賢い患者 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317258

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  • 昨年の手術以来、当分継続的に病院のお世話になる身になった。
    今一番、自分に必要な本だと思い、手にした。

    患者が医療と向き合うサポートをするNPO、COMLで積み上げられてきた成果がまとめられている。
    学んだことは、患者も、医療者との良好なコミュニケーションを取るべく努力することだ。
    自覚症状と病歴はきちんとメモをして受診すること。
    これからの見通しを聞き、体の変化はよい変化も伝えること。
    話はメモに取り、分からなければ何度でも聞いてよいということ。
    こんな内容だ。

    しかし、そういうことより何より圧倒されるのは、著者とCOML創設者の辻本好子さんの生き方だ。

    著者の山口さんは二十代で卵巣がんに罹る。
    今から二十年前、患者は自分のことなのに治療方針や状況について知らされることがなかったそうだ。
    抗がん剤の壮絶な副作用の中、自分の病状をただしくしりたい、と病気について学び、行動した山口さんの強靭な精神力に驚く。

    辻本さんについては、その最期が書かれている。
    常に人に配慮する人だったとのことだが、その人もまたガンに罹り、最期を迎える。
    こういう活動をしてきた人でも、末期の病の中で揺れ動くのだという事実に、その病の厳しさを思い知らされる。
    山口さん自身が卵巣がんの再発をしながら、辻本さんを支え、看取っていくのだが…。
    二人の絆の強さと、医療者との関係づくりにより、おそらくこの人にとって良い形で最期を迎えることができたように思う。
    家族を看取るとき、あるいは自分が死ぬとき、こんな風にできるのだろうか?
    今掛かっている医師にも話しにくくて困っている自分に。
    まだまだやらなければならないことは多そうだ。

  • 患者と医療者が同じ目標に向かって“協働”するにはどうしたらよいか

    1990年に創設された認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」を1992年からスタッフとして支え、2011年から理事長を務める著者が、自身の経験と会の活動を紹介しながら、患者と医療者や病院、自身の病気との向き合い方を探る

    本文1~6章は、6万件におよぶ電話相談、厚生省研究班への協力、模擬患者、病院探検隊などCOMLの活動にもとづく客観的な記述

    それをはさむように序章には著者自身のがん患者としての闘病体験、終章の7章にはCOML創始者の末期がんを“キーパーソン”として看取った壮絶な経験が記され、テーマを立体的に読むことができる

  • 医師や医療に対して多くの人が不信感や不満を抱くと思うが、患者として現実的にとり得る方策を提示してくれる。医師や医療機関にどのように接すれば、望ましい医療を受けることができるか……。その提言は「新・医療にかかる10箇条」に集約する。▼(1) 伝えたいことはメモして準備(2) 対話の始まりはあいさつから(3) よりよい関係づくりはあなたにも責任が(4) 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報(5) これからの見通しを聞きましょう(治療スケジュール、治療の目標 、予想される日常生活への影響、治療中・後にできなくなること)(6) その後の変化も伝える努力を(7) 大事なことはメモをとって確認(8) 納得できないときは何度でも質問を(9) 医療にも不確実なことや限界がある(10) 治療方法を決めるのはあなたです▼またCOMLの創始者辻本好子さんと著者の強い信頼関係の描写は感動的。辻本さんの闘病の最後の描写、辻本さんの事前指示書は涙を誘う。

  • 創始者の辻本さんと会ったのは一度だけ。
    それでも今のは自分の人生を変えてくれた人。

    自分に何ができるか。精一杯やる。
    その基本を忘れない。

  • 医療トラブルがあったときの対処法がよくわかる。 患者としての体験記でもあるが、冷静な筆致で読みやすい。前理事長の終末期である最終章は、涙なくして読めない。

  • 医師と患者の「良い関係」のための NPO法人COMLの壮絶なる活動録。
    新病院建てる前に「病院探検隊」受けてほしいなっ

  • 医療現場で患者側の知る権利を確保したり患者自身への啓発活動などを行っているNPOの主催者による本。この30年あまりの医療現場の変化の一端はこういった活動によってもたらされてきたのであろう。しかしながら他者をサポートする場合と、自身が当事者になった場合はそのまま一致しない、非対称的な部分がある。自身が死に直面した場合に自らの理論がそのまま適用されなかったというキューブラー・ロスの例なども有名であるが、こういったNPOの主催者であってもやはり例外ではないことは、第7章の記述からもわかる。むしろそういった矛盾と率直に向き合う姿勢が重要なのだろう。

  • COMLを引き継いだ山口育子さんの著作であるが、彼女を通じた創始者の辻本好子さんのがん闘病の姿に圧倒された。「患者は伝えたい医療者を選ぶ」との言葉をその多義性を含めて考えておきたい。

  • 背ラベル:490.1-ヤ

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