心の哲学の著書では、脳や中枢神経の構造・機能についての科学的、医学的な
知見はほとんど参照されず、形而上学に特化したものが大半で物足りないと
感じていました。
この本は、その物足りない部分を見事に押さえています。
医学的な実験の成果や、解剖学の知見を基礎にして、心、意識、感情などの
認知活動を哲学的な視点から論じています。
内容は、認知哲学の基本的なテーマを幅広く押さえたもので、一般の啓蒙書と
しても十分に面白く読める内容です。
注が分かりやすく、本文の下段に書かれているのも良いです。
図表や絵が豊富です。内容は申し分ないです。
目次を読むだけでも興味をかきたてられます。
科学の対象としての意識、中国語の部屋、計算の複雑さと意識、ニューラルネット、
ロボット、チューリングテスト、フレーム問題、進化の視点と個体の視点、
観念連合説、認知心理学、生得説再考、結びつけ問題、おばあちゃん細胞説
クオリア問題、チャーマーズの「ゾンビ論法」、皇帝の新しい心、等々・・・
ただ、著書名と装丁と帯でかなり損をしているような気がします。
本書が対象とする読者層で副題の「エピステモロジー」の意味を知っている
人は少ないと思います。あとがきに意味が書かれていますが。
内容は初学者向けなので、「〜入門」、「〜の基本問題」で良かったのでは。
意味不明なカバーの絵も本の内容がとっつきにくいという印象を与えます。
擦れたような古い絵はカバーの劣化のようにも見えます。
とっつき易い書名とシンプルな装丁にして、目次にある用語を帯に書きなぐる
だけで、購買意欲を書き立てるのに十分だったという気がします。
内容以外の部分がここまで気にかかる著書も珍しいです。
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認知哲学―心と脳のエピステモロジー (ワードマップ) 単行本(ソフトカバー) – 2009/9/4
山口 裕之
(著)
ダブルポイント 詳細
近年の脳研究の発展にはめざましいものがありますが、どのようにして脳から心が立ちあらわれてくるのか、我々は自由意思をもつのかという、心の根本問題への答えはいまだに得られていません。「脳は高度な情報処理機関」というこれまでの考え方は、はたして有効なのでしょうか? 本書は、一般性や反復などの概念にもとづく「科学」という営み全体を捉えなおすことから始めて、この問いに迫ります。「意識の科学」の提出する驚くべき成果を読みほどき、脳科学の哲学的基礎を考えるしなやかな認知哲学の入門書です。
- ISBN-104788511746
- ISBN-13978-4788511743
- 出版社新曜社
- 発売日2009/9/4
- 言語日本語
- 寸法12.8 x 1.8 x 18.8 cm
- 本の長さ306ページ
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登録情報
- 出版社 : 新曜社 (2009/9/4)
- 発売日 : 2009/9/4
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 306ページ
- ISBN-10 : 4788511746
- ISBN-13 : 978-4788511743
- 寸法 : 12.8 x 1.8 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 779,450位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年9月19日に日本でレビュー済み
2021年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他の方のレビューにあるように、認知に関しての学説を幅広く紹介したものであり、参考書として良書と思う。
しかしながら、≪はじめに≫で述べられている様に、それらを考えるための原理として、まず「アナロジー」を採用すると宣言しているのが大変興味深い。要するに、アナロジーが、認知の重要なキーであると、(本書の分析とは無関係に)著者が行動で示しているように思われる。
著者は、フランス経験論哲学を研究された方のようであるが、是非、ドイツ(後アメリカに亡命)カッシーラーの『シンボル形式の哲学』や、鈴木宏昭『類似と思考』についての見解を聞いてみたく思う。
しかしながら、≪はじめに≫で述べられている様に、それらを考えるための原理として、まず「アナロジー」を採用すると宣言しているのが大変興味深い。要するに、アナロジーが、認知の重要なキーであると、(本書の分析とは無関係に)著者が行動で示しているように思われる。
著者は、フランス経験論哲学を研究された方のようであるが、是非、ドイツ(後アメリカに亡命)カッシーラーの『シンボル形式の哲学』や、鈴木宏昭『類似と思考』についての見解を聞いてみたく思う。
2014年9月13日に日本でレビュー済み
『認知哲学』と云うと既にチャーチランドの同名の大著が思い浮かぶが、あちらが飽く迄筆者の主張を前面に押し出したゴリゴリの神経科学至上主義のコネクショニズム宣伝書だったのに対して、本書は今日「認知哲学」と云うカテゴリーで括られ得る様々な思想、学説、知見を包括的に概説して、その交通整理を試みたもの。思想的にはそれ程ビックリする様な考察を行っている訳ではないが、日本でここまで範囲を広げて扱った本は多分他に見当たらないので、暫くは参考書として重宝しそう。単なる認知科学でもなく、英米の分析哲学系に特化した「心の哲学」でもなく(著者はコンディヤックの本を書いているが、面白いことに『心の哲学』シリーズ等で有名な勁草書房からである)、神経科学、計算理論、比較認知科学、認知心理学、感情の諸科学等のトピックを適宜配置しながら、著者の言葉を借りればエピステモロジー的立場から(私には具体的に何処がそうなのかイマイチピンと来なかったが)分析していて、どれかに偏向することが無い。換言すれば著者自身のパンチが弱いが、その分余計な雑音に頭を悩ませる必要も無い。心や意識に関する問題圏の広がりをざっと概観したい読者にとっては、手頃な見取り図になってくれることだろう。哲学系の読者であれば、これに勁草書房の『新・心の哲学シリーズ』や戸田山和久の『哲学入門』等を併せて読まれると良いだろう。