村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝 (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006023164

作品紹介・あらすじ

女性を縛る結婚制度や社会道徳と対決し,貧乏に徹しわがままに生きたアナキスト,伊藤野枝.パートナーの大杉栄とともに国家に惨殺されるまでの二八年の生涯を,体当たりで描き話題を呼んだ,爆裂評伝.「あなたは一国の為政者でも私よりは弱い」.一〇〇年前を疾走した野枝が現代の閉塞を打ち破る! 解説=ブレイディみかこ

感想・レビュー・書評

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  • 伊藤野枝…強烈なキャラクター…。自分の思いを実行する行動力がすごすぎる。実際にこういう人がいたんだな! 奔放な人の子どもは苦労したのでは…と思ってしまうが、評伝としてはおもしろかった。
    野枝さんの子どもたちのその後が気になる…。

  • 伊藤野枝、「風よあらしよ」のあの野枝について栗原康がタイトルでもわかるように独特の感性と愛情?で描いたものだ。
    「風よあらしよ」の感想で瀬戸内寂聴のことを書いたが、それから記憶を辿って、実はこの本を真っ先に読んでいたことが蘇り、またダンボール箱を引っ張り出して再読した。
    伝記物をこのような文章で書けるのは栗原康ただ一人だと思う。ぜひ読んでみてはどうでしょうか?

  • まず、タイトルがいい。
    14歳で上京、結婚制度や社会道徳と対峙し、大杉栄と出会い、28歳で国家に惨殺された大正のアナーキスト/伊藤野枝。
    おしとやかなフェミニスト、なんてもんじゃない。波乱万丈の人生を駆け抜けたすごい人。
    「ああ、習俗打破!習俗打破!」
    こんな女性がつい100年前に日本にいたのだ。
    なんか、元気が出る!

  • 難しい漢字が使われているのに、簡単な漢字が平仮名で書かれているため、最初は読みにくく感じました。また、伊藤野枝に共感するあまり、かなり癖の強い文体になってしまっており、その主体的な感情にうまく馴染めないまま、読み終わってしまいました。ただ、伊藤野枝の生き方を知ることができて良かったです。

  • 好きな作家が紹介してたから読んだ。朝ドラにできるほどの濃密な人生。主演は二階堂ふみがいいな。伊藤野枝は自由奔放の度が行きすぎて常人には理解できないんだけど、一本筋がある生き方をしていてかっこいい。約100年前の話だけど、今の時代を生きていたら、また当時と異なる社会制度や結婚のありように対して、どんなことを思うのか。

    123ページから刺さった

  • 私は伊藤野枝も大杉栄も、名前と、なにかの活動家であることしか知りませんでした。帯と粗筋に興味をひかれたので手にとりました。
    が、読みきれませんでした。文章はさくさく進めますが、伊藤野枝に対しての不快感がどんどん大きくなったからです。
    このひとたちに家を貸していた方々、宿を貸して刃傷沙汰起こされた方々、孫の面倒を押しつけられたお母様、何度もお金をせびられた親戚や妹さん、、、このひとが「やりたいことやる」を貫けたのは、周りに多大なる迷惑をかけたからでしょう。
    女性解放というより、自分がやりたくなかっただけでしょ。と、いうのが、彼女を知らないまま三分の二まで読んで挫折した私の感想です。

    やりたいことやる人より、やりたくないこともやる人のほうが格好いいと思ってるので、この本で描かれた伊藤野枝と相性悪かったなと思います。

  • 評伝というか、伊藤野枝をテーマにした随筆集? 「おじさん構文」っぽい文章。野枝たちのことを語ったあと、「つまり○○だ」と断ずる、そのつまりは本当にそうなのか? なんとなく無責任な書きっぷりで好きになれなかった。

  • 伝記というか評伝みたいなものを突然読みたくなり、これを。著者は伊藤野枝に相当惚れこんでいるため、少し差し引く必要あるかなフラットではないかなとは思うけど、面白く読んだ。友だちにはなりたくないし、全面的に賛同はできないけれど、伊藤野枝の説くアナーキズムにはそうだよなあと思えるところが多々あった。国家が普通の人を奴隷に仕立てようとするシステムは現代にも通じ、自分の人生を振り返っても怒りが沸々と湧いてくる。だけど、ここまで為政者目線を愚かにも内面化してきた自分はその怒りを今後の人生に、あるいは社会に、どう役立てればよいというのか。助け合える友だちだってそんなにいないし、今更作れないしな…。そこはかとない手遅れ感…。
    そこが知りたいオブ・ザ・ブックは、野枝の元夫で、結局生涯まともに働かないままだったという辻潤の、野枝と別れた後の人生だ。どうやって食いつないだんだよ? しかし、ある意味清々しいまでのこういう図太さ、野枝はじめ登場する人たちの、貰えるものはすかさずねだってしれっといただく逞しさは嫌いじゃない。それだけに虐殺に至るまでがあっけなく、あまりに残酷でくやしい。
    ブレイディみかこさんの解説にあるように、男性が女性を扱う評伝なのに嫌味がなく読めたのは、そうか、栗原さんは女性になりたい(男として野枝を愛したかったからではなく、自分が野枝になって男に愛されたい)と思って書いていたからなのか。
    関係ないけど、「ひとつになっても、ひとつになれないよ」という章題にクリープハイプみを感じた。

    • meguyamaさん
      ありがとうございます、なんと辻潤は餓死なのですね。野枝もそうですが、生きざまゆえの死にざまかとも思いつつ、はあ…とため息が出てしまいます。こ...
      ありがとうございます、なんと辻潤は餓死なのですね。野枝もそうですが、生きざまゆえの死にざまかとも思いつつ、はあ…とため息が出てしまいます。この界隈について書いたものをもっと読みたいし(村山由佳さんも『風よあらしよ』という野枝の小説書かれてますね)、著者の他の本も読んでみたいと思いました。
      ブレイディさんの解説、本編をぎゅっと引き締めて総括してくれるようなよい解説でした。10ページくらいあります。あと、単行本のあとがきに加え、著者による文庫版あとがきもついてます。ご参考までに!
      2021/11/07
    • たまもひさん
      文庫情報ありがとうございます!
      読むのが楽しみです。
      村山由佳さんの「風よあらしよ」もとても良かったです。なんというか、一人の女性として...
      文庫情報ありがとうございます!
      読むのが楽しみです。
      村山由佳さんの「風よあらしよ」もとても良かったです。なんというか、一人の女性としての野枝の姿が生き生きと描かれていて、圧倒されました。大杉栄や辻潤も、実際こういう人だったんじゃないかと思われて、特に大杉栄が魅力的でした。
      2021/11/07
    • meguyamaさん
      「風よあらしよ」読まれたんですね!すごく良さそうですね。私もぜひ読んでみたいと思います。
      「風よあらしよ」読まれたんですね!すごく良さそうですね。私もぜひ読んでみたいと思います。
      2021/11/07
  • 栗原康さんの著作は何冊か手にとってたけど、今度の読書会の課題図書に選ばれたのを機に読了。◆野枝はすごい、すさまじい、生命力、活力、首をかっきられる覚悟で、エネルギーのかたまりで、やりたいことをやりたいようにつきすすんでいく。また、大杉栄との相乗効果も。うらやましい、ただ、うらやましい。こうまでつきすすめるのが。ただ、なれるのか。今の世でこうなれるのか。国家信じるにたらずは、100年経っても変わらない。むしろ、直接的に牙を向いてるように見えないだけ、質がわるくなってるかもしれない。理屈では言いまかせるかもしれない。ただ、生命力では、行動力では、輝きではかなわない。これ読んで、ああ、なんと自らの奴隷根性にまみれていることよ、という嘆き。ああ、もう、ああ。「急転直下、自分で自分の心がわからぬ!」と突っ伏した大杉栄のように。また、並の評伝とちがって、栗原さんのいいぞ、もっとやれ、といった感じの合いの手がまたいいリズムになって。あとがきで、3年ぶりの彼女ができた、とか、恋して恋して恋だ、というよろこびが、野枝の伝記を書く上でももりこまれ。文庫版あとがきで近況もお聞かせいただきたかったなあ、と思ったり。◆◆◆何やったって何とかなるさ、と好き勝手やるには、相互扶助が必要、しかし今の世のほうがうすれている感◆他人にほめられることなんてどうでもいい。なにものにもしばられずに、ただ自分のことだけに執着をあつめておけばいいのである。他人の迷惑かえりみず。やりたいことしかやりたくない。それができなければ、即トンズラだ。夜逃げの哲学。p.58◆貞操は、男が女を家の中に囲っておきたい男たちの願望をかなえるためにつくれらた不自然な道徳p.80より◆私はあらゆる人間社会の人為的な差別が撤廃され、人間のもつあらゆる奴隷根性が根こそぎにされなければならないという理想をもっています。p.156◆野枝がいいたかったのは、端的にこういうことなのだとおもう。わがまま、友情、夢、おカネ。結婚なんてクソくらえ、腐った過程に火をつけろ。ああ、セックスがしたい、人間をやめたい、ミシンになりたい、友だちがほしい。泣いて笑ってケンカして。ひとつになっても、ひとつになれないよ。p.171

  • 金子文子の本が面白かったため、同じような境遇を辿った伊藤野枝にも興味を持ち読み始めた。
    本人の波瀾万丈の人生と著者の独特な表現も相まって特殊な本だなという印象。
    しかしそのクセが自分にはダメだった。
    結婚制度を否定し女性の権利のために戦った主張はとても先進的で戦前にこのような人がいたのかと思うと時代感覚がおかしくなる。
    160ページくらいの野枝の思想についてはおもしろかった。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。著書に『大杉栄伝 ―― 永遠のアナキズム』(夜光社)、『はたらかないで、たらふく食べたい ――「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)、『村に火をつけ、白痴になれ ―― 伊藤野枝伝』(岩波書店)、『現代暴力論 ――「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)、『死してなお踊れ ――一遍上人伝』(河出書房新社)、『菊とギロチン ―― やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』(タバブックス)、『何ものにも縛られないための政治学 ―― 権力の脱構成』(KADOKAWA)など。

「2018年 『狂い咲け、フリ-ダム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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