松川裁判から、いま何を学ぶか 戦後最大の冤罪事件の全容

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000248082

作品紹介・あらすじ

六〇年前の一九四九年八月一七日、東北本線金谷川‐松川駅間における真夜中の列車転覆という怪事件。国鉄と東芝の計二〇人の労働者が起訴され、第一審、第二審では大逆事件以来の大量死刑判決が下された。その後、作家・広津和郎の裁判批判や、広範な市民の公正裁判、無罪判決を求める声が渦となり、一四年間続いた世紀の裁判は全員無罪が確定した。本書では、この松川事件の背景や真犯人論の解明も含めて、戦後最大の冤罪事件が生み出された過程を検証し、松川裁判の軌跡を総括。そして未曾有の裁判批評・救援運動として広がった松川運動の特質をも克明に描き出した決定版である。

感想・レビュー・書評

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  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90209226

     「松川事件」は、戦後のGHQ改革の重点が「非軍事・民主化」から「反共の防波堤」へ移る過程で起きた大規模な冤罪事件として、高校の日本史の授業等で勉強した記憶がある人も少なくないかと思います。とは言え、松川事件の「松川」が、ここ松川町―事件は東北本線の金谷川・松川間で起こりました―を意味することを知らない人も多いのではないでしょうか。
     本書は、そんな松川事件と長く向き合ってこられた、伊部正之・福島大学名誉教授の長年の研究をまとめたもので、事件の背景や15人の被告人らが「犯人」に仕立て上げられていく過程、最高裁が無罪を言い渡すに至る経緯、この事件が社会に与えた影響等が検証されています。そこで示される事実は、多くの冤罪事件に共通して見られる司法や事件報道の欺瞞と「闇」、GHQ改革を通じた戦後日本の復興の「きな臭さ」を浮き彫りにします。同時に、著名な作家から学生まで、「真実」を求めて連帯して戦った多くの市民の「力」を感じることもできるでしょう。松川町にある大学で学ぶ者として、この事件から何を学ぶべきか考えてみてほしいと思います。
     また、この図書館の地下には、本書にも登場する、被告人らのアリバイを証明することになった証拠「諏訪メモ」をはじめとした、松川事件の関連資料を収集した「松川資料室」が存在します。本書の著者の伊部先生は本学を定年退職された今も、松川事件を後世に伝えるべく、同資料室で資料の整理や研究に励んでおられます。本書を読んで関心を持った方はぜひ足を運んでみてください。

    (推薦者:行政政策学類 高橋 有紀先生)

  • 下山事件の本は何冊か読んだけれど、松川事件の予備知識はほとんど無し。事件の経緯と支える松川運動について、詳細に語られている。結局は未解決なのでスッキリせず。

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