- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022515650
作品紹介・あらすじ
令和元年第14回「中央公論文芸賞」受賞作!
【文学/日本文学小説】1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」。侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。『悪人』から10年、新たな最高傑作。
感想・レビュー・書評
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祝映画化!
オーディブルにて読む。
九州やくざの親分の息子が、歌舞伎役者として名を成す話。
講談調の語り口がユニーク。
また、本編終了後に、まるで舞台をみているかのような「特別音声編」も収録。
オーディブルで読むのがおすすめの作品と思う。
♫長崎は今日も雨だった/内山田洋とクールファイブ(1969)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
独特の語り口がぽんぽんと小気味よく、歌舞伎のことを何も知らない私でも、テンポよくすらすら読めました。
裏切りあり、いじめあり、波乱万丈。
毎日、血のにじむような稽古をして、芸事の世界は、儲かるときは、一瞬で、落ちれば、借金の海。
とても、並みの神経ではやっていけない、浮き沈みの激しい世界だと思いました。
歌舞伎は一度も観たことがありませんが、歌舞伎を目の前で観ているような気持ちにさせられる文章でもありました。
以下、途中までのストーリー。
1965年、昭和40年。
長崎の任侠一家の跡取り息子の立花喜久雄15歳、権五郎が抗争事件で亡くなって一年後。
父の後妻のマツを郷里に置いて幼なじみの徳次と恋人の春江とともに、大阪の歌舞伎役者の花井半二郎の家に住み込みでやっかいになり、半二郎の一人息子で同い年の大垣俊介と共に歌舞伎の世界に入ります。
二人共、半二郎に女形の才を見出されてその道に進みます。
「俊ぼん」「喜久ちゃん」と呼び合いながら、二人は同じ道を目指していきますが、父の半二郎が交通事故に遭ったとき、半二郎が代役に選んだのは、果たして俊介ではなく、喜久雄でした。
そして俊介は「探さないでください」と置手紙をして。そしていつの間にか、男女の仲になっていた春江も一緒でした。 -
本作は吉田修一先生の作家生活20周年を記念し、刊行された作品とのことで、初めて本著者の作品を読んでみた。上巻の感想であるが読み応えがあった。
文体が「~でございます。」「~なものでした。」で、少し慣れない丁寧な口語で描写されているため、NHKの朝ドラを思い浮かべながら読み進める。
長崎の任侠ものかと、少しテンションが下がりながらも、作者の経歴を調べてみると、長崎出身であることを知り納得する。(が、長崎はあまり関係がなかった)
「任俠の一門に生まれながら、この世ならざる美貌を持った喜久雄。上方歌舞伎の名門の嫡男として生まれ育った俊介。二人の若き才能は、一門の芸と血統を守り抜こうと舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜けていくが――。長崎から大阪、そして高度成長後の東京へ舞台を移しながら、血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り、数多の歓喜と絶望が、役者たちの芸道に陰影を与え、二人の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。(吉田修一さん新刊「国宝」1万字インタビューより)」
歌舞伎は人生で1度しか足を運んだことがなく、一般的な知識しか持っていない。柳広司先生の「風神雷神」で、宗達の想い人が阿国であった設定で、その時に歴史的なことを少しだけ調べたくらいである。
歌舞伎の起源は、1603(慶長8)年、出雲の阿国による「かぶき踊り」が京都で始められたとされている。
柳先生の「風神雷神」では、この阿国と伊年(後の宗達)が恋愛よりもっと冷めてはいるが、そんな関係になる。そして、阿国が伊年の元を離れている間に遊女歌舞伎が人気となる、というような記載もあった。調べるところによると、歌舞伎の歴史は、阿国、遊女、そして少年が行う若衆歌舞伎を得て、今の成人男性が女形を演じる今の歌舞伎に至ったということを知る。商売(金儲け)を考え出す人の知恵と規制は、いつの時代からもあるのだなぁと感心した。
演目は、江戸時代の歴史的な出来事「時代物」、江戸時代の人々の生活「世話物」、そして、歌や音楽に合わせ踊る「舞踊劇」の3つに大きく分かれ、本作でも出てきているが、『仮名手本忠臣』、『道成寺物』、
『信州川中島合戦』、『勧進帳』、『曽根崎心中』などがある。
本作の中で演目の説明があり、それが参考になる。演目の読み方、ストーリーの説明を知ることができ、本作への興味が広がる。
本作の「丹羽屋」という屋号は、実際にはない。立花喜久雄は父親を殺された後、上方歌舞伎の名門「丹羽屋」の花井半二郎にお世話になる。美貌な容姿と、自身の努力もあり、半二郎の名を継ぐことになる。血族の関係が深い世界に飛び込んだ元任侠の息子。芸能界での栄光を垣間見たのも束の間、落ちた者に対する執拗な弱い者いじめ。成功への道から外れた喜久雄がいかして這い上がっていくのであろうか。 -
私の本棚では『怒り(上)』が絶賛中断中の吉田修一さん作品。なんでだか情景がさっぱり入ってこない。
この国宝もおなじく堅苦しい語り口で、「女形の歌舞伎役者」「厳しい下積時代」「元ヤクザの息子」という際立つキャラクターのおかげで喰らい付いていけた。
──俺なんか一本の木やねん。せや、ただの一本の木やから、馬鹿にされたら悔しなんねん。でも、自分が山やったら、木一本馬鹿にされたところで気にもせんやろ─
特異な世界観の中にも共感できるセリフ発見。
ヨガにタダーサナ(山のポーズ)という直立不動の体勢がある。ただ立つだけ。これが難しい。なにせ正解が分かるようで分からない。たまに電車に乗ったとき、吊り革にもつかまらず参考書を読んでいる中学生に出くわしたりすると二度見して驚愕する。こいつ山かと。(何の話)
ところでAudibleでは尾上菊之助さんの朗読!
時おり響きわたるホンモノの口上に目が覚める。(寝とるんかい)一度は生で歌舞伎を見てみたい。まずはアマプラで坂東玉三郎師匠かな。
さあさあ下巻の幕開けでござぁいぃ。 -
うわ~めちゃくちゃおもしろかった!!
読み始めた途端、一気に小説の世界に引きずり込まれてしまった!
すごい作品!
「俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ!」
長崎のヤクザの親分の息子として生まれた立花喜久雄
父親の死、退学、そして縁のあった大阪の人気歌舞伎役者・花井半次郎の元へ
喜久雄はその美貌と芸を開花させ、半次郎の息子俊介と切磋琢磨する日々…
しかし半次郎の跡継ぎ問題で2人の人生は大きく変わっていく。
失踪した俊介
一方、喜久雄は芸能の世界の壮絶なイジメ、舞台とテレビと映画の世界の変化、そして血族との深い軋轢、歌舞伎役者としての苦悩など…人生が大きく変わっていく。
そんな折、失踪した俊介が見つかり…
文章がちょっと古めかしいドラマの語り口なのもいい!
吉田修一さん、すごすぎる~
読んでると頭の中にドラマがスタートした感じ
時代は舞台からテレビや映画に変遷する頃
この時代に生きた芸能やメディアの混乱がすごい
そして様々な人の思惑も…
も~ページをめくるたびに泣いたり笑ったり
下巻が楽しみすぎる~ -
この大作を書くために、吉田修一さんは、4代目中村鴈治郎さんに、黒衣を作ってもらい、楽屋や稽古場、舞台裏にずっとはりついて、取材をされたそうだ
任侠の一門に生まれながら、歌舞伎の世界に飛び込んだ喜久雄
厳しい練習の中で、メキメキ頭角を現し、2代目半次郎の息子俊介と南座で「二人道成寺」を舞うまでになる
このまま、二人で切磋琢磨して、芸の道を極めていくのかと思いきや、運命のいたずらか、少しずつ二人の歩む方向が違ってくる
義太夫や浄瑠璃、歌舞伎といったまさに日本の国宝ともいうべき伝統芸能の魅力が余すところなく描写され、それが講談のような語り口で書かれているため、まさに舞台を見ているかのようであった
それだけでなく、伝統を守っていくことの重みや葛藤など、各人の心理描写も素晴らしく、一気に読み終えた
3代目花井半次郎となったものの不遇の環境下の喜久雄と、旅芸人として地方まわりをしていたが、小野川万菊という後ろ楯を得て、再び表舞台に立った俊介の行く末は、下巻で語られるだろう
楽しみだ
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歌舞伎の物語ということで、なかなか手に取ることができなかった作品。でも、好きな任侠も絡んでいるし、吉田修一だし、一応読んでみるかと重い腰を持ち上げ手にしてみると、気づけば一気に物語に引き込まれている自分がいた。
巨大組織、立花組の親分を父親に持つ喜久雄は、年に一度の新年会で歌舞伎の真似事を演じ、観る者を魅了していた。その新年会のさ中、立花組に敵愾心を燃やす宮地組が襲撃してきた際、親分を亡くした立花組。立花組は次第に勢力を欠いていく。
喜久雄はそんな中、大阪の歌舞伎役者、二代目半二郎の元に行き、歌舞伎を習うことになる。半二郎には喜久雄と同い年の俊介という子どもがいた。2人で競い合うように稽古に没頭していくが、やがて2人の進む道は明暗に分かれていき・・・。
いやあ、面白い!正直、興味がなかった歌舞伎が舞台の物語でこんなに夢中になるとは思いもしなかった。この2人、この先どうなるのだろう?続きが気になり続きが読みたくてしょうがない。今のところの評価は4で。下巻に期待! -
●2020年7月30日、読み始め。
●288頁まで読んで、中断。
吉田修一さんの作品を読むのは、初。
吉田修一さんは、1968年長崎県生まれ。
この作品は、歌舞伎を扱っているので、その方面に疎い者には、わかりづらいものがある。
が、大筋はわかるので、そのまま読み進めることはできる。
時々、演目などを調べながら読み進めると、ちょっとした知識が得られる。
●曾根崎心中
近松門左衛門作。1703年(元禄16年)竹本座初演の人形浄瑠璃・文楽。のちに歌舞伎の演目にもなる。相愛の若い男女の心中の物語である。
「此の世のなごり。夜もなごり。死に行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜」で始まる。(ウィキペディアより) -
下を読んでいないのでまだなんとも言えないが、初めの任侠部分であれ?となり、その後歌舞伎にシフトしていって読みやすくなったかも。
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実在するのかと思うぐらい、登場人物の誰もが想像できる。山と木の例え、なるほど。どちらも力は大きいはず。