しゃぼん玉

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 387
感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022579614

作品紹介・あらすじ

親からも見捨てられ、通り魔や強盗障害を繰り返す無軌道な若者・伊豆見翔人は、逃亡途中で宮崎の山村にたどり着く。成り行きから助けた老婆スマの家に滞在することになった翔人は、近所の老人シゲ爺の野良仕事を手伝ううちに村の暮らしに馴染んでいくが…。現代の若者の"絶望感"をこまやかな心理描写で描き出す傑作長篇サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • はじめての乃南さんの作品


    章が変わるたびに時間が少し飛び
    時間を引き返す手法で
    先が気になって飛ばして読むこと数回…笑



    田舎の人々が実に暖かく
    最後に変わろうとした翔人に対する優しさに
    じんと来ました


    しゃぼん玉は翔人自身を指す言葉で
    田舎にきて変わっていく様が気持ちが良かったです
    しゃぼん玉じゃなくなった翔人が
    どんな風になるのか楽しみですね

  • 愛情を持って育てられなかった青年の自棄っぱちな生き方を、変えてくれる出会いの物語。読後感が清々しい。

  • 久しぶりにラストでポロポロ泣けた小説だった。
    無償の愛っていうんでしょうか、どこの誰ともわからない青年を拾ってきて(?)せっせとご飯を食べさせるおスマ婆ちゃん。
    最初はすさんでいた翔人も、村人たちに必要とされて徐々に変わっていく。でもここに居続けるためには、ある決断をしなければなかった。
    ひとは、頭をポンポンされ、肩をパンパン叩かれれば、もう淡く消えてしまわない人間になれるんだなあと思った。

  • 主人公の翔人が素直すぎるところと、田舎の濃密な人間関係が一つの曇りもないところが少し優しすぎかなぁ、とも思いました。中盤、スマさんも子育てで苦しんでいることで、ぐっと惹きつけられました。良かったです

  • 田舎の人間関係の近すぎる窮屈さ。何もかも自分のルーツさえ知られ決めつけられる理不尽さ。でもだからこそ、あるがまま受け入れてくれるおおらかさと、自分自身は自然の中の一欠片なんだと思える安心感。
    そんなことを思い出したとてもよき。

  • これこれ。久しぶりに乃南アサさんで気持ちよく感動出来てうれしい。シゲ爺のシブい優しさ、婆ちゃんの存在感が溢れたラスト、良かった!

  • ふわふわと漂うしゃぼん玉のような翔人。通り魔やひったくりを繰り返し生きてきた。ヒッチハイクをしてとんでもない田舎で降ろされる。そこで、事故に遭って動けない婆さんと出会い、助けることに。
    そこからは田舎で婆さんと暮らしていくうちに、だんだんと人間として成長していくことになる。
    ありきたりの話だし、ありきたりのラストなのに、なぜか読みおわった後に涙を堪えていた。

  • 誰かに近付こうとしたり、どこかに着地しようとすると弾けて消えてしまう、しゃぼん玉のような存在。家庭で愛情を受けられなかった翔人が、自暴自棄な生活を送るうちに辿り着いたとある村。そこで出会った村人と交流し、必要とされ、認められるうちに翔人の心境が少しずつ変わり始める。

    犯罪行為は決して許されるものではないけれど、そこに至るまでの本人の背景には事情があるもの。辺鄙な田舎で出会った人々の温かさに触れる中で、主人公が自分の人生や犯した罪に向き合い、この先の未来をしっかり生きていこうと思えるまでの過程が、実にしっかりと丁寧に描かれている。ストーリーにも緩急があり飽きさせない展開。他人であるとわかっていながらも、婆ちゃんやシゲ爺が翔人に愛情を持って接する場面では思わず涙が溢れる。良い作品です。

  • 引ったくりを繰り返した揚句に刺してしまった無軌道な若者『伊豆見翔人』は、逃亡途中小さな山村で怪我をした老婆を助ける。なりゆきでその老婆『マス』の家に滞在することになった翔人は、近所の老人『シゲ爺』や村人と交流を深めていくのだが・・・



    確かに翔人の生い立ちは酷いものだ。暴力を振るう父親と、その苛立ちを子どもにぶつける母親。同情はするけど、だからと言って彼のしたことを「しょうがない」とは言えない。同じような境遇でもしっかりと生きている人は沢山いるし、何より被害者にしてみればそんなことは全くの無関係だ。逃げる翔人は、身勝手以外のなにものでもない。
    だが翔人は傷付けられれば痛いということに気付くことが出来た。自分の犯した罪を悔い、踏みとどまることが出来た。心を変えられるのは、やはり心だけということなのか。もちろん彼のしてきたことを無かったことにはできない。その罪を背負って生きていくのが、彼の本当の償いなのだと思う。
    綺麗にまとまり過ぎた感もあるが、小説なのでこれで良い。確かに響くものがあったのだから。
    何だか親になるのが恐いことだと思い知らされた。

  • 久しぶりの乃南作品。
    いやぁ?やっぱり人のバックグラウンドの描き方ってか、構成ってか、うまいね。
    この人の作品には間違いがない!
    読んで得るものも、感じるものも、知ることもたくさんある。
    私はやっぱりそんな本が好きだ。
    最後、ばぁちゃんと会うまでを描いてほしかった・・・って気持ちはあるけれど、
    あれはあれでいいのでしょう。
    宮崎が舞台ということもあり、行けたら行きたいけど・・・きっと山奥。きっとムリ。
    人って変われる。
    そう信じたい。
    変わりたいって思ってる人は変われる。
    そう信じたい。
    じゃあ私は・・・どう変わりたい?
    (2006/11/27)

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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