漂流老人ホームレス社会 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022618320

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会科学総記】ホームレスのありのままの姿。社会からドロップアウトした人だけでなく、精神病疾患や障がいを持つ方たちにも焦点をあてる。うつ病、DV、派遣切り、認知症……。20年以上、ホームレス支援を続ける精神科医が現場の現実を活写する。

感想・レビュー・書評

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  • 【概要】
    日本では調査上のホームレス数が減っているが、「安心していられる場を失った人」はずっと多い。公園のベンチは撤去され、駅地下では警備員が二時間ごとに巡回している。マイノリティの居場所を奪い、箱に閉じ込めようとする社会で、彼らは漂流している。著者水川すいめいのフィルターをかけたホームレスの実態が述べられている。

    【感想】
    第一に、ホームレスやアルコール依存症、統合失調症などになるのは本人の能力のなさや努力の足りなさではないと私も思う。しかしこうした考えをもっているのもマイノリティだろう。多くは自己責任論で彼らを責めたて、個人ではなく病人や障害者という箱に押し込め、環境との相互作用を考慮することなく彼ら自身を変えるか排除するかで必死だ。問題は彼ら自身にあるのではないから、そんなことをしても社会復帰はしないのに。(社会復帰すら望んでいないのかもしれないがそれは経済的観点から見ても社会にとって大損失である)

    この本を読んで、彼らが社会の一員として居心地良く生きるためには、温かいコミュニケーションが重要だと思った。相手に興味をもち、彼らの能力より想いに耳を傾け、それに受容的な言葉と態度で接してゆく。信頼関係を築き、その輪を立場や生い立ちによらず広げてゆく。ソーシャルワーカーを目指すものとして、そんなソーシャルワークを実践していきたいと強く思った。

    また、『私たちが「結婚するときはダイアモンドを贈れたらいい」と思っていた程度のことで、戦争が起きるのである』という言葉は非常にショッキングだった。
    自分は何も知らない。私の日常が世界の誰かを死なせているかもしれないことを何も知らない。
    人と人を繋げるソーシャルワーカーになるのなら、人がいる現場にもっと赴いて学ばなければならないと感じた。

    「平等」の解釈は難しいものだが、同質であることを強要せず、異質さを許しあい活かし合う社会になってほしい。


    【メモ】
    ・「平等だということが差別になることもある」
    ・困窮化にある家族を救いたくないと思う家族もいる、世間からのスティグマが気になる「恥ずかしい」
    ・知的障害があるのに、環境に恵まれず診断を受けることがなく、本人の性格や努力不足の問題だと周囲に決めつけられたりして、どうにもならないと自信で感じている人たちは、人口の1%前後いる
    →自分を責めないでほしい、ありのままの自分を好きになってほしい
    ・経済合理性の名のもとに、確証バイアスが生まれている。効率的なコマにならない人を社会の中にある箱に隔離し、自分らしく自分のペースで生きることを拒否した社会、日本
    ・医療は脳へ治療はできたとしてもこころを治すことはできない
    →温かい人との繋がり、言葉、態度

    ・認知症対策
     行きたい場所で最期を迎えることができる体制
    ・アルコール依存症対策

    ・ハウジングファースト=まずは、住まいを=本人がどこに住みたいかについて、周囲は本人の能力をジャッジしない
     認知症やアルコール依存症になっても自分は自分であり、何も変わらない。それなのにいきなり知らない人と、知らない街で暮らすことを強要される
     だから、失踪する人が絶えない
    ・最も弱い立場を体験した人々は、人がどうして苦しいのかをよく知っていて、どうしたら生きられるのかをよく考えてきた人たちである。これからの希望であ 
     る。

    ・こちらが言いたいことを伝えるのではなく、相手が何を考えているのかを聴く。相手に興味をもつ

  • ←上司

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00628937

    ホームレスのありのままの姿。社会からドロップアウトした人だけでなく、精神病疾患や障がいを持つ方たちにも焦点をあてる。うつ病、DV、派遣切り、認知症……。20年以上、ホームレス支援を続ける精神科医が現場の現実を活写する。
    (出版社HPより)

  • 3.85/103
    内容(「BOOK」データベースより)
    『現代日本の現実は「路上」から見えてくる。彼らはなぜホームレスにならなくてはいけないのか。うつ・DV・認知症・派遣切り…、私たちの半歩だけ隣にある現実を、20年以上ホームレス支援を続けている精神科医が活写した魂のルポルタージュ。彼らは希望を見いだせるか。』


    『漂流老人ホームレス社会』
    著者:森川すいめい
    出版社 ‏: ‎朝日新聞出版
    文庫 ‏: ‎272ページ

  • 《ホームレスは単なるハウスレスではない》
    ホームレスの人達はホームレスを止めたいか?止めたいに決まってると思う人は考えさせられる一冊。
    健康、仕事、家を失った人は「ハウスレス」
    「ホームレス」は家族、親戚との繋がりが無くなって、頼るモノ、相談する人が無い人達ではないか。
    支援者が行政に繋ぎ、生活保護受給、医療受診を促しても拒否するホームレスが多い。
    心無い行政職員や医療職に拒絶されたり、不快な思いをさせられるからだ。嫌な思いをするぐらいなら、食事を満足に取らず、寒い所で寝る方がマシなのだ。

  • 社会福祉法人ももっと現場と向き合わないと、と思った本。

  • 現代日本の現実は「路上」から見えてくる。彼らはなぜホームレスにならなくてはいけないのか。うつ・DV・認知症・派遣切り…、私たちの半歩だけ隣にある現実を、20年以上ホームレス支援を続けている精神科医が活写した魂のルポルタージュ。彼らは希望を見いだせるか。

  • 読んでて切なくやるせなくなりました。2001年から路上生活者支援を始めた1973年生まれ、精神科医の森川すいめい氏の作品「漂流老人ホームレス社会」、2015.7発行です。路上生活者に対してどう思うか、どう接するか、どうあればいいかを提議した作品でしょうか。路上生活者本人の心、福祉関係者の態度、病院の対応・・・、いろんなことが複雑に関係してると思います。私は、原因の一因も、解決の糸口も「コミュニケーション」にあると思いました。今の世を思うに、顔を合わせて言葉を交わすことの大切さを強く感じます。

  • 新作が心うたれたのでこちらも読み。
    この方同い年ですが、私がわりと安全な道で福祉をたどってきたのに対し、
    同時期にかなりハードな道をたどっていて、
    いろんな人がいるものだと衝撃を受ける。

    医者は強いなと思う。いい意味でもわるい意味でも。
    彼はもしかしたら、業界では破天荒なのかもしれない。
    でもこれからもがんばってほしい体をこわさない程度にと思った。

    とはいえ、私はやっぱりホームレスの人たちには近寄れない。
    どうしてもにおいがだめだから。
    違うところで、違うアプローチで考えていけたらと思ってる。

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著者プロフィール

精神科医

「2021年 『オープンダイアローグ 私たちはこうしている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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