トクヴィル 現代へのまなざし (岩波新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312680

作品紹介・あらすじ

『アメリカのデモクラシー』『アンシァン・レジームとフランス革命』で知られるフランスの思想家アレクシス・ド・トクヴィル(一八〇五‐五九)。デモクラシーのもとで生じる社会と政治の変容に透徹したまなざしを向ける彼は、人間の未来をどう考えていたのか。生涯いだいていた憂鬱な感情を手がかりにして、今に生きるその思想を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 『アメリカのデモクラシー』を読む前に、トクヴィル案内として読んでおこうと思っていた一冊。
    トクヴィルは文明化・民主化された18世紀のアメリカで、社会体制が個人に与える心理的影響に気づく。アメリカに住む人々の"奇妙な憂鬱"、それは一見自由で平等な生活のようで、満たされることのない物質的野心にたえず追い立てられる焦燥感ともいえるものだった。
    穏和・優しさというのも、トクヴィルによるとデモクラシーに生きるアメリカ人たちの特徴だそうだ。そう考えると、『穏和で優しいひと』なんて、飼いならされた性格だととらえられなくもない・・・。

    「都市や農村、また学校や病院などさまざまな社会制度は、それぞれかつて保持していた独立した意志を失い、「行政はフランス人を被後見状態においた」とトクヴィルは言います」
    この独立心喪失は日本のさまざまな社会問題を彷彿とさせる。
    現代日本の問題の多くはデモクラシーに起因しているのかも・・・。

    『卑小な安楽』、『虚栄心』『羨望』、聞いていれば耳が痛いですが、社会と闘い、貴族的な人格を築き上げようする人にはおススメ。
    トクヴィルを読むことは、社会が個人に与える心理的影響を考える足がかりになるかも。

  • 革命後のフランスに生まれ、アメリカを旅して『アメリカのデモクラシー』を書いた思想家、トクヴィル。


    「社会が画一的になるにつれて、人はどんなにわずかな不平等にも耐えられなくなる」。

    人間は平等になればなるほど、小さなことに憂鬱を感じるようになる。利益を求めれば求めるほど、得られないことに落胆し、他者を妬むようになってしまう。トクヴィルは、アメリカ旅行のなかで、そうした心情を現地の人々に見出していく。

    新しいデモクラシーの見聞録・未来予想図と読まれがちな『アメリカのデモクラシー』とは、実は、人間の気持ちの観察記録かもしれない……読後に感慨を新たにさせられた。

    人間は、不平等に耐えられない。しかし平等は憂鬱さを必然とする。
    ではどのように憂鬱さとうまく関係を結んでゆくべきか。
    トクヴィルは、宗教や名誉、伝統といった内面的な「形式」にひとつのヒントを見出してゆく。

    彼が旧世界と新世界を往復するなかで注目するのは、「平等とは何か」というテーマ。
    革命や、アメリカ合衆国の成立という事件を読み解く中で、『アメリカのデモクラシー』『旧体制と大革命』という二大著作が現れてくるが、本書はその概要を紹介する入門書ともなっている。

    デモクラシーといえば制度やシステム論に陥りがちだが、そのエートスと問題を探究したトクヴィルならでの眼差しをあざやかに浮き彫りにしてくれる本書は、議論をもう一度人間の問題として提示してくれる。類書が少ないなかでは、手頃な一書。

  • まず驚くのが1950年生まれの著者がトクヴィルを知ったのは大学院に入ってからという事である。つまり、1960年代までは日本では殆ど知られていない存在だったという事だろう。という意味で、本書において興味深いのは終章で述べられる明治以降におけるトクヴィルの日本での受容過程である。そもそもトクヴィルは日本人なんか眼中になく、全く無視して民主主義を語っているのだが、その日本人がトクヴィルから学べるものはなんなのか?その問いに対する答えは明確ではなく、封建制や一君万民等々を持ち出して、日本と欧米との類似性を列挙し、適用可能性に触れるに留まっている。トクヴィルに限らず、日本人が西洋思想を学ぶ意味や意義や方法について考えさせられる。

  • 深い深い本であった。
    現代の憂鬱の起源を探る本だから、簡単であったはずはないのだが。
    最初、結社の必要性を説いたフレーズを探してしまったのだが、そんなに簡単なものではなかった。
    でも、なんとか読みこなすことができて、良かったと思う。

  • セカイ系的な感覚(人間一般と個人があり、その中間がない)はデモクラシーにその萌芽があったのではないか

  • トクヴィルという人物に寄り添うように、彼の旅とともに思想を追っていく、知的好奇心をそそる一作。新書にするのはもったいない。トクヴィルの後世への影響をもうすこし詳細に論じてほしかった。なぜなら彼の指摘は、現代こそ活きるのであるから。

  • 大学の講義を聴いているみたいな本だなあ。と思ったら大学の講義がもとになった本だった(あとがきに書いてある)。
    そして大学の講義のようだ、ということは必然的に次のような性格を持つと思われる。
    まずテーマとなっている「トクヴィル」についてある程度の関心と知識を既に持っていることが前提となるということ。具体的にはフランス革命前後のフランス開拓時代のアメリカ、民主主義成立などについて歴史的な見通しが既にあることなどがこの本を読む前提になります。
    言い換えれば文系で難関国公立大学に合格するくらいの知識的前提がないと読むのは難しいということになります。
    従って本書はトクヴィルについての入門書、ではなく解説書と言えます。
    だから僕には少々難しい本でした。別の入門書を読んでからならもっとおもしろく読めたように思います。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784004312680

  • トクヴィル個人の伝記ではなく、
    トクヴィルの思想を順を追って紹介する一冊。
    向き不向きがあるのか、内容が難解で、
    正直言ってあまり理解できなかったが、
    「平等」に関する記載は多少興味がそそられた。

  • 「アメリカのデモクラシー」の著書として知られるトクヴィルはフランス革命直後の1805年にフランスで生まれ、外務大臣にもなっていた!驚き。いまから200年ほど前の人でありながら、「デモクラシーの時代には特に専制は格別に恐るべき」「多数の圧政」という問題意識を持っていたとは、その慧眼ぶりに驚きです。トクヴィルの両親がフランス革命に翻弄された時期の人でありながら、この現代性を見るにつけ「市民が楽しむことしか考えない限り、人が娯楽に興ずることは権力にとって望ましい。権力は市民の幸福のために喜んで働くが、その唯一の代理人、単独の裁定者であらんとする。」正に至言です。アリストクラシーからデモクラシーへと価値の転換が行われつつある時代に生きたトクヴィルの民主主義に対する考え方は、私たち以上に客観性があるように思いました。

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著者プロフィール

京都大学人文科学研究所教授/京都芸術センター館長。一九五〇年、滋賀県生まれ。一九八〇年、京都大学大学院文学研究科修了。専門は知識社会学専攻。著書に『理性の使用│ひとはいかにして市民となるのか』(みすず書房)、『トクヴィル│現代へのまなざし 』(岩波新書)他。二〇〇九年より、京都芸術センター館長。

「2014年 『継ぐこと・伝えること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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