編集したものであった。したがって、同新聞を購読していない私はすべて新しい文章として読んだ。
同じテーマについて書かれたものではないこと、連載期間が7年半と長いこと、および日付順ではなくテーマ別に掲載されていたせいで、読むのに時間がかかった。両眼とも若年性白内障手術を受けてから2年しか経っていないのに、最近また見えにくくなり活字を夢中で追っていると眩暈がして気分が悪くなるせいもある。
毎日購読紙や購読誌を読み、Web上に配信されたニュースに目を通し、「このことは後でよく考えよう」、「これは後で調べよう」と思のだが、生きてゆくためにこなさなければならない日常の雑事に追われ続けている私は、「後で」と思ったことがほぼすべてできていないことが、この本を座って読み終えてよくわかった。更年期で5年余りひどく具合が悪かったせいもあるのだが、ベッドに寝転んだまま読書する時間が余りにも長過ぎたと反省し、これからは以前のように座ってノートを取りながら読もうと決めた。
本書で『小説新潮』にお書きになった「2050年」という短編小説に触れておられたので、今夜読み返したい（19歳の少女が2016年8月15日、千葉県の老人ホームに放火しようとした疑いで逮捕されたというニュースが報道された。日本社会の健全性が損なわれるほど高齢者の比率が高まる35年後の世の中を想像しようとしても、その未来社会において「放火」という大量殺人や放火犯が称賛されている様は現実味がなかっただけに、このニュースを目にしハッとした）。
押しつけがましく目立ちたいだけの人が増えすぎた現代、とても新鮮に感じられた。「さりげなく」、「控えめに」していると存在していないかのような扱いを受けがちになっているが、そのようなあり方こそ目指すべきものであるということにもう一度目をとめ見直して欲しい。
なお、カバー写真は高山浩数氏の手によるものである。誰がお撮りになったかこれまで気にしたことはなかったのだが、篠山紀信氏が撮影なさった写真が表紙に掲載された本を今年買ったばかりなので、出来上がりの違いに少し驚いている。他にも同じ服装の写真が表紙に使われている本があるが、この写真だけ私の目には別人に見える。外見で本を書くわけではもちろんないが、連載「私日記」を読んでいるので私が勝手に著者のお身体を心配しているせいで写真が気になってしまう。これも余計なお世話かもしれない。
因みに、著者の本（250~300冊）は手に入る限り買い求め大切な蔵書として保管し折りに触れ読み返している。
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