唐代伝奇小説論――悲しみと憧れと

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000259545

作品紹介・あらすじ

人々は、憧れを抱くゆえに、現実の中で、多くの悲しみに遭遇せざるを得ない。貫くことの難しい恋人との関係や、思うにまかせぬ立身出世。唐の士大夫階層に属する作者たちの小説創作は、どのような価値観にかたちを与えようとする営みだったのか。一面の古鏡の喪失に託して一門の衰亡を悲しむ「古鏡記」、女性を捨てたことを自己弁護しつつ、悔恨をにじませる「鶯鶯伝」、長安という大都市に集中した、様々な階層の伝承の上に成り立つ「李娃伝」、女性のせつない願いに背いた主人公が受ける応報を描く「霍小玉伝」などの代表作品を取り上げ、唐代の社会の中で伝奇小説が果たした役割を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 唐代伝奇小説群にあって、女性が男性に捨てられるという恋愛悲劇に優れた作品が見られます。「遊仙窟」は神仙世界での逢瀬が描かれていました。中唐期には、こうした神仙世界での夢幻的な出来事の描写では飽き足らず、現実世界での恋愛悲劇へと質的変化が進みました。書き手は知識階級の男性であって、仕官や婚姻に際してやむを得ず女性と別れた忸怩たる思いが執筆動機になったと筆者は推量します。白居易周辺の士大夫階層が中心で、小説と詩をセットにした作品を創作しました。白居易の長恨歌、陳鴻「長恨伝」、元禛「鶯鶯伝」など。中唐期の文学史を視野に置くことは、「源氏物語」のフレームワークを理解する上で欠かせないと思います。

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