「中国」の形成 現代への展望 (シリーズ 中国の歴史)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318088

作品紹介・あらすじ

さまざまな勢力が併存、角逐する一七世紀。そのカオスを収拾し、東アジアに君臨した清朝の「盛世」から、多元共存システムがほころびをみせる一八世紀。西洋の衝撃、革命と独立によって清朝が潰え、ふたたび混迷する一九世紀、そして現代へ——。一元化と多元化を往還しつづける、平和と騒乱の四百年を描く。シリーズ完結。

感想・レビュー・書評

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  •  シリーズ最終巻。 
     明清交代を経て、以降清朝は最大の版図を獲得し、中華民国を経て、現在の中華人民共和国へと繋がっていく。

     中国の度々の王朝交代を見てきたから、明清交代もそういうものかと思ってきたが、著者は言う、明清交代は、よく考えてみれば、奇蹟ともいえる。明朝は、当時の東アジアで圧倒的な大国であり、人口を比較しただけでも、清朝は1億人の明朝の1%にも満たないし、経済・文化は明朝が凌駕していた。明末の政権、組織がよほど疲弊、頽廃していたわけで、李自成等流賊を鎮圧できなかったのも、その現れである。(確かに!)

     明朝の衰退は、明朝の取った朝貢一元体制が、北虜南倭に示される多元勢力との相剋を解消できなかったことにあり、その解消が清朝の歴史的役割だったとする。

     本書は、個々の事件史的記述は最少に留め、藩部に対する統治の基本姿勢「因俗而治」、交易についての互市、商品や貨幣の流通、官民、中間団体等社会構成の仕組み、等についてコンパクトな説明をしてくれており、清朝体制の基本的仕組みが非常に分かりやすく整理されている。
     そして、アヘン戦争に代表される西洋列強の進出に対する反作用として、「領土主権」の考え方が出てきて、新疆、モンゴル、チベットへの支配を強化する動きとなった。その後、清朝時代は倒れるが、民国、人民共和国を経て、正に現代史の問題となっている訳である。

     現代に繋がるアクチュアルな問題を考えさせられる、歴史を学ぶ醍醐味を味わえる一冊である。

     

  • ようやく五冊目終わり。「大分岐」でなぜアジアがヨーロッパに遅れをとったように見えるのかに興味がある。思っていたより中国は多元で、それを一元化しようとしているのが今の中国なのだと理解した。

  • 清朝から現代へ。「清朝なかりせば、東アジアの多元勢力をとりまとめ、平和と反映をもたらす事業はかなわなかった。」しかし、清朝滅亡後、中国の一体化に向かって突き進むが、「一つの中国」は実現せず、多元共存にも程遠い。今の中国は混迷の只中にあることがよくわかる。

  • 叙述のクセが強い。。。読みにくくはないから別にいいのだけれども。なんで清代以降を一冊で済ませるのかなと思っていたが、中国近現代史はこれより前にシリーズにしていたのですね。

    5巻すべてを読んでみたなかでは、第2巻の『江南の発展』が通史的に中国の社会構造を分析していて面白かった。本巻でも似たような感じで社会構造、経済が語られるけれど清朝史の枠から大きく外に出ていない印象。

    バラバラの幣制もあたかも明清に独特のものような雰囲気で書かれているけれど、当時は国家単位できっちり統一された幣制の国なんかまだなかったのでは。スペイン銀貨が色んな所に流通していたイメージ。そんな細かいところが気になった。

  • 中国は多民族国家なのだと改めて納得できた。もっと中国や東アジアの歴史を学びたいと思う。

  • p105の図が衝撃的。私たちが「国家」というと、近代の国民国家を想定してしまうが、清が達成した盛世はそれとは全く違った社会であることがわかる。未だに、明が直面した課題に中国は格闘し続けているのだなぁと掴むことが出来た。清の「成功」は、「因俗而治」で、緩く統合することに成功し、平和を達成したこと。そこには、西洋から大量の銀の流入がインフレをもたらし、空前の繁栄をもたらした。
    p89「分岐」は、世界史としての問いを浮き彫りにしてくれた。現代にも通じる移民の問題。そして、なぜイギリスが「財政=軍事国家」として、資本主義を発達させることができ、同時期、同じように発達できる条件を備えていた清が、そうならなかったのか?そこには、ガバナンスの違い。信用を育む社会的な制度が無かったからではないか?の指摘には唸った。
    清は、民間委託をしたウルトラチープガバメントだのくだりには、小泉政権の民営化路線で、日本も同じことをやっているな~と「歴史は繰り返す」と思ってしまった。
    琉球処分が清に与えたインパクトの大きさで、従来の緩い連帯から、国民国家としての強いガバナンスへと転じたのくだりには、想像の共同体の変容を感じた。

  • ほんとに、面白かった。中央と地方、漢人とそれ以外、いろいろな対立が日本に比べて大きくて、ため息が出る。大元ウルスが大日本帝国1941の地図なんだろうなあ。だとすると一衣帯水は本気で言ってるんだな。ようやく一衣帯水が少しわかった気がする。

  • 「中国」を知るために「歴史」を紐解くシリーズの最終巻。明末清初から現代までが対象。僥倖により明の継承者となった清は自己の非力さを実感しており、「因俗而治」により多元的な世界を統治した。そうした統合の成功と限界が指摘されている。官と民の乖離、諸民族・地域等々、多元的世界は現在まで一元化は果たされないままで「一つの中国」は「夢」だという。そのほか貯水池モデルによる経済構造の解説、湘軍・淮軍と叛乱勢力は国につくかつかないかの違いでしかなく同根とする指摘も印象に残った。簡略に過ぎる点は他書で補う必要があるだろう。

  • 清朝の成立〜瓦解まで。まとまってて分かりやすい。

  • 紀元前から現在までの中国の通史のシリーズ「中国の歴史」第5巻(最終巻)。最終巻は、清朝の始まりから現在までの通史が書かれているが、通史のため教科書的に事実を中心に解説されているため、それぞれの内容は薄い。残念ながら、岡田英弘氏や宮脇淳子氏の著作ほど興味がわかなかった。

    「自らを「支那人」、自国を「支那」と呼んだ。China/Chineを漢字に置き換えた語であり、西洋人・日本人が当然と考える国民国家を含意する。だから当時の「支那」とは、まったく差別用語ではない。清新なニュアンスをもった新語・外来語であった」p161
    「「社会主義市場経済」とは、依然として「社会主義」を信奉する共産党が、政治を一手に独裁的にひきうけ、民間が「市場経済」を取り入れて経済を立て直してゆく、という趣旨である」p186

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著者プロフィール

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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