笑いと治癒力 (岩波現代文庫 社会 30)

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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030308

感想・レビュー・書評

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  •  命に関わるほどではなかったが手術で三週間ほど入院した経験、また最近親を看取ったりしたこともあり、医療関係の本に関心を持つというか、身につまされる感がするこの頃で、目にした本書を手に取った。

     第一章が、ジャーナリストである著者の膠原病闘病記である。著者の闘病は1964年のことであるが、ビタミンCの多量摂取と、積極的な情緒を呼び覚ますために"笑い“療法を実践する。ビタミンC摂取法が現在の医療水準に照らしてどうなのかは良く分からないが、著者もその治療法自体を普遍化して論じている訳ではない。主眼は、精神状態が身体の化学作用に影響を及ぼすこと、心身の再生能力を過小評価してはならないこと、患者自身の生きる意欲が大切なことなどを語っていく。

     二章以下は、著者個人から少し離れて、一般的な考察が進められるが、決して具体性を離れないので、大変読みやすい。例えば、プラシーボの効果について、また、パブロ・カサルスとシュヴァイツアーを例として創造力が心身に及ぼす影響を説明する。さらに、痛みは苦痛であるが、未然の警告を与えてくれる重要なものであることを、痛みを失わせるハンセン病を取り上げつつ、その効用を論じる。

     最後は、著者の闘病記録を読んだ、世界3000人の医師からの手紙を通して考えたこと、特に患者と医師との信頼関係の重要さについて、著者は考察する。病院が科学技術の形で提供し得る一切のものよりも、同情の雰囲気のほうがずっと患者の助けになるという確信を抱いたと著者は言う。

     確かに、コンピュータや素晴らしい機器によって治療技術がますます進歩していることは間違いない。ただ延命治療の問題に端的に現れているように、人生の質をどう考えるかということを、患者とその家族、医師を始めとする病院関係者間で共有できるのだろうか、ということを改めて感じさせられた。

     著者の筆致は、読む者に希望を与える優しさと力強さに溢れている。少し古さは否めないが、一読の価値は十分にあると思われる。


     
     

     

  • 1.目的
    後輩に教えてもらった本。膠原病を笑いで治したという興味深い内容に興味を惹かれた。その意味とは?

    2.得られたこと
    この本に出会えて良かった。それも難病と付き合う上でとっても大切な考え方でした。

    著者本人が担当医と相談しながらビタミンCと笑いで関節リュウマチに対して改善できたという実績は、実はプラシーボ効果の一つと言う。著書が伝えたいことは「生への貪欲さ」と「医師との信頼関係」だと説く。この両者がそろった時に自己治癒力が最大限に発揮される。その実例が本人の体験なのだと。
    さらに現代の医療技術偏重に対する警笛も鳴らし、最新の機械にの恐怖によって効果が相殺されている事実もあると言う。

    3.アイデア

    以下、引用します。
    「病気を克服して正常な生活に立ち戻れるという自信を持つグループと、病気が長引いて末は死ぬかもしれないと諦めてしまうグループにわかれる。」どちらが長生きするかは当然前者。

    ノーマン・カズンズ氏の言葉が響いた。

    「重要なのは我々が生きている間に何を行うかである。人生の最大の大悲劇は死ではなく、我々が生きている間に、我々の内面のものが死に絶えることだ。」

    妻が元気になって闘病生活を振り返る時、友の会で出会った先輩患者からもらった元気によって一気に回復に転じたことをこの本になぞらえて伝えていこうと思う。

  • ■笑いの治癒力

    A.笑うことには、次のようなメリットがある。
    ・心理的効果:ユーモアには、辛いと感じる時、その気持ちを紛れさせる効果がある。たとえ苦境にあっても、その中にユーモアを見いだし、笑いのめすことができれば、恐れや落胆、絶望などの感情から抜け出せる。
    ・生理的効果:大笑いすることは、心血管系や呼吸器系など、体内のあらゆる器官の運動になり、健康をもたらす。

    B.イライラした時のために、気分が軽くなるような小道具を手元に用意しておく。例えば、鼻と口ヒゲのついたグルーチョ眼鏡があるだけで、救われることがある。

    C.心を暗くするような物事に対し別の捉え方をしたり、呼び方を変えたりする。例えば高齢者を「ヴィンテージ・パーソン」と呼べば、ワインのように成熟した人に感じられる。

  • どうしてこのタイトルなのだろう、と疑問がわきました。

    決して「笑い」の効果だけに着目した本ではありません。
    本書の中では精神と肉体との相互作用について、様々な視点から紹介されています。
    自然治癒力について、痛みの意味について、ビタミンCについて、笑いとユーモアについて、生への意欲について、などなど。

    人間のもつ回復力を最大限に引き出すために、何ができるのか、考えていく時のヒントになる一冊です。

  • 現代医学も発展途上であった1960年代のアメリカにおける著書。心と体は密接に相関しており、心を適切にコントロールすることが体の病気を治癒する重要な要素である。このことは昔も今も変わらない普遍の事実だ。自分の病気は自分の内に眠る「自然治癒力」を呼び起こし治す。

  • いまでこそ、笑うことが自然治癒力を挙げることは常識となっているが、それを自らの体験で実証しようとした著者。

  • 生への強い意志が笑うことを筆者に選択させ、その神経の高ぶりが体に人間本来の自然治癒力を強く働かせた、という内容でした。
    自ら笑いのネタを探して、人と共有して、みんなで笑顔のステキな人になって、みんなが健康であれば幸せだなぁ。

  • 著者のノーマン・カズンズは、アメリカのジャーナリストなんですけれど、難病と呼ばれる膠原病を独自の治療で回復した様子を書いています。自然治癒力というものを刺激するか。そして自分を良いほうに向けてくれるかということを私たちに教えてくれているように思うのです。

  • この本は、「笑い」という精神的なものがいかに身体に良い影響を与えるか、ということを著者の体験に基づいて教えてくれる。今までの西洋医学は、身体と精神を分離し、身体に重きを過ぎてきたのではないだろうか。その身体も様々なパーツの寄せ集めのように扱われ、人間全体を統合的に扱う視点が弱かったように思う。著者は、医学の歴史はプラシーボ効果の歴史であるという。これからの医療に期待したいのは、「このお医者さまなら必ず私を治してくれる」と患者に思われる人材であり、そのような人材を育てる教育であると思う。

  • 要約動画を視聴

    YouTube健康セミナー
    https://www.youtube.com/watch?v=0ZJ5nEospHs

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