市立図書館でセンセーショナルなタイトルについ興味をひかれ、内海聡著「医学不要論」という本を借りて読んでみました。その結果、内容の粗雑さ乱暴さそして医師とはとても信じられないほどの著者の無知さ(失礼)に唖然としてしまいました。それでも最後まで目を通しましたが後味の悪さだけが残りました。そこで「口直し」として本書を購入して読んでみたところスッキリとして気分が爽やかになった次第です。
「医学不要論」と同様の現代医学の標準治療に対する非科学的な反論本は多数出ており、患者さん達から適切な医学治療を受ける機会を奪っています。生命に直結する癌や慢性病の場合には取り返しのつかない結果を生じ、ニセ医学本の著者達の責任は大きいですが、彼らはそのような意識を全く持ち合わせていません。非科学的なニセ医療論の本だけがはびこり、本書のようなまともで科学的な現代医療論がほとんど出版されないことについては、センセーショナルな本だけが売れさえすればよいという出版界の無責任なビジネス感覚も原因していると考えます。
第1章「抗がん剤は毒にしかならない?」。一昔前の抗がん剤は代謝抑制剤がほとんどであったため、薬効(癌細胞の抑制)と副作用(正常細胞の抑制)の差が小さく、抗がん剤と言えばその副作用(毒性)のみがクローズアップされて怖がられていたのは事実です。しかし、最近の抗がん剤は癌細胞により特異的となり、正常細胞を抑制する作用は少なくなってきています。薬効と副作用は表裏一体で、「薬に限らず、すべての医療行為には、メリットとデメリットがある。このことを理解していないと、ニセ医学に容易に騙されてしまう。(43頁)」とあるのはその通りで、いかにメリットを大きくしてデメリットを極小とするかは医師の判断(腕)にかかっています。
「誤解:日本の医者は医薬品添付文書すら読まない(40~43頁)」。これに対し著者は「普通の医師は医薬品添付文書のみならず、医学論文も読んでいる」と反論しています。しかし例外的ではあってもしっかり読んではいない医師がいることは否定できないと思います。副作用は勿論のこと複雑な薬物相互作用までをすべての医師が十分に読み込み理解しているとは思いません。しかし、不適切な処方が出された場合には調剤薬局の薬剤師が処方医に電話で疑義照会を行い処方の見直しを求めます(薬事法で定められた薬剤師の義務)。また、「添付文書に沿わない方法で医薬品を使用すれば、保険者から不正請求とみなされて医療費が支払われないことがあるからだ(42頁)」とあるように添付文書を熟読することの重要さは医師がよく認識しています。なお、後に述べられるように、保険者からの不正請求の疑義照会があることはニセ医療の総てが患者の自己負担による治療となっている理由でもあります。
「麻薬系の鎮痛剤は体に悪い?(48頁)」。ここでは対症療法の是非が論じられています。「医学不要論」の著者は対症療法自体を完全に否定していますが、ご自身が末期癌で耐えられないような痛みに苦しんでいる場合に痛みを軽減する対症療法を拒否されるでしょうか。麻薬系鎮痛剤については米国でその過剰使用に批判がなされましたが、メリットとデメリットのバランス(43頁)であり、全否定されるものではないと思います。「痛みからの解放は患者の生きる権利であり、医師の義務である(50頁)」。
「ワクチン(54~65頁)」。ワクチンほど現代医学に対する陰謀論の対象になっているものはないでしょう。反ワクチン論者は天然痘のワクチン療法がこの疾患の撲滅に果たした画期的な役割(54頁)に言及することはありません。また、小児麻痺は不活性化ワクチン(4種混合)により日本ではほぼ根絶状態となっています(本書になし)。他のワクチンについても一定の予防効果はあるわけであり、「不正確な反ワクチン論が広まると、こうした弱い人たちが被害を受けることを忘れないでほしい(58頁)」と書いてある通りです。
「病院での出産は不自然?」。妊産婦死亡率及び周産期死亡率の近年における驚くべき低下は産科学や産婦人科医院の施設の向上によることは間違いありません。しかし、近年の自然ブームにより、病院ではなく、助産所や自宅での自然分娩を選択する人達が増えています。これに対し、著者は「多様な価値観があっていい。妊婦さんの価値観は多様であるから、医療側の対応も多様であるべきだ、ただし、リスク(分娩中の不測の事態)についての情報は正確に提供すべきであろう」と述べています。一方、助産所が代替医療と結びついていることも多いこと(68頁)について著者は警告しています。
第2章 代替医療編(79~144頁)では現在はびこる数多くのいわゆるニセ医療が取り上げられていますが、正当な東洋医学(漢方、鍼灸治療等)は対象になっていません。ニセ医療としてホメオパシー(80~89頁)、瀉血(90~95頁)、放射線ホルミシス効果(96~101頁)NAET(102~107頁)、オーリングテスト(108~113頁)、気功(癌消滅説に関し)(114~119頁)が挙げられ、その実態及びなぜ医療としての効果が意味ないのかという理由が非常に分かりやすく解説されています。
「独自療法」として「がんに炭酸水素ナトリウムが効く?(120~124頁)」、「千鳥学説の治療でなんでも治る?(125~131頁)」、「難病治療のカギはソマチッド?(132~137頁)」が取り上げられています。これらは荒唐無稽で一読しただけで笑ってしまう治療ですので、読み物として楽しめるようなものですが、「クリニックで幹細胞療法が可能?(138~143頁)」に関しては一部の医院で高額な自費治療として現に実施されているので問題です。iPS細胞(多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)は研究段階で広範な臨床応用はまだ先の話です。また、特定の臓器にしか分化できない成体幹細胞は患者さんから採取できるので、臨床応用できる可能性が高いが現時点では研究段階です。
「幹細胞療法と称した医療を提供している民間のクリニックもある。しかしながら、現時点での民間のクリニックにおける幹細胞療法の多くは悪徳である(139頁)」。「日本再生医療学会は不適切な幹細胞治療に対して警鐘をならしている。悪いのは幹細胞療法ではなく、口先で難病の患者さんを助けるためと言いつつ、実際には金儲けのために幹細胞療法を行う(143頁)。」脂肪組織由来幹細胞による肺栓塞の例がかなり報告されています(142頁)。民間クリニックにおける幹細胞治療については非科学的あるいはインチキ療法というわけではないのですが時期尚早であり、何らかの規制あるいは指導が必要ではないでしょうか。
第3章 健康法には食、健康食品、健康グッズなどの項目がありますが、本書をお読み願います。非科学的な話が満載ですが、特に「水商売」については笑ってしまいます。しかし、牛乳が健康に悪いなどという根拠のない論は、ただでさえ飼料や光熱費の高騰などにより苦境にある畜産業界に対して打撃を与えるもので見過ごすわけにはいかないと思います。
現代医学の標準治療に対する非科学的な否定(そして代替としてのインチキ療法)やワクチンに対する陰謀論などは思ったより広く世間に浸透している感じがします。これらが一種の新興宗教のような体をなしているように思われるのは「医学不要論」に対するアマゾン書評の高評価コメントを参照すれば明らかです。
難病や進行癌に苦しむ患者さんが藁をもつかむ思いでインチキ療法に助けを求める気持ちは理解できますが、結局大金をはたいて病状を悪化させたり死亡につながったりする結果となり、家族をも悲しませます。それを助長しているのが「医学不要論」のような書物でありネット上での偽情報だったりします。このような患者さんについて自業自得とか自己責任と言って冷たく切り捨てることも出来るでしょう。しかし、本書の著者は医師としての多忙な時間の中でインチキ療法に陥らないように本やネットで啓蒙活動を行っており、頭が下がります。本書により患者さんが一人でも多く助かることを願います。
本書のようなまともな本に対しては重箱の隅をつつくような批判(低評価の書評)が見られますが、大きな視点で見れば難病や癌に苦しむ患者さん達がニセ医療に嵌らないようにという親切な忠告であることは一目瞭然です。
本書をすべての人に強くお薦め致します。
なお、本書の最後に「解説」としてサイエンス・ライターの片瀬久美子さんの文章が唐突に出てきますが、著者による「全体のまとめ」がまずあるべきではないでしょうか。次回の改定時に検討していただくと幸いです。
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新装版「ニセ医学」に騙されないために ~科学的根拠をもとに解説 単行本 – 2018/11/29
名取宏
(著)
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購入オプションとあわせ買い
「抗がん剤は毒にしかならない」「ワクチンは危険」「酵素を補うべき」など、
ちまたにあふれる医学や健康の情報はデマだらけ。
近年では、よりカルト化し、多数の本やサイトでデタラメな情報が
撒き散らされているため、健康被害が出ることも懸念されています。
本書の著者は、ネット上でいち早くニセ科学批判を始めた内科医です。
危険な反医療論や代替医療、健康法について、査読を通った確かな
文献をもとに、わかりやすく説明しています。
普段は騙されない自信がある人でも、いざ病気になると、
不安な気持ちにつけ込まれ、怪しい治療法に手を出してしまいがち。
しかも、一度「ニセ医学」にハマると、なかなか抜け出せません。
ご自身はもちろん、家族などの大切な人の健康を守るために、
ぜひともご一読いただきたい一冊です。
<もくじ>
はじめに
COLUMN 医療以外のものを試したくなる気持ち
第1章 代替医療編
[薬]
日本人は薬漬け?/万能薬は存在する?/ステロイドは悪魔の薬?
[がん]
がんは治療するな?/抗がん剤は毒にしかならない?/麻薬系の鎮痛剤は体に悪い?
[ワクチン]
ワクチンは有害?/HPVワクチンは効果が薄い?
[出産]
病院での出産は不自然?/自然分娩だけが素晴らしい?
COLUMN 標準医療は心の働きを重視している
第2章 代替医療編
[伝統療法]
ホメオパシーは安全?/瀉血でデトックスできる?/放射線ホルシミス効果は万能?
[エネルギー療法]
NAETでアレルギーが治る?/Oリングテストは科学的?/気功で、がんが消える?
[独自療法]
がんに炭酸水素ナトリウムが効く?/千島学説の治療でなんでも治る?/難病治療のカギはソチマッド?
[その他]
クリニックで幹細胞療法が可能?
COLUMN 健康食品が治療に与える影響
第3章 健康法編
[食]
水で体が変わる?/健康によい特別な食品がある?/がんに食事療法は有効?
血液型ダイエットがよい?/米のとぎ汁乳酸菌で健康に?
[健康食品]
酵素を補うべきか?/健康食品は安全?
[健康グッズ]
抗酸化で老化を防げる?/健康グッズに効果はある?
[その他]
タバコでは肺がんにならない?
解説:片瀬久美子氏
ちまたにあふれる医学や健康の情報はデマだらけ。
近年では、よりカルト化し、多数の本やサイトでデタラメな情報が
撒き散らされているため、健康被害が出ることも懸念されています。
本書の著者は、ネット上でいち早くニセ科学批判を始めた内科医です。
危険な反医療論や代替医療、健康法について、査読を通った確かな
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普段は騙されない自信がある人でも、いざ病気になると、
不安な気持ちにつけ込まれ、怪しい治療法に手を出してしまいがち。
しかも、一度「ニセ医学」にハマると、なかなか抜け出せません。
ご自身はもちろん、家族などの大切な人の健康を守るために、
ぜひともご一読いただきたい一冊です。
<もくじ>
はじめに
COLUMN 医療以外のものを試したくなる気持ち
第1章 代替医療編
[薬]
日本人は薬漬け?/万能薬は存在する?/ステロイドは悪魔の薬?
[がん]
がんは治療するな?/抗がん剤は毒にしかならない?/麻薬系の鎮痛剤は体に悪い?
[ワクチン]
ワクチンは有害?/HPVワクチンは効果が薄い?
[出産]
病院での出産は不自然?/自然分娩だけが素晴らしい?
COLUMN 標準医療は心の働きを重視している
第2章 代替医療編
[伝統療法]
ホメオパシーは安全?/瀉血でデトックスできる?/放射線ホルシミス効果は万能?
[エネルギー療法]
NAETでアレルギーが治る?/Oリングテストは科学的?/気功で、がんが消える?
[独自療法]
がんに炭酸水素ナトリウムが効く?/千島学説の治療でなんでも治る?/難病治療のカギはソチマッド?
[その他]
クリニックで幹細胞療法が可能?
COLUMN 健康食品が治療に与える影響
第3章 健康法編
[食]
水で体が変わる?/健康によい特別な食品がある?/がんに食事療法は有効?
血液型ダイエットがよい?/米のとぎ汁乳酸菌で健康に?
[健康食品]
酵素を補うべきか?/健康食品は安全?
[健康グッズ]
抗酸化で老化を防げる?/健康グッズに効果はある?
[その他]
タバコでは肺がんにならない?
解説:片瀬久美子氏
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社内外出版社
- 発売日2018/11/29
- ISBN-104862574025
- ISBN-13978-4862574022
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商品の説明
著者について
(なとり・ひろむ)
内科医。医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、
現在は市中病院に勤務。ツイッターやブログでも情報を発信している。
内科医。医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、
現在は市中病院に勤務。ツイッターやブログでも情報を発信している。
登録情報
- 出版社 : 内外出版社 (2018/11/29)
- 発売日 : 2018/11/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 4862574025
- ISBN-13 : 978-4862574022
- Amazon 売れ筋ランキング: - 477,352位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,684位家庭療法・医学
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2019年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
NATROMさんのブログの読者で、本書の内容は知っていましたが、応援する気持ちで購入しました。
雨後のタケノコのように、にょきにょきでてくるニセ医学。調べてでてくるのは、エビデンスの無い情報や信じると健康を害したり死への近道だったり、詐欺の情報ばかりです。本書はそのような情報の被害者を少しでも減らすことができるかもしれません。
しかし、名取宏さん、まだちょっと甘いです。
ニセ医学論者は、レッテル貼り、循環論法や藁人形論法、陰謀論や歴史の捏造など、使える印象操作は全て使ってきます。頭のいい先生方はロジックが身に付いているから信じられないでしょうが、得てして一般の人は難しいエビデンスよりも印象操作を信じます。
正直、この本を読む人はニセ医学に騙されない気がします。たぶん、騙される人は面白くなくて読むのをやめてしまうかも。面白さで言えば、NATROM さんのブログのコメント欄でよくニセ医学論者を論破しているのを読む方が面白いです。ニセ医学そのものより、ニセ医学の印象操作とその論破というテーマで書いた方が、よりエンターテイメント性が増すと思います。
どうしたら、ニセ医学を無くせるんですかね。医療者への深い恨みや不信感は確かに原因の一つですが、情報の受け手やメディアも含めて根が深い気がします。
何はともあれ、わかりやすかったですし、この本はオススメです。
雨後のタケノコのように、にょきにょきでてくるニセ医学。調べてでてくるのは、エビデンスの無い情報や信じると健康を害したり死への近道だったり、詐欺の情報ばかりです。本書はそのような情報の被害者を少しでも減らすことができるかもしれません。
しかし、名取宏さん、まだちょっと甘いです。
ニセ医学論者は、レッテル貼り、循環論法や藁人形論法、陰謀論や歴史の捏造など、使える印象操作は全て使ってきます。頭のいい先生方はロジックが身に付いているから信じられないでしょうが、得てして一般の人は難しいエビデンスよりも印象操作を信じます。
正直、この本を読む人はニセ医学に騙されない気がします。たぶん、騙される人は面白くなくて読むのをやめてしまうかも。面白さで言えば、NATROM さんのブログのコメント欄でよくニセ医学論者を論破しているのを読む方が面白いです。ニセ医学そのものより、ニセ医学の印象操作とその論破というテーマで書いた方が、よりエンターテイメント性が増すと思います。
どうしたら、ニセ医学を無くせるんですかね。医療者への深い恨みや不信感は確かに原因の一つですが、情報の受け手やメディアも含めて根が深い気がします。
何はともあれ、わかりやすかったですし、この本はオススメです。
2023年5月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ひとは弱ったとき困ったときにインチキ医療にダマサレやすくなる。リテラシと冷静さを持つために有益な書。
2019年11月19日に日本でレビュー済み
著者名が2014年初版のNatromからこの新装版では名取宏となり、匿名であることには変わりなく匿名の内科医だということだ。
HPVワクチンについては正確な情報が必要、水素水について研究状況から見込みがあるが医師以外は効果を標榜して売ることができないという事情が書いてあったり、食事はバランスだと書いている。他の疑似科学批判者とは異なる姿勢です。高評価です。ほかの批判者には、科学的根拠が大事だと言いながら、科学的根拠が存在するものについて、科学的根拠の引用もせずに、まるで科学的根拠が存在しないかのように批判を行っている人までいます。名取氏はここまでのトンデモにはなっていない。本書は疑似科学批判本の中では手に取るべき位置づけです。
しかし、研究を網羅して効果を評価したシステマティックレビューあたりを持ってくるということはなく、著書では自身が選り好んだ古い単発の研究が引用されています。ASIOSのような専門家ではない一般人も混ざった集団の書籍を参考文献に出してあったり。最新の科学的根拠ではないということです。ちょっと調査が足りない。
また抽象的なんです。名取氏は、食事については専門分野ではないと思いますが、WHOによる砂糖摂取量の改訂や、ハムなどの発がん性物質への指定、植物性食品を重視した書籍にもなっている『チャイナスタディ』といった研究もあり食事バランスの基準はかなり変化してきていて、また明確です。科学が明確にしているこうした部分を曖昧にして、なんでも食べるのがバランスが良いと言ってのけるのでは大雑把すぎます。
近年の食事の基準はなぜ「上限」を設けてきているのか。オーバーしやすいから「控えましょう」ということです。肉、砂糖、通常に生活していても摂取しすぎることがある。気を付けましょうということです。バランスよく食べましょうでは、そういったことが理解できません。食事と科学のテーマについてよく書かれた本としては『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』がおすすめできます。
HPVワクチンについては正確な情報が必要、水素水について研究状況から見込みがあるが医師以外は効果を標榜して売ることができないという事情が書いてあったり、食事はバランスだと書いている。他の疑似科学批判者とは異なる姿勢です。高評価です。ほかの批判者には、科学的根拠が大事だと言いながら、科学的根拠が存在するものについて、科学的根拠の引用もせずに、まるで科学的根拠が存在しないかのように批判を行っている人までいます。名取氏はここまでのトンデモにはなっていない。本書は疑似科学批判本の中では手に取るべき位置づけです。
しかし、研究を網羅して効果を評価したシステマティックレビューあたりを持ってくるということはなく、著書では自身が選り好んだ古い単発の研究が引用されています。ASIOSのような専門家ではない一般人も混ざった集団の書籍を参考文献に出してあったり。最新の科学的根拠ではないということです。ちょっと調査が足りない。
また抽象的なんです。名取氏は、食事については専門分野ではないと思いますが、WHOによる砂糖摂取量の改訂や、ハムなどの発がん性物質への指定、植物性食品を重視した書籍にもなっている『チャイナスタディ』といった研究もあり食事バランスの基準はかなり変化してきていて、また明確です。科学が明確にしているこうした部分を曖昧にして、なんでも食べるのがバランスが良いと言ってのけるのでは大雑把すぎます。
近年の食事の基準はなぜ「上限」を設けてきているのか。オーバーしやすいから「控えましょう」ということです。肉、砂糖、通常に生活していても摂取しすぎることがある。気を付けましょうということです。バランスよく食べましょうでは、そういったことが理解できません。食事と科学のテーマについてよく書かれた本としては『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』がおすすめできます。
2019年8月13日に日本でレビュー済み
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この本はがん患者を抱える家族にぜひ読んでほしいと思う。
私は、高校生で父を、数年前に母をそれぞれがんで亡くしている。
家族ががん治療を始めると、論拠の怪しい健康食品や、健康法を「善意で」押し付けてくる人間が多数やってくる。
それらの人間は、ついこの間まで家族と普通に友人として交流していた人間だから余計にたちが悪い。
そして、どこかで聞きかじった怪しい健康法を、「善意で」持参し、「わら」にもすがる思いの家族は、人間関係もあり半信半疑ながら受け入れるという図を何度も見てきた。
その手もので私が覚えているものは、後年半数以上が詐欺や法令違反で関係者が捕まっているし、正式な治療になったものなど一つもない。
長期のがん治療を始めれば、怪しい治療法を携えた「善意の」友人は必ずやってくる。
そのような時、家族と本人が治療と生活に向けるべき資金を単なる「わら」に投じ苦労しないよう、一人でも多くのがん患者とご家族が本書を読まれることを期待します。
前のレビューにあるような、白砂糖云々など宗教に近い観念を捨て、合理的な判断を下せる方が一人でも増えるよう切に願います。
私は、高校生で父を、数年前に母をそれぞれがんで亡くしている。
家族ががん治療を始めると、論拠の怪しい健康食品や、健康法を「善意で」押し付けてくる人間が多数やってくる。
それらの人間は、ついこの間まで家族と普通に友人として交流していた人間だから余計にたちが悪い。
そして、どこかで聞きかじった怪しい健康法を、「善意で」持参し、「わら」にもすがる思いの家族は、人間関係もあり半信半疑ながら受け入れるという図を何度も見てきた。
その手もので私が覚えているものは、後年半数以上が詐欺や法令違反で関係者が捕まっているし、正式な治療になったものなど一つもない。
長期のがん治療を始めれば、怪しい治療法を携えた「善意の」友人は必ずやってくる。
そのような時、家族と本人が治療と生活に向けるべき資金を単なる「わら」に投じ苦労しないよう、一人でも多くのがん患者とご家族が本書を読まれることを期待します。
前のレビューにあるような、白砂糖云々など宗教に近い観念を捨て、合理的な判断を下せる方が一人でも増えるよう切に願います。
2020年5月18日に日本でレビュー済み
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内科医名取宏さん(名取宏というのはペンネームだそうですが)がニセ医学に対する情報発信を書籍化した本。自分や周りの人を健康を守るには、しっかりとした情報を掴み取るが大切です。
・不安を煽る情報ほど注意することが必要。
・万能を謳う治療法は疑ってかかったほうがよい。
・臨床試験が行われているかを確認する。
・ニセ科学では、本来の意味とは違う科学用語が使われていることがあるので注意する。
・不安を煽る情報ほど注意することが必要。
・万能を謳う治療法は疑ってかかったほうがよい。
・臨床試験が行われているかを確認する。
・ニセ科学では、本来の意味とは違う科学用語が使われていることがあるので注意する。
2019年10月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
名取先生は、がん検診の過剰診断の問題を世に知らしめた功績がとても大きい。
この本でも疫学的視点から医療の疑問を解き明かしてくれるかと思ったが、そうではなかった。
例えば、
「医者はクスリの添付文書すら読まない」
に対する反論は
「いやいや、添付文書くらいは読んでいますって」
それでは水掛け論にしかならない。
どのくらいの医師が自分が使うクスリの添付文書をどのくらい読んでいるのか?統計が示されるわけではないのだ。
他のトピックについても、ニセと言われる側の根拠に疑問があることはわかるが、標準的な医療については科学的な根拠がありベストであることが暗黙の前提にされてしまっているようだ。それで納得するなら最初から医者の言うとおりにすればいいし、納得できない人はこの本を読んでも納得できないだろう。
次のご本では、なぜ日本は癌死が減らないのか?なぜがん検診が始まってから乳がん死も子宮頸がん死も増えたのか?
なぜ日本のLDLコレステロール基準値はアメリカより50も低いのか?
名取先生の独自の視点からご解説いただきたい。
この本でも疫学的視点から医療の疑問を解き明かしてくれるかと思ったが、そうではなかった。
例えば、
「医者はクスリの添付文書すら読まない」
に対する反論は
「いやいや、添付文書くらいは読んでいますって」
それでは水掛け論にしかならない。
どのくらいの医師が自分が使うクスリの添付文書をどのくらい読んでいるのか?統計が示されるわけではないのだ。
他のトピックについても、ニセと言われる側の根拠に疑問があることはわかるが、標準的な医療については科学的な根拠がありベストであることが暗黙の前提にされてしまっているようだ。それで納得するなら最初から医者の言うとおりにすればいいし、納得できない人はこの本を読んでも納得できないだろう。
次のご本では、なぜ日本は癌死が減らないのか?なぜがん検診が始まってから乳がん死も子宮頸がん死も増えたのか?
なぜ日本のLDLコレステロール基準値はアメリカより50も低いのか?
名取先生の独自の視点からご解説いただきたい。
2020年5月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
インチキ医療を勧めてる輩が星1をつけて荒らしていますが、本書の内容は非常にまとも。
よくあるニセ医学、ニセ医療について、エビデンスをもとに徹底的にわかりやすく解説しています。
健康や医療に関心がある人は一読しておくのがおすすめです。変なインチキ医療に騙されてる人に読ませたりする用にも使えると思います。良い本です。
よくあるニセ医学、ニセ医療について、エビデンスをもとに徹底的にわかりやすく解説しています。
健康や医療に関心がある人は一読しておくのがおすすめです。変なインチキ医療に騙されてる人に読ませたりする用にも使えると思います。良い本です。