不惑のフェミニズム (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006002510

作品紹介・あらすじ

売られたケンカは買い、連帯は国境や世代を超えて呼びかける-。上野千鶴子の発言は、折にふれ共感、時に物議をかもしてきたが、背景にあるのは、自身の率直な思いと、女が女であるがままの解放をめざすフェミニズム思想。四〇年間、その最前線を走りつづけてきたフェミニストの、迫力のリアルタイム発言を一挙公開。

感想・レビュー・書評

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  • フェミニズムがいらなくなる社会とは、おんながおとこなみに強者になる社会ではない。なんどでもくりかえすが、「弱者が弱者のままで尊重される社会」のことだ。
    419p 自著解明より

    タイトルが良い。40年の歴史

  • 日本のフェミニズムを牽引しつづけてきた著者が、40年間にわたって発表した文章のなかから、「時局発言」を集めている本です。

    2000年代以降は、「ジェンダーフリー」を焦点にして燃えあがったバックラッシュの動きに対する著者の戦いの記録になっており、興味深く読みました。著者は、こうした動きに対する当初の認識の甘さを反省しつつ、反動に対して一歩先んじて動かなければならないと主張しています。図書館のBL本排除騒動のてんまつについて語られている文章やインタヴュー記事では、ジェンダーバッシングと腐女子バッシングがかさなっていたことなどが指摘されていて、男性の読者としては不幸なめぐりあわせを感じてしまいます。

    そのほか、著者自身が創刊にたずさわった『女性学年報』について語っている「編集委員というお仕事」というタイトルの文章では、女性学という学問の形成過程の中心にいた著者の学問論のようなものが示されていて、とりわけおもしろく読みました。

  • 最初は借りて読んでいたがあまりにマーキングしたい重要な箇所が多すぎたので、買って読むことにした。題名は良いタイトルだと感心していたが、大沢真理が別件で書いた解説のタイトルから借りたらしい。上野千鶴子ほどの人でもそうやって人から借りたりするのだ。というか、それが女性の連帯のあり方でもあるのかもしれない。

    「時局発言」が収められたものなので読みやすいだろうと思っていたが、約30年間という時間のせいか、上野千鶴子の歩んできたパイオニア性がそうさせるのか、非常に読み応えがあり、難しくはないが読了までには思ったより時間がかかった。

    どれを読んでも鮮やかで、新たに学ぶこともあるし、改めての認識でも味わい深いものがある。多くの女性の途方もない努力の上に、今日の女性の状況があることが伝わってくる。

    しかし、なんだかんだ言ってこのように発言して戦ってこれたのは、裕福な家庭に生まれ、父親に愛され、兄弟から学び、才能があって、というバックグラウンドあってのことで、生活のために働くということをしなくて良いという状況のなせるわざだ。上野千鶴子はそれを自覚してそのように書いてもいるだけマシだが。

    「ほんとは、あなたとわたしの間柄で、そのあいだがらがラクになりたいのに、そのための道のりが長すぎる」わたしがフェミニズムを学ぶ動機もここにある。生活のこともやりくりしながらの身では、今生で届くような気がしないが。

  • 40年年間のきろく

  • ★つぶやき大賞★上野さんは、口調がキツイ!でもそこがいい!!

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 上野千鶴子の著作を読んでいて、いつもなぜか、違和感のようなものを感じ続けていた。上野千鶴子の築く世界は、一見、フェミニズムという一つの思想を想い起させるもののように見える。しかし、どことなく思想としての完成度、手法などの学問的な基礎の部分が、深いところでは、あやふやで、悪くいえば未熟ともいえるものを漂わせている。これはなぜか。つまり、最近やっと思いつくことが出来た。それは、上野千鶴子の築く思想というのは、一つの歴史であるということだ。そう考えて読み進めているうちにハッとさせられた。そこには、確かに、彼女自身の恨み、悲しみ、憎しみ、また自惚れなどが混在し、そしてたまにそれらの感情が混乱しながら、自分の女という性を解放しようとする、自身の歴史を築く思想があったのだ。いわゆる、彼女の築いてきた思想というのは、自身からの解放というわけだ。これは、フェミニズムという大きな体系からもいえるのかもしれない。

  • 上野千鶴子さんの仕事の軌跡をたどることができる比較的短めの論文、エッセイ、評論を時代順に並べたもの。一読して、彼女がどんな仕事をやってきたのかが分かる。
    「女性学年報」の編集方針をめぐる最後の幾つかの文章が、ウィキペディアの日本語版の今によく似てて面白い。

  • 日本のフェミニズムの40年近い闘いの歴史は、本当に闘いであったのだなと思わされた。大きくとらえれば、既存の男社会が敵ということになるのだろうが、そのなかでも、当初はとにかく現状打破という感じであったのが、最近ではバックラッシュ派との闘いが主になっている。つまり、敵がその時々で変わりながらの40年だったというわけで、それはそれで非常に骨の折れることだったろうと思うけれど、一方では、この変遷はフェミニズムの発展……というよりも世間の女性蔑視の風潮の変化(それも遅々とではあるが前進している)の表れでもあるのだろう。
    本書を読むと変化の激しいなかでも上野千鶴子はブレていない。考えの変化はあるのかもしれないが、迎合したり流されることなく意志的に自分の言行を一致させてきた人。なかでも一貫しているのは、フェミニズムは世の中から生まれてきたものであると解釈していること。同時に、世の中に対して努力しない女を非難するような態度ではないこと。少なくとも上野千鶴子のなかでは、フェミニズムは意識の高い女のものであるといったことはないのだろう(自分は意識の低い女には腹立つけど)。この参加しないものを排除したり蔑視しない、口を出す者が手も出すといったネットワーク的な思考が根付いている。この空気(ネットワーク感)も、自分がフェミニズムに共感を覚える一つの要因ではないかと思った(と言っていると、上野千鶴子は「男性学をやれ」と言うだろうけど)。

  • 上野センセのは何を読んでもよくわかる。素人にもわかりやすくがモットーなのですからありがたい。バックラッシュがあることも知らなかった。図書館の書籍撤去もひどい話だと思う。戦うことはしんどいことだけど「仲間」がいるということがありがたいし、継続もできるのでしょう。

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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