官僚たちのアベノミクス――異形の経済政策はいかに作られたか (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317036

感想・レビュー・書評

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  • アベノミックスが成功だったのか失敗だったのかは、これから検証されていくことだろうが、第二次安倍政権発足当時は日本を良くしようと火の玉になって働いていた安倍首相がよくわかった。

  • 周囲に本好きの人は多いが、N先輩はその中でも群を抜いている。
    どんな本を読まれるのかお聞きしたら、歴史から医学、財政、福祉、ノンフィクションまで、幅の広さに圧倒されてしまった。「面白そうだから読んでるだけ」と謙遜されるが、忙しい職にあっても新しい本に挑戦される姿勢は見習いたいものだ。

    N先輩からご紹介いただいた1冊。
    安倍内閣の経済政策アベノミクスは大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の3本の矢からなる。本書は、第一の矢である金融緩和が、自民党の選挙公約から日銀の政策となっていく過程を、2012年9月の自民党総裁選から翌13年3月の日銀総裁辞任まで辿ったノンフィクションだ。

    印象的なことが二つある。
    一つは、言葉の扱い方が丁寧なことだ。金融緩和して達成すべきインフレ目標を政府・日銀の共同声明としてまとめるにあたり、財務省と日銀の担当者が協議する。目標2%の明記や達成時期、日銀の説明責任といった点について言葉一つ一つ議論を重ねる。そのやり取りは、似た仕事をしている立場からみても非常にリアルだ。交渉当事者に丁寧に取材し、彼らの意図を正確に理解しなければ書けないと思う。
    二つ目は、官邸と日銀の間では結局、実質的な政策議論はされなかった点だ。首相の意思を実現しようと圧力をかける内閣府と「インフレ達成は日銀の仕事ではない」という立場に固執する日銀。もう少し日銀が政権の意図を理解し柔軟に対応していれば、もう少し官邸側が日銀の役割に配慮していれば、違う結果になったと思う。本書の守備範囲ではないが、首相の意向実現のため官邸職員が担当省庁に圧力をかける手法が常態化したことが後日、数々の疑惑を生む土壌につながったのではないかと思う。

    いずれにせよ、本書はアベノミクス自体の是非ではなく、その形成過程を記録するスタンスを貫いたことで、政策決定に携わる人間にとって優れた参考書となった。N先輩に感謝。

  • 本棚で平積みになっていたので気にはなっていましたが、アベノミクスなり経済政策にあまり興味がもてなかったので手に取っていませんでした。しかし、ブクログでフォローしている方が紹介しているのを読むと、テーマは経済政策というより政策形成過程だということ。それならばと読んでみました。おもしろかったです。政治家が旗を掲げて、官僚たちのあれこれの調整がこんなかたちで行われて、具体的な政策としてかたちづくられていくのだというところが。それにしても、かなり生々しい話が盛り込まれていてすごいなあと感心しました。どんな取材をしたのだろう。もし私が取材を受ける側なら、こんな話(特に「あのとき日銀の本音は聞いてたんだけど、交渉のカードをもっておきたいから情報握ってたんだよね」なんて話)、怖くて言えないです(自分の器の小ささをこんなところで感じることになるとは…)。

  • 2012年11月14日(野田‐安倍の党首討論)から2013年7月1日(日銀短観発表)までの期間、政治家・官僚・日銀・財界・国内外の関係者達が何を考えどういう発言をしてきたかの記録。
    アベノミクスの実現(反対意見を排除し、スピード感の強い方針決定)に、人事という飛び道具が重要なファクターとなっていることがよくわかる。
    アベノミクスをはじめとする政策の良し悪しについては、各自で考えてくださいというスタンスであるが、安倍政権の国会運営には苦言を呈している。

  • アベノミクスの形成過程がよくわかる良書。アベノミクスとはつまりは円高と株価対策であったということか。本書において成長戦略が語られないことは、極めて象徴的に思われます。

  • 【混沌からの落穂】2012年の総理就任と同時に,安倍政権の目玉政策となったアベノミクス。その政策の成立過程を追いながら,現代日本の政治システムの内側を垣間見た作品です。著者は。時事通信社で解説委員等を歴任した軽部謙介。

    これは名著。政策決定プロセスを考える上でももちろん有益ですが,特に後半に描かれる,政権と日銀の距離感に関する記述と考察が白眉です。新書というとコンパクトかつ軽めの媒体という印象も与えられてしまいがちですが,本書は日本政府の内側にぐりぐりと迫った力作だと感じました。

    〜政権がつくられるとき,その政党は特定の政策を実施しようとする。そして,その政策をつくるという意思は,首相→各閣僚→各省庁という形でおりていく。国家意思の貫徹だ。日銀はこのような政治家の意思が貫徹していくべき対象なのか。〜

    帰国に伴って久しぶりに読んだ紙の本☆5つ

  • 淡々と書いてある。
    今に通じる芽がわかった。
    正体が明らかになってきてよかった。
    当初はさぞ辛い思いをした人がいたことだろう。
    完全に✖️の評価が広まって欲しい。

  • 金融政策主体のアベノミクス立ち上げ当時の具体的な経緯が描かれている。それを推進する人々の高揚感のようなものが伝わってくる。ただそれが日本社会にとって本当によかったのかどうかがはっきりするのはこれからだ。アベノミクスが日本社会にとって罪であったとしても、その罪を贖うことになるのは、アベノミクスを推進した面々でも、それにより短期的な恩恵を得た面々でもなく、いわゆる庶民、特に貧困層だろう。今後のためにも、アベノミクスがどのような経緯で始められたのかを、多くの人がきちんと知る必要があると思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702387

  • 例えば文中にある政策案意思決定の際リアルな記述はなぜ可能なんだろう、その場にいないはずなのに。

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著者プロフィール

軽部 謙介(カルベ ケンスケ)
時事通信社解説委員
1955年生まれ。早稲田大学法学部卒業。時事通信社入社。社会部、福岡支社、那覇支局、経済部、ワシントン特派員、経済部次長、ワシントン支局長、ニューヨーク総局長等を経て、現在、同社解説委員。主な著書に『日米コメ交渉』(中公新書)、『官僚たちのアベノミクス』(岩波新書)など。

「2019年 『政策をみる眼をやしなう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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