アメリカや日本の社会が、強者が総どりする新自由主義経済に突き進んでいるとき、まったく対極の社会理念を追求する国の実在そのものが感動的である。
この本は、刊行の辞を大統領が書き、筆者の中には3人の首相経験者、2人のフィンランド議会議長経験者、13人の大臣経験者を含む議会議員、その他、官僚、研究者、NPO (NGO)の代表、一般市民が執筆し、111項目にわたってこの国の社会改革の現状を紹介している。
いずれの項目も、すべての国民がもれなく社会の一員として尊重されるような、手厚い福祉国家をめざし、戦後営々として一歩ずるその目標に向かってゆるぎない努力をしてきたことを紹介している。
大項目を挙げると、「政治・行政」「社会改革」「保険ケア」「教育・文化」「戦争と教育のはざまで」「市民社会」「ソーシャルテクノロジー」「日常生活の喜び」とあらゆる分野にわたっている。
この国が決して平和で豊かな政治環境に恵まれてきたわけではなく、歴史的にはスエーデンとロシアという二つの強国に挟まれて、属国扱いされたり戦争を余儀なくされたりしてきた。1940年にソ連との冬戦争が終結したとき、国土の10%を失い、その地に住んでいた44万人の主として農業に従事していたカリヤラ人を370万人の国が受け入れて、ほぼ同等の農地や生活環境を提供して定住させたということが述べられている(p.203)。沖縄や福島の悲劇にあった人たちを突き放す社会とは対極にある。
その他、ホームレスへの住宅供給、傷痍軍人へのケア、少数民族ロマニ人の地位向上、貧困者への支援など、社会の底辺の人びとがもれなくケアされるように徹底した社会福祉が提供されている。
そのような一体感のある社会を作るために、約7万~8万のNPO (NGO)があり、フィンランド市民の5分の4がそのような社会活動に参加している(p.210)。
労働組合の組織率が高く、ピーク時には給与労働者の80%を超えたという(1993年)(p.215)。
青少年への政治参加への訓練も盛んで、青少年のための選挙演習も行われるという(p.224)。
そういう社会背景の上に、LINUXやノキアといった先端技術産業も育っていることが述べられている(p.248)。
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フィンランドを世界一に導いた100の社会改革: フィンランドのソーシャル・イノベーション 単行本 – 2008/8/1
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- 本の長さ326ページ
- 言語日本語
- 出版社公人の友社
- 発売日2008/8/1
- ISBN-104875555318
- ISBN-13978-4875555315
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登録情報
- 出版社 : 公人の友社 (2008/8/1)
- 発売日 : 2008/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 326ページ
- ISBN-10 : 4875555318
- ISBN-13 : 978-4875555315
- Amazon 売れ筋ランキング: - 626,332位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2010年11月1日に日本でレビュー済み
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どうしてよその国では当たり前と思われることが整然と行われているのだろう。私たちには何が足りないのだろうと思う。
2009年2月15日に日本でレビュー済み
本書は教育先進国として世界中から大きな注目を浴びているフィンランドのソーシャル・イノベーション=社会的な改革をハンドブック形式で紹介したものです。
世界一の教育を支える無料の教育制度や図書館制度を始め、高度な福祉を実現する手厚く多様な住宅政策や労働支援政策、国民の健康維持・疾病予防のための綿密な保健体制、社会問題を自ら解決していく多様な市民組織、などなどフィンランド社会を大きく発展させた社会制度の特徴が111の項目にわたって紹介されています。現在、教育と情報産業にのみ焦点が当てられがちなフィンランドですが、それらの成功の土台には民主主義を徹底させた効率的な福祉国家があり、その社会の特徴を政治からお菓子まで幅広く知ることができます。
また、各項目はフィンランドの政策当事者や専門家が執筆を担当しており、信憑性があり、加えて当時の内情や当事者の思いや苦悩なども率直に述べられており、楽しく読むことができます。冒頭でハロネン現大統領が一文を寄せており、まさにフィンランドを挙げてのフィンランドハンドブックといえます。
フィンランド社会についてその全体像や特徴を網羅的に把握するには、またとない良書です。制度疲労が叫ばれる日本の政治や行政、社会運営の現場で、本書を片手に仕事をする人が増えるのではないかと思います。
世界一の教育を支える無料の教育制度や図書館制度を始め、高度な福祉を実現する手厚く多様な住宅政策や労働支援政策、国民の健康維持・疾病予防のための綿密な保健体制、社会問題を自ら解決していく多様な市民組織、などなどフィンランド社会を大きく発展させた社会制度の特徴が111の項目にわたって紹介されています。現在、教育と情報産業にのみ焦点が当てられがちなフィンランドですが、それらの成功の土台には民主主義を徹底させた効率的な福祉国家があり、その社会の特徴を政治からお菓子まで幅広く知ることができます。
また、各項目はフィンランドの政策当事者や専門家が執筆を担当しており、信憑性があり、加えて当時の内情や当事者の思いや苦悩なども率直に述べられており、楽しく読むことができます。冒頭でハロネン現大統領が一文を寄せており、まさにフィンランドを挙げてのフィンランドハンドブックといえます。
フィンランド社会についてその全体像や特徴を網羅的に把握するには、またとない良書です。制度疲労が叫ばれる日本の政治や行政、社会運営の現場で、本書を片手に仕事をする人が増えるのではないかと思います。
2008年12月30日に日本でレビュー済み
フィンランドは、社会民主主義の根づいた福祉社会、近頃では子どもの学力世界一の国として知られ、また、ノキアやLinuxなどのIT、はたまたムーミンの国としてもなじみのある北欧の小国である。グローバリゼーションの波にもまれ先進国に格差と貧困が広がる中、高度の社会福祉を維持していることで、最近北欧諸国は脚光を浴びることが多いが、本書を読むと、フィンランドにおいては数十年来、あるいはそれ以上の歳月をかけて多方面にわたる社会改革―ソーシャル・イノベーションがなされてきたことが分かる。そしてそうした取り組みは、単に現代世界において優位性を誇るのみならず、ポスト資本主義社会への萌芽を内包していることをも示唆しているような気がする。
例えばそれは、各種NPO(NGO)の数の多さ、多様さにも見てとれる。また、教育・文化・芸術・スポーツなどを市民レベルで取り組むとともに、国がそれを支援する関係がなりたっている。
といっても、そこは決してこの世にあり得ない「地上の楽園」ではない。失業者もいれば、ホームレスもいる。しかし、そうした人々をしっかり社会の網の目からとりこぼさないシステムもまた確固として確立しているのも事実である。
翻ってこの日本の現実は……1990年代以降ネオリベラリズムが跋扈し、それを「小泉改革」が政治的にバックアップしたあとは、格差と貧困が蔓延し、小泉以降、肝心の政治は腐敗・堕落を極め、アメリカ発の世界同時不況に端を発した資本主義崩壊の始まりの前に、ただなすすべもなく手をこまぬいている……その上、超高齢化社会到来の前に少子化対策も打ち出せず、今後数十年続くであろう資本主義崩壊過程で、人口も減少し、国そのものが消滅の危機に瀕するやもしれない……。
そんな日本にとって、フィンランドから学ぶべきことは山ほどあるだろう。読んで決して損しない1冊である。
例えばそれは、各種NPO(NGO)の数の多さ、多様さにも見てとれる。また、教育・文化・芸術・スポーツなどを市民レベルで取り組むとともに、国がそれを支援する関係がなりたっている。
といっても、そこは決してこの世にあり得ない「地上の楽園」ではない。失業者もいれば、ホームレスもいる。しかし、そうした人々をしっかり社会の網の目からとりこぼさないシステムもまた確固として確立しているのも事実である。
翻ってこの日本の現実は……1990年代以降ネオリベラリズムが跋扈し、それを「小泉改革」が政治的にバックアップしたあとは、格差と貧困が蔓延し、小泉以降、肝心の政治は腐敗・堕落を極め、アメリカ発の世界同時不況に端を発した資本主義崩壊の始まりの前に、ただなすすべもなく手をこまぬいている……その上、超高齢化社会到来の前に少子化対策も打ち出せず、今後数十年続くであろう資本主義崩壊過程で、人口も減少し、国そのものが消滅の危機に瀕するやもしれない……。
そんな日本にとって、フィンランドから学ぶべきことは山ほどあるだろう。読んで決して損しない1冊である。