ルポ トランプ王国2: ラストベルト再訪 (岩波新書 新赤版 1793)
- 岩波書店 (2019年9月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004317937
作品紹介・あらすじ
ニューヨークを飛び出し中西部に広がるラストベルトへ.ロードトリップで見えてきた「都市」と「地方」の中間に位置し揺れる「郊外」,さらにはトランプ王国の牙城である深南部(ディープサウス)に広がる熱心なキリスト教徒の多い「バイブル(聖書)ベルト」へ.四年半で一〇〇五人に取材.もう一つのアメリカがここに.
感想・レビュー・書評
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トランプ大統領を支持した人々の生活する街をめぐり、様々な人から話を聞く。
単純に旅とともにある取材の様子が生き生きと描かれており、すごく面白かった。
トランプ前大統領は演説の言葉も荒々しく、なかなか個性的すぎる人物だっただけに、なぜ支持を受けているのかという点は非常に興味があった。
また、これだけ個性的な人物が大統領となっても堅持されている政策もあり、アメリカという国がどのような国家なのかも改めて興味を持って眺めることが出来たような気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
外交史やってる人間からすると、
アメリカの国内問題ってどうしても
忘れられてしまうエリア。
アメリカの内政の歪みを垣間見れてとても面白かった。
「トランプは原因じゃなくて結果」
そんな事を言う人がいたけど、本当に納得する。
一人一人に分析できてないから大方の選挙予測ははずれたわけで。
移民の問題とか日本にも起こりうるし、
イギリスはアメリカと同じような様相だし、
なぜトランプは生まれ、支持され続けているのか、
を人に焦点当ててるこの本は一読に値する -
ラストベルトから新南部まで、トランプ支持者の当選後の話を聞いて回ったルポ。
民主党支持からトランプ支持に変わった労働者の多くは、トランプの政策を支持して、次もトランプに投票するという意見が多いようだ。
民主党が労働者の意見に耳を傾けなくなってしまい、エスタブリッシュメントな人達の政党になってしまった事がその大きな要因と思われる。
左派の候補者の政策は極端で、民主党主流派の支持は得られず、サンダースではトランプに勝てないだろう。困ったものだ。誰でもいいからトランプを引き摺り下ろして欲しい。 -
トランプ当選後のラストベルト(中北部州)とバイブルベルト(南部州)でインタビュー取材した本です。ラストベルトの経済凋落や労働者の失業という現実は今の日本と合わせ鏡。労働者の党だった民主党に職を失った製造業労働者は完全に愛想を尽かしており、次もトランプにという。決してトランプが彼らの生活を回復させているわけではないのにこのような状況が。何が彼らをそう思わせているのか、ぜひとも読み取り、現在日本と比較してみて欲しいと思います。
また、現代アメリカを憂う2人の著名なジャーナリストにもインタビューしています。この部分だけでも現代アメリカの抱える病理を理解できると思います。 -
トランプがなぜあの時勝ったのか。既に今のアメリカはトランプが1期やってバイデンになってさらに中間選挙が終わったところ。トランプを積極的でも消去法でも応援、投票した人々の顔がくっきりと見える。
『貧困になるのは「働かない人だけだ」「教育を受けなかった人だけだ」と。全部私には当てはまらない。両親や国家から、やるべきだと言われたことを私は全てやった。私は働き、学び、軍隊にも入った。それでなぜ、私は空腹なの?なんで借金返済ができないの?』
この人はトランプを応援している人ではない。オバマからトランプの間もずっと生活に苦しんでいる。そして自分の声を届けてくれると信じた候補者のために活動している。
選挙の時に活動するということがどういうことなのかもまた、彼らに教えられる。 -
トランプ王国1からの続き。とはいえ2020年の大統領選のかなり前までの記述。前著と同じように丁寧な取材でアメリカの多様性を描く。明るい未来を描くことができない市井の人々という図式は日本も似たようなものかも知れないけど、逆説的に考えるとそれでもアメリカは(生き方の困難さですら)多様性に富んでいる。とはいえ第二次世界大戦後1950年代の黄金時代は日本の高度成長期と同じように二度と戻らない時代であることは受け入れざるを得ないだろうし、本当に身近にいない他人のことを自分のことのように気にして生きることも現実にはできない。ではどこに解決策があるのか。いや、そんなものはないのだろう。それでも人生には期待を持たないとやっていられないし。というように出口のない話であることは確かなので読んでいるとかなり落ち込む。
トランプの敗戦後の姿を見た人々の、特に東西海岸でない場所での声を聞きたいけどそこは含まれない。 -
本作は、トランプが大統領になった後の取材をもとにしたものです。
トランプ支持者(大統領になる前は支持していた人)への取材がメインですが、著者はトランプ支持者という訳ではなく、なぜトランプなのかというような立場であり、トランプの発言の誤りや支持者の誤解も適宜指摘しているため、バランスのいい構成になっていると思いました。
前作と本作を読んだことで、アメリカ大統領選挙関連のニュースや記事の捉え方も大きく変わりました。
色々論点はあるでしょうが、福祉制度や雇用創出といった課題に対する政策に注目していきたいなと思いました。
トランプは移民排除や貿易協定の見直し、オバマケアの廃止などをアピールしていましたが、今回の大統領選挙はどうなるのでしょうか。 -
前作に続く米国の草の根のルポ。体当たりのような取材に今回も頭が下がる。
トランプ大統領の施政を振り返って「自分たちのためによくやっている」という評価が思いのほか多いことに改めて驚いた。それでも彼ら/彼女らをわかっていない、と批判してはいけない。わかっていないのはNYタイムズなどの上から目線の大メディアとそれに依存してわかった気がしている我々の方だからだ、と思い知った。
大統領選まで1年を切った時期でタイミングも良かった。 -
朝日新聞の記者が、ここまでトランプ支持者に寄り添う取材をしているとは、ちょっと驚き!トランプ現象を理解したくて読んだが、印象に残ったのは、2人のリベラルな著者へのロングインタビューの中で出てきた、民主党の変貌への言及。民主党は、ベトナム以後、「もはや労働者階級の政党ではない」路線を選び、「見識があり、高等教育を受け、裕福な人々の政党」になってしまった。ルーズベルトは、なりふり構わず、ダムを作り、インフラを整備し、多くの労働者を雇った。失業した労働者の側に立っていた。今でも、人々は、これはルーズベルトが建てたものだと認識できる。が、同じ巨額なお金を使って、オバマは、同じエリート層が運営している大銀行を助けた。言われてみると、そうだったなぁ。日本もそうだが、「労働者」に寄り添えるかどうかは、リベラルの課題。「労働者」のイメージも変わってきていると思うけど。
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ラストベルト、白人主義のところでトランプ氏の素直さが受け入れらた。真っ直ぐで、有言実行。よく言えばそうなりますね。