ヤクザと憲法――「暴排条例」は何を守るのか

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000023290

感想・レビュー・書評

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  • 暴対法は誰のために何の役にたっているのか、この法律で一般人は救われてるのか。確かにヤクザは力を使うが力の括りには種類がある。権力なら何でもいい、と思えた。ヤクザを美化はしないが、街にヤクザは見えなくなり、半グレと呼ばれる勢力が出てきて一般人と風体は変わらず、更に見えなくなった。疑問ばかりが残る

  • 映画自体は見たかったけど見れていない。
    本書を読むと、どうも最初からヤクザと憲法をテーマに始まった企画ではないようで、今実態が外からはよくわからなくなっている(なんと警察でさえ!)ヤクザという存在にとにかく密着してありのままを伝えようとの趣旨から、色んな障壁を乗り越え実現に漕ぎ着けたものらしい。
    冒頭、一人のオジキから発せられる「憲法守れ」の言葉が触媒となり、本人たちの認識では否応なくヤクザに吸い寄せられその職についた男達と、彼らを孤立させ排除しようとする社会の軋轢を描いていく。
    企画の実現に向けて助力する一人はあの「死刑弁護人」安田弁護士。社会のマジョリティの安全や安心をどこまでも追求すると、どうしても人権の問題とぶつからざるを得ない。その尖端が「ヤクザ」であり「死刑」という問題なのだと思う。

  • 東海テレビのドキュメンタリー視聴。
    いつもこの東海テレビのドキュメンタリーはほんとテーマといい実直な作り方といい感心する。まずハズレはない。
    今回も大阪西成区の外観はきわめて普通の3階建てのビル。
    ここが指定暴力団”二代目東組二代目清勇会”
    カメラが中に入っていくともう笑っちゃうくらい本物のヤクザのオンパレード。
    (強面で目つきに悪い言葉も荒い背中一面に入れ墨的な)
    孤狼の血とまったく同じようなレイアウト。(家具とかソファが)
    でも川口和秀って人はおよそヤクザらしくなくシュっとしていて(眼光は鋭いけど)
    普通の人っぽいのにこの人にはみんなペコペコして上の立場みたい。
    孤狼の血でもあったようにヤクザ専門の弁護士さんも登場。
    なんでヤクザになったのかディレクターが質問したらほんとの困ってる時、兄さんが食べるものと住むとこを与えてくれた、恩義を感じてる。国はなんもしてくれないでしょ。って言ってた。
    戸籍がない人もいた。にっちもさっちもいかなくなった人たちの受け皿になっているっていう現実もあるんだね。
    21歳のメガネで坊主の尚人くんもなんでこの世界に入ったんだろうってくらい純朴に見えたけど。自分からヤクザになりたいって来たみたい。なんかヘマをしたみたいで戸を閉めてボコボコにされてた(こわっ)
    ヤクザは銀行口座が作れないってのも初めて知った。考えてみればそうだよね。
    ほんとに遠い世界のことで興味津々で観た。

    2016年 96分 
    監督:土方宏史
    著者 : 東海テレビ取材班

    これわしら人権ないんとちゃう?

  • 世間と隔離されたクリスマス

    ってな事で、東海テレビ取材班の
    『ヤクザと憲法』

    暴排条例を翳してヤクザの人権までも奪ってしまうのか……。

    そんな内情のドキュメンタリーを放送、映画化したルポのお話。

    これまで以上にヤクザが生きて行く道を狭くする現状じゃが、ヤクザ以外に仕事が出来ないからそのままヤクザで生きて行く……。

    どんどんヤクザは減って来てるが、その他の半グレや、任侠無しの悪人が増えてくだけ。

    世の中、善と悪の両立で成り立ってると思うんで、悪だけ叩いても善は増えんよ。

    このままじゃと、両立出来ない悪しか残って行かなくなるんじゃないかな?

    この映画が観たいなぁ。

    2017年58冊目

  • 暴排条例というものを今まで知らなかったのだけど、そう言えば銀行口座を開くときに「私は反社会的勢力ではありません」みたいな項目があったような。暴力団に利益供与した/された一般人も罰せられるというこの条例、なにがセーフでなにがアウトか明示されておらず、結果的にたこ焼きひとつ奢ってもらうのにもビクつくことになる。なぜこんなに曖昧な条例が成り立つのか。それは相手が排除すべき暴力団だからだろう。避難所に入れなかったホームレス、コロナ給付金を貰えない風俗業など、公による差別が進むその先は。

  • まだ見ぬ東海テレビのドキュメンタリー、特にこのヤクザと憲法は見たいと思っていただけに本ででも触れたいなと読んでみた
    ヤクザをヤクザ側でテレビという現時点での主要メディアで取り扱うことへの葛藤がすごく苦しそう。中で書いてあったように、誰かへの忖度無しで番組を作りたい、とテレビマンが言ってた事に象徴されるね。
    生々しさから言ったら街録chの方が圧倒的なんだけど、当事者サイドからの話なのでどこまで客観性が保てるのか、という問いには取材の規模が取れるテレビは一定程度そこが保てるのだけど、やはり忖度が働き生々しさには勝てないかもなとものアンビバレンス。
    物事は一方向からではなくいろんな角度から見た方が良いに決まってるけど、ことヤクザに関しては確かに撲滅一辺倒な取り上げ方なのでこの番組の意義は大きい。しかしながら、ヤクザから人権を奪う事には反対だなー。人権派では無いけど、口座作れないとかはさすがに憲法に反してるよな。そこを表立って反対しない左派もどうかと思うよ。それこそヤクザ擁護派だと叩かれるのに対する忖度だよね。
    ヤクザは緩やかに腐乱していくのだろうけど、死にゆくものにも一定の権利はあると思うよ。
    とはいえ子供の同級生にヤクザの子供がいたら遠ざけるけど…

  • ヤクザと家族という映画を見たので副読本として。ヤクザのドキュメンタリーを撮りたい!というところから始まったドキュメンタリーの撮影録。暴対法と条例で、どんどんと「業」がなくなっていくヤクザとそれを取り巻く人々が映し出される。ヤクザは「社会からあぶれた人間」であり、人権すら怪しい新しい被差別団体なのではという提示。
    つい、せめて、「暴力団ではなくなった者」や「本人ではない家族」がうまく社会に溶け込めるようになることを祈りたい。

  • 2020/5/3
    映画で見た、ポワンとした話し。

  • 社会

  • ●→本文引用

    ●たこ焼きをめぐっての押し問答。さらに車で送ってもらうことがセーフかアウトかという議論。揉めたわけでも気まずい空気になったわけでもない。冗談の延長線上のようなやりとりなのだが、この中に暴排条例が社会とヤクザの間にもたらした影響が出ている。(略)インターネットで調べても、どこからが利益供与にあたるかなんてことは詳しく書いていない。何が明確にアウトかは分かっても、何がOKなのかは触れられてはいない。境界線が分からないのだ。(略)こうして、拡大解釈が進んで、触らぬヤクザに祟りなしと、ヤクザは社会から排除されていくのだろう。そんなヤクザを排除していく現状を象徴するようなシーンが偶然撮れた。そして、河野さんの口から何気なく出てきた「差別」という言葉。それほど深い意味はないのだろうが、だからこそ余計リアルに響いてくる。川口さんら幹部から聞く差別とはどこか違う、「現場」の生の声だった。ヤクザと社会、そして差別。送ってくれるという申し出をなんとか断り、いろいろ考えをめぐらせながら宿まで帰る。

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