ラガ――見えない大陸への接近

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000255028

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  • 素晴らしかった。地球上で最も大きな'見えない大陸'を生きる逞しく、しなやかな'水の人々'の物語。遠く海を越えてやってきた野蛮な侵略者たちはいくつもの深い爪痕を残していった。しかし、'水の人々'たちはその傷跡を癒すかのように侵略者の言葉を改変して自分たちの言葉にしたり、様々なやり方で奪い取られ、歴史の闇に葬り去られた'失われた時間'を取り戻そうと抵抗の意思を示し、ひたむきに新しい文化から学び、歩みを進める。確かにそうだ。'素晴らしいグローバル化'を押し付けられた私たちにとって一番必要なのは、「自国をもう一度偉大にする!」と声高に叫ぶ熱狂の中に身を投じることではなく、変化し生き延び自らを再発明する彼ら'水の人々'の思想なのかもしれない。そんなことを考えさせられた。

  • 素晴らしい。訳者である詩人の管啓次郎は他の著書の中でル・クレジオを「根っからのアウトサイダーだ、たしかに。その文学は、現行の世界の縁(へり)にある。やがて新たな大洪水が人間社会を滅ぼそうとするとき、われわれに最後の希望を与えるのは彼の文学だと、ぼくは思う。」と表現したが正にその通り、管氏は翻訳しながらその想いをより強く深めたに違いない。私のクレジオ愛を知る人からよく「まず何を読めばいいか?」と問われ、つい先日も『砂漠』を薦めたのだが、覆します。まず『ラガ』を。僅か160Pにル・クレジオの魂が溢れている。


    太平洋に浮かぶ小さな島々ヴァヌアツの美しく荒々しい自然を、その土地に深く根付く伝説の数々を、西欧に抑圧された歴史を決して忘れることなく一歩を踏み出した島の人々の逞しさと清らかさを慈しみ、光ある場所へと導くル・クレジオを心から尊敬し、愛します。

  • カヌーで太平洋を渡り歩いた人々。勇気という言葉では言い表せない。それは衝動。新しい島で生きることを始める人々。「土地を所有しない。その土地で暮らし、楽しむ。死者たちの霊からその歴史を受け継ぐようにと与えられた」土地とともに生きる人。人とともにある神。本当の信仰。南洋の知恵。西洋の文明がいかにも小さいものに思える。

  • アフリカ大陸。これは、紀行文?なのだろうか?表面を見るのではなく、深く潜って景色を見ているようだ。
    人種のるつぼに積み重ねられた歴史。
    様々な要因が幾重にも重なりあって、そのなかで人は生きる。悲しみながら、慈しみながら、蔑まれながら、狂いながら。
    淡々とした文章なのに、そこに生きたものが刻みこまれている。

  • 太平洋に浮かぶ小さな島々「見えない大陸」バヌアツの美しく荒々しい自然、死者たちの霊から受け継ぐようにと与えられた土地に纏わる伝説の数々、西欧に抑圧され続けた歴史を幻視する思索的紀行文。まるで叙事詩のような海の人々の物語。

  • 現実とお話が入り混じって不思議な空気

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著者プロフィール

(Jean-Marie Gustave Le Clézio)
1940年、南仏ニース生まれ。1963年のデビュー作『調書』でルノドー賞を受賞し、一躍時代の寵児となる。その後も話題作を次々と発表するかたわら、インディオの文化・神話研究など、文明の周縁に対する興味を深めていく。主な小説に、『大洪水』(1966)、『海を見たことがなかった少年』(1978)、『砂漠』(1980)、『黄金探索者』(1985)、『隔離の島』(1995)、『嵐』(2014)、『アルマ』(2017)など、評論・エッセイに、『物質的恍惚』(1967)、『地上の見知らぬ少年』(1978)、『ロドリゲス島への旅』(1986)、『ル・クレジオ、映画を語る』(2007)などがある。2008年、ノーベル文学賞受賞。

「2024年 『ブルターニュの歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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