正しいパンツのたたみ方――新しい家庭科勉強法 (岩波ジュニア新書)
- 岩波書店 (2011年2月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005006748
作品紹介・あらすじ
家庭科は、自分の暮らしを自分で整える力だけでなく、この社会の中で他者とともに生きていく力を育ててくれる教科だと実感した著者は、自ら専任教員となる。ご飯の作り方、お金とのつきあい方、時間の使い方など自立にあたってどんな知識が必要か、10代の暮らしに沿って具体的にアドバイスする。
感想・レビュー・書評
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絵本だと思ったら児童書でもなく、文庫本だった新しいパターン!
家庭科を教えてくれてるが、字だらけで読む気になれず、パラパラパラ…
申し訳ない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者は男性の家庭科教員。家庭科の授業から、高校生に向けて家族や自立を考え、そして社会全体も考えるような授業組み立てとなっている。
「正しいパンツのたたみ方」という著名も、「正しいパンツのたたみ方を教えるからやりましょう」ということではなく、「正しいパンツのたたみ方は人それぞれ。その色々なやり方を持った人たちと一緒にやっていくには?」ということ。
社会や自分の立場、相手を思いやることを生徒が考えられれば、社会に出たときに自分をしっかり持って行けるのではないか。
個々に描かれているのは家庭科の授業で話したことや著者の考え経験なのだが、家族とは、自立とお互い様の精神、老人問題、DVや差別、社会の中で生きることとは、自分の価値観が何か、など、暮らしてゆくために自分自身と他の相手を大切すること、自身を持って社会で生きてゆくための根本を考えるという授業になっていた。
少なくとも私が教わった授業ではここまでのことはなかった。ここまで学校で考えていけたら、まさに社会に繋がるための学校教育だと思える。
❐年度初めに生徒たちに「毎日自分のお弁当を作ってみましょう」と声掛け。
まずどうすれば長続きするか?を考える。
毎日だからこそ、面倒なことはやめて、自分ができることをどうやろうと考える。(←これは仕事もそうですね。仕事の理想や昔のやり方を変えずに手間ばかりかかって結局できなかったり残業になったりするなら、今どうやればできるかを考えなければいけない。しかし仕事だと「今の自分が変えたら怒られるかもしれないから、自分は放置しておく。他の誰かが変えるべき」という考えの方が賢い用になっちゃうところもあるんだよね)
❐勉強の意味
「先生、なぜ英語の勉強しなければいけないのですか?自分は将来英語を使う仕事にはつかないし、海外旅行しなければいいでしょ」という生徒はの真意は、「英語の授業が難しくてわかりません。わかるようにしてください」ということがある。
そんな生徒に「グローバル社会に向けて…」と漠然と説明されてもピンとこない。相手の気持ちを受け止めその生徒のが自分のこととして受け止められるようにして、さらにはわかるような授業をしてゆく。
授業とは一方的でなく、教える側と教わる側が一緒に作るもの。(←これも学校の勉強以外に色々当てはまります)
❐家庭科とは
本来勉強とは受験や競争のためではなく人生を豊かにするためにある。
いわゆる受験などで出る「主要教科」に対して、保健体育・芸術・家庭科のような「副教科」は感性を磨き心を豊かにするものと位置づけてみよう。
すると家庭科とは、どんな暮らしが自分にとって快適で、快適にするための実際の方法を身につけるための教科でもある。しかし人はそれぞれなので、自分にとって快適でも他人には不快かもしれない。自分の暮らしを整え、他の人とともに生きる力を身につける。「副教科」はそんなふうに役立てたい。
❐家族とは
「家族」の定義を聞かれたら人それぞれの回答が出てくる。長年暮らしている同居人は?ペットは?観葉植物は?精神的、法律的色々な定義があるが結局の所家族とはその人が家族だと考える人なのだろう。
しかしそれは「家族なんだから」という押し付けではいけない。自分が一緒にいたくて自分が家族だと思う相手だからこそ、どうやったら気持ちよく一緒にいられるかを考えたい。
❐手伝いは自立の一歩
家族の一員として、普段親がやっている家事を任されることは自立への一歩。
料理であれば、メニューを決め、料金を考えて買い物をして、家族の喜ぶものを作る。
毎日自分以外の誰かが自分のために何かをしてくれていた家の中のことを知ることは、社会のルールとも繋がるので、それを意識することが「親に所属する子供」から自立することになる。
❐勉強とアルバイトの両立
学生がアルバイトをするときに、授業と両立できる生徒とできない生徒がいる。
おそらく前者はお金が目当て(いつの間にかお金がなくなっているタイプ)、後者はお金の使い道が目当て(自分が何にお金を使ったかわかっているタイプ)。
❐お互い様
昨今では、働くというのは自分のためという認識が強いが、以前は高校生でもクラス半分近くは「社会のために働く」という考えがあった。
働くことに誇りと喜びを持ち、働く人への感謝を忘れない気持ちがあれば、人を思いやるし、自分も人から思いやられる。それが社会に参加するということ。
まさに今後のグローバル社会では、自分だけ利益を上げれば良いという考えは古くなり、人は支え合って生きているということ、お互い様の精神で社会を生きていくことがこれからは必要になるのだろう。
❐自立
個々に勝手に生きるのではなく、できることは自分でやり、できないことは助け合うという姿勢で人と付き合う。これこそが自立。一人でもいられる、複数でもいられる。 -
日々自分の面倒を見ることで積み上がる自信と幸福感。家のことをするのが幸せにダイレクトにつながることを、もっと多くの人が知ったらいいのに。
男性の自殺率が高いのって、自分でご飯を作っておいしく感じる習慣のない人が多いからじゃないか、と思ったり。 -
面白い!!(*^_^*)
著者は大阪府初の男性・高校家庭科教員。10年以上も英語の教員をしていたのに、なぜ副教科の家庭科に?彼はどんな授業をしているの?そっかぁ、そうだよね、と目からウロコのこの一冊。誰にでもお勧めしたいです。
私がこの本を手にとったは「正しいパンツのたたみ方」というタイトルに惹かれて。(*^_^*)
家事全般何も知らないままに18歳で親元を離れ進学、そのまま自己流の家事をやり続けている主婦としては、時折、ちょっと勉強してみようかな、という気になることがあるんですよ。
へぇ~、パンツの正しいたたみ方ってあるんだ・・、うん、タンスにしまう時、なんかしっくりこないたたみ方をしているような気がしてたんだよね、私、なんて、なんか軽いノリのハウツー物でも読むつもりになってたら、それがとんでもない!!(*^_^*)
南野先生は、本書で繰り返し「自立」の大切さについて述べられています。
対象は高校生たちで、実際の授業の再現までしてくれているから、私も高校生気分で読めてしまったのですが、高校生だろうが、アラフィフの主婦だろうが、自分の生活をいかに整えるか、人や社会とどう付き合うか、そして、お金や時間の使い方の大切さを明るく教えてもらって、これは面白い~~~!となったわけです。
そうだよね、考えてみれば家庭科って、いくらでも奥が深くなる教科だったんだ。
中学の時も高校の時も、受験に関係のない、はっきり言って、なきゃいいのに、とまで思っていた私だったのだけど、
理想の結婚相手ってどんな人?あなたはどんな優先順位をつけてるの?
賢い消費者って、品物を少しでも安く買う人っていうことじゃないんじゃないかな、
100歳になった自分を想像してみよう、
性的に自立するってどういうこと?
等々を、先生独自の切り口で高校生に考えさせ、
しかも、答えがそれぞれ人によって違うということ=人の生き方も認めること、1人暮らしであっても家庭であること、など、結婚直前の若いカップルや、たぶん一生独身じゃないかな、と思っている人、子どもたちが独立してしまった老夫婦にも、気づかせてくれるという優れ物の一冊でした。
タイトルの「パンツのたたみ方」に関しては、教員夫婦の夫から出された相談を基に、
以下、引用しますが、
自分のたたみ方にこだわることは悪いことではありません。しかし、一方で相手のたたみ方を尊重する姿勢も大切です。相手が自分の思うようにしてくれないのを非難するのではなく、話し合って「ああ、そういうたたみ方もあるのか」と一歩引いて受け止められたら、きっと2人とも満足できるに違いありません。またそうすることで、2人の関係もより深まるのではないでしょうか。
という、柔軟な頭というか姿勢を持つことが家族やひいては社会に生きるということじゃないかな、という提案が説教臭くなく示されているところに、なるほどねぇ~~~となった次第。
こんな授業を毎週受けられる高校生は、深みのある&面白い人間に成長できると思う。
私、これからでも受けさせてもらいたいくらいです。(*^_^*)
ちなみに、パンツのたたみ方のハウツーあれこれ、そして、洗濯物の干し方の基本的な考え方、など、図解入りの丁寧なレクチャーもあり、主婦歴30年近い私なのに、そっか、そうすればいいのか!という嬉しい驚きが。早速、今朝の洗濯物から応用してしまいました、なんて、これはもしかしたら恥ずかしいことなのかもしれないけど・・・。^_^;-
面白そー。
そもそも、高校に家庭科ってあるんだー(笑)
ワタシは工業高校なので全授業の1/3位は技術科みたいな授業だし、中学は女子が家庭科、...面白そー。
そもそも、高校に家庭科ってあるんだー(笑)
ワタシは工業高校なので全授業の1/3位は技術科みたいな授業だし、中学は女子が家庭科、男子は技術科に分かれていて、家庭科があったのは小学校高学年だけだった。でもミシンで下糸が絡まってボビン外すのなんかはクラスで1・2位手早かったんですよ(^^)。中学のときも女子の家庭科の中間試験の問題が「なんでこんな簡単な試験なの?」とか思ってた(笑)
南野先生の「家庭科」はそういう技術や知識だけではなくて「家庭とは何か」の授業なのですね2011/11/29 -
高校にも家庭科ありましたよぉ~~。女子は家庭科でその時間男子は柔道、という、よく考えてみればなんか変だよね、という時間割。
長老みさわさん...高校にも家庭科ありましたよぉ~~。女子は家庭科でその時間男子は柔道、という、よく考えてみればなんか変だよね、という時間割。
長老みさわさんはボビン外すの上手だったんですか。(*^_^*)あはは・・なんかわかります!女子に人気だったでしょうね。
家庭科って、日々生きることに直結した教科だったんだ、とこの年になって初めて知りましたよ。いかに気持ちを楽にして真っ当に(*^_^*)毎日を送るか、とも言えるかな。
南野先生の技量がもちろん大きいんでしょうけど、女子も男子も授業に参加している高校生たちの反応も素晴らしいです!2011/11/29
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キーワードは「お互いさま」
みんなが心地よく生活していくためには助け合いの精神が大切だ。それは社会だけでなく、家庭にもいえること。
助け合うために必要なのは、それぞれが自立すること。自立とは、“自分でできること”と“自分ではできないこと”を区別することでもある。
社会や家庭、そして自分のためにも、本書を読んで「自立」を学ぼう!
家庭科の授業をダラダラ一年受けるより、この本を一冊読んだ方がためになる…はず笑 -
実用書でこんなに感動したのは初めて。たくさんの人にお勧めしたい本です。著者は高校で家庭科を教えているので、高校生にはもちろん読んでみてほしいですが、内容は小学生から20代の若者、50代のお父さんなどにも充分楽しめる(?)ものになっています。読んでいて自分の生活に対する考え方や姿勢を見つめなおし、ハッとしたりドキッとしたりしました。ただ「自立して生活しよう」ということなのに、著者の深くわかりやすい言葉に感動さえしました。周りに便利な物があふれていて、一見豊かにくらしているようで「自分が気持ちよく、(人からも物からも)自立して、自身を持って暮らす豊かさ」は持てていただろうかと深く反省しました。家族とは何か、夫婦とは、お金とは、人と人の関係とは、社会とは・・・人が生きる上でとても大切なことが家庭科にはあったのだと目からうろこでした。学校教育の実践例もありとても面白かったです。先生が副教材として利用するのもよいのではないかと思います。手もとに置いておきたい一冊です。著者は心から生活を楽しんでいるのだなと思います。だから言葉がストレートに伝わってきて、好感が持て、信頼できるのだと思います。こんな先生に家庭科を教わってみたいな。
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自立=生活力を高めようとする「姿勢」。状態ではない。
そして、お互い様が成り立つような関係性を築けること。すべて一人でできることが自立ではない。一人で生きていくことは不可能。
生活的自立、精神的自立、経済的自立、性的自立のすべてが大切である。
★家庭科はお互いの違いを知る教科
柔軟性が必要と同時に正解はない
★時間の折り合いが自立の一歩
自分で起きる、やらなければいけないこと、などから時間に折り合いをつけられるようになる。少し、我慢することも覚えられる。
★働くことの社会的役割
自分の仕事が社会のなんの役に立っているかを知ることがやりがいに繋がる。給料をもらうことも大切だが・・・。
まさに、子供に伝えたい、気づいてほしい内容。
自分のことを自分でするって大変だけど、生活がすごく充実する。自分を律してるじゃんって。
一人暮らしをすると、必然的に感じることだとは思うが、家族と生活している段階でできていれば、いろいろな価値観をさらに感じられると思う。 -
書いてあること全部息子たちに伝授したい。自分の生活を自分で作っていける人になってほしい。
「ご主人」「奥様」という単語を一度も使わずどちらも「お連れ合い」と言い換えていて、著者のそのへんの感覚にも好感を持った。
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“いま、自分でもできることなのに、家族の誰かにやってもらっていることはありませんか。” -
相手のやり方を尊重する、強要せずに役割分担や適材適所を考える。
当たり前と思っている日頃の生活が、普段は見えない人の働きによって支えられていることに気づいてほしい、そして自分で実践しその人の立場に立って考えることで、自立した未来を見据えてほしいということを伝えたいための本。
心ある大人になるために自分の子どもがどう社会と向き合って欲しいかを考えさせられたとともに、自分が自立できているのかを再考するとてもいい機会になった。