女子プロレスラー小畑千代――闘う女の戦後史

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000611756

作品紹介・あらすじ

日本の女子プロレス伝説のチャンピオン、小畑千代。女子プロレスはアメリカからもたらされ、日本独自の展開を遂げる。小畑は一九五五年にデビュー、力道山と同時代を生きた。知られざる女子プロの草創期、驚異の高視聴率を叩き出した初めてのテレビ放映、そして、基本条約締結直前の一九六三年に行われた日韓友好女子プロレス試合や復帰前の沖縄での興行など、豊富な歴史秘話やエピソードと共に描く、野心的に、自由に生きた元祖「闘う女」の肖像。

感想・レビュー・書評

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  • 小畑千代にはなにも罪はないのだが、とにかく文章が悪い。

    「焼夷弾は最初シュルシュルと青い火を出すが、それがやがて赤い炎へと変わり、雨あられのように降り注いではあちこちが燃え盛った。もう大丈夫、と思っておそるおそる外へ出た。と、そこに近くの畑へ焼夷弾が落ちた。バーン、と音がして、泥がはねてビシャーと顔についた。万事休す、もうだめか、と思ったが、幸いなことにその焼夷弾が燃え上がることはなかった。ふと見ると、脚がヒルだらけになっていた。川の中で吸い付かれたのだ。ぎゃーっ、とはらうと、脚は血だらけだった。」

    上記は本書内でわずか六行足らずなのだが、ここまで擬音や擬声語に頼るのも珍しい。引用箇所以外も似たり寄ったりの場面がある。
    上記だと「雨あられのように」という例えもどうかとは思うが、比喩のセンスもずっとこんな感じである。国語の得意な小学五年生くらいの、教科書で読み覚えたばかりといった定型的な比喩を堂々と繰り出してくる。いちばんひどかったのは「色とりどりのバラの花が道路中に散らばって、まるで花のじゅうたんのようになっていた」という、ほとんど同語反復しているだけの比喩である。子どもが書いていれば花マルがつけられるかもしれないが。

    とにかく異様なほどに表現力が拙いのである。小畑の盟友である佐倉を紹介する際に「紋切り型の表現でいえば『女豹』だ」と書かれているが、本書には紋切り型の表現しか出てこない。

    客観的な事実を淡々と記す時は(何年に誰々はどこでなにをした、というような)、特に問題はないのだが、著者の想像力が文章に落とし込まれた時は万事が上記のような調子で、いい年した大人が読むに耐えられる文章ではない。

    (プロレスラーを題材にしているからというわけではないが)スポーツ新聞的な文章なら、それはそれでいいのである。振り切るなら。
    本書は体言止めも多用しているけれども、体言止め自体が悪いわけではない。問題は、新聞に書かれているような文章とスポーツ新聞的な文章がごちゃ混ぜになっており統一感がなく、隙あらばギャーだのワーだのと叫び出すところである。プロレスに比して言えば、ガチンコとしてもエンタメとしても不満が残る、力もなければ技術も物足りない文章になっている。


    女子プロレスの黎明期における功労者という題材自体は良いと思う。
    なぜか本書内では表紙から奥付けまでどこを探しても記されていないのだが、雑誌「世界」で連載されていたらしい。この時点でふつうのプロレス本とは違うはずである。

    ただ、やはりというか推して知るべしというか、女性の権利闘争の話にはなる。
    女性が抑圧されていた時代に偏見や蔑視を乗り越えて闘った女性がいた、という食傷気味の物語に落とし込まれてしまっている。しかし、小畑本人にそのような意思があったかは甚だ疑問である。仮にあったとしても、それは社会全体における女性の地位向上などではなく、女子プロレスという世界における闘いに限定されていたのではないか。

    バー経営時の小畑が、男にかどわかされソープ嬢に身を落とすような不良少女たちに手を差し伸べていたという挿話も書かれており、これ自体は美しい物語だと思うけれども、これもジェンダー的な闘争意識というより、地元にいる面倒見の良いおばちゃんのようなものではないのだろうか。

    願わくば、この題材を他の書き手で読みたかったと思う。

  • ふむ

  • 感想を書いたはずなのに登録されていない…。

    私の記憶にある女子プロレスラーはマッハ文朱からだが、小畑千代はその前に活躍した、いわば女子プロレスラーの創始者?ともいえる人。
    TV中継もあったらしいが、残念ながら見ていない。
    引退宣言をしていないので、80歳になる今でも現役だという。もちろん試合はしていないけど…。
    最近は往年の選手がTVのバラエティ番組に出ているのをよく見るが、女子プロレスリングも昔と変わらず興行されているのだろうか?

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著者プロフィール

1968年東京生まれ。東京大学文学部卒業。ロンドン政治経済学院修士。朝日新聞編集委員。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に『コーヒーを味わうように民主主義をつくりこむ――日常と政治が隣り合う場所』(現代書館)、『ゆっくりやさしく社会を変える――NPOで輝く女たち』『女は「政治」に向かないの?』(以上、講談社)、『女子プロレスラー小畑千代――闘う女の戦後史』(岩波書店)、『不思議の国会・政界用語ノート』(さくら舎)など。

「2021年 『クラウドファンディングで社会をつくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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