代後半~1930年代前半生まれの世代であると。彼らの世代は、大日本帝国と運命を共にすることを心の中で誓いながらも戦争時は13歳~16歳程度と、若すぎて徴兵されなかった面々である。私の祖父は1931年生まれで、まさにこの世代であるが、戦後、学制改革直後に旧東京商大・現一橋大学に入学し、卒業後は出光興産で定年まで勤め上げた。祖父は私が7歳の時に亡くなってしまったため、詳しいことは聞くことができなかったが、出光興産が対米戦争の敗因を資源の調達とするという反省から出光佐三に興された企業であることを踏まえると、敗戦の否認ではなく、臥薪嘗胆として次回は米国に勝つとする心持があったのではないかと邪推してしまう。しかし、その後の世代においては、このような心持はないのではなかろうか。以前、私が好きなDJの小林克也氏の自伝を読んだが、1941年生まれの彼の青年期には、既にアメリカ文化は根付いており、親から家訓の如く教えてもらわなければ臥薪嘗胆とした心持があるはずもなく、米国文化をニュートラルに好んでいたのかと思う。このように、1940年以降に生まれた世代は、敗戦の否認というある種のプロパガンダの中で育ってきているため、1996年生まれの私にしてみれば、全く実感がわかないものである。しかしながら、我々が日本という国により一種のアイデンティティを与えられ、パスポートをはじめとする多くのベネフィットを得ている以上、日本が嘗て犯した過ちには無反省であることはあってはならないし、頭を下げることに違和感はない。話がそれたが、現代における諸問題を永続敗戦レジームという術語をもって説明している本書は非常に興味深い書のひとつであった。

  • 搾取される事も知らないないまま国力が落ちていく。貧乏と貧困は違うと言いますが、よい世界になるのでしょうか。ちょっとだけ極端に感じるご意見はありますが、幸せとは何かを新しい世界で問われている。自分の頭で考えて決めていく事が大切な時代なのに何故かいろいろな事に気付かないフリをしているのはなぜだろうか、脅威はそこまで
    、いやもう来ているのに。

  • 色々と考えさせられる。

  • 対米従属を徹底することにより、日本がいかに特殊な国かということが分かった。私たちが日常生活を送る分には特に何も感じないけれど、歴史が残したものは想像以上に大きく、それを自覚することは大切だと思う。このようなことは本来学校教育で教えられるべきであり、そうすることが日本の未来を変えていく為には必要なことだと感じた。

  • 対談形式。日本の歴史び詳しくなくても戦後日本がアメリカの51州目となって歩んできた道がわかります。

  • - パトリオットかつコスモポリタンであることを目指す
    - 次は勝つために徹底した敗因分析が必要
    - 日本は敗戦を否認した
    - 中国への負債感を抱える日本
    - ゴジラは近代化により抑圧されたものの象徴
    - 日本人にはリセット願望がある
    - 本土決戦すれば天皇制は廃止されていた。本土決戦派は実はそれを望んでいた
    - 日本のモデルはシンガポール
    - 政府の長期的政策は都市一極集中で地方は棄てる
    - 対米従属を通じて対米独立を求める日本=のれん分け
    - フランスヴィシー政権は対独協力政権であり枢軸国
    - フランスの移民や極右の問題は敗戦の否認
    - 韓国は発展したけど住みにくいからアメリカへ。日本は住みやすいから出て行かない
    - 天皇制は異界に触れるものが存在した方がいいという経験から要請される
    - 玉虫色の言明は自分の仮説を修正する機会を自分で禁じることになるので避ける

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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