執筆された頃には、すでにご本人が亡くなっていたということで、基本的にインタビューを通して話が進んでいく。様々な関係者への取材を通して徐々に浮かび上がってくる本人像。
読み進めるうちに弘文の印象は180度変わる。女たらしでだらしがない男というイメージから、元奥さんや近しい人、はたまた実の娘さんなどから語られる言葉を通して本人を知ると・・・。
人の数だけ答えがあって、本人や近くから見ている人にしかわからない苦悩や事情もたくさんある。読みながら「正しさ」とは何か?儚い善悪の基準が揺らいでいく。
弘文の生き様や性格はもちろんだが、この本のそんなところからも禅や仏教の教えの真髄を感じた。
幸か不幸か、生前「風来坊・掴みどころがない」とも称された本人には、結果的にこのインタビュー形式の本がベストだったように思われる。とはいえ、時々載せられている本人の随筆が詩的であまりに美しいので、もう少しご本人の言葉や思想に触れてみたかった気も。
単にApple製品やスティーブ・ジョブズが好きな人だと読みにくいかと思うが、仏教や禅の思想に興味がある人なら読み応えがあって楽しめると思う。8年もの年月をかけて、泥臭くご自身の足でこの本を書き上げてくださった著者に感謝。
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宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧 単行本 – 2020/4/23
柳田 由紀子
(著)
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日本エッセイスト・クラブ賞(第69回)受賞!!
「ハングリーであれ、愚直であれ」(スティーブ・ジョブズ)
──この言葉は禅の教えだった!
スティーブ・ジョブズの「生涯の師」で、iPhoneやiPodなどの革新的製品の設計思想にヒントを与えた日本人僧侶・乙川弘文。
足かけ8年、関係者への徹底的な取材の中で浮かびあがってくる、ジョブズとの魂の交流。
僧侶としての苦悩。
「日本曹洞宗の明日を担う」とまで期待された若き僧侶は、なぜ故郷を捨て、アメリカに渡ったのか?
ある人は「あんなに優れた禅僧はいない」と激賞するが、「女にだらしない、酒浸りの男だった」と批判する人もいる。──彼はいったい何者だったのか?
そして、スイス山奥での突然の死。その真相は?
一橋大学名誉教授・中谷巌氏絶賛!
【乙川弘文・略年譜】
1938年 新潟県加茂市「定光寺」の三男として生まれる。
1951年 得度。
1956年 駒澤大学仏教学部に入学。
1960年 京都大学大学院に。
1965年 永平寺に上山、修行僧となる。
1966年 永平寺の特別僧堂生に抜擢。
1967年 渡米し、カリフォルニア州「タサハラ禅マウンテンセンター」を開創。
1970年 最初の結婚。
1975年 若きスティーブ・ジョブズと出会う。
1979年 同州「マウンテンヴュー観音堂」を開創。
1983年 同州「鳳光寺」「慈光寺」開創。
1984年 離婚成立。
1986年 ジョブズとともに加茂市の実家を訪ねる。
1989年 ジョブズの提案で、彼の「ジャックリング」邸に住む。
1995年 再婚。
2001年 コロラド州ナーローパ大学で教授就任。
2002年 スイスにて、娘、摩耶とともに不慮の死を遂げる。
【著者】
柳田由紀子【やなぎだ・ゆきこ】
1963年、東京生まれ。1985年 早稲田大学第一文学部演劇専攻卒業後、新潮社入社。
月刊「03」「SINRA」「芸術新潮」の編集に携わる。
1998年、スタンフォード大学他でジャーナリズムを学ぶ。
2001年、渡米。現在、アメリカ人の夫とロサンゼルス郊外に暮らす。
著書に『二世兵士 激戦の記録──日系アメリカ人の第二次大戦』(新潮新書)、
翻訳書に、『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ』(集英社インターナショナル)などがある。
2021年、『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』で第69回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。
「ハングリーであれ、愚直であれ」(スティーブ・ジョブズ)
──この言葉は禅の教えだった!
スティーブ・ジョブズの「生涯の師」で、iPhoneやiPodなどの革新的製品の設計思想にヒントを与えた日本人僧侶・乙川弘文。
足かけ8年、関係者への徹底的な取材の中で浮かびあがってくる、ジョブズとの魂の交流。
僧侶としての苦悩。
「日本曹洞宗の明日を担う」とまで期待された若き僧侶は、なぜ故郷を捨て、アメリカに渡ったのか?
ある人は「あんなに優れた禅僧はいない」と激賞するが、「女にだらしない、酒浸りの男だった」と批判する人もいる。──彼はいったい何者だったのか?
そして、スイス山奥での突然の死。その真相は?
一橋大学名誉教授・中谷巌氏絶賛!
【乙川弘文・略年譜】
1938年 新潟県加茂市「定光寺」の三男として生まれる。
1951年 得度。
1956年 駒澤大学仏教学部に入学。
1960年 京都大学大学院に。
1965年 永平寺に上山、修行僧となる。
1966年 永平寺の特別僧堂生に抜擢。
1967年 渡米し、カリフォルニア州「タサハラ禅マウンテンセンター」を開創。
1970年 最初の結婚。
1975年 若きスティーブ・ジョブズと出会う。
1979年 同州「マウンテンヴュー観音堂」を開創。
1983年 同州「鳳光寺」「慈光寺」開創。
1984年 離婚成立。
1986年 ジョブズとともに加茂市の実家を訪ねる。
1989年 ジョブズの提案で、彼の「ジャックリング」邸に住む。
1995年 再婚。
2001年 コロラド州ナーローパ大学で教授就任。
2002年 スイスにて、娘、摩耶とともに不慮の死を遂げる。
【著者】
柳田由紀子【やなぎだ・ゆきこ】
1963年、東京生まれ。1985年 早稲田大学第一文学部演劇専攻卒業後、新潮社入社。
月刊「03」「SINRA」「芸術新潮」の編集に携わる。
1998年、スタンフォード大学他でジャーナリズムを学ぶ。
2001年、渡米。現在、アメリカ人の夫とロサンゼルス郊外に暮らす。
著書に『二世兵士 激戦の記録──日系アメリカ人の第二次大戦』(新潮新書)、
翻訳書に、『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ』(集英社インターナショナル)などがある。
2021年、『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』で第69回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社インターナショナル
- 発売日2020/4/23
- 寸法13.4 x 2.7 x 19.4 cm
- ISBN-104797673826
- ISBN-13978-4797673821
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登録情報
- 出版社 : 集英社インターナショナル (2020/4/23)
- 発売日 : 2020/4/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 336ページ
- ISBN-10 : 4797673826
- ISBN-13 : 978-4797673821
- 寸法 : 13.4 x 2.7 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 218,791位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,162位思想
- カスタマーレビュー:
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2024年1月17日に日本でレビュー済み
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2023年9月24日に日本でレビュー済み
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スティーブ・ジョブズ信者で禅に興味を持つものとして読み始めた。1人の(または2人以上の)生き様をインタビューから丁寧に書いてある。何ものの信者でなくてもぜひ最後まで読んでほしい。
2023年12月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あの世界を変えたスティブジョブズが日本仏卿の信徒であったとは
まさに、驚きの連続です 今までは単に禅の本を読んで真似をしているだけかとおもいましたが、ここまで彼に影響を与えていたとは初めて知りました、自分も仏教徒として襟を正していきたいです
まさに、驚きの連続です 今までは単に禅の本を読んで真似をしているだけかとおもいましたが、ここまで彼に影響を与えていたとは初めて知りました、自分も仏教徒として襟を正していきたいです
2023年11月28日に日本でレビュー済み
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基本インタビュー形式の為か、主語や“こそあど“が分かりにくい部分が多かった。
2023年8月31日に日本でレビュー済み
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シティーブン・ジョブズが師と仰いだ禅僧。
その謎めいた生涯を、ゆかりの人々の証言で明らかにしてゆく労作。
「藪の中」的に、証言者によって食い違う評価。
聖人か、酒・女にだらしない戒律を踏み躙った破戒僧か。しがらみを越えて人々を救った高僧か。
そんな問いが無効になるほど、器の大きな人だったらしい。
後半は、死の謎をめぐるミステリー小説のようでノンフィクションの新しい可能性を見たように感じました。
禅やジョブスに興味がなくてもお薦めです。
その謎めいた生涯を、ゆかりの人々の証言で明らかにしてゆく労作。
「藪の中」的に、証言者によって食い違う評価。
聖人か、酒・女にだらしない戒律を踏み躙った破戒僧か。しがらみを越えて人々を救った高僧か。
そんな問いが無効になるほど、器の大きな人だったらしい。
後半は、死の謎をめぐるミステリー小説のようでノンフィクションの新しい可能性を見たように感じました。
禅やジョブスに興味がなくてもお薦めです。
2024年1月4日に日本でレビュー済み
弘文が曹洞宗と微妙な距離を取った理由は、曹洞宗の正統的な戒律に反する活動を行っていたためで、それは欧米人流の禅のあり方を模索した結果でもあったのだろう。彼を慕った欧米人の若者たちはカウンターカルチャー世代のヒッピー達であり、また彼を求めた妻達も心にバランスを欠いた人達だったようだが、そのような人々に求められるがままに教えを説いた彼の生き様に、自ら地獄に落ちて泥中の蓮になろうとした慈悲心を垣間見る本書の見立ては一定の説得力があり、また美しい。ただ、美し過ぎて何か足りない要素がある気がすることから、星は一つ削った。
その足りない要素の一つとして僕が挙げたいものが、良寛の存在だ。良寛の地元・新潟で彼と同じ曹洞宗の寺に生まれた弘文は、晩年に40歳年下の美貌の尼僧・貞心尼と恋に落ちたとされる良寛の生き方をかなり意識していたのではないかと僕は予想する。著者も良寛には一応軽く言及しているのものの、それほど良寛の影響について深く掘り起さないのだが、酒好きだった点、寺を持たず清貧の貧乏僧として生きた点、日常的な生活能力を欠いていた点、女性とのロマンスなど、良寛と自分の共通点を弘文が全く認識していなかったとは考えにくく、弘文の破戒僧としての生き方は良寛という補助線を引くことで、かなり説明可能なようにも思えるのだ。
その足りない要素の一つとして僕が挙げたいものが、良寛の存在だ。良寛の地元・新潟で彼と同じ曹洞宗の寺に生まれた弘文は、晩年に40歳年下の美貌の尼僧・貞心尼と恋に落ちたとされる良寛の生き方をかなり意識していたのではないかと僕は予想する。著者も良寛には一応軽く言及しているのものの、それほど良寛の影響について深く掘り起さないのだが、酒好きだった点、寺を持たず清貧の貧乏僧として生きた点、日常的な生活能力を欠いていた点、女性とのロマンスなど、良寛と自分の共通点を弘文が全く認識していなかったとは考えにくく、弘文の破戒僧としての生き方は良寛という補助線を引くことで、かなり説明可能なようにも思えるのだ。
2022年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者のご苦労に頭が下がりました。
人間の優しさとは何なのか⁈
人間の強さとは何なのか⁉︎
このお坊さんがアメリカで禅を広げて下さった事に心から敬意を表します。
人間の優しさとは何なのか⁈
人間の強さとは何なのか⁉︎
このお坊さんがアメリカで禅を広げて下さった事に心から敬意を表します。
2020年5月3日に日本でレビュー済み
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松本史朗さんの「仏教への道」(1993)に出て来る空也上人の話を思い出す。
「年老いた病女の世話に当たり、病が癒えた老女が望んだことは空也と性的な関係が持ちたいということであった。・・・
「上人はしばらく考えておられたが、遂にこの女と交わってもよいとの気色を示された。病女は嘆息して、吾は神泉苑の老狐、上人は真の聖人、といいおわって忽然として姿を消した。」・・・
彼は他人への愛ゆえに自己のすべてを完全に捨て去ったのである。自己の名声をも、そしてまた、自己の清らかさも。・・・
これほど徹底的な自己放棄、これほど無私な愛がどこにあるであろうか。」(一部「空也」(堀一郎)の孫引き)
「人は、必要な時にしか心の扉を開けないけれど、弘文のドアはいつでも開いているんです。その扉の中に僕ら厚かましいアメリカの若者がわんさか飛び込んで、弘文をアメリカにとどまらせた。しかも、ハリエットという強烈な個性の女性まで現れて結婚へと導いた。(慈光寺の二代目住職 マイケル・ニューホール」
「弘文は絶対にノーと言わない人だった。と同時に、実に聞き上手で、目の前にいる人の痛みを、我が事のように感じることのできる人でもありました。相手の相談には、いかなる時も、自分の身体を通した誠実な言葉を慎重に選んで答えていました。(最初の妻 ハリエット)
しかし一方で酒と女にだらしなく、アメリカで少なくとも3人の女性と関係し、うち2人と結婚、5人の子供を儲けている。しかも再婚は57歳時の出来婚?で、相手は親子程も年の離れたドイツ人。家では酒に溺れ、暴力を振るうこともあり、家族からはアルコール依存症と見られていた。再婚時の長女は「できることなら父とも呼びたくない」という。
とにかく「禅はクール!」という70年代のアメリカでは日本から来た禅僧は一種のアイドルで、「日本人僧侶は信じられないくらいモテたんです。ある種のアメリカ人女性にとって彼らはエキゾチックでセクシーな存在だった。弘文はそれらの女性たちから積極的に迫られて抵抗できなかったのでしょう。惹きつけられてしまったのでしょう。
なぜなら、彼の心が純情な少年のままだったから。」(マウンテンビュー観音堂住職のレス・ケイ)
弘文はしばしば「私は禅僧ではない、仏教の僧侶だ」と語り、<禅>という言葉も極力使いたくなく、どうしても使わないといけない時は「a so-called Zen monk(いわゆる禅僧)」といい、道元よりも釈迦についての話の方が多かったという。
禅自体は単純なものであり、言語の否定、反省的思考の否定、時間(持続)の否定、自己を対象と主観に分割することの否定、つまり人間世界を否定する反仏教的な神秘思想であろう。(「禅思想の批判的研究」松本史朗 1994)
「彼(鈴木俊隆)や弘文さんをあたかも教祖のように崇めるアメリカ人が多いのですが、僕はそれにも違和感を覚えます。彼らの法話を聴いたり、書いたものを読んだりしますと、昔から田舎の坊さんが説いていたことそのもの。特筆すべきことは何もないんです。しかし、アメリカ人は初めて聴いたものだから、衝撃を受けたんでしょうな。」(ロサンゼルス禅宗寺 僧侶の加藤和光)
弘文で重要なのは禅ではなく、衆生を救おうとする誓願の強度、純度だろう。
「<衆生無辺誓願度>ってご存知ですか?迷える人々は無数にいるが、すべての人を助けたいと願う」という意味で、仏教修行者の誓願です。つまるところ僧侶とは誓願だと言いますが、弘文はまさに"誓願の人"でした。
(鳳光寺元住職 ボブ・ワトキンズ)
「あぁ・・・あぁ、ともに地獄に堕ちたんだね・・・弘文さんは、女性たちとともに自ら"願って"地獄に墜ちたんだ・・・。
私は今あなたから弘文さんが「結婚は修行だ」と言っていたと聞いて、合点がいった気持ちですよ。弘文さんは、自分だけ悟りすますのではなく、自分の本能のままに相手の女性を救い、ともに地獄に堕ちる道を選んだのです。」(永平寺で共に特別僧堂生だった田中真海)
日本にいてはここまで誓願が試されることはなく、駒沢大仏教学部で13年後輩の松本史朗さんも穏やかな家庭生活を送っているだろう。しかしあの時代のアメリカではそうは行かず、 弘文は期せずして「仏教への道」を現実に生きてしまったと言える。
「われわれはこの苦しみの沙婆世界に、過去世の行為(業)の結果として生じたのではなく、みずから願って一切衆生を済度するために生まれて来たのである。ということは、ある意味では菩薩は仏以上の存在であり、人間は神以上にとうとい存在であることを示している。」(仏教への道)
「年老いた病女の世話に当たり、病が癒えた老女が望んだことは空也と性的な関係が持ちたいということであった。・・・
「上人はしばらく考えておられたが、遂にこの女と交わってもよいとの気色を示された。病女は嘆息して、吾は神泉苑の老狐、上人は真の聖人、といいおわって忽然として姿を消した。」・・・
彼は他人への愛ゆえに自己のすべてを完全に捨て去ったのである。自己の名声をも、そしてまた、自己の清らかさも。・・・
これほど徹底的な自己放棄、これほど無私な愛がどこにあるであろうか。」(一部「空也」(堀一郎)の孫引き)
「人は、必要な時にしか心の扉を開けないけれど、弘文のドアはいつでも開いているんです。その扉の中に僕ら厚かましいアメリカの若者がわんさか飛び込んで、弘文をアメリカにとどまらせた。しかも、ハリエットという強烈な個性の女性まで現れて結婚へと導いた。(慈光寺の二代目住職 マイケル・ニューホール」
「弘文は絶対にノーと言わない人だった。と同時に、実に聞き上手で、目の前にいる人の痛みを、我が事のように感じることのできる人でもありました。相手の相談には、いかなる時も、自分の身体を通した誠実な言葉を慎重に選んで答えていました。(最初の妻 ハリエット)
しかし一方で酒と女にだらしなく、アメリカで少なくとも3人の女性と関係し、うち2人と結婚、5人の子供を儲けている。しかも再婚は57歳時の出来婚?で、相手は親子程も年の離れたドイツ人。家では酒に溺れ、暴力を振るうこともあり、家族からはアルコール依存症と見られていた。再婚時の長女は「できることなら父とも呼びたくない」という。
とにかく「禅はクール!」という70年代のアメリカでは日本から来た禅僧は一種のアイドルで、「日本人僧侶は信じられないくらいモテたんです。ある種のアメリカ人女性にとって彼らはエキゾチックでセクシーな存在だった。弘文はそれらの女性たちから積極的に迫られて抵抗できなかったのでしょう。惹きつけられてしまったのでしょう。
なぜなら、彼の心が純情な少年のままだったから。」(マウンテンビュー観音堂住職のレス・ケイ)
弘文はしばしば「私は禅僧ではない、仏教の僧侶だ」と語り、<禅>という言葉も極力使いたくなく、どうしても使わないといけない時は「a so-called Zen monk(いわゆる禅僧)」といい、道元よりも釈迦についての話の方が多かったという。
禅自体は単純なものであり、言語の否定、反省的思考の否定、時間(持続)の否定、自己を対象と主観に分割することの否定、つまり人間世界を否定する反仏教的な神秘思想であろう。(「禅思想の批判的研究」松本史朗 1994)
「彼(鈴木俊隆)や弘文さんをあたかも教祖のように崇めるアメリカ人が多いのですが、僕はそれにも違和感を覚えます。彼らの法話を聴いたり、書いたものを読んだりしますと、昔から田舎の坊さんが説いていたことそのもの。特筆すべきことは何もないんです。しかし、アメリカ人は初めて聴いたものだから、衝撃を受けたんでしょうな。」(ロサンゼルス禅宗寺 僧侶の加藤和光)
弘文で重要なのは禅ではなく、衆生を救おうとする誓願の強度、純度だろう。
「<衆生無辺誓願度>ってご存知ですか?迷える人々は無数にいるが、すべての人を助けたいと願う」という意味で、仏教修行者の誓願です。つまるところ僧侶とは誓願だと言いますが、弘文はまさに"誓願の人"でした。
(鳳光寺元住職 ボブ・ワトキンズ)
「あぁ・・・あぁ、ともに地獄に堕ちたんだね・・・弘文さんは、女性たちとともに自ら"願って"地獄に墜ちたんだ・・・。
私は今あなたから弘文さんが「結婚は修行だ」と言っていたと聞いて、合点がいった気持ちですよ。弘文さんは、自分だけ悟りすますのではなく、自分の本能のままに相手の女性を救い、ともに地獄に堕ちる道を選んだのです。」(永平寺で共に特別僧堂生だった田中真海)
日本にいてはここまで誓願が試されることはなく、駒沢大仏教学部で13年後輩の松本史朗さんも穏やかな家庭生活を送っているだろう。しかしあの時代のアメリカではそうは行かず、 弘文は期せずして「仏教への道」を現実に生きてしまったと言える。
「われわれはこの苦しみの沙婆世界に、過去世の行為(業)の結果として生じたのではなく、みずから願って一切衆生を済度するために生まれて来たのである。ということは、ある意味では菩薩は仏以上の存在であり、人間は神以上にとうとい存在であることを示している。」(仏教への道)