- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000223072
作品紹介・あらすじ
能に文楽、バレエの演出。普請道楽、骨董三昧。作庭、料理、なんでもござれの百面相—さて杉本博司とは何者か。本書には、自身「遺作」と位置付ける江之浦測候所に引き寄せられたモノたちが語る因縁譚が満ちている。和歌と文、写真が渾然一体となった令和の奇書、現代を代表するアーティストの風狂の半生がここに。(書き下ろし、カラー図版多数)
感想・レビュー・書評
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杉本博司の作品は以前から幾つか見ていた。劇場の写真の作品は着想が面白いと思ったし、海の作品も心に残る素敵な作品だし、シロクマも良いな。
日経新聞の「私の履歴書」を読んで、杉本博司って分かりやすい文章を書くんだと思ってびっくりした。
今まで、美術家、美術評論家と言う人が書く文章は分かりにくいと思っていたが、そうではないと言う事が分かり、この本を読んでみようと思った。
やはり、読みやすく分かりやすい、良い文章だった。
願いは叶う。思いは届く。art は永遠だ。
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江之浦測候所に行った際に購入した本。
江之浦で見た風景や空間体験の余韻に浸りながら読み進めた。
本書は江之浦測候所の展示作品がどのようにして集まり、今の姿となったのかを書き記した備忘録。読めば分かるのだが、本当に奇譚である。どの作品も全国に点在してあったはずのものだが、気がつけばこの測候所へと寄せ集められる。これはまるで展示作品が目で見えない深層で繋がっているよう。そして既存の状態及び環境では目にすることのない作品が光を浴びようと現代芸術家の元へ行き、回遊式庭園として計画されたギャラリーに展示される。
なんというか、芸術を通して古美術が時間を遡行し、現代へと舞い戻るような感覚を覚える。
本当に興味深い本だった。また江之浦測候所に行きたい。
冬至光遥拝隧道(とうじこうようはいずいどう)が未だに読めない。 -
去年の自粛明けに一番にしたこと。江之浦測候所に行った。なんか凄いなあとは感じたけど、完全には腑に落ちてなかった。
でも、この本を読んだら「おおお!」と思わず唸ってしまった。そして、また行きたくなった。(けど、まだ行けてない。。。笑)
こんなときだからこそ、行きたい。
行けない方はこの本で擬似体験を! -
測候所を訪れたその帰りの電車で読んだ。
パンフレットの展示紹介だけではわからない、作品にまつわる話、「なぜこの地にたどり着き、その結果どのように設置されているか」について知ることができて、読んだ後には作品や建造物に対する印象もかなり変わった。
2020年後期に刊行されたので、コロナ(杉本さんの表記だと「頃難」)にも言及されている。
はじめ、写真家としての杉本さんしか知らなかった。しかし、測候所を巡りこの本を読んだあと、彼が美術シーンでジャンルにとらわれない活動ができるのは天才だから、権威だから(という要素があったとしても、それだけ)ではなく、ひとえに知識に裏打ちされた目利き、技術と表現のトライアンドエラーの向上を惜しまない方だからではないかと思えるようになった。