- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003119143
作品紹介・あらすじ
芥川の死、そして昭和文学の幕開け-「死があたかも一つの季節を開いたかのようだった」(堀辰雄)。そこに溢れだした言葉、書かずにおれなかった物語。昭和二年から一七年に発表された、横光利一・太宰治らの一六篇を収録。
感想・レビュー・書評
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佐多稲子を本書で初めて知った。「キャラメル工場から」は昭和期の貧困家庭の少女の苦悩をよく描いている。中学生ぐらいの少女が工場に働きに出て家計を支えようとする姿は切実である。令和の一読者としては本作が貧困を基軸に書かれた小説に見えるが、これが「プロレタリア文学」と解釈される当時の時代であれば少し話が変わってくる。プロレタリア文学としてこの作品を読むとすれば、この少女の貧困の姿から同情や悲哀といった弱々しい感情を持つのではなく、社会変革への勇気や階級そのものへの思慮が浮かび上がるべきなのかもしれない。
小林多喜二の「母たち」はもっとその気が強いく、プロレタリア的だ。作中に描かれる母たちは社会主義活動によって投獄された活動家の母親である。特攻警察に対してその怒りをぶちまける母たちの口調、そして彼女らが示す憤怒といえる強い感情は、これもまた現代では見られないものだ。令和なら警察権力に対して怒鳴り散らす行為は気狂いとも思われかねない。しかし権力への服従と抑圧を良しとせず真正面から対峙する姿は、現代では過剰なほどに薄れすぎてはいないか。
「機械」、「いのちの初夜」は有名かつ名作で、これらの作品をまた読ませてくれる点で本書は素晴らしいが、もっといいことは前述のようなあまり知られていない作家や埋もれている名作に触れる機会をつくっていることだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『キャラメル工場から』は、作者である佐多稲子の境遇と重なる部分が多い作品。貧困や女性の労働について考えさせられた。
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岡本かの子と北条民雄の文体が良かった。女性作家を掘り下げていこうと思うきっかけをもらった。
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2017/03/05
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佐多稲子「キャラメル工場から」を読んで
罎洗う 水の凍えに ヒビ走り
抜けば風噛み 寒水に入る -
昭和初期の短編小説を集めている。昔、高校の文学史で、プロレタリア文学とモダニズム文学の時代と習ったが、それらに関わる作品が多く収録さえている。名前だけ知っている未読の作家が多かったが、さすがに秀作が集められており楽しめた。一番驚いたのは、二つの文学運動とは直接関係の無い北条民雄「いのちの初夜」である。癩病院を描いたこの作品は、プロレタリアも新感覚も吹っ飛ばす迫力がある。伊藤整「生物祭」、中島敦「文字禍」も面白かった。
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「日本近代短篇小説選 昭和篇1」 (岩波文庫)を読んだ。かなりの衝撃をうけました。昭和2年~昭和17年に発表された作品群ですが、どれをとってみても紛う方なき生命の叫びが読む者の魂を揺さぶります。とにかく「読むべし」ですね。収録作品は次のとおり。
平林たい子「施療室にて」、井伏鱒二「鯉」、佐多稲子「キャラメル工場から」、堀辰雄「死の素描」、横光利一「機械」、梶井基次郎「闇の絵巻」、牧野信一「ゼーロン」、小林多喜二「母たち」 、伊藤整「生物祭」、室生犀星「あにいもうと」、北条民雄「いのちの初夜」、宮本百合子「築地河岸」、高見順「虚実」、岡本かの子「家霊」、太宰治「待つ」、中島敦「文字禍」 -
昭和の作家たちの名作短篇集。岩波からだと今更感満載ですが、珠玉の作品ばかりなので、一読あれ。やっぱり昭和文学好きだな。暗いけど。