いないことにされる私たち 福島第一原発事故10年目の「言ってはいけない真実」
- 朝日新聞出版 (2021年4月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022517661
作品紹介・あらすじ
「住宅提供を打ち切られれば暮らしていけない」「なぜ避難者の数に私は数えられないのか」。甚大な被害を及ぼした福島第一原発事故????避難者たちは、国の政策に翻弄されながらこの10年をどう過ごしてきたのか、その実態に迫る。
感想・レビュー・書評
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行政で救われない人にスポットを当て、必要な支援を行き届けることは大切なことだ。
しかし一方で、お金も人手も有限であり、取捨選択は必要である。
役所の職員が言っていた「公平性」自体はやはり正しいように思う。
こういう本や記事を読むと「被災者にもっと手厚い支援を」と言いたくなるし、実際に必要としている人には届いて欲しいと思うが、やはりデータに基づいて冷静に対応していくことも必要なように思う。 -
大きく二つの話が載っていました。
国、行政の闇を感じました。
知り得なかった事実を新しく知ることが出来て良かった。 -
全くは足らないで賠償金を好きなだけもらっても、私は災害に会いたいとは思わない。
災害にあってしまった人たちは、99%災害前と同等の暮らしができるまで、政府は金銭を含めた支援をすることが当然だと思っていた。(1%は取り返せない「時間」と考える)
現実は、復興が未完のまま次々と被災者を統計から消していくだけである。政府、行政、東電には誠意がないことを覚えておく。忘れてなるものか! -
国民の暮らしに寄り添う
きめ細かく国民の意見を聞く
国や政治家たちは、選挙のたびにレコードのようにそんな言葉を繰り返す。
しかし、彼らの繰り出す政策、行う政策は、大所高所からみた、最大多数の最大幸福であって、個々のの国民の声を聴こうともしない。
本書は、福島原発事故発生から今まで、個々の国民、個々の被災者に寄り添い、丹念に取材した、個々の、ひとりの被災者の現状であり、心の叫び。
国民が沈黙する事は、現実の追認になる。
政治、中央行政が行う政策を認めることになる。
この言葉をつぶすようでは、マスメディアは不要だ。 -
これほどじっくりお二人の被災者の方を取材されたものとは知らず読み始めたので、途中で苦しくなった。
第1部では、大変な被害にあった人自身が、どうして強くなり戦わなきゃいけないのか、救われないのかと考えた。誰でもそんなふうにはなれないじゃないか、あまりの理不尽さに立ち直れなくなるのが普通だろう。そこを立ち上がって戦える人森松さんには敬意しかないが、戦わなきゃ当たり前のことさえしてもらえないことに腹立たしさを感じた。
第2部では、戦えない被災者の話だった。いや、違う、十分戦っておられる。生きていること自体が戦いだ。自分の命を絶たないことに精一杯で、国や県や東電と戦えない、そんな気力も余力もない普通の人、庄司さんの話だった。普通の人っていうのも失礼だな。一人一人みんな事情が違う。本来なら一人一人オーダーでの対応が必要なはず。それを大きなグループ分けの調査さえしない、大きく実態を捉えることさえしない国や県。被災者への対策を減らしていくことしか考えていない。
原発事故さえなければ、普通に幸せに暮らせていたはず。それがどうしてこんなことにって。その思いが10年経っても消えるどころか、ますます募るって、どんなに苦しいことだろう。震災や原発事故がなかったように、はしゃぐ他人を見て、どんなに辛い10年だったろう。忘れられる、取り残される、いないことにされる。あまりにも残酷な仕打ちだ。
他人事ではない、とみんな知ることだと思う。
実際、このコロナでも、国や都道府県に見捨てられた思いを実感している人はたくさんいるはず。いつ誰がその立場になるかわからない。
青木さんのようなジャーナリストが取材して記事にしてくださり、初めて知ることができる。
口ばかりの政治家や公務員とは違い、情が感じられる。人間性が感じられる。被災者の方に同じ人間として接しておられる。
人間の心がない人が政治家や公務員になっていることがそもそもおかしい。なるなよって思う。
東電は東電のままで良かったのだろうか。この辺は勉強不足でなんとも言えない。
被災者のことを考えた時、原発再稼働なんて言えないだろう。どうして他人事なんだ。
怒りに任せて書いて、支離滅裂になってしまったが、これからも被災者に寄り添う取材をして記事や本にしていただきたいと思う。そのためには私たち一人一人が忘れないこと、関心を持ち続けることが大事だということも、この本を読んで知った。 -
著者は「プロメテウスの罠」のデマ関係者で汚染水が海洋放出されると喧伝する。
この本では以下のマッチポンプっぷりが見事に描かれている。
「危険を煽る→自主避難→子供自殺→不幸→被害者に寄り添ったふり」
https://seisenudoku.seesaa.net/article/499409177.html -
打ち切られる住宅支援。仕事のために一人被災地に戻る。子供が自ら死を遂げる。どこかにあった心の傷。そして、父も壊れていく。・・避難者の実情。「統計に反映しない」「在住者との分断を謀る」「支援金へのルサンチマンを煽る」。隠れていく存在。演出される復興。過少に見せる災害規模。原子力の再興は粛々と進められる。成果は出ている。原発容認は着実に増えている。誘導される大衆。被災者の思いは忘れ去られる。・・311。危うかった国の壊滅。次は誰もが被災者になり得る。自らの避難生活を想像する。そのとき、この国はあるだろうか。
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淡々と書かれていて、かえってそれが著者の熱い思いを表しているよう。