御館の乱(おたてのらん)について良く理解できた。上杉謙信の後継者は誰だったかに始まり、両者の位置づけの違いや、関東諸将の動向まで含めて納得できた。過去の経緯の説明についてはほぼ100%であるのに対し、景虎が勝者になった未来の展望については非常に甘いと感じた。
景虎が勝利したとして、関東全体に影響を与えたと考えられるだろうか。信長であれ秀吉であれ家康であれ、中央政権を確立したものに抵抗できたかは疑問に感じる。仮想的な部分についてはやや願望が混じっていると感じた。無理筋なものだから、歴史上成立しなかったように思えた。
一方で景虎と景勝の争いを経たからこそ、景勝は上杉家中に独裁をしくことが出来たのだと感じるようになった。(厳密にいうと渦中に別の内紛を抱えていく)上杉家の存続を果たし、近世の大名家になる契機になったことが、武田勝頼と比較して最大の違いになりえたのかもしれない。景勝は寡黙で評価の難しい人物だが、本書によってよく理解でき、すんなりと肯定することが出来るようになった。

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関東戦国史と御館の乱 ~上杉景虎・敗北の歴史的意味とは? (歴史新書y) 新書 – 2011/2/5
- 本の長さ254ページ
- 言語日本語
- 出版社洋泉社
- 発売日2011/2/5
- ISBN-104862486959
- ISBN-13978-4862486950
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登録情報
- 出版社 : 洋泉社 (2011/2/5)
- 発売日 : 2011/2/5
- 言語 : 日本語
- 新書 : 254ページ
- ISBN-10 : 4862486959
- ISBN-13 : 978-4862486950
- Amazon 売れ筋ランキング: - 541,373位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,170位歴史ノンフィクション
- - 39,941位新書
- カスタマーレビュー:
著者について
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伊東 潤
(いとう・じゅん)
1960年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、外資系企業に長らく勤務後、執筆業に転じ、歴史小説や歴史に材を取った実用書を相次いで発表。2011年『戦国鬼譚 惨』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『城を噛ませた男』で第146回直木賞候補となる。最新刊は『叛鬼』。
主な著書に『武田家滅亡』『山河果てるとも』『戦国無常 首獲り』『戦国鬼譚 惨』『幻海 The Legend of Ocean』『戦国鎌倉悲譚 剋』『北天蒼星 上杉三郎景虎血戦録』『黒南風の海 加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』本屋が選ぶ時代小説大賞2011」受賞)『義烈千秋 天狗党西へ』などがある。
ないしまさひこ。歴史家。昭和49年(1974)生まれ。高松市出身、相模原市在住。平将門、上杉謙信など人物の言動および思想のほか、武士の軍事史と少年愛を研究。著書に『謙信×信長 手取川合戦の真実』(PHP新書)、『平将門と天慶の乱』『戦国の陣形』(講談社現代新書)、『謙信越山』(JBpress)など。共著に『天下分け目の関ヶ原合戦はなかった』(河出書房新社)ほか。テレビ出演、監修、講演でも活動中。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2013年8月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
上杉謙信急逝の後,景虎と景勝の間で勃発した後継者争い.それが御館の乱であるが,その詳細については不明な部分が多く,その原因や意義についても諸説さまざまあり,まさに百花繚乱といった感がある.本書はその不明な部分を可能な限り明らかにし諸説を取捨選択することにより,御館の乱の捉え方に一定の方向性を示してくれている.本書の解釈は自分にとっては,とても有意義であったし読んでいて楽しかった.
ただ個人的には,もしも北条氏政・武田勝頼・上杉景虎の三者で三国同盟が出来ていたとしても,歴史の流れが変わったとは思えない.三国同盟は三者の実力が拮抗しているからこそ成立するものであり,実力差が生じれば破綻する.現に北条氏康・武田信玄・今川義元の間では成立した同盟も,義元の跡を継いだ氏真の能力が信玄や氏康と比べ低過ぎたことが一因となり,後に破綻している.北条氏政・武田勝頼・上杉景虎(もしくは景勝でもよい)の実力はほぼ拮抗しているように思えるから,時機さえ味方していればこの三者での同盟は成立していただろう.だが次世代まで継げるか否かはかなり怪しいように思える.そう言う意味では筆者の一人である伊藤潤氏のあとがきにあるように,(もしも三国同盟が成立していれば)関ヶ原の戦いあたりでこの三者の戦国大名としての華々しい死に場所が与えられることになったかもしれない,という意見には全く持ってその通りだと共感できる.
個人的な歴史解釈はともかくとして,本書は御館の乱に興味のある方には是非ご一読いただければと思います.
ただ個人的には,もしも北条氏政・武田勝頼・上杉景虎の三者で三国同盟が出来ていたとしても,歴史の流れが変わったとは思えない.三国同盟は三者の実力が拮抗しているからこそ成立するものであり,実力差が生じれば破綻する.現に北条氏康・武田信玄・今川義元の間では成立した同盟も,義元の跡を継いだ氏真の能力が信玄や氏康と比べ低過ぎたことが一因となり,後に破綻している.北条氏政・武田勝頼・上杉景虎(もしくは景勝でもよい)の実力はほぼ拮抗しているように思えるから,時機さえ味方していればこの三者での同盟は成立していただろう.だが次世代まで継げるか否かはかなり怪しいように思える.そう言う意味では筆者の一人である伊藤潤氏のあとがきにあるように,(もしも三国同盟が成立していれば)関ヶ原の戦いあたりでこの三者の戦国大名としての華々しい死に場所が与えられることになったかもしれない,という意見には全く持ってその通りだと共感できる.
個人的な歴史解釈はともかくとして,本書は御館の乱に興味のある方には是非ご一読いただければと思います.
2011年8月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
景虎公単独の読み物は歴史小説でも資料系でもほぼ「無い」状態なのでその中でもこうしてスポットを当てた作品というだけで貴重かとは思います。
多方面の資料から考察するのは時間もかかりますが手間暇もかかるのでその忍耐強さには脱帽しますね。
特に歴史的事実が判明した訳ではないので内容的に物足りない方もいるのかもしれませんが、考察だけでも私には参考になりました。
ひとつ注文をつけるなら、もう少しすっきりとまとめて読みやすくしてくださっても良かったか、とは思います。
多方面の資料から考察するのは時間もかかりますが手間暇もかかるのでその忍耐強さには脱帽しますね。
特に歴史的事実が判明した訳ではないので内容的に物足りない方もいるのかもしれませんが、考察だけでも私には参考になりました。
ひとつ注文をつけるなら、もう少しすっきりとまとめて読みやすくしてくださっても良かったか、とは思います。
2012年1月17日に日本でレビュー済み
戦国武将分析なるツールで、「87%上杉景虎でできてます」
などと言われてしまった私。
えーっと上杉景虎ってアレか???と思い出したのは『炎の蜃気楼』
いろいろな意味でショッキングな戦国武将転生ファンタジー。
そう言えば「天地人」で玉山鉄二が演じていた。
この本を読んで、ただ運命に翻弄された悲劇の美青年じゃなかったんだなぁ〜
ということがよく分かった。
それにしても「北条氏秀」と「上杉景虎」は同一人物でなかったとか、
北条氏政が上杉景虎をちゃんと供養しているとか、
かつての『炎の蜃気楼』読者としては、細かい新発見の連続(笑)。
とにかく「関東管領の上杉氏」の称号の絶大さに驚いた。
謙信が跡目をどのように考えていたかの検証も分かりやすかった。
この本を読むかぎり「上杉」の名前に、謙信は振り回されていたことになり、
長尾と上杉と二つの名前を背負ったことで
複雑な家督相続の流れを生み、悲劇的な事態をいくつも呼び寄せてしまったように感じた。
ただ、著者の言う、
自分の子どもに継がせない、だから自分の子どもをつくらない、という発想が、
謙信の生涯不犯や景勝の晩婚&側室無しという事態を生んだ、
という推測はどうも頷けないのだが・・・・・・。
御舘の乱を経て、景勝が直江兼続一人に権力を掌握させた理由も
この本を読んで少しわかったような気がするのだが、
著者は兼続の権力掌握については非好意的だ。
それならばもう少し、もう一人の謙信の養子である上条政繁について
詳しく説明して欲しかった。
などと言われてしまった私。
えーっと上杉景虎ってアレか???と思い出したのは『炎の蜃気楼』
いろいろな意味でショッキングな戦国武将転生ファンタジー。
そう言えば「天地人」で玉山鉄二が演じていた。
この本を読んで、ただ運命に翻弄された悲劇の美青年じゃなかったんだなぁ〜
ということがよく分かった。
それにしても「北条氏秀」と「上杉景虎」は同一人物でなかったとか、
北条氏政が上杉景虎をちゃんと供養しているとか、
かつての『炎の蜃気楼』読者としては、細かい新発見の連続(笑)。
とにかく「関東管領の上杉氏」の称号の絶大さに驚いた。
謙信が跡目をどのように考えていたかの検証も分かりやすかった。
この本を読むかぎり「上杉」の名前に、謙信は振り回されていたことになり、
長尾と上杉と二つの名前を背負ったことで
複雑な家督相続の流れを生み、悲劇的な事態をいくつも呼び寄せてしまったように感じた。
ただ、著者の言う、
自分の子どもに継がせない、だから自分の子どもをつくらない、という発想が、
謙信の生涯不犯や景勝の晩婚&側室無しという事態を生んだ、
という推測はどうも頷けないのだが・・・・・・。
御舘の乱を経て、景勝が直江兼続一人に権力を掌握させた理由も
この本を読んで少しわかったような気がするのだが、
著者は兼続の権力掌握については非好意的だ。
それならばもう少し、もう一人の謙信の養子である上条政繁について
詳しく説明して欲しかった。
2011年2月8日に日本でレビュー済み
「御館の乱」...この戦いを単に上杉氏の後継者争いの局地戦だと考えていなかっただろうか?
自分も実はその一人だったのだが、この本を読んでその認識が根底から変わった。
「関が原」「小牧長久手の戦い」など戦国期における歴史的転換点のひとつが「御館の乱」であったことがよくわかった。
戦国関東の歴史の流れを一変させ、ひいてはその後の戦国史全体を決定付けた戦いとして「御館の乱」の実態を明らかにした本書の価値は計り知れない。
緻密な歴史考証を基に様々な説を解りやすく論証していく伊東 潤氏、乃至 政彦氏の歴史洞察力と表現力には脱帽した。
戦国史を語るうえで必読といえる本の誕生である。
自分も実はその一人だったのだが、この本を読んでその認識が根底から変わった。
「関が原」「小牧長久手の戦い」など戦国期における歴史的転換点のひとつが「御館の乱」であったことがよくわかった。
戦国関東の歴史の流れを一変させ、ひいてはその後の戦国史全体を決定付けた戦いとして「御館の乱」の実態を明らかにした本書の価値は計り知れない。
緻密な歴史考証を基に様々な説を解りやすく論証していく伊東 潤氏、乃至 政彦氏の歴史洞察力と表現力には脱帽した。
戦国史を語るうえで必読といえる本の誕生である。
2011年2月12日に日本でレビュー済み
謙信亡き後の後継者争いとしか思われてなかった「御館の乱」が歴史的分岐点として重大な事件だったと説く伊東氏、乃至氏の洞察力と研究に驚かされました。
しかも分かりやすく丁寧な説明でとても読み易かったです。
武田、北条、上杉の関東戦国史を事細かく説明したうえで、新たな新説を次々と繰り出してくるあたりが小説を読んでるような感覚になり、面白く読み進めます。
しかも分かりやすく丁寧な説明でとても読み易かったです。
武田、北条、上杉の関東戦国史を事細かく説明したうえで、新たな新説を次々と繰り出してくるあたりが小説を読んでるような感覚になり、面白く読み進めます。
2018年8月1日に日本でレビュー済み
御館の乱の経緯を知りたく本書を購入したのですが、本書は御館の乱で敗れた上杉景虎に焦点を当て、
景虎に託された使命やその存在意義を浮かび上がらせる内容です。
1・2章を伊東潤氏が担当し、まず東国の戦国史を北条氏康、武田信玄、上杉謙信を中心に俯瞰し、
北条三郎が上杉謙信の養子となった経緯を解説します。
3~7章を乃至政彦氏が担当し、諸説ある謙信の後継者説を紹介し、越相同盟に至る経緯と
越相同盟破綻から御館の乱までの周辺勢力の動向を語り、御館の乱に関わるキーパーソンを紹介。
謙信の死因を述べ、謙信の死から御館の乱に至る経緯を解説し、御館の乱の後半戦の経過を追いながら
景勝の勝因と景虎の敗因を探り、乱後の景勝の政権を述べて終わります。
最も興味深かったのは、謙信の後嗣と、その体制に関わる仮説でした。
お薦めします。
景虎に託された使命やその存在意義を浮かび上がらせる内容です。
1・2章を伊東潤氏が担当し、まず東国の戦国史を北条氏康、武田信玄、上杉謙信を中心に俯瞰し、
北条三郎が上杉謙信の養子となった経緯を解説します。
3~7章を乃至政彦氏が担当し、諸説ある謙信の後継者説を紹介し、越相同盟に至る経緯と
越相同盟破綻から御館の乱までの周辺勢力の動向を語り、御館の乱に関わるキーパーソンを紹介。
謙信の死因を述べ、謙信の死から御館の乱に至る経緯を解説し、御館の乱の後半戦の経過を追いながら
景勝の勝因と景虎の敗因を探り、乱後の景勝の政権を述べて終わります。
最も興味深かったのは、謙信の後嗣と、その体制に関わる仮説でした。
お薦めします。
2011年5月6日に日本でレビュー済み
よく研究されているが前振りが長く、御館の乱以降の分析が短すぎる。
また景虎・景勝の人物についてももう少し掘り下げてもらっても
よかった。
また景虎・景勝の人物についてももう少し掘り下げてもらっても
よかった。