未和 NHK記者はなぜ過労死したのか

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000248884

作品紹介・あらすじ

2013年7月、酷暑の選挙取材を終えた31歳のNHK記者が、自宅でひとり亡くなった。死因は心不全。のちに過労死認定され、2017年に公表された。なぜこのような悲劇が起きたのか。なぜ私たちは4年も経った後にこの事実を知ることになったのか。いま明かされる、佐戸未和さんの生きた証と巨大メディアの人間模様。

感想・レビュー・書評

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  • 過労死NHK記者の軌跡、出版へ 長時間労働放置…職場の実態にも迫る - 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20190427/k00/00m/040/014000c

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    「2013年夏、ひとりのNHK女性記者が亡くなった。4年間その事実は伏せられた。なぜか。本書で、過労死を『隠蔽』した組織の荒涼とした風景がみえた。それこそ、彼女を死に追い込んだものだ。『働き方改革』のかけ声の下、ほら、同じ風景がみえないか。」
    ――金平茂紀(TBS「報道特集」キャスター)
    仕事熱心で笑顔のたえない報道記者・佐戸未和さん。彼女はなぜ亡くなったのか。「本当のことを知りたい」という思いに100人以上の関係者がこたえた。彼女の生きた証と巨大メディアの知られざる現実。
    https://www.iwanami.co.jp/book/b451633.html

  • メディアで働く女性の過労死の事例。

    公共放送であるNHKという特定の組織の問題としてとらえるのではなく、やりがい搾取という文脈でとらえるべきだと考える。

    マズローの欲求5段階説(自己実現理論、恒産なくして恒心なし、貧すれば鈍す)を、再考したい。

    p.6「選挙と災害がNHK報道の二本柱となっており、報道部門にいる職員はその重要性を深く心に刻み、公共放送としての使命を達するため、日々業務にあたっている。」

    [目次]
    1 はい。都庁クラブ、佐戸です
    2 佐戸記者誕生物語
    3 光るものを持っていた少女
    4 酷暑の中の参院選取材
    5 「未和さんが亡くなりました」
    6 明らかになった二〇九時間の時間外労働
    7 遅れた周知
    8 突然の公表
    9 ふるさと、長崎での誓い
    10 未和さん、さどちん、そして未和へ
    --

  • 未和 NHK記者はなぜ過労死したのか 単行本(ソフトカバー) – 2019/5/9

    NHK記者佐戸未和、ジャーナリスト佐戸未和をご存知ですか
    2020年1月4日記述

    未和 NHK記者はなぜ過労死したのか
    2019年5月8日第1刷発行
    著者 尾崎孝史
    尾崎孝史(おざき・たかし) 映像制作者、写真家。
    NHKでドキュメンタリー番組の映像制作に携わる。
    「クローズアップ現代+」、「ETV特集」などの番組に写真提供。
    「おはよう日本」で写真展紹介。
    著書に『汐凪を捜して 原発の町 大熊の3・11』(かもがわ出版)。
    組作品『厳冬 警戒区域』で視点賞。
    写真集『SEALDs untitled stories 未来へつなぐ27の物語』(Canal+)で
    日隅一雄賞奨励賞。JRP年度賞。

    2013年に過労死したNHK記者、佐戸未和(さどみわ)さんの人生、
    NHKでの仕事ぶりに関して迫った本。
    本書の取材期間は2017年10月から2019年3月まで1年半。
    当事者の写真も多く掲載されていて大変良かった。
    また多くの方に信頼されていた佐戸未和さんが当時31歳という若さで亡くなってしまった事は社会にとって大きな損失だ。
    つくづく思うのは近年温暖化していて極めて暑い中、選挙の為にそれもみんなの党などの泡沫候補の当否を1秒でも早く報道する為にあそこまで過酷に記者を働かせるのは馬鹿げているということ。
    いずれ発表されるものに過ぎない。
    もちろん国民の知る権利は極めて重要だ。
    ただそれは調査報道であったり、潜入調査報道、検証報道だと思う。
    発表モノに血眼になるのは限られた人的資源の使い方として間違っている。
    NHK改革とはイギリスのBBCのような報道ができるように変わって貰えればそれで良い。ロールモデルもあるのに旧態依然、安倍政権への忖度ばかりで非常に腹立たしい。
    佐戸未和記者過労死への報道の姿勢も腰が引けている。
    高橋まつりさんに比べるとどうしても扱いが小さい。
    2017年に報道された事以外に新しく報道される事はあまりなかった。
    自分も佐戸未和さんの事に関してより詳しく知る事が出来たのは本書のおかげである。本来は自浄作用を働かせてNHKが率先して報道して欲しい。
    他の新聞も切り込み隊長としてやって欲しいものだ。
    不文律でもあるのだろうか、メディア同士の醜聞を報道することは余り無い。
    それだけに本書が余計に光り輝いているように思えてならない。

    本書の中盤は佐戸未和さんが亡くなるまでの経過が描かれる。
    選挙速報がいかに過酷か改めて思った。
    記者を採用する際に念入りに健康診断を行うとは聞いている。聞いているが、もっと休みを取らせ最低でも6時間は寝るように体制を組むように変えていくべきだ。
    そして本書後半は亡くなった後、うやむやなまま何一つ組織にこの問題が知られる事無く時間が過ぎていく。
    両親も高橋まつりさんの事が大きく報道される中、自分の娘の過労死が報道されないのはおかしいと思うのは当然だ。
    NHKに限らず、残された遺族が決して諦めず世間に対し大きく公表し圧力をかけていかないと駄目だ。
    組織は醜聞を隠す傾向がある。
    高橋まつりさんにせよ佐戸未和さんにせよ残された遺族が大きく世間に申立を適切に行ったからこそ世の中を動かしたのだ。
    mynewsjapanの渡邉正裕氏が指摘するように遺族が会社、組織側に丸め込まれて、表沙汰にならないケースも多いので過労死、過労自殺は全てオープンにさせていく法改正が必要だろう。

    佐戸未和(さど・みわ)
    1982年6月26日、父・守さん、母・恵美子さんの長女として長崎市で生まれる。
    1988年、5歳の時、両親、妹、弟とともに東京へ転居。
    1989年、豊島区立仰高小学校に入学
    1995年、文京区立第二中学校に入学(現在合併によって本郷台中学校)
    1998年 神奈川県桐蔭学園高校に入学
    学生時代、TBS「BSアカデミア」で放送について学ぶ。
    2005年一橋大学法学部国際関係学科卒業後、報道記者としてNHKに入局。
    鹿児島放送局へ赴任し、志布志事件、拉致被害者家族などを取材。
    2010年、首都圏放送センターへ異動。
    2011年、都庁クラブへ配属。
    2013年7月、東京都議選、参院選の取材を担当した直後、
    うっ血性心不全で亡くなる。享年31。
    2014年5月、渋谷労基署が過労死認定。
    2017年10月、NHKが「ニュースウォッチ9」で佐戸記者の過労死を公表。

    佐戸未和さんが当時NHKに提出した就職申込書
    希望する業務 
    ニュースの取材制作
    第一希望 
    記者
    第二希望 
    ニュースカメラマン
    理由 
    今まで見られなかったより多くの世界を見たいため
    学歴 
    一橋大学法学部国際関係学科卒業見込み
    力を入れて勉強したこと 
    難民問題、PKOについて
    上記を選択した理由 
    日本にいると戦争の恐ろしさや、リーダー次第で一国の政治が変わってしまうことを実感できないから。
    NHKでやってみたい仕事 
    多くの人々の声をすくいあげ、人々の選択肢の数を増やすことのできる記者になりたい。
    学生生活を通じて感じたこと 
    学生主体のラジオ放送を行い、様々な人に出会った。
    里親をしている大学生や、北朝鮮難民を救おうとしているNGOの方など、直接会って
    話したからこそ聞けた多くの言葉があった。自分が足を運び、聞く耳を持てば、いろいろな人に出会え、世界はもっと広がると感じた

    本書で印象に残った箇所

    当確判定を間違えた記者に下される降格人事。
    長年に渡りNHK記者の間で語り継がれている暗黙の掟だ。
    例えば、2014年に実施された総選挙。
    東京21区でツバ競り合いをしていた民主党の候補と自民党の候補がいた。
    NHKはいち早く民主党の候補に当選確実を出したが、
    その後、1600票ほどの差で自民党の候補が当選することになった。
    明らかな当確判定のミスだった。
    すると、間髪入れず当確判定を担当していた記者デスク二人が異動になった。
    一人は、自ら取材に出向くことのない内勤デスクに。
    もう一人は遠く北海道に。
    将来を期待されたエース級の記者だったにもかかわらずだ。

    大学3年生になって迷うことなくメディアへの就職を志望した未和さん。
    願書を出したのはNHKのほかにフジテレビ、朝日新聞、毎日新聞だった。

    フジテレビと朝日新聞は最後の最後で落ちてしまって。
    GWになって合格の連絡を受けたのが第一志望のNHKでした。

    恵美子さん(母親)は、「未来へ平和を」」との願いを込め未和(みわ)と名付けた。

    小学校1年生の時の作文・・
    (ここは個人的感想だが、小学1年生が書くレベルではない。孫正義一族の半生を追ったあんぽんという書籍に小学生時代の孫正義氏の作文が掲載されていた。それと同様に小 学生が書いたものとは思えなかった。未和さんの文 章も同様だ。知能の格差は明らかにあるという事を痛感する)

    当時中学受験を受けたものの、受けた学校は全部落ちちゃって。
    結果発表から帰ってきて、母の膝の上で泣いているときもありましたね。

    でもある意味、本人にとってはよかったんかもしれません。
    ショックを受けて沈み込んだわけじゃなく、「仕方ないな」と淡々としていましたから。これも経験のひとつとして受け止め、成長につながればいいと思いました。

    佐戸は学力が全然違いました。他の子と。
    かといって、それにこだわることもない。
    すごく悪い子もいるのに全く区別しない。まっすぐ相手の目を見て話す。
    12歳の少女に社会性が出てきて、一気に開花したのかもしれない。

  • ふむ

  • NHKに勤務していた女性記者が過労死していたことを思い出し、本書を手に取る。
    うろ覚えだった内容が、本書により次々と明らかになった。

    「なぜ4年間も公表されなかったのか」
    「NHK」という巨大組織の隠蔽体質の一端を知る。

    この事案に対するNHKの消極的な姿勢、そして、この本に対しても協力しない。協力どころか、取材に対し、「申し入れ」を行うのだ。

    副題の「なぜ過労死したのか」という問いに対する答えは、非常に重い。

    同時期、電通に勤めていた女性社員の痛ましい事件があった。
    NHKも働き方改革と関連させて、大々的に報じていた。

    しかし、である、自社職員の過労死、労災認定については、「ニュースォッチ9」で「二分一六秒」しか報道していない。
    自分もこの時の「ニュースウォッチ9」は見ていた。内容は実にあっさりしたもので、特にコメントもなかった。
    以後、それっきりである。
    電通の事件は報じ続けるのに、である。


    筆者の丁寧な取材によっり、佐戸未和という女性の人柄、記者としての優れた才能を窺える。

    多くの事件(有名な事件も多く含まれる)に関わり、時には関係者に寄り添う姿も。
    この取材姿勢、一人の記者としてでなく、人間として関わろうとした姿に感銘を受けた。

    ただ、激務となった選挙報道(正確な当落予測、他局よりも先んじて正確な当確予測を出す)。それが原因の一つとなったことを考えると、あまりに切ない。


    NHKの公表から約2年。
    当時から、この案件については、幹部職員を始め、誰も処分を受けていない。まさに不可解だ。

    そして、この本を読み終え、似たような事案はないのか、民放各局や新聞社でも似たような事案がないのか、不安になる。

    “『働き方改革』のかけ声の下、ほら、同じ風景がみえないか。”(金平茂紀)

  • 東2法経図・6F開架:366.99A/O96m//K

  • ただただ悲しくなる

  •  
    ── 尾崎 孝史《未和 NHK記者はなぜ過労死したのか 20190508 岩波書店》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/400024888X
     
     Ozaki, Takashi 写真家 1966‥‥ 大阪 /映像制作
    ♀佐戸 未和   NHK記者 1982‥‥ ‥‥  20130724 31 /過労死 2017 公表
    ♀佐戸 恵美子 未和の母 1950‥‥ ‥‥ /
     佐戸 守   未和の父 1951‥‥ ‥‥ /
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21889420U7A001C1000000/
     
     最後のメールは自身の誕生日の翌日だった。
    …… 過労死NHK記者の軌跡、出版へ。
    長時間労働放置…職場の実態にも迫る 20190427 毎日新聞
     
     過労死したNHK記者・佐戸 未和さんについて話す両親の守さん(左)
    と恵美子さん=東京都内で 20190329 午後2時12分、宮本 明登・撮影
     
     2013年に過労死したNHK記者の佐戸 未和さん(当時31歳)が生きた軌
    跡をまとめた本が、201905‥ に出版される。利発で明るい人柄で、
    社会的弱者への温かいまなざしを持つ記者だったことを紹介。両親の未和
    さんへの愛情や、過労死を巡るNHKの対応への不信感がつづられ、長時
    間労働が放置された職場の実態にも迫っている。
     
     ◇友人や関係者ら109人を取材
     
     著者は映像制作者で写真家の尾崎 孝史さん(53)。NHKの番組制作に
    27年前から携わり、201710月の未和さんの過労死公表に驚いて両親と
    連絡を取るようになった。以後1年半にわたり、両親をはじめ、未和さん
    の友人やNHK関係者ら109人を取材してまとめた。
     
     未和さんは、13年7月にNHKの東京都庁クラブの記者として、都議選と
    参院選をほとんど休みなく取材した直後に自宅で急死。14年に労災認定
    された。しかし、過労死の事実は局内で周知されず、両親が疑問を投げ
    かけたことを契機に、NHKは17年に公表した。母恵美子さん(69)は
    「NHKの中で未和のことを風化させたくない。生きてきた証しを残したい。
    遺族にとってはつらい生き地獄で、二度と繰り返されないようにしたい」
    と、本に託した過労死根絶などへの思いを語る。
     
     本では、未和さんが幼少期を経て「みんなから愛されるすてきな女性」
    (尾崎さん)に成長していった過程をたどる。2005年にNHKに入局後は、
    北朝鮮による拉致被害者の家族や、低所得世帯の子ども向けの無料の塾
    について伝えるなど、弱者に寄り添う記者だったことが書かれている。
     
     ◇「NHKの人が職場の在り方見直すきっかけに」
     
     過労死公表などを巡る両親とNHK側のやり取りも記され、両親が不信
    感を募らせたことが分かる。父守さん(68)は「NHK側は、記者の当時
    の勤務制度のせいにして片付けようとする姿勢だった」と振り返る。
    その上で、当時の未和さんの職場の人間関係など、長時間労働が放置
    された背景について、NHK側に検証を求めても回答がなく、「NHKは
    『働き方改革』を進めていると言うが、誰一人責任を取らず、検証も
    ないままで本当に浸透するのか」と憤る。
     
     著者の尾崎さんも、両親の思いを受け、未和さんと上司ら職場の実態
    に迫った。遺体で発見される直前の2日間、未和さんと連絡がつかない
    ことへの同僚らの対応が不明瞭なままであることへの疑問や、新た
    な関連情報も記している。また、未和さんの死後の17年と18年に、NHKで
    の長時間労働や明け方までの勤務後、脳出血で倒れて重い後遺症が残った
    スタッフが2人いたことも紹介している。尾崎さんは「本を読んでもら
    い、NHK内で働く人が職場の在り方を見つめ直すきっかけになれば」と
    話す。【犬飼 直幸】
    http://gigigi.blog.jp/archives/4213729.html
     
    (20190427)
     

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