原発プロパガンダ (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316015

作品紹介・あらすじ

世界有数の地震大国日本になぜ五四基もの原発が建設され、多くの国民が原子力推進を肯定してきたのか。そこには電気料金から生じる巨大なマネーを原資に、日本独特の広告代理店システムを駆使して実現した「安全神話」と「豊かな生活」の刷り込みがあった。四〇年余にわたる国民的洗脳の実態を追う、もう一つの日本メディア史。

感想・レビュー・書評

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  • 原発プロパガンダ (岩波新書)
    本間 龍

    先日小泉純一郎元首相の講演会を聞きに行ったのですが、内容の8割くらいが反原発の話でした。その時思ったのは、原子力を営む会社でありながら、自分は原子力に対してスタンスを明らかにできるほど詳しく知らないということでした。

    自分の不勉強さを恥じて読み始めた本の一つがこの本です。どうしても原発を生業としてきた東芝としては、原発推進の立場、ポジショントークになってしまいます。一旦批判的な人たちの声も含めてフラットに考えたいなと思っています。

    この本の主張は、「安全かどうかわからない原発に対し、安全神話を構築し総括原価方式を使って集めた莫大な原資で大量の広告を撒いてきた。私たち受け手はその広告にどんなバイアスが掛かっているか理解しながら情報を咀嚼するリテラシー力が必要だ」と理解しました。

    著者のプロパガンダに関する主張は正しいと思います。それは危険か安全かわからないまま、安全だとして煽動してきたというところまで。本来的に原発が安全なのか危険なのかという議論は避けて危険なモノを安全と言ってきた、という主張に見えるのが残念ではあります。
    知らず知らずのうちに安全神話が刷り込まれてきたところがあるなと改めて思いました。

    ◯プロパガンダとは
    ・政治的思惑を伴った広報活動、世界各国で手を替え品を替え用いられてきた。

    ◯原子力プロパガンダ
    ・日本では電通と博報堂が技術を磨き担ってきた。
    ・1950年代に原発を国策と定めてから、国民の多数の合意という世論の形成を目指した。

    ◯なぜプロパガンダを必要としたか?
    ・度々の事故と地震国という事実が安全神話を必要とした。
    ・年間二百億もの電力会社の巨額の広告費(朝日新聞調べ)
    ・原発の事故や不祥事の旅に増額して来た。巨額ゆえメディアは原発批判ができなくなる。

    ◯資金、関係者
    ・原資は総括原価方式による資金
    ・自民党、経産省、電力会社…関係者は膨大だが、司令塔は不在で責任の所在も曖昧。
    ・民法の立ち上げを開脚時からそれぞれ支援したのが電通で、スポンサー窓口はほぼ独占状態。
    ・70年代、原発反対運動をどう抑え込むかを東電と電通が組んで考えていたのとを買いた原子力戦争、執筆した田原氏を圧力をかけて退社に追い込んだ。
    ・補助金は町を潤すが、切れると深刻な財政難に陥る。

    ◯福島の事故後
    ・事故をきっかけにPA(public acceptance)方策の考え方を制定、従来の安全押しから、危険なものを安全に扱ってると論調を変更。
    ・福島事故によりプロパガンダ停止、関係各社は一切に過去の広告を削除。自分の言説に責任も誇りもなかったことが明らかになった。
    ・事故から2,3年経ち、また広告が復活している。

  • 2018年7月読了。
    あなたが好きなタレントの某さんも、電事連の片棒担ぎ、太鼓持ちかも、という目線を持って厳しく見ないと。
    立派に見えるあのお方も「ケツ持ち」のご意向には逆らえない。
    それを批判するだけでなく、背後にある力関係にまで注意して物を言うようにしたい。

  • 543.5||Ho

  • 2011年3月11日の福島第一原子力発電所の事故が起きる前から、
    原発の安全神話については懐疑的だった。原子力だよ?核だよ?
    安全対策は万全だというけれど、地震列島・火山列島の日本に
    人間が制御出来ないモノを作って本当に大丈夫なのか…と。

    だから、新聞紙面に掲載されていた電力会社の広告も胡散臭く
    感じていた。専門家だとか、有名人だとかが、原発の必要性や
    ら安全性を説いていても「本当かよ」って感じだった。

    広告業界の片隅にいたから分かる。畳みかけるように何かを
    主張する広告ほど、危険なものはない。著者の一連の原発広告
    関連の書作を読んでいると「やっぱりな」との思いを強くする。

    新聞に、雑誌に、テレビに、ラジオに。電力会社や関連団体のみな
    らず、関係官庁までもが膨大な費用を使って安全神話を振りまいて
    来た。メディアにとっては有難い広告主である。だが、この広告主
    はメディアが本来、報道しなければならなかったことを潰して来た。

    電力会社を少しでも批判したらどうなるのか。本書では報道すべき
    ことを報道したのに、組織の保身の為に犠牲になった人たちの話
    も詳しく書かれている。

    そうだよね、田原総一郎氏もそのひとりだったんだよね。

    スポンサー・タブーは古くから言われていることだけれど、福島第一
    原発事故以前のメディアの及び腰も酷いものだわ。それに輪をかけ
    て酷いのは読売新聞だけれどね。

    原発事故直後から姿を消していた電力関係の広告が、原発立地県
    から徐々に復活している。あれからまだ5年しか経っていないのにね。
    日本の原発すべてが停まっていても大停電なんか起きなかったのに、
    今度は再稼働に向けてのプロパガンダかね?

    電力関係の多くを手掛けたのは広告代理店最大大手の電通である。
    電通の前身は「日本電報通信社」だ。戦前の満州鉄道調査部で、
    対外宣伝と宣撫工作を担った。プロパガンダはお手のものだよね。

    福島第一原子力発電所は廃炉に向けての作業が続いているが、いつ
    になったら完了するのかの目途さえ立っていないのが現状だろう。
    廃炉費用だって実質、どれだけの金額がかかるのさえはっきりとは
    していない。

    なのに、原発プロパガンダは復活する。まるでゾンビのように。

    国策として原発推進をしてきた自民党本部も、プロパガンダをまき散らし
    てきたメディアの本社も、そのプロパガンダで金儲けをしてきた広告代理
    店も、福島第一原子力発電所の近くへ移転したらいいのに。

  • 元博報堂マンの原発広告のレビュー。
    業界内部にいた人だけあって、原発広告の歴史、やり方、事件が書かれていて、とても面白い。かつ恐ろしい。
    物量で圧倒している相手は、とても手強いことがよくわかる。
    放射線の影響に関しては首をかしげる部分もあるが、それを補って余りある内容。
    「戦争広告代理店」が思い出される。これはいわば情報戦なのかもしれない。

  • ストレートな主張、とても良い。

  • 原発問題について全く知識がなかったが反対ではあった。ゼミの先生から勧められてこの本を読んだがおかげで原発プロパガンダの実体がよくわかった。
    広島の原爆についても調べていたし自身の家系にも被爆者がいるので放射性物質の危険性は言われるまでもなくわかる。だから原発がなぜこうも推進され続けてきたのか、メディアなどの監視体制がどうなっているのかを知りたかった。
    まさに極悪非道としか言いようがない傲慢さが推進派グループの本質だ。そのプロパガンダの方法は確かに効果的で評価に値する。人々はまんまと騙された。でもそれに加担した私利を追求したメディアや企業各社、そしてタレントや専門家などの個人は断固として許されない。
    勿論、メディアに対しての監視を怠った大衆にも責がある。だからこそ著者が指摘したように自ら努力して中小の信頼できるメディアを探さなければならないし、ちゃんとした情報を発信しようとしているグループをサポートするために出資していくべきだ。タダでいいものは手に入らない。

    でも原発の話を抜きにしたら広告の手法など面白く読んだ。

  • 「CMで(テレビで)やっていたから」
    賢いランクの高校一年生女子と話していて、よくこの言葉が出てきた。

    そして、この本。
    騙されていた、というか、自分がただ単に楽していた、という感じ。

    そりゃあ、相手の思い通りになるよな、と。
    でも、同じ手を見破られるようになりたい。今からは。

  • 原子力ムラが仕掛ける、安全神話。
    それを手助けする電通などの大手広告業者とTV局。
    著者は原発プロパガンダの危険性を伝えるNPOを立ち上げたいとのこと。応援したい。

  • 古本市で購入。

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著者プロフィール

1962年生まれ。著述家。1989年、博報堂に入社。2006年に退社するまで営業を担当。その経験をもとに、広告が政治や社会に与える影響、メディアとの癒着などについて追及。原発安全神話がいかにできあがったのかを一連の書籍で明らかにした。最近は、憲法改正の国民投票法に与える広告の影響力について調べ、発表している。著書に『原発広告』『原発広告と地方紙』(ともに亜紀書房)、『原発プロパガンダ』(岩波新書)、『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波ブックレット)、『広告が憲法を殺す日』(集英社新書、共著)ほか。

「2021年 『東京五輪の大罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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