医と人間 (岩波新書)

制作 : 井村 裕夫 
  • 岩波書店
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315353

作品紹介・あらすじ

先制医療、iPS細胞、ロボット治療、新しいがん治療、創薬、脳研究など最先端の医学、そしてチーム医療、緩和ケア、地域の医療、災害医療、情報技術、死生学など第一線での医療。医学は常に人間とともにあり、人間のための学問である。日本医学会総会はその知を結集し、高齢社会を幸せに生き抜くためになすべきことを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 小泉英明さんの「脳の発達と幼児教育」が読みたくて買ったのだけれど、それ以外の部分もずいぶんと読みごたえがあった。HALなんていうロボットの話とか、先制医療(一発で変換できないからまだまだ新しい言葉か)とかトランスレーション医学などという考え方について知ることもできた。そして、何よりも興味深いのは後半の医療現場からのレポートである。ホスピスであったり被災地での医療であったり。そして、今回の一番の収穫は胃ろうについての問題について、おそらくこれで適切な判断ができるようになったのではないかと思う。単純に毛嫌いするのではなく、その人のQOLが向上するのかそうでないのかをよく考えて選んでいけばよいことなのだろう。それから、一番知りたかった幼児教育について、小泉さんは最後に、意欲の問題をあげている。早い段階で意欲を育てるようにするべき。そのためには幼児期に適切な情動についての教育が必要。その具体的な方法が知りたかった。さらなる研究が期待される。

  •  この本を読むのはおそらく二度目で、書かれている内容になんとなく覚えがあった。第1章は医学の最前線、第2章では医療の現場からーきずな構築のためというタイトルで、様々な医療分野の第一人者が文章を寄せていた。私が特に注目していたのは2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授と、100歳を超えても現役の医者として活躍し続けた日野原重明さんだ。その他山海嘉之の「革新的ロボット治療を創る」がおもしろくて、ロボットは今後どのように発展していくのだろうかと考えさせられた。どのようなロボットが医療現場にあるのか写真で見てみたい。

  • 失くしてしまったが、買い直したい一冊。当時の医療問題や可能性をオムニバス形式で、各領域のトップリーダーが分かりやすく書いてある。医療に興味がある人もない人も読んでみてほしい新書。

  • 講演の記録。編集部は、本書に「通し番号」を意地でも書きたくなかったらしい。

    【メモ】
    ・総会〈http://isoukai2015.jp/

    【書誌情報】
    編者:井村裕夫
    通し番号:新赤版 1535
    ジャンル:福祉・医療
    刊行:2015/02/20
    ISBN:9784004315353
    Cコード:0247
    体裁:新書・並製・カバー・244頁
    https://www.iwanami.co.jp/book/b226322.html

    【簡易構成】
    はじめに(二〇一五年一月 井村裕夫) [i-iv]
    目次 [v-vii]

    I 医学の最前線 001
    再生医療と創薬[山中伸弥] 003
    21世紀のがん医療[間野博行] 021
    革新的ロボット治療を創る[山海嘉之] 039
    脳の発達と幼児教育[小泉英明] 067
    先制医療[井村裕夫] 091
    トランスレーション医学とは何か[成宮 周] 111

    II 医療の現場から――きずなの構築のために 139
    医療と情報技術[吉原博幸] 141
    チーム医療における、看護師の新しい役割[日野原 重明] 161
    ホスピス・緩和ケア――ビハーラ病棟から[大嶋健三郎] 173
    被災地に学ぶ[川島 実] 195
    胃ろう問題と死生学[会田薫子] 215


    【目次用のメモ】
    ・小見出しに現れる略語
      Non-communicable Disease
     Electronic Health Record
    ・最終章「胃ろう問題と死生学」では、〈物語り〉が名詞として使われている。


    【目次】
    はじめに(二〇一五年一月 井村裕夫) [i-iv]
    目次 [v-vii]

    I 医学の最前線 001
    再生医療と創薬[山中伸弥] 003
      iPS細胞による医療  移植の可能性  加齢黄版変性  iPS細胞を作る  研究所の目標  薬の開発

    21世紀のがん医療[間野博行] 021
      ねらいを定めた分子標的薬  ALK阻害薬  劇的な効果  臨床試験が変わる  がんが治るということ  医者から始めて

    革新的ロボット治療を創る[山海嘉之] 039
      革新的ロボット治療  HALによる機能改善治療への挑戦  サイバーダイン社の設立  脳・神経系失陥への適用例  サイバニクスから生まれる革新的デバイス/サービス  先端技術創出の新たな流れ  家庭に溶け込むサイバニクス

    脳の発達と幼児教育[小泉英明] 067
      脳を測る  脳の働きと領域  脳の構造  文字は早く教えない  視覚  幼児の教育  自然で育つのがいい

    先制医療[井村裕夫] 091
      増えている慢性疾患(NCD)  予防  先制医療の現状  胎生期の問題  ライフコース・ヘルスケア  より能動的な医療を  注

    トランスレーション医学とは何か[成宮 周] 111
      医学の現状  薬というもの――その歴史と現状  製薬会社の課題とオープンイノベーション  トランスレーション医学――創薬で大学の果たす役割

    II 医療の現場から――きずなの構築のために 139
    医療と情報技術[吉原博幸] 141
      インターネット黎明期と医療  電子カルテ  医療情報の共通規格  実際に動きだす  日本でのむずかしさ  医療情報の二次利用  EHR  今後の課題  IT化がもたらす未来

    チーム医療における、看護師の新しい役割[日野原 重明] 161
      チーム医療  看護の主体は看護師  看護師から教わったこと  患者さんもチームの一員  聖路加をモデルにしようと思った

    ホスピス・緩和ケア――ビハーラ病棟から[大嶋健三郎] 173
      死に逝く人に何ができるか  最後の野球  宗教者が寄り添うこと  こころを開く  今を作る  なぜ医者に

    被災地に学ぶ[川島 実] 195
      なぜ被災地に  本吉病院の復興  本吉の在宅診療  教育の場としての本吉病院  緩やかな循環  田舎で働くということ  注

    胃ろう問題と死生学[会田薫子] 215
      死生学の問いへの発展  胃ろう栄養法の汎用の背景  胃ろう栄養法の医学的適応  認知症の摂食嚥下困難の場合に、まず考えるべきこと  アルツハイマー病の場合  脳血管障害の場合  遷延性意識障害の場合の考え方  生物学的生命よりも人生の物語りを大切に  コミュニケーションの重要性  臨床倫理と法

      

  • 北里大学医学図書館OPACへ
    http://saosrv.kitasato-u.ac.jp/webopac/newexe.do?pkey=BB10136675

  • 2015年に開催される第29回日本医学会総会(4年毎開催)を記念して、医学の各領域の最先端の研究・技術と、医療の現場の最前線での取り組みについて、11人の各分野の第一人者が語ったものをまとめて出版された。
    医学については、山中伸弥iPS細胞研究所長が、iPS細胞を使った再生医療と創薬について語っているほか、抗がん剤に代る治療薬(ALK阻害薬等)の研究、身につけることで人の身体機能を改善・補助・拡張するサイボーグ型ロボットHALの開発、脳の発達に関わる幼児教育の研究、慢性の非感染性疾患に対する先制医療、基礎医学を創薬や治療などの臨床医学に生かすトランスレーション医学が取り上げられている。
    中でも、山中教授のノーベル賞受賞後、脚光を浴びるiPS細胞研究の影に隠れている感はあるものの、がん治療法の研究・開発が大幅に進んでいる点は注目される。それは、がん細胞の増殖にかかわる特定の分子をターゲットにして、その機能を抑える「分子標的治療」と言われる方法で、これまで慢性骨髄性白血病などの血液がんのみに有効なアプローチと言われていたものが、一部の腫瘍型がんも類似の原因により発生することが明らかになり、がん治療が飛躍的に進歩すると期待されているという。
    また、医療については、日野原重明聖路加国際病院名誉院長が、チーム医療における看護師に求められる新しい役割について語っているほか、医療情報のIT化、ホスピス・緩和ケアの在り方、東日本大震災被災地の医療、胃ろう栄養法と死生観の問題が取り上げられている。
    医学・医療に関わる最新のトピックスがカバーされており、専門外の人間がそれらのエッセンスを網羅的に知るための良書である。
    (2015年3月了)

  • とても読み応えのある一冊。

    先制医療、iPS細胞、チーム医療など今までやこれからの医学を考えるのにピッタリな導入書。
    特に脳の発達と幼児教育の章が個人的に追いかけたいテーマでした。
    図書館で借りた本ですが…買って自分の手元に置きたい一冊です。

    以下色々メモ

    井村先生
    医学は人の心身の健康を守り、病気を癒すための学問。医療は医学の社会的な実践

    小泉先生
    子どもに早くから文字を教えることは思わぬ弊害が出る可能性がある
    脳というのは今までの進化のなかの記録を全部宿している
    脳の機能の発達を保育や教育の分野にも取り入れ、「進化教育学(evolutionary pedagogy)」へと発達するかもしれない

  •  現代医学に関わる先端の方々から聞き語りでトレンドを纏めたといった本。
     やっている分野の説明+自分が何故それを行っているか+その分野が今後の医療にどのように必要であるか、と言うことをコンパクトに纏めてい る。さすが、名のある方々、である。

     印象に残ったのはIPS細胞が、むしろ医薬方面で期待されていること。
     被災地でのボランティア医療自体が、医療の研修として充実していること。
     胃ろうの問題。そもそも、胃ろうって何なんだろうと思っていたから、より一層分からなくなった。
     チーム医療を掲げているけれども、それは制度が変わらない限り厳しいだろうなぁとか。

     こういうのが毎年出ると面白いのにね。
     雑誌で、図示とかされていると、医療トレンドに敏感な大人たちの人目……惹かないか。

  • 勉強になりました。

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