哲学の起源 (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006004132

作品紹介・あらすじ

デモクラシーの理想とされるアテネの直接民主制は,実は自由ゆえに平等であった古代イオニアのイソノミア(無支配)再建の企てであった.イオニアの自然哲学をイソノミアの記憶を保持するものとして読み解き,アテネ中心のデモクラシー神話を解体する.『世界史の構造』を経て,社会構成体の歴史の起源を刷新する野心的試み.

感想・レビュー・書評

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  • 本書と問題関心が共有される『世界史の構造』は、社会構成体の歴史を「交換様式」から見る企てであった。
    互酬的=相互扶助的関係(交換様式A)を高次元で回復しようとする交換様式Dについて、著者は思索する。これまでそれは普遍宗教の形で現れてきた。しかし、それは祭司・神官の支配に帰してしまい、宗教は国家に回収されてしまう。それ以外に現れた事例を、著者はイオニアの政治と思想に見出し、その意味合いを本書で論じていく。

    キーワードは、イソノミア(無支配)である。それは理念であると同時に、著者によれば、イオニアで実現したものであり、植民者たちがそれまでの氏族・部族的な伝統を一度切断し、それまでの拘束や特権を放棄して、新たな盟約共同体を創設したことから可能だったとされる(24頁)。

    イオニアというと、タレスに始まる自然哲学と習ってきたが、著書は、同時に「社会哲学」として読まれるべきであると主張する。そして、ソクラテスについても、プラトンのスコープから見るのではなく、イオニア的なイソノミアからの読み換えを図る。

    これまでの常識的通念を覆す論理展開にワクワクさせられる。

  • 久しぶりに柄谷行人読んだけど、これけっこう面白かったし意外と説得力あった。昔はもっと小林秀雄みたいに独善的なところがあったけど、だいぶ丁寧な語り口になっている。

  • 哲学の起源
    (和書)2012年11月27日 19:54
    柄谷 行人 岩波書店 2012年11月17日


    かなり良い本です。

    自分もプラトンのように間違いを犯していたことを考えさせられる。ソクラテスを哲人王に模したように僕は柄谷行人を哲人王のようにしようと考えていたことがある。柄谷行人を哲人王にすればいいと考えていたのだ。別にずっと考えていたわけではない。どこかの学校の学長にでもなればそこで学ぶのは面白いだろうと考えていたのだ。

    そういったことは今回の作品で見事に批判されている。そういう意味で僕自身にとって非常にインパクトを持った作品だった。

    イオニアのイソノミア・無支配。

    哲人王の支配も支配の一形態にすぎない。

    『新潮』連載時に図書館と本屋で立ち読みした。その後、図書館でバックナンバーを大人借りして読んでみた。今回、楽しみにしていた単行本を予約して購入し今日読み終わった。何回も読みたいので買って良かったと思う。

  • 東2法経図・6F開架:B1/8-1/413/K

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著者プロフィール

1941年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学大学院英文学修士課程修了。法政大学教授、近畿大学教授、コロンビア大学客員教授を歴任。1991年から2002年まで季刊誌『批評空間』を編集。著書に『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社 2021)、『世界史の構造』(岩波現代文庫 2015)、『トランスクリティーク』(岩波現代文庫 2010)他多数。

「2022年 『談 no.123』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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