後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784003311943

感想・レビュー・書評

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  • 内村さんもたいした人だ。でも、デンマーク空港のスパゲティが5千円というのを知らないだろうな・・

  • 読解に時間がかかってコスパ最強

  • 孫泰蔵さんの冒険の書に、後世への最大遺物が紹介されており、その流れで、改めて手に取る。64歳の内村鑑三が31年前の講演(1897年@箱根芦ノ湖畔)を振り返る改版に附する序、から引き込まれました。講演を本に起こしたものですが、なんとも素晴らしい本であります。北海道農学校出身の内村鑑三が語る北海道開発案(デンマルク国の話)も捨てがたい内容です(今からでも、この案を生かす形で北海道を開発できないものでしょうか)、どちらも★四つであります。

  • 内村鑑三 戦争の影響のなか、著者の事業観、国家復興論を中心とした名言満載の講演録

    「後世の最大遺物」は、社会をよくするために お金をどう使い、未来のために何の種を植えるのか、自分で考え、人々の反対に打ち勝って、それらを実行せよ というメッセージ

    「デンマルク国の話」は、戦争に負けても、善き精神を持った国民と未来のための事業があれば、国は亡びないというメッセージ


    お金と事業について
    *金は後世への最大遺物の一つであるが、遺しようが悪いと害をなす
    *金を使う力を持った人が必要〜事業とは金を使うこと
    *金を溜める人(金持ち)と事業家(金を事業に変ずる人)は別物

    思想と事業について
    *事業は 思想が世の中で実行されたもの
    *世の中で実行できないなら、思想を遺こすことにより、将来の事業をなすことができる

    文学は 国を改良するための戦争の手段と捉える点は かなり過激

    後世に遺す最大遺物とは
    *誰にでも遺すことのできる遺物
    *利益ばかりあって害のない遺物
    *勇ましい高尚なる生涯〜種々の不幸に打ち勝って大事業をなすこと


    デンマルク国の話 の結論
    *戦いは敗れ、国は削られ、国民は意気鎖沈し何事も手がつかないときに国民の真の価値は判明する〜戦いに敗れて精神に敗れない民が真に偉大なる民である
    *国を興さんと欲すれば、樹を植えよ、植林は建国である
    *善き宗教、善き道徳、善き精神さえあれば、国は戦争に負けても 衰えない








  • 勇ましい高尚なる生涯を過ごす

  • 後世への遺物として、
    ・ 金
    ・ 事業
    ・ 思想
    そして最大の遺物として、
    ・ 勇ましい高尚なる生涯
    がある。

  • 内村鑑三の講演のログミー。
    代表的日本人を読んでいこう、内村鑑三ブームになってるわけだがこれもまたよい内容であった。人は何を後世にのこせるのか?この問いがもうじき50になる自分も考えることがおおいのだが、その指針になった。
    人が残せるものはまず「お金」。お金というのは空気中に分散してるようなもので、世の中のいたるところにはあるが一箇所にまとめるのは難しい。でも人のなかにはやすやすとそれをやれる人がいるのでそういう人は才能をいかしてお金をあつめて残せばいい。次に事業。お金がなくてもお金のある人からお金をかりて事業をのこすこともできる。これも才覚があればやれること。このあたりが宗教家であるにもかかわらず現世利益をしっかり追求する点で自分が内村鑑三のすきな点。
    そして最後に、金も事業も残すには才覚がいる。才覚のない人は何を残すのか?内村のこたえは「生き方である」と。こういう人がいてこういう生き方をした、ということは誰もが後世に残せる。それも最大の遺産であると。

    私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望
    私は何かこの地球に Memento を置いて逝きたい、私がこの地球を愛した証拠を置いて逝きたい、私が同胞を愛した記念碑を置いて逝きたい。
    わが愛する友よ、われわれが死ぬときには、われわれが生まれたときより、世の中を少しなりともよくして往こうではないか」
    何を置いてわれわれがこの愛する地球を去ろうかというのです。そのことについて私も考えた、
    後世へわれわれの遺すもののなかにまず第一番に大切のものがある。何であるかというと金です。われわれが死ぬときに遺産金を社会に遺して逝く、己の子供に遺して逝くばかりでなく、社会に遺して逝くということです、
    富というものは、どこでも得られるように、空中にでも懸っているもののように思いますけれども、その富を一つに集めることのできるものは、これは非常に神の助けを受くる人でなければできないことであります。
    富というものを一つにまとめるということは一大事業です。
    妻はなし、子供はなし、私には何にも目的はない。けれども、どうか世界第一の孤児院を建ってやりたい」
    アメリカの有名なるフィラデルフィアのジラードというフランスの商人が、アメリカに移住しまして、建てた孤児院を、私は見ました。
    けれどもアメリカ人のなかに金持ちがありまして、彼らが清き目的をもって金を溜めそれを清きことのために用うる
    百万両溜めて百万両神のために使って見ようというような実業家になりたい。
    金を遺物としようと思う人には、金を溜める力とまたその金を使う力とがなくてはならぬ。
    金よりもよい遺物は何であるかと考えて見ますと、事業です。事業とは、すなわち金を使うことです。
    金のないものが人の金を使うて事業をするのであると申します。
    昨晩は後世へわれわれが遺して逝くべきものについて、まず第一に金のことの話をいたし、その次に事業のお話をいたしました。ところで金を溜める天才もなし、またそれを使う天才もなし、かつまた事業の天才もなし、また事業をなすための社会の位地もないときには、われわれがこの世において何をいたしたらよろしかろう
    私に金を溜めることができず、また社会は私の事業をすることを許さなければ、私はまだ一つ遺すものを持っています。何であるかというと、私の思想です。
    利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯
    今時の弊害は何であるかといいますれば、なるほど金がない、われわれの国に事業が少い、良い本がない、それは確かです。しかしながら日本人お互いに今要するものは何であるか。本が足りないのでしょうか、金がないのでしょうか、あるいは事業が不足なのでありましょうか。それらのことの不足はもとよりないことはない。けれども、私が考えてみると、今日第一の欠乏は Life 生命の欠乏であります。
    他の人の行くことを嫌うところへ行け。    他の人の嫌がることをなせ
    種々の不都合、種々の反対に打ち勝つことが、われわれの大事業
    邪魔があればあるほどわれわれの事業ができる。勇ましい生涯と事業を後世に遺すことができる。とにかく反対があればあるほど面白い。
    それよりもいっそう良いのは後世のために私は弱いものを助けてやった、後世のために私はこれだけの艱難に打ち勝ってみた、後世のために私はこれだけの品性を修練してみた、後世のために私はこれだけの義俠心を実行してみた、後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた、という話を持ってふたたびここに集まりたいと考えます。
    己の信ずることを実行するものが真面目なる信者です。ただただ壮言大語することは誰にもできます。

  • 「後世への最大遺物」
    人間は何の為に生きているのか、という普遍的なテーマに、何を残して死んでいくのかというところを切り口に語られたお話。
    自分は何を遺せるのか分かりませんが毎日を一生懸命に生きて、結果的に何かを遺せたらいいなと思いました。

    「デンマルク国の話」
    明治末期なのに既に環境問題を見据えて語られているお話。
    自然を壊すのは簡単だけど、もとに戻すのはすごく時間がかかり大変なこと。自国の復興が敵国に対しての一番の復讐になる。すごく建設的な復讐ですばらしいと思いました。

  • 古本屋で見かけて読んだ。明治27年に内村鑑三がキリスト教徒の集会で後世に何を残すかを講演した記録。わかりやすいし内容もすばらしい。後世に残すものは、金、事業(土木工事)、思想ときて、最後は「勇ましい高尚なる生涯」が最大という結論。キリスト教徒だから信仰とか伝道とか隣人愛の生涯かと思いきや、武士道とか意地とか義侠心の生涯を説いているのがおもしろい。
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    (p74から引用)
    しかしそれよりもいっそう良いのは
    後世のために私は弱いものを助けてやった、
    後世のために私はこれだけの艱難に打ち勝ってみた、
    後世のために私はこれだけの品性を修練してみた、
    後世のために私はこれだけの義侠心を実行してみた、
    後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた・・・
     
    (p70から引用)
    メリー・ライオン・・・(中略)・・・実に日本の武士のような生涯であります。彼女は実に義侠心に充ち満ちておった女であります。彼女は何というたかというに、彼女の女生徒にこういうた。
      他の人の行くことを嫌うところへ行け、
      他の人が嫌がることをなせ      
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    あとこれは主題とは直接関係ないが、高知出身の下女が三日月に豆腐を供える話がかわいらしい。webで調べたら栃木県の神社には残っているようだが全国的には廃れたかわいい風習。
     
    (p51から引用)
    その女は信者でも何でもない。毎月三日月様になりますと私のところへ参って「ドウゾ旦那さまお銭を六厘」という。「何に使うか」というと、黙っている。「何でもよろしいから」という。やると豆腐を買ってきまして、三日月様に豆腐を供える。後で聞いてみると「旦那さまのために三日月様に祈っておかぬと運が悪い」と申します。私は感謝していつでも六厘差し出します・・・

  • 内村鑑三の歴史に残る講和。日本の良心とも言える人物!

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著者プロフィール

1861年生まれ、1930年没。思想家。父は高崎藩士。札幌農学校卒業後、農商務省等を経て米国へ留学。帰国後の明治23年(1890)第一高等中学校嘱託教員となる。24年教育勅語奉戴式で拝礼を拒んだ行為が不敬事件として非難され退職。以後著述を中心に活動した。33年『聖書之研究』を創刊し、聖書研究を柱に既存の教派によらない無教会主義を唱える。日露戦争時には非戦論を主張した。主な著作は『代表的日本人』、『余は如何にして基督信徒となりし乎』など。
佐藤優
作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。現在は、執筆活動に取り組む。著書に『国家の罠』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。おもな著書に『国家論』(NHKブックス)、『私のマルクス』(文藝春秋)、『世界史の極意』『大国の掟』『国語ゼミ』(NHK出版新書)など。『十五の夏』(幻冬舎)で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。ほかにも著書多数。

「2021年 『人生、何を成したかよりどう生きるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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