学術出版の来た道 (岩波科学ライブラリー 307)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000297073

作品紹介・あらすじ

学術出版はその350年を超える歴史を経て、他の産業とはまったく異なる評価・価値体系を形成してきた。出版社が先導する動きに世界の科学が振り回される結果として生じている、学術誌の価格高騰や乱立、オープンアクセス運動、ランキング至上主義、データベースの苦難といった構造的な問題を、歴史的な視点から解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 学術出版全体の歴史や、現在の課題などについて概観して分かりやすく解説している本。
    「アインシュタインはピア・レビューが嫌い?」みたいな項目もあり、興味をそそられた。

  • 最近、エルゼビア等が刊行する専門誌の掲載料がバカ高いとネットで話題になっている。知人にも自然科学系の研究者がいるが、数十万円の金が飛んでいくのはざららしく、よく愚痴をこぼしている。学術の世界は業績があってナンボであるので、高いインパクトファクターのついた国際誌に掲載するためにはやむを得ない先行投資とされてきた。しかし、ここに来て、それが正しい形なのか、疑義が出ているのである。

    本書は学術出版の成り立ちからピアレビューの意義まで丁寧に解説してあり、とても興味深く読んだ。著者は出版者が営利を追求するのは自然なこととしつつ、そこに何かいびつなものがないか、問いかけてくるのである。投稿論文を書いたことがなかったとしても、世界の科学のあり方が見えてきて、非常に面白いのである。

    ただ、これは医学や化学、物理学などの自然科学系、それもPubMedに掲載されるような一握りの国際誌の話だろうと思う。国内の専門誌は、商業誌であっても掲載料など請求しないものがほとんどだろう。そこを区別しないで学術誌はすべて無料公開しろというのは、学術出版そのものの崩壊を招く。本書はもちろん、そんな主張はしていない。

    本書はまた、学術出版の形態の変化も追っている。その一つが掲載料を抑えたWeb版での論文無料公開である。この形態がどうなるのか、それはまだこれからである。科学の智慧をいかに共有して、次代につなげるかはとても大切なことだと思う。本書で学術出版を知り、また研究者がどのような世界にいるのかを知れた。

  • いつも大学図書館側の目線で見てしまいますが、研究者目線もしくはもう少し俯瞰的な目線で学術出版や学術情報流通の流れが書かれていて、興味深かったです。学術出版や学術情報流通について、様々な視座から考えるきっかけになる1冊だと思います。

  • 登録番号:0141902、請求記号:023/A77

  • 2023/01読了。学術出版を概観する内容で非常に興味深かった。

  • 勉強になりました。

  • 学術出版の現状の姿について、商業出版社、アカデミアの研究者、大学図書館、政府機関といったステイクホルダーの利害の観点からその変遷を解説している。ピアレビュー、商業誌と学会誌、ランキング、オープンアクセス、ビッグディール、論文レポジトリ、データベースといった学術出版を取り巻く様々な仕組みは、その登場や発展の歴史を持ち、かつ、科学の発展にとってというより、ステイクホルダーの利害の妥協点として存在していることがわかる。

    現在の様々な仕組みが、目敏い起業家や実業家といった商業出版社サイドから提案されたものが多く、アカデミアや政府が後手に回っていることは見逃せない。また、PMCへの論文登録義務化などは、アカデミアの草の根運動ではなく、政策や論文配分機関の施策として実現している。これらの例からもわかるように、研究者個人の研究活動を規定する(少なくとも影響を与える)環境を構築するのは、必ずしもアカデミアではなくその外部に依ることが極めて大きい。

    ガーフィールドによる引用データベースの構築と、日引用数やインパクトファクターの分析は、現代的な計量文献学の先駆的な仕事としても重要であった。それが研究者の評価に使われたことで、様々な歪みが生じているにしても。

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