それを,真の名で呼ぶならば: 危機の時代と言葉の力

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000237420

作品紹介・あらすじ

選挙の不正とトランプ政権の横暴,女性蔑視,民族・人種差別,ジェントリフィケーション,警察や刑務所の圧制,貧困,そして,気候変動と災害――.現在の危機を歴史から再考し,すりかえや冷笑に抗い,本当の言葉=真の名を呼ぶことで,予測不能な未来への希望を見いだす.現代アメリカの水先案内人による,勇気に満ちたエッセイ集.

感想・レビュー・書評

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  • 頑張って途中まで読んだのだけれど、翻訳された文章がどうしても読み辛く…。

    こんな私でも読めるような、もう少し平易な日本語にならないのだろうか。
    とても興味があるのに、読み進められなかった。

  • 新型コロナをめぐる著名人のSNSが次々と炎上する事態が続いている。
    安倍首相の星野源動画コラボに始まり、糸井重里、スガシカオ、浦沢直樹のアベノマスク似顔絵等など。
    不安な気持ちや継続する自粛により、何でもいいからキレる理由を探しているんだとか散々言われてきたが、本書を読んで合点がいった。

    人は、惨めな状況になればなるほど、悲嘆に暮れるよりも怒っている方を好む。
    それは怒りが、内省的な惨めさを追い出し、自信や幸せと同じくらいの楽観的な気分を与えてくれるためだ。

    トランプほどこの種の閉塞的な怒りを利用した政治家はいない。
    しかし怒りに惚れ込み、煽り、掻き立てているのは、左派勢力も同じだ。
    「安倍首相に対して怒りを感じていないとしたら、あなたは注意や関心を欠いている」とばかり、正義の憤激を高らかに称揚している。

    著者の立場は、憤慨のような自己表現をする前に、現状を変えるため行動を起こそうと説く。
    怒りは確かに、「社会変革のエンジンを動かすガソリン」のようなものだが、「ガソリンは、ときにはただ物を爆発させるだけのもの」なのだ。
    煽られた怒りの炎に対して、吟味もせず喜んで飛びつく人たちは、もっとも怒れる人たちであるとともに、もっとも騙されやすい人たちでもある。

  • タイトル詐欺の期待外れ本。トランプの文句を思いついた順に並べたてているだけで「真の名」や「言葉の力」はろくに取り上げられず、たいした深みもない。実態はエッセイというカテゴリを言い訳にしたヘイト本と言ってもいい。今は岩波書店もこんなものか。

  • 選択の結果に良いことも悪いことも含まれていたとしてもそれを受け入れるという姿勢についてのくだりは『チーズインザトラップ』を、地名や石碑には歴史が込められているという部分は『震美術』を思い出した。

    記念碑をめぐる闘いの一節、「後世の人びとは(中略)わたしたちがいまだに理解していない犯罪で、わたしたちを罵るだろう」が印象的だった。

    自分の考えの埒外があるということと謙虚に向き合う姿勢が説かれてるように感じた。

  • レベッカ・ソルニット 著
    渡辺 由佳里 訳
    価格:本体2,200円+税
    刊行日:2020/01/28
    9784000237420
    版型:四六 上製 244ページ


    選挙の不正とトランプ政権の横暴、女性蔑視、民族・人種差別、ジェントリフィケーション、警察や刑務所の圧制、貧困、そして、気候変動と災害――。現在の危機を歴史から再考し、すりかえや冷笑に抗い、本当の言葉=真の名を呼ぶことで、予測不能な未来への希望を見いだす。現代アメリカの水先案内人による、勇気に満ちたエッセイ集。
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b492582.html


    【目次】
    まえがき――政治とアメリカの言語
    脇の下の垢

    Ⅰ 大統領選挙の破壊的影響
     ドナルド・トランプの孤独
     ミソジニーの標石(マイルストーン)
     二〇〇〇万人の失われた語り手たち

    Ⅱ アメリカに渦巻いている感情
     孤立のイデオロギー
     無邪気な冷笑家たち
     憤怒に向き合う
     聖歌隊に説教をする

    Ⅲ アメリカの境界
     気候変動は暴力だ
     国の土台に流された血
     生まれ故郷のジェントリフィケーションに殺された男――アレックス・ニエトの殺害と、殺伐としつつあるサンフランシスコ
     内にも外にも行き場のない人たち
     籠の中の鳥――死刑囚を訪問して思うこと
     記念碑をめぐる闘い
     社会の一員になる八〇〇万の方法
     スタンディングロックからの光

    Ⅳ 可能性
     ブレイク・ザ・ストーリー
     悲しみのなかの希望
     間接的に起こる成果を讃えて

    訳者あとがき――真の名を探し、ストーリーを伝えつづける努力の大切さ

  • レベッカソルニットの本は、いつも私に勇気を与えてくれる。

    完璧は善の敵だ。勝利が抱える妥協。
    冷笑者になるのではなく、現実に向かって行動する人になること。
    自分に反対意見を言う人を言い負かすのではなく、行動をしていくこと。光を灯すようだ。

    何をするか、も、もちろん大切なのだけれど、
    どう生きるか、なのだと思った。

    私は私のベストを尽くすこと。
    こんな時代でも、こんな時代だからこそ、私は私の種を植えよう。そこに希望がある。

  • 他著にはやや高踏的になりすぎていて読みにくかったものもあったが、本書は徹頭徹尾「地べた」(byブレイディみかこ)の感覚で書かれたエッセイ集。具体的な社会問題と、それに対する著者の具体的な知見が書かれているので読みやすく、すっと腑に落ちる。現代の健全で善良な知性のありかたを示すものと言えるだろう。
    その一方でやや手を広げすぎというか、対女性差別に専心してほしいとも感じた。その根深さと言ったら、死刑囚(男性)や警官に誤殺されたヒスパニック(男性)の悲劇の比ではないのだから。

    2021/10/14〜10/18読了

  • なぜヒラリー・クリントンが大統領に選出されなかったか、ドナルド・トランプ元大統領の横暴、女性蔑視、アメリカに深く根ざす人種差別など、多くの問題、課題を丁寧に論評している。ジョー・バイデン大統領になって著者は少しほっとされているだろう。残念だけど差別や女性蔑視は無くならない。白人男性であっても、さらに体格差で蔑視されることはある、さらに体格が良い白人男性でも職業によって蔑視されることがある、どこまでいっても蔑視する人は居る。そう考えると仕方のないことのように思うが、現在私たちが当たり前に持っている権利は、過去に起こった小さな運動の積み重ねの成果である。最後のエッセイが最も希望を与えてくれる内容だった。『私は種を植える。その種から木が育ち、実をつけ、鳥たちのすみかになりさらに多くの種を生み出し森になる、しかし私にはそれを知るすべはない。』自分にできることをする、『一隅を照らす』という古くからの教えに落ち着いた。

  • 16年の大統領選の時点で、すでにこれだけ強烈な憎悪を浴びていたのだなあトランプは。浴びせられた憎悪をそのまま憎悪で返す本作の筆者もそのままアメリカらしい。
    常に外部に敵を作っていないと死んでしまうかのように。
    白人にせよ男性にせよ富裕層にせよ小さいレベルまで含めての既得権益が剥がれていくとき、人はここまで極端な行動をとる。アメリカの既得権益層がやけくそでトランプを選んだ。国家レベルでの自傷行為。

    内容や構成がとても興味深いのだが最近では毎度のことだが翻訳がひどい。二重否定や英語独特の代名詞「彼の兄の二人の息子」などは翻訳時に整理すべきだ。原文をGoogle翻訳にかけたほうがまだ理解できそうだ。「ダライラマの次に最も有名」って?

  • 一人の女性により力強く語られるアメリカにおけるマイノリティ、虐げられた人々、無意識のうちに押し付けられ、慣らされた行動によって隠された真の姿を明らかにしようとする言葉。

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著者プロフィール

レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit):1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。アカデミズムに属さず、多岐にわたるテーマで執筆をつづける。主な著書に、『ウォークス歩くことの精神史』(左右社)、『オーウェルの薔薇』(岩波書店)がある。

「2023年 『暗闇のなかの希望 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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