平成時代 (岩波新書 新赤版 1777)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317777

作品紹介・あらすじ

平成の三〇年は「壮大な失敗」だった.「失敗」を全分野で総括することからしか展望は描けない.経済,政治,社会,文化で果たして何がおきたのか.社会学者吉見俊哉が「ポスト戦後社会」の先の空虚な現実を総括する.

感想・レビュー・書評

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  • 日本の平成30年は失敗の歴史だった。のっけから強烈なメッセージを発する著者。そして、その失敗の具体例があげられる。

    グローバル社会、ネット社会に乗り遅れた日本企業たち。特に金融や家電業界では縮小、倒産が連鎖した。政治の世界では政権交代を繰り返しつつも、結局は与党一極集中と極端なポピュリズムだけが生き残った。さらに大企業と正社員に富が集中し、拡大する格差社会とそれに伴う少子化。そして、2つの大震災。

    こうしてながめてみると、たしかに平成はろくでもない時代だった。が、それなら平成後のネクスト安倍政権や東京オリンピック、消費増税などに希望があるのかと問われると、心もとない。

    批判的な眼で見れば、どんな時代だって、失敗は目立つという楽観的な考えもあるだろう。「あの頃はよかった」と繰り返し発するより、大事なのはこの失敗を次の成功につなげることだと、著者は平成時代を総括する。

  • 平成の30年を「壮大な失敗の歴史」と捉え、経済、政治、災害、文化、オリンピック、基地問題、人口問題等を取り上げ論じる。希望のかけらもない、ただ失敗の渦巻く時代であったと位置付けている。果たして本当にそうなのか?確かに、ポジティブな要素を見つけようにも、見つけられない・・。私たちはこれらの壮大な失敗から何かを学んで、未来に活かすことができるのだろうか。その展望について知りたくなる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/724397

  • 平成の30年間、日本は坂道を転落した
    1.現在の日本の低迷 GDPのシェアは18%→6%へ(1/3へ)
     世界的視野で捉える
    2.日本の失敗の本質 トータルの総括が出来ていない
     =国債累増により先送り
     高度成長期の体制・制度の改廃が不可欠
     ①グローバル化 内向き・鎖国
     ②デジタル化 ファックス
     ③バブル崩壊
     ④人口減少・高齢化
     ⑤財政逼迫

  • 平成の30年をひとくくりにすると「失敗の時代」という著者の結論は否定できないだけに、笑えない結果である。企業経営、国民経済、そして政治的にも。4つの失敗が➀バブル崩壊、②阪神大震災、③2001年のNYテロ事件、④東日本大震災と福島原発事故がこの時代「日本が壊れていく時代」を象徴する言葉であることは間違いない。そして社会的にも幼女連続殺人の宮崎勤、オウム真理教、酒鬼薔薇聖斗事件なども失敗の時代を増幅するような出来事として書かれており、失敗の一環とのがりを感じざるを得ない。なお企業経営の失敗の中で、山一證券、東芝、シャープなどの事例にはあまりにも衝撃的だった。アルゴリズムによるフィルターバブルの時代がますます断絶の時代を深めていることは救いのない暗澹たる気持ちにさせられた。

  • 問題を先送りにして、適当な対策も失敗し、その失敗を学ぶことなくまた失敗を繰り返す。いまのわたしたちは、失敗を繰り返さないようにその失敗に向き合うということが今までに成功した大きな例がないために、失敗を繰り返す失敗をまた選んでしまっている。どうせ良くならない、と言って失敗を見つめるより無邪気に他のことで楽しいことをする。それこそが平成の残した最悪の失敗のように思う。

  • 平成時代を振り返る時代論みたいな作品。
    筆者の問題提起はとても重要だと思う。つまり、失敗に対して真摯な態度で非難、分析したうえで今後に生かしていくというものであり、平成時代を世界情勢・社会変動への対応に失敗した時代として振り返るのは大事。

    ただ、分析内容は実証分析に耐えるものでもないし、ちまたの言説の域を出ないと思う。

  • 「平成」という時代は“失敗の連続”であり、1997年の山一証券自主廃業、2011年の福島第一原発事故が発生する中、アイデンティティの虚構化が進むなど、失敗の範囲は個人の領域にまで拡がりました。本書では、このような平成の失敗を総括することによって、新たな展望を描くことを目指します。
    (社会・人間科学コース M2)

  • まず1章で、世界の財界のことも、日本の財界のことも、私があまりに無知であることに呆れた。特に製造業のことが。
    政治や社会、文化についての章は、知識としては知っていても、それが何を意味するのか、という記述は私を内省へと導く。

    失敗からしか学べない。
    危機からしか変われない。
    著者の姿勢は、読む者を暗澹たる気持ちにさせるが、ここから強靱な思索が営めるかどうかが今、問われている。

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著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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