火の鳥5

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022140265

感想・レビュー・書評

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  •  物語はレオナ少年が事故死したところから始まります。
     それまでの記憶についてレオナ少年は失っていますが、部分的に思い出します。
     しかし、物語的に明らかになった事実はあまりにも少なく、レオナ少年の前半生については謎のままです。
     まだ若いのにアメリカの砂漠地方で現地人のガイドを雇って火の鳥を捕まえようとしていたとは、かなり冒険家・野心家的な性格のようです。
     チヒロに対する執着も強引でストーカー的で、常軌を逸したところがあります。常識的な小市民ではあり得ません。
     膨大な財産があったようで、遺産を巡って怪しげな親戚達が大勢集まってきます。何だか胡散臭い一族のようです。
     一介の少年に対して当時の最先端の医療が施され、復活をとげたといういきさつについてもよく分かりません。
     週刊誌ネタ的に調査すれば、色々な闇が明らかになるかもしれません。
     密輸団の女ボスがレオナに一目ぼれしたのも、同じタイプの人間だということに気付いたからでしょう。タイミングが合っていれば女ボスとレオナはいいカップルになっていたかもしれません。
     この極悪人の記憶が移植されたロビタが人間らしくて子ども達に人気があるというのも分かる気がします。
     余りに聖人君子で立派な人間は子ども達から見れば近寄り難くつまらないものです。ある程度悪っぽい要素を持っている方が子ども扱いもうまく、子ども受けも良いものなのです。
     命令されて時によって「しかし旦那様」と反発するのも、一斉に人類に反抗し集団自殺したり人間であることを証明するために人間を殺すという行為も、元々は悪人の心を持っていたからなのです。
     お釈迦様が前世でウサギであった時、餓死寸前の聖者を助けるために我が身を捧げたという話があります。
     善人が行う行為は道徳の話にはなっても嘘くさくてドラマチックな物語にはなりません。
     自分中心・利己主義の心が起こす事件こそ物語になるのです。
     年を取った好々爺が昔を回想して
    「わしも若い頃は無茶したもんじゃ」
    と言っている、それがロビタなのです。
       https://diletanto.hateblo.jp/entry/2019/04/25/210018

  • 1970年〜72年連載。
    他の作品では控えめになってきたオールスター出演。
    手塚キャラを使った手塚マンガの叙事詩的な意味合いとして、ライフワークという意義付けが手塚先生の中で固まってきたのかもしれない。

  • 凄すぎる…

  • ロビタ...。

  • 『火の鳥 復活編』
    ■背景……執筆時期;1970~71年/時代設定;2482年、2917年、3009年、3030年、3344年/舞台;東京、月面他。
    ■梗概……エアカーから放り出されたうえ地上に叩きつけられ、一旦は完全に死亡したレオナの肉体は身体の大部分(小脳全部と大脳の大半も)を人工物にとり替えられて生き返ることになる。そんなレオナにとってすべての生物は、無機物の結晶体のような奇怪な姿に見えてしまう。逆に機械や鉱物などは生き生きとした美しい生命体に見える。ある日レオナは街を行く結晶体の中にひとりの美しい少女を見つけ彼女にたちまち恋に落ちる。少女の名はチヒロ。しかし、彼女は人間の眼から見ればいかにもゴツゴツとした単なる事務用ロボットにすぎなかった。チヒロに対するレオナの想いは募りに募り、ついにレオナはチヒロを無理やりエアカーに押しこんで駈落ちをするまでにいたる。しかしそのまま日本を脱出し大陸にいたったところで、臓器売買を生業とするギャング団に遭遇し拉致されてしまう。レオナの体はそのギャング団の、余命いくばくも無いボスの若返り手術のために消費され、レオナは今度こそ完全に絶命にいたる。ただしレオナとチヒロの意識はそのとき同時に電子頭脳にインプットされその中でひとつに融けあう。その電子頭脳は引き続きロボットに移植される。そのロボットこそロビタ1号機であり、以降ロビタは複製されながら大量に製造されることになる。
    ■拷問……ロビタがアセチレン・ランプに宙づりにされて電気ショックにより拷問(ロボットなのに!)される。
    ■見どころ……脳の大部分が人工物に入れ替えられたレオナが見る人間たちの造形がおぞましくも素晴らしい。/物語は何百年単位で時系列が前後する。そのたび巨大な漆黒の砂時計が現れる。
    ■その他……月面でアセチレン・ランプを殺害したのがロビタの最後の一体。それはその後『未来編』の猿田博士に拾われて彼の助手となる。
    ■総評……レオナの事故はそもそも殺人事件で、火の鳥の生き血がからんだ陰謀であった……というエピソードはない方がいい。/人間と機械の境界を描こうとする意欲作。レオナから見た無機物のような人間の造形、そしてチヒロのキラキラにカワイイ容姿の落差が素晴らしい。

  • 復活編。
    唯心論と唯物論。
    肉体の復活。未来の技術と精神と肉体が分裂して、他者と繋ぎ合わされたらどうなるのか。
    未来編で猿田博士と一緒に居たロビタの話に繋がるとは思わなかった。

  • 猿田博士の登場、ロビタの誕生とが描かれており、未来編へと繋がる。
    レオナの物語とロビタの物語。無関係に思えた二つの流れがラストで交わる構成が綺麗。
    高熱炉へ向かうロビタたちの姿が虚しくも印象的だった。
    156p、外側から内側へ進んでいくコマ割が斬新。

  • 復活編。事故で一度死んだが、人工細胞を使って生き返るレオナ。自分は人間かはたまたロボットか?悩みを抱き本物のロボット(チヒロ)と逃避行をする。そしてロビタというロボットとなるのだった。二巻(未来編)の猿田博士へとつながっていく。
    前の巻を何度も読み返しながら、読了。

  • Perfumeの「コンピューター・シティ」という歌の「絶対故障だ ていうかありえない 僕が君の言葉で 悩むはずがない」というフレーズを聴くとこの作品を思い出すのです。

  • 僕が初めて読んだ手塚治虫作品は、『火の鳥 異形編』でした。当時小学校低学年だった僕にとっては、『火の鳥』は怖い作品、そして大人の漫画として印象づけられ、その後、そのスケールの大きさに圧倒されながらも読み漁ったものです。

    日本人はなぜこんなに漫画が好きなのか、外国人の目には異様にうつるらしい。なぜ外国の人はこれまで漫画を読まずにいたのだろうか。答えの一つは、彼らの国に手塚治虫がいなかったからだ。

    1989年2月10日、手塚治虫が亡くなった翌日の朝日新聞・天声人語のこの一節を、彼のライフワークであった『火の鳥』を読み返すたびに思い出します。

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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