つい先達て、バンクシーの絵画がオークション会場で切り刻まれた事件は美術愛好家の方達にとっては余りにも衝撃的だったに違いない。
だが、無残な余韻が残る中、恐らく多くの方は考えたのではなかろうか…「果たして落札者はこの作品を買うであろうか?」と。
“芸術作品”としてはすっかり破壊されてしまった…だが、この“曰く付き”となった作品の“市場価値”はどうなるのか???
本書が書かれたのは数年前なので残念ながら“バンクシー事件”には触れていないが「芸術と金」に纏わる裏事情を赤裸々に綴っている事は間違いない。
即ち、本書は“綺麗事”では片付けられない芸術の真の姿を見せ付けてくれるのだ。
クリスティーズとサザビーズという二大オークションハウスで活躍した経歴の持ち主である著者が語る本書は、ひたすら「何が作品の価値を高めるか」という鋭い切り口で展開しており、今まで考え付かなかったような指摘が絶え間なく続いて行く。
例えば「ゴッホの最期が自殺でなかったなら…モディリアニがあれ程までに早世しなかったなら、彼等の作品価値はもう少し下がっていたかもしれない」という程度の内容はほんの序の口…画家の生涯や逸話のみならず、微妙な時代背景や制作秘話、若しくはナチスの略奪と破壊に代表されるような政治的作用、更にはサイズや色彩等の具体的要素の全てが作品の価値を定め、後世の価値変動をも齎す事を詳しく教えてくれるのだ。
勿論、価格は景気にも左右される事から、バブル期に名画を買い漁った経験を持つ日本人にとっては少々耳の痛い話もあるのは事実だが、これも一つの教訓と看做す事が出来よう。
因みに、本書ではオールド・マスターズから近現代芸術までを幅広く扱っているが、特に、現代アートの“発想”を如何にオークションで扱うかに踏み込んでいる所は面白いし、《モナ・リザ》や《叫び》の盗難事件と市場価格を連動させている所も読み応えがある。
また、既に世界の至宝とされて美術館に収蔵されている作品ではなく、今でも市場に出回る可能性を秘めた作品に重きを置いて“売れ筋”の作品を紹介している所も新鮮であり、芸術の価値には世相の反映が大きく影響する事が理解出来るのではなかろうか。
その他、著者の体験談(失敗談含む)、“クリスティーズvsサザビーズ”、盗難、贋作、駄作、そして市場で人気のある画家の一覧や用語集(これが結構的を得ていて面白い)もあるので、その充実度には目を見張るものがあるし、更にはコレクターの心情にまで分け入った解説もある事から、正しく「美術市場」の全てを知る事が出来るであろう。
私は嘗て、とある元学芸員の方から「故人から美術品の委託依頼があった為に作品を受け取りにいった所、親族達が醜い争いを繰り広げて困惑した」という話を聞いた事がある
だが、これこそが現実であって「芸術はひたすら美しいもの」という発想は幻に過ぎない…そう、「芸術=金」なのだ。
だが、そこで著者の言葉が生きて来る。
「素晴らしい芸術作品を提供する事は、文明化された社会における財源を正当に支出する事につながるのだ」…と。
人々は何故に芸術にお金を費やすのか…これは正しく「芸術とは何か、人々は何故に芸術を愛するのか」を考える上でも重要な究極の哲学なのではなかろうか。
“芸術の理想と現実”の全てを語り尽くした真の名著である。
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サザビーズで朝食を─競売人が明かす美とお金の物語 単行本(ソフトカバー) – 2016/12/22
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購入オプションとあわせ買い
・シャガール、ミロは、ブルーが多いほど高額に?
・ゴッホは自殺したからこそ、価値が高まった?
・アーティストの「狂気」は市場に影響を及ぼす?
世界最古の国際競売会社サザビーズでディレクターを務めるフィリップ・フックが、長年の経験をもとに作品の様式からオークションの裏側まで、美術に関するさまざまなトピックを解説!
ガーディアンズ、サンデー・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ、スペクテーターなど各紙で「Book of the Year」を受賞!
-------------------------------------------------------------------------------
美術作品を見たときにこのような疑問を抱いたことはありませんか?
「この作品はいくらだろう?」
「あと五年か十年たつと、どのぐらいの価値になるだろう?」
「うちの壁にかかっているのを見たら、みんなは私のことをどう思うだろう?」
美術市場で35年以上にわたって仕事をしてきたフィリップ・フックが、誰もが気になる(けれど大っぴらには聞けない)「美」と「お金」に関する疑問をわかりやすく解説してくれます。
本書は「アーティストと彼らの秘密」「主題と様式」「ウォールパワー」「来歴」「市場模様」という5つのパートで構成されており、それぞれのセクションで、買い手が美術品に対して最終的に支払う金額の決め手となる要因を、著者の主観的な視点で分析しています。
「ときに滑稽で、ときに暴露的で、またときに刺激的で、さらには素晴らしくもあれば不条理」な美術の世界。
その裏側に潜む「美」と「お金」についての物語を楽しんでください。
--------------------------------------------------------------------------------
「A to Zの形式で、美術教育のすべてがこの350ページの中に凝縮されている。皮肉っぽくて、ドライで、とても魅惑的だ」
—— 『ガーディアン』
「劣悪でクレイジーで狂気に満ちたコンテンポラリーアートの世界は、どうしたら描けるのだろうか。サザビーズのシニア・ディレクターであるフック氏は、35年の自身の経験を、形式張らない回顧録に落とし込んだ。彼は、ユーモアと博識と小粋さをもって、美の経済を動かすものについて暴いている」
—— 『フィナンシャル・タイムズ』
「美術界について知っていたほうがいいかもしれないあらゆること――贋作や修復のことから盗難事件まで。あるいは小さな赤いタッチがあるだけで、絵画の価値はずっと高くなること。シャガールなら、誰もが青い絵をほしがること。しかめっ面よりも笑顔のほうがずっといいこと……アートをめぐる興味深い知識のすべてがここに。」
—— 『リテラリー・レヴュー』
「教養にあふれ、ウイットに富み、明敏であるうえに世慣れてもいて、しかもユーモアのセンスも完璧な先生から、待望久しい愉快な個人授業を受けているかのようだ。」
—— 『スペクテーター』
--------------------------------------------------------------------------------
◎世界で最も有名で馴染み深い作品を生み出したアーティスト
ダ・ヴィンチ/ムンク/ミケランジェロ/ロダン/ボッティチェリ/ゴッホ/ドラクロワ/ウォーホル ほか
◎市場で人気の高いアーティスト
セザンヌ/ダリ/ドガ/ゴーギャン/ジャコメッティ/クリムト/マグリット/マネ/マティス/ミロ/モディリアーニ/モネ/ピカソ/ルノワール/ロダン/ロートレック/ブランクーシ ほか
◎そこそこのアーティスト
ビュフェ/カシニョール/ドーソン/カトラン/エッツァルト/フリント/ヴェトリアーノ/キンケード ほか
◎精神的苦悩が評価価値につながるアーティスト
ジェリコー/ロスコ/エゴン・シーレ/ムンク/ゴッホ/キルヒナー/ポロック ほか
【本書まえがきより】
人が美術館や展覧会場で美術作品の前に立ったとき、自らに問いかける最初の二つの質問はだいたい決まっている。
一つ目は「この作品を好きだろうか?」であり、二つ目は「作者は誰だろう?」だ。オークションの競売室や画廊で作品の前に立たったときにも、まずはこの同じ二つの問いかけをするだろう。
だが、次には別の問いが続くことになる。それもいくらか高尚さに欠ける問いだ。
たとえば「いくらだろう?」とか、「あと五年か十年たつと、どのぐらいの価値になるだろう?」、さらには「うちの壁にかかっているのを見たら、みんなは私のことをどう思うだろう?」といった問いである。
この事典は、こうした問いに対する答えにどう到達できるか、そしてまた美術品の資産的な価値が、どのようなプロセスでもたらされるのかを紹介する手引き書だ。
私自身は、美術市場で三十五年以上にわたって仕事をしてきた。最初はオークションハウスのクリスティーズで、次に画商として働き、そして近年は再びオークションハウスのサザビーズに勤務している。
この職歴が、私が美術界に関するこの本を執筆したことの言い訳になるだろう。これは、アートとお金をめぐる後ろめたい、だがなおも魅惑的な関係について、扇情的なディテールにまで立ち入って探索する本なのだ。
◎自殺や早世したアーティストの作品は、価値が高まる!?
近年のある伝記では——簡単に納得できるものではないが——ゴッホの自殺は本当になされたわけではなかった、という推測が述べられている。ゴッホは草原に出かけ、うさぎを撃っていた若者の過失で殺されたというのだ。
この説はアーティストとしての彼の名声をいくらか減ずるものだ。苦悩に満ちた彼の絵のこれまで認められてきた価値を有効にとどめるためには、我々としては彼に自ら命を奪ってもらう必要があるのだ。
——Part1「アーティストと彼らの秘密」『自殺』より
◎美術品は、必ずしも他の金融市場と同様の動きを見せるわけではない。
株式が下がるとき、美術品が上がることもある。リーマン・ショック後、世界的な金融危機を迎えた2009年の悲惨な経済状況のなかで、優れた美術品に対する需要は、実際のところは強くなった。人々が、銀行に預けるより、唯一無比の価値ある品物に金を投じることに利点を見たためだった。
——Part5「市場模様」『お金』より
◎購入の動機となる4つの要素
人間は、さまざまな動機で美術品を買うというのは真実だ。ある人々にとっては、「投資」と「ステータス」がパイの大部分を占める。別の人々にとっては、「精神的な恩恵」と「知的・美的な喜び」が、「投資」「ステータス」を大幅に上回る。買い手が2人いたとして、両者がまったく同じ割合をもつことはない。だが、それが誰であっても、この4つの要素のすべてが購入動機となっている。
——Part5「市場模様」『ステータス・シンボルとしての美術品』より
◎価値評価が高い作品とは。
モディリアーニの主題の人気のトップは、疑いなく裸婦像である。彼女たちが横たわっているか起きているか、どちらが市場にとってより望ましいかは、議論の余地がある点だ。着衣の肖像については、確実に縦の方が好ましい。しなやかで首が長いほど、より良い。市場としては概して、彼が早い時期に自死同然に亡くなったことに感謝している。もしもっと長く生きていたら、優柔不断で繰り返しの多い画家になっていたかもしれないからだ。
——Part2「主題と様式」『美術市場で人気の高いアーティストたち』より
・ゴッホは自殺したからこそ、価値が高まった?
・アーティストの「狂気」は市場に影響を及ぼす?
世界最古の国際競売会社サザビーズでディレクターを務めるフィリップ・フックが、長年の経験をもとに作品の様式からオークションの裏側まで、美術に関するさまざまなトピックを解説!
ガーディアンズ、サンデー・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ、スペクテーターなど各紙で「Book of the Year」を受賞!
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美術作品を見たときにこのような疑問を抱いたことはありませんか?
「この作品はいくらだろう?」
「あと五年か十年たつと、どのぐらいの価値になるだろう?」
「うちの壁にかかっているのを見たら、みんなは私のことをどう思うだろう?」
美術市場で35年以上にわたって仕事をしてきたフィリップ・フックが、誰もが気になる(けれど大っぴらには聞けない)「美」と「お金」に関する疑問をわかりやすく解説してくれます。
本書は「アーティストと彼らの秘密」「主題と様式」「ウォールパワー」「来歴」「市場模様」という5つのパートで構成されており、それぞれのセクションで、買い手が美術品に対して最終的に支払う金額の決め手となる要因を、著者の主観的な視点で分析しています。
「ときに滑稽で、ときに暴露的で、またときに刺激的で、さらには素晴らしくもあれば不条理」な美術の世界。
その裏側に潜む「美」と「お金」についての物語を楽しんでください。
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「A to Zの形式で、美術教育のすべてがこの350ページの中に凝縮されている。皮肉っぽくて、ドライで、とても魅惑的だ」
—— 『ガーディアン』
「劣悪でクレイジーで狂気に満ちたコンテンポラリーアートの世界は、どうしたら描けるのだろうか。サザビーズのシニア・ディレクターであるフック氏は、35年の自身の経験を、形式張らない回顧録に落とし込んだ。彼は、ユーモアと博識と小粋さをもって、美の経済を動かすものについて暴いている」
—— 『フィナンシャル・タイムズ』
「美術界について知っていたほうがいいかもしれないあらゆること――贋作や修復のことから盗難事件まで。あるいは小さな赤いタッチがあるだけで、絵画の価値はずっと高くなること。シャガールなら、誰もが青い絵をほしがること。しかめっ面よりも笑顔のほうがずっといいこと……アートをめぐる興味深い知識のすべてがここに。」
—— 『リテラリー・レヴュー』
「教養にあふれ、ウイットに富み、明敏であるうえに世慣れてもいて、しかもユーモアのセンスも完璧な先生から、待望久しい愉快な個人授業を受けているかのようだ。」
—— 『スペクテーター』
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◎世界で最も有名で馴染み深い作品を生み出したアーティスト
ダ・ヴィンチ/ムンク/ミケランジェロ/ロダン/ボッティチェリ/ゴッホ/ドラクロワ/ウォーホル ほか
◎市場で人気の高いアーティスト
セザンヌ/ダリ/ドガ/ゴーギャン/ジャコメッティ/クリムト/マグリット/マネ/マティス/ミロ/モディリアーニ/モネ/ピカソ/ルノワール/ロダン/ロートレック/ブランクーシ ほか
◎そこそこのアーティスト
ビュフェ/カシニョール/ドーソン/カトラン/エッツァルト/フリント/ヴェトリアーノ/キンケード ほか
◎精神的苦悩が評価価値につながるアーティスト
ジェリコー/ロスコ/エゴン・シーレ/ムンク/ゴッホ/キルヒナー/ポロック ほか
【本書まえがきより】
人が美術館や展覧会場で美術作品の前に立ったとき、自らに問いかける最初の二つの質問はだいたい決まっている。
一つ目は「この作品を好きだろうか?」であり、二つ目は「作者は誰だろう?」だ。オークションの競売室や画廊で作品の前に立たったときにも、まずはこの同じ二つの問いかけをするだろう。
だが、次には別の問いが続くことになる。それもいくらか高尚さに欠ける問いだ。
たとえば「いくらだろう?」とか、「あと五年か十年たつと、どのぐらいの価値になるだろう?」、さらには「うちの壁にかかっているのを見たら、みんなは私のことをどう思うだろう?」といった問いである。
この事典は、こうした問いに対する答えにどう到達できるか、そしてまた美術品の資産的な価値が、どのようなプロセスでもたらされるのかを紹介する手引き書だ。
私自身は、美術市場で三十五年以上にわたって仕事をしてきた。最初はオークションハウスのクリスティーズで、次に画商として働き、そして近年は再びオークションハウスのサザビーズに勤務している。
この職歴が、私が美術界に関するこの本を執筆したことの言い訳になるだろう。これは、アートとお金をめぐる後ろめたい、だがなおも魅惑的な関係について、扇情的なディテールにまで立ち入って探索する本なのだ。
◎自殺や早世したアーティストの作品は、価値が高まる!?
近年のある伝記では——簡単に納得できるものではないが——ゴッホの自殺は本当になされたわけではなかった、という推測が述べられている。ゴッホは草原に出かけ、うさぎを撃っていた若者の過失で殺されたというのだ。
この説はアーティストとしての彼の名声をいくらか減ずるものだ。苦悩に満ちた彼の絵のこれまで認められてきた価値を有効にとどめるためには、我々としては彼に自ら命を奪ってもらう必要があるのだ。
——Part1「アーティストと彼らの秘密」『自殺』より
◎美術品は、必ずしも他の金融市場と同様の動きを見せるわけではない。
株式が下がるとき、美術品が上がることもある。リーマン・ショック後、世界的な金融危機を迎えた2009年の悲惨な経済状況のなかで、優れた美術品に対する需要は、実際のところは強くなった。人々が、銀行に預けるより、唯一無比の価値ある品物に金を投じることに利点を見たためだった。
——Part5「市場模様」『お金』より
◎購入の動機となる4つの要素
人間は、さまざまな動機で美術品を買うというのは真実だ。ある人々にとっては、「投資」と「ステータス」がパイの大部分を占める。別の人々にとっては、「精神的な恩恵」と「知的・美的な喜び」が、「投資」「ステータス」を大幅に上回る。買い手が2人いたとして、両者がまったく同じ割合をもつことはない。だが、それが誰であっても、この4つの要素のすべてが購入動機となっている。
——Part5「市場模様」『ステータス・シンボルとしての美術品』より
◎価値評価が高い作品とは。
モディリアーニの主題の人気のトップは、疑いなく裸婦像である。彼女たちが横たわっているか起きているか、どちらが市場にとってより望ましいかは、議論の余地がある点だ。着衣の肖像については、確実に縦の方が好ましい。しなやかで首が長いほど、より良い。市場としては概して、彼が早い時期に自死同然に亡くなったことに感謝している。もしもっと長く生きていたら、優柔不断で繰り返しの多い画家になっていたかもしれないからだ。
——Part2「主題と様式」『美術市場で人気の高いアーティストたち』より
- 本の長さ472ページ
- 言語日本語
- 出版社フィルムアート社
- 発売日2016/12/22
- ISBN-104845916320
- ISBN-13978-4845916320
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商品の説明
著者について
【著者】
フィリップ・フック(Philip Hook)
オークション会社サザビーズのディレクター。また、絵画部門のシニア・スペシャリストを務める。35年にわたり美術界の仕事に従事し、その間、オークション会社クリスティーズのディレクターを務め、さらに画商としても国際的に活躍した。著書には、世界各国での印象派の受容の歴史を分析した『印象派はこうして世界を征服した』(白水社)など、美術市場に精通した立場から美術史を論じた書籍のほか、推理小説『灰の中の名画』(ハヤカワ文庫NV)など、5冊の小説がある。また英国BBCの人気テレビ番組「アンティーク・ロードショー」では、1978年から2003年まで、レギュラーで鑑定人役を務めた。
【翻訳者】
中山ゆかり(なかやま・ゆかり)
翻訳家。慶應義塾大学法学部卒業。英国イースト・アングリア大学にて、美術・建築史学科大学院ディプロマを取得。訳書に、フィリップ・フック『印象派はこうして世界を征服した』、フローラ・フレイザー『ナポレオンの妹』、レニー・ソールズベリー/アリー・スジョ『偽りの来歴 20世紀最大の絵画詐欺事件』、サンディ・ネアン『美術品はなぜ盗まれるのか ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い』(以上、白水社)、デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(共訳、岩波書店)、『ロダン 天才のかたち』(共訳、白水社)など。
フィリップ・フック(Philip Hook)
オークション会社サザビーズのディレクター。また、絵画部門のシニア・スペシャリストを務める。35年にわたり美術界の仕事に従事し、その間、オークション会社クリスティーズのディレクターを務め、さらに画商としても国際的に活躍した。著書には、世界各国での印象派の受容の歴史を分析した『印象派はこうして世界を征服した』(白水社)など、美術市場に精通した立場から美術史を論じた書籍のほか、推理小説『灰の中の名画』(ハヤカワ文庫NV)など、5冊の小説がある。また英国BBCの人気テレビ番組「アンティーク・ロードショー」では、1978年から2003年まで、レギュラーで鑑定人役を務めた。
【翻訳者】
中山ゆかり(なかやま・ゆかり)
翻訳家。慶應義塾大学法学部卒業。英国イースト・アングリア大学にて、美術・建築史学科大学院ディプロマを取得。訳書に、フィリップ・フック『印象派はこうして世界を征服した』、フローラ・フレイザー『ナポレオンの妹』、レニー・ソールズベリー/アリー・スジョ『偽りの来歴 20世紀最大の絵画詐欺事件』、サンディ・ネアン『美術品はなぜ盗まれるのか ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い』(以上、白水社)、デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(共訳、岩波書店)、『ロダン 天才のかたち』(共訳、白水社)など。
登録情報
- 出版社 : フィルムアート社 (2016/12/22)
- 発売日 : 2016/12/22
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 472ページ
- ISBN-10 : 4845916320
- ISBN-13 : 978-4845916320
- Amazon 売れ筋ランキング: - 381,239位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 625位西洋画
- - 58,106位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2019年7月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年1月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
単に美しい、素晴らしいという感受性ではない絵画の見方を知ってしまったのは。果たして良かったのか悪かったのか?
そして、今後この現実がないことにして素直に作品を見ることが出来るのはであろうか?
そして、今後この現実がないことにして素直に作品を見ることが出来るのはであろうか?
2017年2月19日に日本でレビュー済み
450ページを超えるし、持ってみるとボリュームを感じるが、事典的な要素が強く、様々な事象について簡潔に書かれているため、概して読みやすい。著者の『印象派はこうして世界を征服した』では、印象派に焦点が当てられているが、本書は「内容説明」に書かれているように、オークションを通じて浮き上がってくる、「美」と「お金」の関係について、分かりやすく解説されている。
扱われている美術品の時代は様々だが、オークションを通じてということなので、基本的には動かすことが可能な絵画、彫刻などが対象となっている。
身体的な健康状態の悪さは価格を下げる可能性が高いが、一方で精神的な問題、「狂気」は価格を上げる可能性が高いこと。通常だと油彩画がパステル画よりも高いらしいのだが、『叫び』は、その知名度ゆえにムンクの油彩画よりも高い価格で落札されたこと。著者を含む競売ディレクターや絵画関係者が、その動向を読み切れなかったのに、ブックメーカーがかなり正確な予想を出していたこと。さらに、邦訳されていない画家たちの日記などにも言及しながら、従来の美術史では得られない知識や絵画に対するアプローチが極めて興味深い。
終わりの方にある、サッカー選手の移籍金と美術品の落札価格の問題など、「うんちく」というか飲み屋話とも言うべきだと思うが、これはこれで楽しめる。末尾近くの「用語集」は便利でもあり面白い。
『モナリザ』が日本に来たことは知っていたが、それが、同作がルーブルを戦後になって留守にした2回の内の1回という事実は知らなかった。
掲載された絵がカラーでないこと、画家の索引がないことが、ちょっと残念である。
読み物としてはもちろんだが、これまでの美術書などにはない視点の切り口が多く、美術品というものを理解する助けにもなってくれるようだ。
扱われている美術品の時代は様々だが、オークションを通じてということなので、基本的には動かすことが可能な絵画、彫刻などが対象となっている。
身体的な健康状態の悪さは価格を下げる可能性が高いが、一方で精神的な問題、「狂気」は価格を上げる可能性が高いこと。通常だと油彩画がパステル画よりも高いらしいのだが、『叫び』は、その知名度ゆえにムンクの油彩画よりも高い価格で落札されたこと。著者を含む競売ディレクターや絵画関係者が、その動向を読み切れなかったのに、ブックメーカーがかなり正確な予想を出していたこと。さらに、邦訳されていない画家たちの日記などにも言及しながら、従来の美術史では得られない知識や絵画に対するアプローチが極めて興味深い。
終わりの方にある、サッカー選手の移籍金と美術品の落札価格の問題など、「うんちく」というか飲み屋話とも言うべきだと思うが、これはこれで楽しめる。末尾近くの「用語集」は便利でもあり面白い。
『モナリザ』が日本に来たことは知っていたが、それが、同作がルーブルを戦後になって留守にした2回の内の1回という事実は知らなかった。
掲載された絵がカラーでないこと、画家の索引がないことが、ちょっと残念である。
読み物としてはもちろんだが、これまでの美術書などにはない視点の切り口が多く、美術品というものを理解する助けにもなってくれるようだ。
2018年8月14日に日本でレビュー済み
著者のフィリップ・フックはサザビーズの取締役を務めており、アート業界で40年のキャリアを持つという人物だ(サザビーズのウェブサイトには彼の略歴が載っている)。これまでにも何冊か美術にまつわる本を書いていて、何冊かは邦訳も出ている(同じ訳者による『印象派はこうして世界を征服した』(白水社)や、意外なところでは『灰の中の名画』という推理小説まである)。
本書でフックが論じているトピックはとても幅広い。ただし、本書に一貫して流れているテーマというものはある。「何が絵画の価格を高めるのか?」という疑問に対する答え――著者の40年にわたるアート業界での経験に裏打ちされた答えが、本書の大きな柱だ。邦訳に付けられた副題「競売人が明かす美とお金の物語」は、この本の内容をとてもよく表している(原書には「アートの世界の一から十まで」という副題が付いている)。
本書はボリュームがある本て、手に取るとずっしりと重さを感じる。でも、気軽にどんどん読み進められるのはフックの語り口の軽妙さのおかげだろう。5章の「用語集」はフックによるアート版「悪魔の辞典」で、読んでいて思わず笑ってしまう。絵画(やお金)にまつわるウンチクのような話も多く、本を読み終えた後にはきっと、誰かに内容を話したくなるに違いない。「絵を見る時には描かれた人物の口もとに注意するといいよ。口もとに笑みがあるかどうかで値段が何倍も変わってくるからね」。
個人的にオークションの関心があるため、オークション会社が採用していた(今もしている?)という「(売値)保証」「取消不能の入札」の2つの仕組みは興味深かった。
本書でフックが論じているトピックはとても幅広い。ただし、本書に一貫して流れているテーマというものはある。「何が絵画の価格を高めるのか?」という疑問に対する答え――著者の40年にわたるアート業界での経験に裏打ちされた答えが、本書の大きな柱だ。邦訳に付けられた副題「競売人が明かす美とお金の物語」は、この本の内容をとてもよく表している(原書には「アートの世界の一から十まで」という副題が付いている)。
本書はボリュームがある本て、手に取るとずっしりと重さを感じる。でも、気軽にどんどん読み進められるのはフックの語り口の軽妙さのおかげだろう。5章の「用語集」はフックによるアート版「悪魔の辞典」で、読んでいて思わず笑ってしまう。絵画(やお金)にまつわるウンチクのような話も多く、本を読み終えた後にはきっと、誰かに内容を話したくなるに違いない。「絵を見る時には描かれた人物の口もとに注意するといいよ。口もとに笑みがあるかどうかで値段が何倍も変わってくるからね」。
個人的にオークションの関心があるため、オークション会社が採用していた(今もしている?)という「(売値)保証」「取消不能の入札」の2つの仕組みは興味深かった。