ヨーロッパ・コーリング・リターンズ: 社会・政治時評クロニクル 2014-2021 (岩波現代文庫 社会 330)

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  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006033309

作品紹介・あらすじ

人か資本か。優先順位を間違えた政治は、希望を奪い、貧困と分断を拡大させる。話題を呼んだ『ヨーロッパ・コーリング』を改編し、コロナ禍の考察を含む以降の時評を大幅に加えた最新版。激動の時代に、子どもや若者、女性、移民、労働者たちが暮らす地べたから、鋭く温かく英国の世相を読み解き、日本の課題を照らし出す。

感想・レビュー・書評

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  • 【書評】『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』ブレイディみかこ著 - 産経ニュース
    https://www.sankei.com/article/20211226-KNKOK2NG5FKZLPQCDAIZSFUEIA/

    ヨーロッパ・コーリング・リターンズ - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b593228.html

  • 緊縮ダメ絶対。

  •  2014年〜2021年にかけての混迷するイギリスの状況を、労働者の生活から鮮明に捉えた鋭い考察と社会批評。

     この時期のイギリス国内を表す事柄として、ブレグジットをはじめ、緊縮財政下における広がる格差や子どもの貧困、徹底的な自由市場化で能力主義礼賛による社会の屋台骨を支える労働者の軽視など、日本のメディアではあまり知ることができない現状が、著者のブレディみかこ氏が普段の生活で直面するリアルなものとして書かれている。

     もちろんこういった流れはイギリスだけではなく他の先進国でも見られる問題で、日本でも少なからず同じような現象は起こりつつあると思った。

     緊縮財政がイギリスの社会にもたらした多くの問題を見ると、自由な市場における競争は格差を助長させるがままとなり、良い方向にはいかないのではないかと考えるようになった。

  • 2014年から2021年まで各種媒体に発表された政治・社会時評をまとめたものだが、まとめて7年分の時事問題を読むと、大きく社会が変わっていることかと思う。そして、自分がどれだけ忘れっぽいか。。

  • 今の日本ひどいなぁ、これからどうなってしまうんだろうと思う毎日だが、ここがダメ、みたいなところはイギリスでも似たようなダメさで、元々が階級社会であったり、移民の人たちが多かったりなので、貧困問題もより深刻な感じだ。「ゆりかごから墓場まで」と言われてた時代は遥かに遠い。
    グローバル資本主義が続く限りは、どの国でも貧富の差は広がるばかりなのだろう。本当の意味での先進国はもうどこにもないのか。
    イギリスの政治問題、社会問題をブレイディみかこさんのおかげで知ることができ、そのことから日本の問題も考えることができる。立ち位置(地べた)というのか考え方というのか共感できるし、書き方も具体的ですごくわかりやすい。他国の政治なんてわかりやすく書いてくれなければ興味など持てない。すごい書き手だと思う。私が偉そうに褒めるのも何だかだが。
    日本にもいてくれないか、誰か。日本の問題をこのように書いてくれる人。私が見つけられてないだけか。女性がいいのだが。

  •  プレイディみかこの本なので、読んでみました。この人の感性や政治的な立地点はとても好感が持てました。塩見七海さんと似ているところがあるのは、外国から見ているからですね。
     塩見七海さんの描いている散文は、日本のことが多いけど、プレディみかこさんはイギリスのことが多い。良かったのはイギリスの実際がよくわかること。

  • 【書誌情報】
    『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ――社会・政治時評クロニクル 2014-2021』
    著者 ブレイディ みかこ 著
    通し番号 社会330
    ジャンル 社会
    刊行日 2021/11/12
    ISBN 9784006033309
    Cコード 0136
    体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 492頁
    定価 1,265円

    人か資本か。優先順位を間違えた政治は、希望を奪い、貧困と分断を拡大させる。話題を呼んだ『ヨーロッパ・コーリング』を改編し、コロナ禍の考察を含む以降の時評を大幅に加えた最新版。激動の時代に、子どもや若者、女性、移民、労働者たちが暮らす地べたから、鋭く温かく英国の世相を読み解き、日本の課題を照らし出す。
    https://www.iwanami.co.jp/book/b593228.html

    【目次】
    二〇一四
     年子どもの貧困とスーパープア
     ハラール肉と排外ヒステリア
     アンチ・ホームレス建築の非人道性
     アンチ・ホームレスの鋲が続々と撤去へ
     貧者用ドアとエコノミック・アパルトヘイト
     餓死する人が出た社会、英国編
     英国式『マネーの虎』で失業率を下げる方法
     海辺のジハーディスト
     地べたから見たグローバリズム――英国人がサンドウィッチを作らなくなる日
     風刺とデモクラシー――今こそ「スピッティング・イメージ・ジャパン」の復活を
     トリクルアウトの経済――売られゆくロンドンとディケンズの魂

    二〇一五年
     政治を変えるのはワーキングクラスの女たち
     英国が身代金を払わない理由
     フェミニズムとIS問題
     労働者階級の子どもは芸能人にもサッカー選手にもなれない時代
     人気取りの政治と信念の政治
     固定する教育格差――「素晴らしき英国の成人教育」の終焉
     住民投票と国民投票――国の未来は誰が決めるのか
     右翼はLGBTパレードに参加してはいけないのか
     スコットランド女性首相、現地版ネトウヨの一掃を宣言
     ギリシャ危機は借金問題ではない。階級政治だ
     ギリシャ国民投票――六人の経済学者たちは「賛成」か「反対」か
     ユーロ圏危機とギリシャ――マーガレット・サッチャーの予言
     英国で感じた戦後七〇年――「謝罪」の先にあるもの
     欧州の移民危機――「人道主義」と「緊縮」のミスマッチ
     再び暴動の足音? ロンドンがきな臭くなってきた
     左翼が大政党を率いるのはムリなのか?――ジェレミー・コービンの苦悩
     ロンドン市長「移民を受け入れないと日本のように経済停滞する」
     元人質が語る「ISが空爆より怖がるもの」
     右も左も空爆に反対するとき――キャメロンの戦争とブレアの戦争

    二〇一六年
     左派はなぜケルンの集団性的暴行について語らないのか
     左派に熱狂する欧米のジェネレーションY――日本の若者に飛び火しない理由
     地べたから見た英EU離脱――昨日とは違うワーキングクラスの街の風景
     英EU離脱の教訓――経済政策はすべての層のために機能しなければ爆弾に引火する
     ブレグジット・ツーリズム
     うたぐり深い政治の時代
     ポピュリズムとポピュラリズム――トランプとスペインのポデモスは似ているのか

    二〇一七年
     『わたしは、ダニエル・ブレイク』はチャリティ映画じゃない。反緊縮映画だ
     組合、だいじ。
     レフトの経済
     HUMAN(不満)
     政治に目覚めた庶民たち――「人への投資」が心摑んだ
     飢える休日
     命の格差、広がる英国――緊縮財政で医療の質低下
     ラディカルな政治
     鉄の天井
     週四日勤務は夢?
     二者択一の不条理――EU離脱が招く和平の亀裂

    二〇一八年
     もう一つのクリスマス
     子どもの権利
     バッド・フード
     緊縮病「失われた一〇年」――待ちわびる、冬の終焉
     パスポート狂騒曲
     中道の貴公子
     「学校福祉」
     治安悪化するロンドン――若者への投資、削減の末
     図書館と薔薇
     ヒートウエーブ
     我慢するな
     女王の「お気持ち」
     反緊縮モデル国
     常識は変えられる
     フードバンク泥棒
     経済とマインド
     緊縮とブレグジット
     親子の仲にも礼儀あり
     英国の女性参政権一〇〇年――緊縮財政が招く権利後退
     マンスプレッディング
     肉税問題
     健康アプリは不健康?
     のど飴とメイ首相
     離脱へのカウント
     食料砂漠
     右翼紙の変化
     非道な税金
     孤独問題と読書
     フルカラーの戦争
     ディストピア
     若者の時代
     貧困を直視せぬ指導者――英国のEU離脱
     黄色いベスト

    二〇一九年
     EU離脱はどうなっとんねん――リバタリアン・ドリームの崩壊
     ケチは不道徳
     あんたらの国
     ブロークン・ヨーロッパ――希望を持つ勇気はあるか
     コービンの失敗
     格差とシニシズム
     EU離脱の混沌と子どもたち――後始末負う世代に投資を
     勝ち過ぎた男
     大変革時代の英国の教育――長い目で文化格差解消を
     緑の政治
     リバランス
     家なき子
     暗黒の二〇一〇年代の終焉――英保守党、脱緊縮の総選挙

    二〇二〇年
     もっとしなやかに、もっとしたたかに――英労働党が大敗を喫した日に
     不安と軍隊
     人か資本か
     パニック
     「恐れ」に煽られぬために――新型コロナウイルスと差別
     新型コロナと社会の屋台骨
     ジョンソン首相と復活祭の「クリスマス・キャロル」
     階層を超えて
     「愛は無償」と値切るな
     続けた拍手、未来のため――社会に欠かせぬケア仕事
     英サッカーと社会運動
     英国人とマスク
     高速ワクチン
     英国の学校再開
     くたばったアルゴリズム――ティーンたちの抗議と目覚め
     歴史とは
     英国のコロナ・エクソダス
     友愛
     「自助」信じたサッチャーの亡霊
     新たな一対九九
     自給自足という幻
     コロナ、英国「南北の分断」――原因、地理でなく貧困に

    二〇二一年
     テクノポピュリズムの限界――二一世紀の禍と正面から向き合うことをまだ先送りにするだろうか
     乱れる足並み
     長期化するコロナ禍
     心のワクチン
     一年ひと昔
     女性の覚醒
     英王室の公務
     小さな政府より公助の時代――コロナ禍、見えてきた公益
     歓迎と受容
     五輪の因縁
     子ども信じる教育を――学校というストレス
     壮大な実験
     スポーツと多様性
     この先も「共に生きる」――コロナ・アフガン・EU離脱

    あとがき

  • ひとことで言うと「緊縮財政は不正義だ」と。子供、女性、老人、貧困層、労働者にかける予算が真っ先に削られ、彼らを苦しめ、弱らせると。新自由主義もグローバリズムも同様、くたばれ、と。日本では簡単に、それ自己責任でしょ、みたいな言葉で片付けられそうな事象の背景を見つめ、構造的な不公正、不平等を見抜き、提示してくれる。日本の政治もたいがいだと思うが、だからといって隣の芝生が青いとは限らない、という思いをイギリスの政治にも感じた。ただ、統治される方もただやられっぱなしなだけではない。◆「移民に八つ当たりして右翼正統にのぼせてる暇があったら、現実に自分を苦しめている相手と現実的に戦って自分で現状を変えろ」という地べたの女たちの現実主義は、社会の右傾化にたいするカウンター的現象でもある。p.60◆また、戦後すぐにはすぐれた政策であったNHS(イギリスの国民保健サービス)にまつわるこの言葉には胸があつくなった。◆NHS設立の理念にもなった元炭鉱労働者の保険大臣アナイリン・ベヴァンの言葉「病気とは、人々が金銭を払ってする道楽ではないし、罰金を払わねばならぬ犯罪でもない。それは共同体がコストを分担すべき災難である」p.77◆ポルトガルは、「ドイツとEUが提唱する緊縮をしなくとも経済は好転し借金も返せる」ことを体現する存在になっているのだ。(p.247)と語られたポルトガルの現状はどうなっているのかも、気になるところ。

  • 女性教育会館パッケージ貸出図書(テーマ:ダイバーシティ)
    2階 階段前に展示中(10-12月利用可能)

     通常の貸出枠とは別に
     一人 3冊・14日間まで貸出可 (学内者限定)
     通常開館時間中に、1階カウンターで貸出返却手続きしてください

  • 如何に情報を表層的にしか捉えていなかったかと、強く感じさせる。
    日本の報道を通して知った事と、イギリスの現地で暮らし体感している事との差は大きい。
    そして一般の庶民の目線から感じる格差やBrexit、緊縮財政の影響は、本当に難しい問題だ。

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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