陶酔と覚醒〈沢木耕太郎セッションズ〈訊いて,聴く〉〉

著者 :
  • 岩波書店
4.05
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000280792

作品紹介・あらすじ

「する者」の恍惚と「みる者」の覚醒。旅と冒険とスポーツを巡る十の対話。山口瞳、市川崑、後藤正治、白石康次郎、安藤忠雄、森本哲郎、岡田武史、山野井泰史、山野井妙子、角田光代。エッセイ「「みる」ということ」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 沢木耕太郎の2020年発行の4冊の対談集の、3冊目のもの。スポーツがテーマであるが、実際にスポーツをやっている人ばかりではない。市川崑は、前の東京オリンピックの記録映画の監督だし、後藤正治は沢木耕太郎と同じノンフィクションライターであり、スポーツに題材をとったものを多く書いている。
    スポーツをやる人との対談もある。元サッカー日本代表監督の岡田さん、登山家であり、また、沢木耕太郎の「凍」という作品の対象である山野井夫妻など。
    巻末のエッセイに、「みる者」と「する者」というテーマで沢木耕太郎は一文を書いている。「みる者」であることへの苛立ちがノンフィクションを書きながら感じていたが、それがどこかで薄れていったという、個人の感覚に関するものだ。
    これに倣って言うならば、本対談集は、「みる者同士」および、「みる者とする者」の二種類の対談が収められている。それは、どちらも興味深い。

  • セッションズも3冊目。今回の対談相手の中では、白石康次郎さんや山野井夫妻のような死と隣り合わせの活動をされている方との対談が印象的。
    書籍のために新たに対談したものではなく、過去に別の媒体に収載したものを編集し直している。そのため、収録時期が10年、20年も前のものが多い。編集上あえてそうしていると思うけど、対談相手のその後の言動を読者は知ることができる、もしくは知っている。そこで初出時とは違う読み方ができるかもしれない。
    沢木さんの巻末エッセイ、「みる」立場から「する」立場への思いが語られる。これは沢木ファンには興味深い内容だった。一読の価値あり!

  • 沢木 紀行文というと勘違いする人がいるのですが、何か人と違った面白いことをやって、それを書けば紀行文になるというものではない。失礼な言い方かもしれないけど、森本さんの『サハラ幻想行』も、たかだか七日間の話でしょう。厳密に言えば六日間。でも、そのたった六日間の旅を一年半もかけて三百五十ページの本にまとめた。タッシリの岩絵を見に行くという動機と行為自体には、若干、冒険的な要素があるけれども、森本さんの旅そのものは、本当の意味での冒険ではなかったはずです。
     重要なことは、旅で受けた刺激を自分でどう消化し、それにどのようにリアクションしていくか、だと僕は思います。そして、これまでの自分の過去の体験や記憶を取り出して、その旅に重ね合わせるということではないでしょうか。だから、どちらかと言えば受け身です。紀行文というのは基本的には受け身の文学だと思う。
     芭蕉の『奥の細道』も旅を終えて何年か経ってから、ようやく完成しているでしょう。その間、芭蕉はずっと考えていたわけですよね。句もどんどん変化させていった。なかったことまで書いてしまってもいる。でも、旅が終わって一年半、二年と考えつづけている間に変容していくものが、いっぱいあると思うんですよね。
    森本 確かにそうですね。
    沢木 そういう中で紀行文というのは初めて成立するのであって、旅そのものではないわけです。僕が死ぬときになって、その時点で、もしいくつかの旅の作品が成立しているとすれば、それは僕が何年かにわたってずっと考えつづけてきたということだと思います。もちろん、旅したときのリアクション、感情などはまめにノートに書き留めていますが、それを正確に再現しようと思っていても十年考えつづけていくと、やはり変化していきます。いや、育っていく、といったほうが適切でしょうね。そうしたものを今の若い読者たちが読んでくれているのだと僕は思っています。

  • 2022年1月20日読了

  • この本は、約3ヶ月前の私の50歳の誕生日に購入し、ベッドで就寝前に少しずつ読んでいた。しかし、つい数日前に山野井泰史・妙子夫妻の「凍」を読了し、一気に150ページぐらいから最後まで読んだ。森本哲郎、岡田武史、山野井夫妻、そして角田光代との対談を一気に読んだことになる。個人的にサッカーが大好きなので、岡田武史との対談はとても興味深かった。そして「凍」を読んだばかりなので、山野井夫妻とのパートもとてもおもしろかった。しかし一番感銘を受けたのは角田光代とのパートだったかもしれない。ボクシングがテーマで、「一瞬の夏」のカシアス内藤の息子の話まで出てきて、また角田光代の書いたボクシング小説もぜひ読みたいと思った。最後に沢木耕太郎自身が記している「みる者」「する者」という視点もおもしろいし合点がいくものだった。沢木耕太郎の奥深さを再認識するものだった。

  • 相手につい本音を語らせる対談集。好きです、ここ感じ。

  • 読みたい本→『遠いリング』『サハラ幻想行』『垂直の記憶』『空の拳』
    【セッションのお相手】
    山口瞳
    市川崑
    後藤正治
    白石康次郎
    安藤忠雄
    森本哲郎
    岡田武史
    山野井泰史
    山野井妙子
    角田光代

  • 読了 20200717

  • 角田光代とボクシングの話しで盛り上がる著者。
    建築家の安藤忠雄氏、山口瞳氏の対談が印象に残った。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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