時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち (岩波科学ライブラリー)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296427

感想・レビュー・書評

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  • 科学者の研究に対する熱い情熱が伝わってきて、とてもいい本でした。
    何かに打ち込めるというのは素敵だと思いました。
    日本の湖の地層研究が、標準時間の資料となっているというのは、初めて知りました!
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • この物質は何年前のものか、それは炭素14の濃度から計算されている(放射性炭素年代測定)。
    そのための各年の炭素量をはかり「ものさし」をつくる必要がある。
    現代から1万年前までの「ものさし」は1年1輪増える「年輪」からすでにつくられている。
    本書は、1万年より前の時代の「ものさし」を湖の底の土……体積した「年稿」からつくりだす物語。
    「水月湖の年稿のデータを用いた較正曲線の研究が知りたい」という人には本書は最適かもしれないが、そのようなあまりにもニッチな情報を知りたいのではなく、人類と気象の研究が知りたい、という自分のような一般人には、本書と同じ著者『人類と気候の10万年史』の方が面白い。
    (『人類と気候の10万年史』から水月湖の研究のみを抽出したような内容でした)

  • 福井県にある「三方五湖」。その中で最も大きな湖である「水月湖(すいげつこ)」の底には7万年以上の歳月をかけて積み上がった「年稿(ねんこう)」と呼ばれる縞模様が造られていました。
    本来長い年月の過程のなか、地形の変化や気候の関係で年稿は大きな影響を受けます。しかしこの「水月湖」はいくつかの条件が奇跡的に重なり、連続的に年稿が形成され続けました。その結果過去5万年の堆積物が蓄積され、地球の歴史を知る貴重な“基準=標準時計”として2013年に世界で認められることとなったのです。
    本書は20年を越える地道な研究内容と成果、世界で評価されるまでに至った軌跡を紹介した一冊です。

    岩波科学ライブラリーということもあり学術的な用語は排除し、中高生でも分かる平易な言葉でもって内容の濃い最新の研究に触れられます。この研究は自然科学分野や考古学分野の礎となると思うと今後も楽しみであると同時に、国として研究の分野を支える基盤が一日も早く整ってほしいと願わずにはいられません。

  • 一気に読んだ。新聞広告で見つけて、即購入と思っていたのに、なかなか書店で見つけられなかった。昨日やっと、久しぶりの河原町丸善で購入。福井県にある水月湖。湖底は酸素不足のため生物が生息できないという。また、湖底が深いため水面の波の影響なども受けにくい。したがって、乱れることなく堆積が進んでいく。さらに、近くにある活断層のためにときどき沈降が起こり、堆積物のために湖底が浅くなるということもない。などなどの環境がそろったおかげで、ボーリングをすることで、5万年にも及ぶ堆積物の縞模様(年縞)が見つかる。季節によっての堆積物の種類の違いによって、年輪のようなものが出来上がる。それを利用して、炭素同位体だけでは決めきれない年代の特定にあたることになる。イギリスやドイツの研究者が共同で作業を進める。そのプロジェクトの様子が当事者の目を通して描かれている。実におもしろい。安田喜憲先生がはじめて来られた環境考古学というテーマが研究対象としていま一番おもしろいのではないかと思っている。その流れの中にある年縞(このことばが、一発で変換できるようになる、つまり一般的な用語になる日が早く来るとよい)、これを活用することで、1万5000年前の出来事であるというとき、1000年ほどの誤差があったものが、いまでは100年未満になっているという。技術の進歩に伴って、これがもっと小さな数字になる日も来ることだろう。本書をワクワクしながら読んだのだけれど、ところで、この誤差が小さくなるということで、どんなご利益があるというのか。結局ちょっとつかみきれないままでした。(宇宙の年齢でいうと、120億年とか、150億年とか言っていたものが、137億年と言われると、おお世の中、進んでいるなあ、と感じることはあります。)

  • 14Cを用いた年代測定の精度を確保するためのキャリブレーションが必要で、そのために年輪、サンゴ、鍾乳石等があるが、決定的なものではない。
    水月湖から採取した年稿を解析することではるかに精度を上げる、そのプロジェクト。

    過去の失敗、改良、粛々と継続することによる成果…

    読了60分

  • 『#時を刻む湖-7万枚の地層に挑んだ科学者たち』

    ほぼ日書評 Day713

    Day712と同著者、同テーマでの1冊だが、少し前の刊行ということもあってか、未来に思いを馳せる哲学的な内容は少なく、理論検証や標準化の経緯に関する具体的な記述ボリュームが多く、それはそれで興味深い。

    化学研究というものが、いかに地道な作業に裏打ちされているかが、よく理解できる良書である。

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  • さらっと書いてあって専門知識なくてもさらっと読めるけど、えげつないことやってる。本当にさまざまな方法で「数える」ということを通して、世界標準を作ること。個人的には最後のコンラッド・ヒューエンについて書かれたところが特に好きだった。

  • 三方五湖のうち一つ、水月湖の湖底の堆積物が、地質学の年代決定のための世界標準になるまでの過程が記録された本です。いやこれ面白かった。
    水月湖の堆積物は一度世界標準になるチャンスを逃しましたが、20年の歳月を経てついに世界標準になるという、ドラマチックな話がとても面白く書かれています。
    とても面白いんですが、でも実際の研究は地味な作業をひたすら繰り返す、根気のいる作業の繰り返しというコントラストが良いですね。最後に残る課題(誤差)をクリアするところも良いですね。

  • 水月湖の「年縞」は、1年に1枚形成される縞模様の地層である。年縞を数える緻密な研究の積み重ねで、世界の標準となる時間尺度が明らかにされた。研究活動の喜びや焦りなど、科学者の心情も追体験してしまう一冊。

  • 福井県年縞博物館

    環境系に詳しいまさどんに水月湖の事を教えてもらった
    世界基準になるようなものが福井県にあるとは!
    7万年の蓄積があるなんて想像を絶しますー

    博物館は郊外にも関わらず立派な作りで
    積雪や水害も考えて設計されたピロティ
    そして45mをそのまま展示だから長〜い!
    鉄骨も使いつつ木の梁が美しい建物でした!

    展示で気になったのは温暖化の事
    過去にも繰り返された気温の波が来ているんだな

    炭素で時代を測る事も年縞で詳細が分かるようになったようです
    最近の研究なので今後もいろんなことが発表されそうですね
    シマシマすごーい!

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。1992年、京都大学理学部卒業。1998年、エクス・マルセイユ第三大学(フランス)博士課程修了。Docteur en Sciences(理学博士)。国際日本文化研究センター助手、ニューカッスル大学(英国)教授などを経て、現在は立命館大学古気候学研究センター長。専攻は古気候学、地質年代学。趣味はオリジナル実験機器の発明。主に年縞堆積物の花粉分析を通して、過去の気候変動の「タイミング」と「スピード」を解明することをめざしている。

「2017年 『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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