インディアスの破壊についての簡潔な報告 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003580011

作品紹介・あらすじ

キリスト教化と文明化の名の下に新世界へ乗り込んだスペイン人征服者によるインディオの殺戮と搾取-。残虐非道が日常化した植民地の実態を暴露し、西欧による地理上の諸発見の内実を告発した植民地問題の古典。十全な解説を付した改訳決定版。

感想・レビュー・書評

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  • インディアスの人々は悪意や二心を持たない。きわめて恭順で忠実な民。謙虚で辛抱強く温厚でおとなしく、争いや騒動を好まない。口論したり、不満を抱いたりすることもなく、怨みや憎しみ、復讐する気持ちを抱くこともない。インディアスの人々は身体が細くて華奢で、ひ弱なため、重労働に耐えられず、病気に罹るとたちまちに死んでしまう。キリスト教徒(スペイン人)はそうしたインディアスの人々を男女・子ども合わせて1200万以上、残虐非道な形で殺害した。インディアスの人々の方からキリスト教徒に害を加えたことは一度もなかった。インディアスの人々に神の存在を知らせ、キリスト教に導く絶好の機会だったのに、彼らから救いの光を奪ってしまった。カルロス5世陛下がこれら悪事を根絶され、神が陛下に授けられた新世界を救済なさることを期待する。ラス・カサス
    ※虐殺のあった地域。エスパニョーラ島(現ハイチ&ドミニカ共和国)、ジャマイカ、キューバ、ユカタン、グアテマラ、ニカラグア、ベネズエラ、ペルーなど。

    **以下、閲覧注意**

    首枷をはめて重い荷物を背負わせ、疲れたり気を失ったりすると、鎖を外すのが面倒なので、首筋辺りに剣を振り下ろし首を刎ねた。大勢の人の両手を切断し、それを縄に括り、横にわたした長い棒にぶら下げた。棒には70組の手がぶら下げられていた。大勢の女性や子どもの鼻を削ぎ落した。人々を殺してはその肉を猟犬のエサとして互いに売買した。

    子どもや老人だけでなく、身重の女性や産後間もない女性までも、見つけ次第、腹を引き裂き、身体をずたずたに斬りきざんだ。母親から乳飲み子を奪い取り、その子の足をつかんで岩に頭を叩きつけたキリスト教徒もいた。絞首台を組立て救世主と12名の使徒を称え崇めるためだと言って、13人ずつ1組にして絞首台に吊り下げ、足元に薪を置き、それに火をつけて彼らを焼き殺したキリスト教徒もいた。ある邪悪なキリスト教徒はひとりの娘を犯そうと思い、彼女を無理やり連れ去ろうとしたが、母親が娘の手を放さなかった。すると彼は剣で母親の手を切り落とした。しかし娘は言いなりなろうとしなかったため、娘を剣でめった突きにして殺した。

    ※ラス・カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』1552

    ※日本。豊臣秀吉、九州平定の折、キリスト教徒が九州で寺社の破壊や日本人の貧民を奴隷にして海外に売りさばいていることを知る。同年、キリスト教宣教師追放令を発布、キリスト教の布教を禁止した。1587

    *高知にスペインの軍船(ガレオン船)が漂着。スペインの軍船の水先案内人が口を滑らせる。「スペイン国王はまず宣教師を現地に送り込んで布教させてから征服する」。サンフェリペ号事件1596

  • 人はケダモノ同様の「獣性」を内在しているということを嫌というほど見せられた。。

    生命は「永遠」であることと、宇宙に「法」があることを信じたい。

  • ラスカサス司祭がフェリペ皇太子に向けて綴った報告書。これでもかという程、インディアス支配におけるスペイン人の残虐行為が記述される。エリアを変え、加虐者を変え記録された報告だが、行為の中身は殆ど変わらず、アッサリと読めてしまう。今から500年以上前に実際にあっただろう史実だ。当然、政治的作為にも注意して読まねばならないが、原住民の人口減は事実であり、それがウィルスに因るものもあるにはせよ、支配欲により暴力が暴走した事も事実だ。原始社会に近い程、支配欲は暴力によって成し遂げられる。だからこそ、国家概念や警察機能と法整備が必要だが、国家の相互承認が得られるまで、民族や領土をまたぎ秩序を保たんとしたのは宗教であるべきでは無かったか。しかし事態は逆であり、宗教が支配に利用された。
    目を覆いたくなるような報告。是非、目を通して欲しい。

  • 銃・病原菌・鉄に出てきたので、図書館で見つけて読んだ。なぜか「戦争は女の顔をしてていない」に続けてハードなものを読んでしまった。ショッキングすぎるので心に余裕があるときでないと勧めない。

    なんでこんなひどいことができるのか理解出来ない。
    征服者側からしたって、わざわざここまでしなくたって効率よく利益を享受する手はあったんじゃないか。
    そもそもゴロツキが派遣されていたのだろう。
    宣教という名目があって良心的な修道士がいただけ救いだ。
    魂の救済という言葉が白々しく感じられる

    虐殺と並ぶ程度に、布教が道半ばに終わったことが罪だとされているかのような記述が気に入らない

    これを読み終わってもう一度銃・病原菌・鉄を読もうかとも思う。

  • 255
    [キリスト教化と文明化の名の下に新世界へ乗り込んだスペイン人征服者によるインディオの殺戮と搾取―。残虐非道が日常化した植民地の実態を暴露し、西欧による地理上の諸発見の内実を告発した植民地問題の古典。十全な解説を付した改訳決定版
    。]

    目次
    インディアスの破壊についての簡潔な報告
    エスパニョーラ島について
    エスパニョーラ島にかつて存在した諸王国について
    サン・フアン島とジャマイカ島について
    キューバ島について
    ティエラ・フィルメについて
    ニカラグア地方について
    ヌエバ・エスパーニャについて
    グアティマラ地方とその王国について
    ヌエバ・エスパーニャ、パヌコ、ハリスコについて
    ユカタン王国について
    サンタ・マルタ地方について
    カルタヘーナ地方について
    ペルラス海岸、パリア海岸、トリニダード島について
    ユヤパリ川について
    ベネスエラ王国について
    大陸にあってフロリダと呼ばれる地域の諸地方について
    ラ・プラタ川について
    ペルーにある数々の広大な王国と地方について
    新グラナダ王国について

  • 大航海時代にスペイン人が南北アメリカ大陸に進出し、インディアスを虐殺し文明を破壊し尽くしたことことを簡潔に記した報告。

    この作品のなかには
    ①西洋社会による他文明社会に対する蔑視
    ②略奪することで財を形成を目指す、大航海時代の性格
    ③キリスト教がもつヒューマニズムが忘れられ、異教徒に対する激しい敵対意識

    →歴史的には反スペイン勢力(プロテスタント勢力、オランダ)などで盛んに宣伝されたことが解説に記載されているが、「キリスト教徒が異教徒に対して虐殺・略奪を繰り返した」という点は意図的に抹消されたという。
    いま、植民地主義に対しての激しい反発(コロンブスに対する否定的評価など)が観察されているが、本書を読むと反発する側の心情も分かる。

  • 人間がここまでの残虐性を秘めていることが恐ろしい。

  • 吐き気を催す邪悪。
    十六世紀におけるスペインのキリスト教徒が南北アメリカ及び中南米で行った殺戮の記録。修道士ラス・カサスがその虐殺を本国の王に伝え、やめさせるよう書き連ねた。
    海からやって来たスペイン人たちを、心から歓待したインディオ。スペイン人たちはその彼らを切り刻み、殺害し、苦しめ、拷問し、破滅へ導いた。彼らが持つ金が欲しかったがために。
    例えば人口三百万のエスパニョーラ島は殺戮が行われた後インディオは二百人に、人口五十万のバハマ諸島は、十一人にまで減っていた。
    インディオを奴隷として船に積み、水も食料も与えず、死ねば海へ捨てた。その後ろを行く船は、死体を追うだけで海図も羅針盤もなしに航海を続けられたという。
    また、インディオを兵士として使い、食料を与えない代わりに敵の体を食べる許可を与えた。スペイン人たちにとっては敵でも、インディオたちにとっては同族であるのに。
    それぞれの地域の領主や王に対しても暴虐な扱いがなされ、けれど敬意が表され彼らには絞首刑が行われた。ということはつまり、敬意を表されなかった普通のインディオにはそれ以上の惨たらしい殺され方をしたということであり……。
    おぞましい一冊。

  • 酷すぎる話で、これにより中南米は無茶苦茶にされ、その影響は今に及んでいると理解すべきだと思う。
    それでもこういう話は例えば日本の安土桃山の末期にもあっただろう。
    つまり、罪を犯した人間の子孫は、いつまでもその責を負わざるを得ないのだと。何で、いつまで私達が対応しないといけないのか?という疑問ももっともなようで、でもやはりそれに値する重罪を犯したんだ、ご先祖さまたちは。過去からの恩恵も罪も背負ってこその現在なんだと。

  • 残酷すぎて一度挫折。再チャレンジし読了。一度で済ませればよかったと思うほど残酷さに慣れない。インディオを人間として認識していなかったんだろうと思うけれど、それはアジアもアフリカも同じ認識だったんだと思う。怒りを覚えるだけでなく、こういうことを知らずして海外赴任したりヨーロッパに憧れたりしていたことを反省する。歴史は政治で書き換えられることも多くあるので、妄信にも注意が必要だと解説を読んで襟を正した。

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