YA向け小説？を多数手がける作者による本。まめふくさんの絵を効果的に使った素敵な装丁で、表紙裏には綺麗な異国風の文字の様な模様があると言う一風変わった作品です。
予備知識無しで読み始めましたが、登場人物の名前が韓国風か中国風かよく分からないし、描かれる世界観も中央アジアの様な中国の様な韓国の様な不思議な感触で面食らいました。主人公の少女も幼いながら頑張っているが、中々上手くいかずにへこむ場面が多くて、途中で投げ出す寸前になったのが正直なところです。
ところが、半分を過ぎる頃には、中国の辺境の山地の村で、多民族の人々がつましくも懸命に生きる日々と、主人公や周囲の少女達が喜びや哀しみの感情を歌や書に表し、互いに励まし合いながら成長してゆく姿が描かれていて引き込まれました。特に、結婚と苦難の日々が同義だった時代に、二度と再び逢えないであろう花嫁に向けて贈られる彼女達の書の内容の哀切さには打たれます。
作中で少女達が哀感を込めて思いを綴る文字が、「女書」という中国の一部にかつて実在した、文字を学ぶ事を禁じられた女達が考え出して使い、女だけに伝えられてきた文字で、表紙裏の不思議な模様でそれだと分かるのは作者による後書きを読んでのこと。どうやら、作者はその文字の存在と、その文字を使った女達の存在に触発されてこの物語を書いたのだとわかります。
ちなみに、この「女書」については、ネット検索すると様々な情報が入手できます。2017年にUnicodeに追加された文字ですが、作者が参考にしたと思われる文書のPDFファイル等もあるので参考にしてください。
YA向けと思われた作者による、新たな一面が読める作品としてお勧め。
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