世代間連帯 (岩波新書 新赤版 1193)

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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311935

作品紹介・あらすじ

「おひとりさまの老後」のシナリオは、ロスジェネ世代には通用しない?団塊世代は、年金を食い逃げして、逃げ切るのか?とかく対立が煽られる世代の違いを超え、本当に安心できる社会を求めて、社会学者と政治家が労働、教育、子育て、住宅、介護などの課題と解決策を語り尽くす。

感想・レビュー・書評

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  • おもしろく読みました。久々に頭を動かした感じ。世代間の対立を煽って、問題の解決から目を逸らせるような傾向に否を唱えている。みんなが安心してボチボチ暮らしていけるような社会を目指そうと。若者だっていつまでも若者ではいられないのだし、『おひとりさま』に書かれたような老後を現在の若者世代が送ることはできない。となると、「連帯」していくしかないわけです。社会システムの改革はもちろんのこと。性差別、民族差別、そして最後に残る年齢差別をどうクリアしていくかも、重要な課題です。また、家族単位でものを考えるのがヤハリもう限界だと思う。ツライこと(ばかりじゃないだろうけど、貧困、介護、暴力など)を家族内で囲いこめるほどのパワーが「家族」システムにはもうないし、家族でない単身者が今後は増加する一方だ。必要なときに、必要なだけの助けを手に入れるためにも、「連帯」していかなければならず、そのためには、つらくなる前から連帯できる可能性が開かれておらねばならず、となると、まず、ツライ人が情報を発信してそれをキャッチできる仕組みが必要だとおもうけれど、そのような仕組みの現状がものすごく知りたいと思って調べでもしない限りイマイチ知らされておらず、その辺から手をつけていかないとなと思います。

  • 161頁の「賢い消費者にならないと、よいサービスも受けられないのにね」という発言とともに、203頁の「イケイケでなく、分相応にいこう」という下の世代の感覚を肯定する上野の立場について読んでいて考えた。前者の部分は、高齢者のうち特に女性に向けての発言であるが、このような賢い消費者になるべきということと、分相応でよいということが相反することのように、今まで捉えられてきたのではないかと感じる。つまり、賢い消費者になる、ということが自分個人の利益のための行動のみを優先するような考えのみ、つまり、集団としての利益を考えないようなものとしてであったのではないか。また、分相応ということが、自分個人の利益をもある程度は放棄するようなものとして理解されて、その目的がこちらも集団としての利益を目指すものと捉えられてなかったのではないだろうか。自分が損をしているかもしれないけれども、高望みはしない、今あることで満足したほうが安全だという考え方は、上野がこの本で主張していることでは決してないだろう。
    何のための世代間連帯なのかを改めて考えるために、今の状況と比較しながら読むと、では自分は何ができるか、何を学ぶ必要があるかなど、今なお読者を挑発する内容をもつ本だと感じる。
    星を一つ減らしたのは、対談で構成された本のためか、参考文献一覧がなかったため。

  • 2度も読んでしまった。よかった。
    社会保障と暮らし方のことが横断的に、政策提言も含めて書いてあってよかった。

  • 強烈な個性をもったお二人様の対談集。

    ものすごく要約すると「(共依存関係に陥ってしまいがちな)『家族』単位ではなく、自立した『個』を単位とする社会制度への転換の徹底こそが、この国の抱える医療や高齢化社会の問題、そして根底にある貧困問題を解決する道筋となるはずである。そして世代間連帯があってこそ、この変革は実現するはずだ。」という主張をしている。。ようだ。

    空虚な「あるべきだ論」ではなく、現実に即した説明なので極めて明快。

    「どん詰まり感」を強く感じているこのごろ、「負け組男子」としても未来への展望が少し開けたような気がした。

    (Z市図書館蔵)

  • この本に一貫して流れるのは、批判の精神です。ですが、単にないものねだりや相手をけなすだけの非生産的な批判なのではなくて、学術的な見解や仮説を現場で実際に経験してえたものに基づいている批判であるため、現在取り巻いている社会的問題への脱力感にも似たあきらめた感覚を打ち砕くだけの新しい選択肢を与えてくれる良書です。

    しかし、それは一方でかなりの専門知識をこの本は読者に求めているとも言えます。その専門的知識というのも、私自身が介護を必要としている親族をもっていないことに加え、子育てや教育をどうしていくべきかを考える子どもを持たないが故の浅はかな知識しかないがために感想も薄っぺらにならざるをえない当然の帰結を迎えているところは本を紹介する側にいる人間としてはふさわしくないとさえ言えるかもしれません。

    後期高齢者医療制度(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d.html)、介護保険制度、ホームレスやネットカフェ難民、派遣村など、確かにこの国に住まい、住み続けていくために必要なセーフティネットがあらゆる世代に悪影響を生み出していることへの危機感は私にもあります。しかし、仕事やニュースを通じて得る感覚というのは、日本における相対的貧困率が15.7%をこえた(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/h1020-3.html)とか、母子家庭の貧困率の高さなどを、全国レベルのデータを国際比較した数値や順位からでしか実感できていないのです。

    しかし、この本で上野千鶴子氏(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/teacher_detail.cgi?id=121)と辻本清美氏が戦わせている議論というのはあきらかに現場の目線で、行政と民間の役割(責任)分担の境界線をどうするか、そしてそれを実現していくためにどうすべきかを熱く語っています。時に学術的見解を披露する上野氏を現実問題として可能かどうかを冷静に語る辻本氏がいます。その逆もまた然りです。

    自分が関わる仕事の中でも、現場で子育てサークルとして活動されているお母さん方とお話をすることがあります。その彼女達も単に預ける母親からは子どもが好きだからやっているのを自分が利用しているだけという、ビジネスライクな姿勢で割り切るにはおかしい感覚で保育の依頼をしてくる親もいると聞きます。しかし、その子育てサークルに携わる彼女達は、自分たちの後につづく世代を育てて、サークル活動そのものを世代継承していくのが本来のあるべき姿だという将来像は持てています。

    何も子育てサークルに限らず、家族が他の主体を頼って生活していくのは自然の姿でありながら、それに社会的共生の意識がともなって育たない所に、市民活動や地域付き合い・隣近所の弱含みがあるような気がしてならない中、上野氏と辻本氏(http://www.kiyomi.gr.jp/)は『世代間連帯』という言葉をキーワードに挙げて、政治や制度、経済状態、社会環境の変動によって傷つき疲れた日本人と日本人のつながりを回復していく方策を考えていきます。話のテーマも仕事、住まい、家族、子育て、教育、医療、介護、税制など多岐にわたります。

    もちろん新書1冊で語れるものではないことは分かっていますがキャスティングと話の展開を導く構成の美味さもあって、中身の濃い1冊になっています。自分が感じた希望や考えを、より他の人の共感を生みながら巻き込んでいくアナログですが確実なヒューマンコミュニケーションを発揮できる来年になればと思い直したのでした。

  • [ 内容 ]
    「おひとりさまの老後」のシナリオは、ロスジェネ世代には通用しない?
    団塊世代は、年金を食い逃げして、逃げ切るのか?
    とかく対立が煽られる世代の違いを超え、本当に安心できる社会を求めて、社会学者と政治家が労働、教育、子育て、住宅、介護などの課題と解決策を語り尽くす。

    [ 目次 ]
    第1章 仕事、住まい(ちゃんと食べて生きていける賃金;よい柔軟化、悪い柔軟化 ほか)
    第2章 家族、子ども、教育(ライフスタイルとしての、おひとりさま;結婚があたりまえでなくなる ほか)
    第3章 医療、介護、年金(医療崩壊;保険制度をどうするか ほか)
    第4章 税金、経済、社会連帯(税率を考える;給付付き税額控除 ほか)
    第5章 世代間連帯(社会を変える世代か?;手遅れにならないうちに ほか)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 全共闘世代の社会学者と、市民運動出身の政治家の対談。今の僕には、「社会」というものが、何だかとても遠くに感じられる。「社会連帯」が主題である。ますます隔絶の感、独りである。読んでいて、社会政策や社会設計ということが、或いはそれを語るということが、ひどく傲慢なもののように感じられた。社会学者が常に語る目的合理性に興味がない。上野の言葉の端々に、何故か、強者の説く自助の強制のようなものが嗅ぎ取られ、憂鬱だ。

  • 年金、福祉、など日本が抱える問題について
    社会学者と政治家が対談したもの。

    二人の対談から導かれたキーワードは
    個人単位の税システムの構築と世代間での連携、連帯意識の必要性。
    家父長制が崩壊したにもかかわらず昔の民法に縛られたシステムから
    個人(性別、年齢など関係なく!)単位で
    納税し、保険料を支払い、福祉サービスを享受する
    そんな新しい概念とシステムによって、改革ができると語られます。

    また、極度に資本主義・競争主義に走らされた結果として
    弱い者同士がいがみあう構造が生まれつつあるけど(←敵の思うつぼ)
    そうではなく、弱いものこそつながりあう必要があり
    特に世代を超えて連帯していくことが必要不可欠だそう。

    バブルを知らない世代はしらけている人が多いけど
    政治に、社会にもっと働きかけ、たたかいを挑み、
    権利を獲得せねばならない。という部分は、確かになぁと思った。
    選挙はちゃんと行くし、ニュースも見るし、でも
    市民が政治を変えられるっていまいち信じられないし。
    でも、それじゃあだめなんだよなぁ、やっぱり・・・という感じ。

    対談にはいろんなNPO活動の成功例とかも紹介されていて
    「まだ、今なら間に合う。早く、連帯しないと手遅れになる」っていう
    メッセージが強く押し出されてました。

    貧困についても色々と触れられてはいたのだけど
    湯浅さんとか雨宮さんとはまた違う目線で、ちょっと距離は感じた。
    (立ち位置からして当り前なんだけど)

    あと、どうでもいいけど、
    二人のしゃべり方がちょっと苦手で読みづらかった。。。

    内容的にはほんと、勉強になったなという感じ。

  • 上野氏の話は一世代上って感じだったけどこの本はそんなことがない。やっぱり遺物のような民法はなんとかして欲しいな。

  • 091125  社民党へ  即予約ed
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    後ろの章からで158-9まで
    『終末期医療 全国病院アンケート』 読売新聞 2008.7.27付
    『ジェンダーの危機を超える!』 青弓社 2006
    『消費社会から格差社会へ』 河出書房新社 2007
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    135,139,141,157,241,243
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    第1章
    仕事、住まい (ちゃんと食べて生きていける賃金 よい柔軟化、悪い柔軟化 ほか)
    第2章
    家族、子ども、教育 (ライフスタイルとしての、おひとりさま 結婚があたりまえでなくなる ほか)
    第3章
    医療、介護、年金 (医療崩壊 保険制度をどうするか ほか)
    第4章
    税金、経済、社会連帯 (税率を考える 給付付き税額控除 ほか)
    第5章
    世代間連帯 (社会を変える世代か? 手遅れにならないうちに ほか)

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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