なぜヤギは、車好きなのか? 公立鳥取環境大学のヤギの動物行動学 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618436

作品紹介・あらすじ

大学の授業で漏らした一言がきっかけで、日本初の「ヤギ部」顧問となった著者。動物行動学者の名にかけて(?)、ときにはこっそり、ときには自信を持ってヤギの行動を観察・研究する日々が始まった。ヤギたちとの生活を優しき研究者の眼差しで語った、ほのぼのエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 「なぜヤギは車好きなのか?」と問われて、「なぜ?」と、思わず手に取り、表紙を見ると、癒し系というか脱力系フェイスのヤギのドアップが。ここまでくると、もう完全に著者の術中にはまってしまっている。

    本書は、鳥取環境大学教授で動物行動学者、「ヤギ部」顧問でもある小林朋道先生が、ヤギの生態と、先生や学生たちとの交流を動物行動学の視点から紹介したものである。
    かなりくだけた文調だが、「ヤギかわいい~」「癒される~」という感想だけにならないのは、小林先生があくまでも動物行動学から見た生態としてヤギを取り上げているということが大きい。一見ふざけたような口ぶりの中に、同じ地球上で生活する生物としてのヤギへのリスペクトが感じられる。

    本書では、ヤギの一見不思議な行動や態度を、さまざまな実験や体験を通して解き明かしていく。表題にもなっている、ヤギが車を点検するかのように見て回る行動のほかに、ヤギたちの別のヤギへの態度や相手を同種だと判断する基準のことなど、ヤギの行動に対する謎が、試行錯誤の中で、科学的に、ときには強引に推察されていく過程は、知的好奇心をくすぐられる。

    頁の途中で差し挟まれるヤギたちのスナップショットは、先生のヤギ愛が伝わってきて、眺めているだけで心が温まる。だからこそ、ヤギ部のヤギたちの死、特に最初に飼った「女王様」ヤギコの死に関するくだりは、生物の定めとはわかっていても涙なしには読むことができない。

    こんなヤギ部と研究者のいる鳥取環境大学、魅力的だなあ。もし学生に戻れるのなら、こんな大学で学びたい、と思った私は、やはり小林先生の術中にはまってしまっているのだろう。

  • これはもう完璧に題名に釣られました。

    筆者のヤギへの愛が感じられ微笑ましいエピソードに癒されながら読了いたしました。

    ただ「ソロモンの指輪」には残念ながら及ばない。個人的にはもう少し分量というか、科学的なアプローチでヤギの行動を解明する場面を増やしてほしかった。

  • 小林先生の著書は、読みやすくて、面白くて、
    楽しくて、ためになる♪
    そして、先生=ヤギ!
    その集大成な本です。
    全体メインなヤギコの話は先生の愛たっぷりで、
    亡くなる話はもらい泣きしてしまいました。
    ヤギ・・・おかげで知識が増えた気がします。
    と、やぎみるくを飲みながら♪

  • 筆者が毎年1冊のペースで執筆されている、”先生、○○○○”シリーズの中にも頻繁に登場する「ヤギ部」。
    その中心部員であるところのヤギたちと、人間の部員、顧問であり動物行動学者でもある筆者達の間で繰り広げられる様々な事柄が描かれている。
    独特のすっとぼけた語り口は、読者の好みの分かれる所かも知れないが、基本的に(人間も含めて)「生き物が大好き」な愛情が常にベースになっているので、読んでいて微笑ましい。

  • 再読だ。
    面白かったので人に勧め、また読んだ。
    面白い。
    やっぱり、いいですね。こういうのも。

  • 先生シリーズ以外の小林先生本、初めて♪でもヤギ部に特化しているだけで、先生シリーズ感覚で楽しく読めた(^^)

  • 人間を含む動物にかける深い愛情が、その独特の文体とあいまって伝わってくる。

    以前、渋谷の桜ヶ丘で散歩中の子ヤギとあったことがある。

  • 子供のころ、胸のあたりをヤギにドーンと角突きされて、後ろ向きにデーンとひっくり返った記憶があります。搾りたてで、殺菌もされていないヤギの乳を口に含んで、その生温かさと匂いのきつさに、どひゃーッと叫んだこともありました。なのでヤギに対して、ちょっとしたトラウマがあります。さらにまた、聞くところによると、シロヤギさんもクロヤギさんも、手紙を食べちゃったりするらしいんですが、それでもやっぱりヤギって憎めないんですよねぇ。
    著者は動物行動学を専門とする鳥取環境大学の教授です。大学が設立されて間もないころ、授業中ふと漏らした言葉が切っ掛けで、あッという間に〝ヤギ部〟が出来て、えぇッという間にその顧問をする羽目になったそうです。本書は、そんな〝ヤギ部〟に所属する数匹のヤギと部員たちの日常を、動物行動学の視点から眺め、その記録を綴ったエッセイです。以前、北里大学の〝犬部〟について書かれた本を読みましたが、なかなかどぉして〝ヤギ部〟もイイですねぇ。
    動物にもちゃんと感情や知性があるってことがわかります。
    個人的には、子供のころから〝飼う〟という言葉に馴染めずにいました。動物(ペット)は飼うものではなく、共に暮らすパートナーだと思っていたからです。動物は可愛いばかりでなく、彼ら(彼女ら)から学ぶこともたくさんありますもんネ。できることなら〝ロバ部〟〝ウォンバット部〟〝カピバラ温泉部〟なんていうものを作りたいなぁ・・・と考えている今日この頃です。


    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 鳥取の大学に誕生した「ヤギ部」。顧問で動物行動学が専門の著者と部員の学生とヤギの日常から見えてくるヤギの生態が面白く、動物行動学という学問があることをこの本で知ったが、とても興味深いものだなと思った。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  大学に誕生したヤギ部と初代ヤギ「ヤギコ」のこと
    第2章  なぜクルミとミルクの母娘ヤギは、駐車場の教員の車を一つ一つチェックするのか?
    第3章  ヤギは他のヤギの行動を見て学習することはできるのか?
    第4章  大学案内の表紙を飾ったヤギ
    第5章  角突きをめぐるさまざまなドラマ
    第6章  大雪の中のヤギたち
    第7章  ヤギは発泡スチールでつくったヤギモデルに頭突きをする⁈
    第8章  ヤギは、●のそばの餌を食べない
    第9章  ヤギは相手の心を読み取る
    第10章  ヤギコが思っていること
    第11章  ヤギコの死

    <内容>
    鳥取環境大学の看板教授小林朋道先生の本。専門の動物行動学を、ヤギ部の部員?のヤギたちと探ったもの。種本は2012年出版だが、2編を追加、さらに改編も加えた由。先生のヤギ愛が詰まっており、読後にはヤギを飼いたくなること必至!。相変わらずの動物好きがここかしこにちりばめられ(今回は動物好きの学生は持田さん以外にあまり登場しないが)、この大学で学びたいなと思います。

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著者プロフィール

1958年岡山県生まれ。
岡山大学理学部生物学科卒業。京都大学で理学博士取得。
岡山県で高等学校に勤務後、2001年鳥取環境大学講師、2005 年教授。
2015年より公立鳥取環境大学に名称変更。
専門は動物行動学、進化心理学。
これまで、ヒトも含めた哺乳類、鳥類、両生類などの行動を、動物の生存や繁殖にどのように役立つかという視点から調べてきた。
現在は、ヒトと自然の精神的なつながりについての研究や、水辺や森の絶滅危惧動物の保全活動に取り組んでいる。
中国山地の山あいで、幼いころから野生生物たちとふれあいながら育ち、気がつくとそのまま大人になっていた。
1日のうち少しでも野生生物との"交流"をもたないと体調が悪くなる。
自分では虚弱体質の理論派だと思っているが、学生たちからは体力だのみの現場派だと言われている。

「2023年 『先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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