シベリア抑留とは何だったのか: 詩人・石原吉郎のみちのり (岩波ジュニア新書 618)
- 岩波書店 (2009年3月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005006182
作品紹介・あらすじ
強制収容所を生き延びた詩人・石原吉郎は、戦争を生み出す人間の内なる暴力性と権力性を死の間際まで問い続けた。彼はシベリアでいったい何を見たのか?石原を軸に抑留者たちの戦後を丹念に追った著者が、シベリア抑留の実態と体験が彼らに与えたものを描き出す。人間の本性、生きる意味について考えさせられる一冊。
感想・レビュー・書評
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911-H
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ふむ
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歴史
ノンフィクション
詩歌 -
「壮絶」という簡単な形容だけは慎まなくてはならない。
『石原吉郎セレクション』で大体のことはつかんでいたつもりだったが、本書は石原吉郎入門として最適。
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「饒舌のなかに言葉はない。言葉は忍耐をもっておのれの内側へささえなければならぬ。結局はそのような認識によって、私は沈黙へたどりついた」 -
石原吉郎という人を知りたかった。彼の詩、エッセイに感銘を受けた。この本は、「シベリア抑留」ではなく、「石原吉郎という人」にフォーカスを当てているように思う。その点では私にとってすごく良かった。逆に言えばシベリア抑留を知りたい人は少し物足りないだろう。石原吉郎の作品を何作か読んでから読むことをお勧めする。
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言葉はあまりにも無力であった。あまりにも軽すぎた。風が吹けば消え去るようなものであった。石原は石を穿(うが)つように言葉を紡いだ。再び獲得された言葉は澄明で技工とは無縁であった。そして失ったからこそわかった重みが増した。
http://sessendo.blogspot.jp/2014/10/blog-post_22.html -
ジュニア新書として発刊されているものの、内容はとても深く掘り下げられたものだった。
非常に寡黙で削り込まれた言葉をつづる石原吉郎氏の詩がシベリアでの抑留と帰還後の体験を経てどのように生まれてきたのか、氏のこころの軌跡に寄り添うように書かれている。
「人間が生きていくなかで抱え込まざるを得ない矛盾に向き合うこと」という目取真氏の言葉がまさに的を射ていると思うが、そのことから目をそらさないがゆえに逆に言葉を削り込まざるを得なかった石原氏の詩の世界が伝わってきた。
一方で、国家とか共同体といったものに対してあまりにナイーブな姿勢は怠惰ともいえるのではないかという吉本氏の言葉を紹介するなど、石原氏の世界に浸りきっているだけではない筆者のバランスのとれた視点は、ジャーナリストならではのもののように感じるとともに、この本をより深いものにしていると思う。 -
おすすめ
アンソロジーで読み、数多の詩人の中で
抜きん出た膂力を感じて、この本を手にとった。 -
こういうテーマの本がジュニア新書で出るとは予想もしませんでした。
ええっと、岩波ジュニア新書は中学生・高校生むきに書かれた本ですが、読みやすく平易に書かれているだけで、内容的・質的にはレベルダウンしていません。
私も数十冊持っていますけれど、未知の分野で教わることの多かったものが随分あります。
ラーゲリ(強制収容所)とは何か?
地獄の方がまだましと言われるラーゲリから生き帰った詩人・石原吉郎が、生涯にわたって問い続けた、戦争を起こす人間の内部にある暴力的なものと権力をめぐる問題。
人間の本質的なもの、生とは何かを探りつづけた彼が、シベリア体験から行きついた「死者を掘り起こす」ということが、もうひとつ私たちには理解しにくかったのですが、数えきれない生還出来なかった死者を見て、死の一歩手前=生の極限を味わった者として、出来ることの唯一のことであるということかもしれません。
そういえば、このことに似ている気がするのは、1984-85年に澤地久枝が、『海よ眠れ』や『記録 ミッドウェー海戦』で、日米両方の全戦没者を特定するというとてつもない行為を完遂したことがありましたが、高校生の頃にこのことを知った私は、澤地久枝という人の戦争に対する憎しみと悲しみの深さを、全身で受け止めようと努力しました。 -
[ 内容 ]
強制収容所を生き延びた詩人・石原吉郎は、戦争を生み出す人間の内なる暴力性と権力性を死の間際まで問い続けた。
彼はシベリアでいったい何を見たのか?
石原を軸に抑留者たちの戦後を丹念に追った著者が、シベリア抑留の実態と体験が彼らに与えたものを描き出す。
人間の本性、生きる意味について考えさせられる一冊。
[ 目次 ]
プロローグ
第1章 封印された過去
第2章 ラーゲリの記憶
第3章 戦後社会との断層
第4章 詩人へと連なる水脈
エピローグ
付録 三編の詩・石原吉郎
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