自由論 (岩波文庫 白 116-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003900024

作品紹介・あらすじ

「本人の意向に反して権力を行使しても正当でありうるのは、他の人々への危害を防止するという目的での権力行使だけである」。大衆の画一的な世論やエリートの専制によって個人が圧殺される事態を憂慮したJ・S・ミル(一八〇六―一八七三)は、自由に対する干渉を限界づける原理を提示した。自由について考える際の最重要文献の明快な翻訳。

感想・レビュー・書評

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  •  大学の授業にて、offendとharmの違いを知ったことを思い出しました。

    offend:相手の気分を害する
    harm:相手を身体的に傷つける

    harmは、いくら自由とはいえ許されない、とのことでした。同感です。

  • ミルの自由論を読んだのは学生時代以来。現代語訳になったためか、歳をとったためか、それほど突っかかることなく読み終えた。

    他者に危害を加えない限りは自由である、というミルの根本原則など現代にも通用する点は多い。やや個人の判断力に信頼を置きすぎな印象はあるが、全体として納得感のある内容だった。宗教との関わり方は歴史的な背景が分かれば違和感もない。自由に重きを置く考え方には大いに共感した。

    この本のもうひとつよかった点はあとがき。ミルのベンサムとの距離感がわかる。さらに、安易に現代にも通用するととらえて満足してしまうことへの警鐘ととれる表現がある。読んでよかった。

    ミルに限らずあらゆる主張には個々の歴史的な背景はあるわけであり、それに対しては敬意を表さねばならない。自分に都合のよい解釈をして満足する、他者に説明してしまうことには慎重であらねばならない。よい戒めとなった。

  • アバタロー氏
    1859年出版
    自由についての政治学に関する哲学的随筆
    功利主義を社会と国家に適用した

    《著者》
    1806年生まれイギリス哲学者
    英才教育を受け、ベンサムの後継者、ラッセルの名付け親

    《内容》
    ○キーワード 質的功利主義
    公正さの原理が欠落していると、従来提唱者のベンサムの功利主義をミルが新しい考え方に改良した
    功利主義の定番フレーズ「特徴は最大多数の最大幸福」
    社会の中で生きる1人1人の利益や幸福を数字にして、全部足した時の合計が大きくなればなるほど、それによって社会全体の幸福度を上げてより良い世界を目指して生きましょうという考え方
    紀元前から考え方はあり、体系化したのは18 世紀に活躍したベンサム、その弟子がミルの父だった

    1章 序論
    社会的自由の線引きをしたい
    (意見、感想、目的追及、団結)
    強制や罰を与えるのはだめだ

    2章 思想と言論の自由について
    少数意見が正しい場合もある
    間違った意見の中にも真理の一部分がある
    議論しなくなるはだめだ

    3章 幸福の一要素としての個性について
    行動していく自由も必要ではないか
    個性を伸ばすことが人間の成長
    それが個人の成長につながり、社会の発展に繋がると考えた
    他人に委ねてはだめ、自分自身で選択する

  • 本書の主題は社会の中での「自由」について。つまりは、社会が個人の行動を規制することができる状況において、何が個人の自由の領域であるか。言い換えると、社会は、個人の不可侵の領域として、どんなことをしてはいけないか。また、そのためにどんなことを推奨すべきかということを論じた本。
    1859年初版。

    その原理は、ある個人が、他者に危害を加えた場合やその危険が明白にある場合以外は、その個人の行為に関して何も強制してはならない、というもの。

    この原理とどのようにつながるのか理解が浅いが、
    言論の自由についても強く語っていた。言論を擁護する理論は、真理は批判を打ち負かすことでより確実になるし、偽の真理であれば批判によってより真に近づく機会を得れる。言論を封じることは現状を無批判に受容することで、人類の発達への危害である。まあこんな感じ。

    その文脈で、無批判の受容は無気力に繋がり、それもまた悪だとする。自分で選ぶことに重要性があり、選択を通じてこそ活力が生まれる。これはミルが考える自由人像の一つかもしれない。

    とはいえ、時代背景含むコンテクストへの理解は浅いし、疑問も多い(何が疑問かも怪しい)ため、全部的外れな見解かもしれない…

  • 「最近、ミルの『自由論』の翻訳でよいものが出た」と聞いたので、読んでみました。
    1850年代に書かれた本ではありますが、現代でも十分に通用する内容だと思いますし、リベラリズムやネオ・リベラリズム、リバタリアニズムを考える上でも参考になると思います。

    個人的には、ミルの『自由論』は、進化論との相性がいいな、と思いました。
    生物がこれほど多様なのは、遺伝子(DNA)がガチガチに固定されているわけではなく、変化をする余地(自由度)があるため。
    もちろん、遺伝子(DNA)の自由度のために淘汰されていった生物もいますが、生物全体を見ると、そのときどきの環境に応じて、より生き残りやすい形質が残ることになり、しかも、様々な形質が残ることになり、結果として、現在のように、多様でレジリエンスのある生物圏が形成されたわけです。

    人間社会と生物圏を、単純に対比させてよいものなのか、自分にはよくわかりませんが、それでも、生物圏を見ていると、ミルの『自由論』には、一定の説得力があるように思います。

  • 19世紀英国の思想家であるミルの代表作になります。本書は題名の通り「自由」について論じている本ですが、冒頭にも書かれているように、各人の市民的、社会的自由はどのように定義されるのか、を論じています。端的にいってしまえば、最終章に書かれている2つの格率が結論になります。第1に「個人は彼の行為が彼自身以外の何びとの利害とも無関係である限りは、社会に対して責任を負っていない」こと、第2に「他人の利益を害する行為については、個人は責任があり、また、社会が、その防衛のためには社会的刑罰または法律的刑罰を必要とする場合には、個人はそのいずれかに服さなければならない」ということです。そしてそれを説明するために、本書では思想及び言論の自由について、幸福の諸要素の一つとしての個性について、さらに個人を支配する社会の権威の限界について述べられています。

    本書を読んで感じたのは、特に宗教と政府による強制への反発(あるいは警告)でしょうか。そもそも本書は訳注に書かれていているように、「自由」と「強制」の境界線を議論している本で、干渉と不干渉の境界線の議論ではありません。つまりミルからすれば、たとえば宗教団体がある人(信者ではない人)に対して「これこれこういうことはしない方が良いよ」という忠告を与えること、つまり干渉すること自体は道徳的に全く問題がないけれども、自分の宗教で禁止されていることを信者以外にも「強制」することは極めて問題があるということになります。その禁止したいと思っている行為自体が格率1に抵触していないことが条件です。本書は訳注もとても充実しており、自由とはなにか、ということを考えるに当たってとても勉強になりました。

  • 内容の割に大変読みやすく、名著だと思った。
    あくまで合理主義の観点から考えているとはしつつ、ベンサムのような機械的な考え方ではなく、個人にフォーカスした人間的な考え方をしている点が受け入れやすかった。危害原理に対しては、パターナリズムや道徳の観点から反論も考えられると思うが、現代の自由論の基礎をなす考え方の一つだと思う。
    多様性について支持する考えがこの時代からあったことにとても驚いた。

  • 他者危害原則(Harm principle)の出典として有名な言わずと知れた名著。自由論についてゼロベースで論理的に述べられているのが特徴。以下に、本書を実際に読んで印象的だった点を三つ述べる。

    ・ミルの自由侵害の範囲は法的刑罰のみを指していない。そこには政治的抑圧のみならず社会的専制、つまり世論による圧力のようなものも含んでいる。ミルによると、支配的な意見や感情の専制は政治的抑圧と比較し逃れる手段が少なく、生活の隅々に深く入り込んで魂それ自体を奴隷化する恐れがあり、これらからの防護は人間生活の健全な状態にとって必要不可欠である、という。特に「協調」が重要視されるアジアにおいては社会的専制の作用は頻繁に観察されるが、そこには個人的選好の押しつけや非寛容的態度も多く含まれ、それを問題視すらしていないようである。言論の自由として許容されるべきもの、社会的専制からの保護を目的として許容されるべきでないもの、これらの境界について今一度考える必要があるように感じられる。

    ・思想と討論の自由および他者危害原則に共通して存在するミルの考えとして、自己の徹底的な相対視の姿勢が存在している。人は概して自らの意見や感情を絶対視し、他者にも適応可能であると考えがちであるが、ミルはその点で徹底的に謙虚であり、この姿勢が自由への考え方に繋がっている。一方で現代社会では、賭博、薬物などの依存症に関してパターナリスティックな姿勢を正当とする考えが主流であり、この点ではこれらの自由をも守られるべきとするミルの主張はやや極端なものに感じられる。もちろんいずれの意見も妥当性を持つが、個人的意見としては、ミルは個人の判断力をやや過剰評価しているように見られる。どれだけの人が合理的で妥当な判断をして日々過ごしているだろうか。

    ・第三章の「幸福の一要素としての個性について」は突然自己啓発のような様相を帯びる。しかも自己啓発としては極めて現代的でかつ説得力があり洗練されている。この章だけを自己啓発本として出版しても、近年ブームとなっている自己啓発本よりよほど読む価値のあるものとなるだろう。

  • 2020年の訳なのでかなりよみやすい。津村のよみなおし世界文学のおすすめ本の1冊で、文学書ではないが読みやすい。実例はキリスト教に関する者も多いがそれ以外のものもある。実例があるところはわかりやすい。常識の範囲で論を追っていけるので理解しやすいと思われる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738938

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