意識をめぐる冒険

  • 岩波書店
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000050609

作品紹介・あらすじ

歯がズキズキ痛む。この痛さはどこから来るの?歯髄から脳に送られた信号のせい?そんな説明じゃあ納得できっこない。単に有機物の塊にすぎない脳のどこの何が、この痛いという感じをつくるっていうんだ!そもそもそう悩んでいる、この自分という感覚だって何なのだろう。考えれば考えるほどややこしい。意識と脳の関係なんて解決不能だ…。長年、この問題を追いかけてきた著者の本音。深い真理への挑戦。

感想・レビュー・書評

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  • 意識は特別なものではなく、進化の過程で合理的に形成された自動反応メカニズムだろうということです。だから、私の脳のニューロンと他のニューロンとの電気パルスの伝達を決めているシナプシスの値が、すべてシミュレーションされると、私の意識が計算機上に出てくるだろうと思われます。ニューロンとシナプシスの構成は単純なので、枠組み作りは不可能ではない。ただ、一本のニューロンは1万の他のニューロンと繋がっているし、数は千数百億本あるので、簡単ではないですね。一番の問題は、シナプシスの結合係数は数が多すぎて計測しようもないだろうから、自習学習が必要だろうけど、その方法は全くわからないですね。そういう意味では、本当の人工意識まだまだ先ですね。
    あと、意識は生物には普遍的な進化の産物だと考えてられるので、他の生物にもレベル差はあっても、意識はあると考えるのが合理的です。自分を客観的に見れるのは、人と同等レベルの脳構成が必要かもしれませんが。犬に感情があるのは歴然ですし、感情は意識そのものだから。コッホ氏もベジタリアンになったそうです。

  • 意識を科学的に説明しようと20年も頑張ってこられたクリストフ・コッホさんの本。たぶん、一流の科学者の方であろう。しかし、科学について書かれた一般書を読むといつも科学者の方の情熱に感心する。凄いなぁと思う。

    2011年に書かれた本なので、かなり最新の情報が盛り込まれていると思う。コッホさんの考えでは、意識そのものは物理的な世界とは別世界のものではあるが、物理的な世界によって生み出されているということのようである。といっても魂が存在するというようなものではない。

    本書でも触れられていた、ポパーさんとエックルズさんの「自我と脳」を読んでみようと思った。なぜなら、彼らが心と脳は別物で心身二元論を主張していると批判されることもあるが、ポパーさんの主張はそう単純ではなく、むしろ、コッホさんの考えに近いんじゃないかなと思ったからだ。

    それと、科学に関する本なんだけど、なんだかとてもロマンティックで、ところどころでグッと来る文章がに出会えた。いやぁ~いい本だった。

    Mahalo

  • 池谷裕二先生が
    「読売新聞」(2014年9月14日付朝刊)で紹介しています。
    (2014年9月14日)

  • 231119-1-4

  • なかなか難解。ニューロン、シナプス、伝達物質というメカニズムについてはサラリと。
    読了 90分

  • 人間の意識に取り組んだ悪戦苦闘の書。
    佐倉統2014年の3冊

  • 筆者のクリストフ・コッホが、フランシス・クリックと繰り広げた、「意識」の源をめぐる知的冒険の世界を堪能することができた。

    意識がなぜ生まれるのか、これを還元論的に脳の働きを分解していくことで説明することは難しい。実際には、意識の生まれる際に働く脳の機能の構成要素をある程度まで突き止めることはできるが、最終的に意識の生成過程を還元論的に説明することは不可能である。

    意識の生成に必要な要素を整理したうえで、意識の謎にさらに分け入っていくためには、意識の役割、意識を持つことの意義についても考えていく必要がある。

    本書の中で筆者は、意識が存在する理由は、我々は不確実性やランダム性を持った状況に直面しながら生きており、そのような局面において行動を決定していくためには、無意識の働きだけではだめだからだということを述べている。

    そのような観点に立って考えてみると、脳が、外部から入ってくる様々な情報や日常の行動(何かを手に取るといった一見「意識的」な行動も含めて)の多くを無意識の制御下で行いながらも、ある程度の情報を「意識」するということを行っているのは、非常に意味を持った働きであると思える。

    また、本書は脳神経科学の研究成果を解説しているだけでなく、筆者の生い立ちや研究のプロセスにおける様々な障害、日々の人生における悩みや喜びといった、筆者の半生を振り返るような内容も盛り込まれている。

    科学が純粋に理論や実験によって組み立てられるのではなく、研究者が形成してきた人間観や周囲の環境との相互作用、過去の歴史との対話によって方向付けられていくということも手を取るようによく分かった。

    そういった点も含めて、知的探求の世界の面白さ、ドラマチックな側面を十分に味わうことのできる本だった。

  • ふむ

  • 「情報を処理し、なおかつその情報を統合できるシステム」
    あるいは「内在的な情報を生み出すシステム」であれば、
    それが人間の脳だろうと、犬の脳だろうと、虫のであろうと
    ワイヤーとトランジスターで作られた電子回路であろうと
    何らかの意識を持つとする「汎心論」とも言える考え方が
    印象に残る。「意識」は人間において初めて獲得することの
    できた特殊なものではなく、この宇宙にありふれている、
    ごく当たり前の存在だというこの考え方が、なぜかすとんと
    腑に落ちてきた。日本人には割と受け入れやすい考え方なの
    かも知れない。

    ただ、研究は進み知見はどんどん増えているとは言え、意識
    に関する科学的探求はまだほんの端緒を開いたばかり─この
    本を読んでもその思いは変わらなかった。

    あと、これからの哲学者・宗教者は脳科学を押さえておか
    なければ、立ちゆかなくなる、そんなことも思いました。

  • 意識はどこからくるか?かなり刺激的で面白い。科学がどこまでこの世界を明らかにできるのか?神とは?日本の八百万の神の考え方は作者が言う世界に蔓延する意識と何か通じるものがある気がする。突き詰めれば、意識はその入れ物によらないというのも、いつかは人類が到達するかもしれないなんて考えるのも楽しい。

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