アメリカを筆頭とするリベラル資本主義と、中国を筆頭とする政治的資本主義。冒頭、そのいずれか一方が近い将来世界を支配することはないだろう、と述べたうえで、どちらか一方を善・悪とすることなく、両者の功罪をなるべく事実に基づいて冷静に分析していく。
経済学者の視点であるので、イデオロギー的なバイアスがかかることなく、不平等・格差・移民といった問題が赤裸々に解説されていき、不可逆なグローバル資本主義のなかで、我々がこれらの問題にどう向き合うか、逃げ場なく議論に引き込まれてしまう形になる。
例えばロールズの正義論が、国内の格差不平等に光をあてる一方で、グローバル格差は議論の対象としていない点の指摘などは、非常に納得のいくものであった。近時、親ガチャ、なることも言われるが、そのまえにそもそも国ガチャの問題もあるわけであり、やはり格差不平等問題は、グローバル資本主義への構えから考えていかないと、議論が発散してしまう時代になったのだと思う。
一方で、将来の資本主義の在り方については、いくつかの類型と考えられる政策を述べただけで、あまり深く立ち入ってない。将来予測は難しい、という自制だろうか。
格差問題、資本主義のモデル対立(米中対立)問題含めて、非常に全体感のある学びを得ることができた。格差・不平等・移民あたりの問題を経済学的観点からよりリアルに考えたい人にとっては、必読だと思う。
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資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来 単行本 – 2021/6/18
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「理論、データ、歴史、批判的思考--社会科学の頂点のひとつがここにある。格差は誰かのせいでも、ましてや自分のせいでもない。それは資本主義のシステムにあるのだ」吉田徹(同志社大学教授)
『エコノミスト』誌ベストブック
『フィナンシャルタイムズ』紙ベストブック
『フォーリン・アフェアーズ』誌ベストブック
『プロマーケット』誌ベストブック
『プロスペクト』誌ベストブック
「われわれの未来についての、重要な問題をすべて提示している」ゴードン・ブラウン(元英首相)
「経済統計の第一人者[による]豊かな議論だ」ジェームズ・K・ガルブレイス(テキサス大学オースティン校教授)
「北京に住むのか、ニューヨークに住むのか、決断のときは近づいている」エドワード・ルース(『フィナンシャル・タイムズ』紙)
「この二つの資本主義が世界情勢を支配している。両者の共進化が今後数十年の歴史を形成することになるだろう」『エコノミスト』誌
「データの収集、評価において、類まれな最高の経済学者だ」ロバート・カトナー(『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』誌)
「現存する(おそらく)唯一の社会経済システムへの理解を刷新しようとする、あらゆる読者、研究者にお薦めする」ロバート・ラコノ(LSEレビュー・オブ・ブックス)
二つの資本主義が世界を覆っている。米国に代表されるリベラル能力資本主義と、中国に代表される政治的資本主義だ。この両者がはらむ、不平等の拡大と腐敗の進行という病弊の根本原因を喝破し、欧米の社会科学界を震撼させたベストセラー。
「理論、データ、歴史、批判的思考--社会科学の頂点のひとつがここにある。格差は誰かのせいでも、ましてや自分のせいでもない。それは資本主義のシステムにあるのだ」吉田徹(同志社大学教授)
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『フィナンシャルタイムズ』紙ベストブック
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「われわれの未来についての、重要な問題をすべて提示している」ゴードン・ブラウン(元英首相)
「経済統計の第一人者[による]豊かな議論だ」ジェームズ・K・ガルブレイス(テキサス大学オースティン校教授)
「北京に住むのか、ニューヨークに住むのか、決断のときは近づいている」エドワード・ルース(『フィナンシャル・タイムズ』紙)
「この二つの資本主義が世界情勢を支配している。両者の共進化が今後数十年の歴史を形成することになるだろう」『エコノミスト』誌
「データの収集、評価において、類まれな最高の経済学者だ」ロバート・カトナー(『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』誌)
「現存する(おそらく)唯一の社会経済システムへの理解を刷新しようとする、あらゆる読者、研究者にお薦めする」ロバート・ラコノ(LSEレビュー・オブ・ブックス)
二つの資本主義が世界を覆っている。米国に代表されるリベラル能力資本主義と、中国に代表される政治的資本主義だ。この両者がはらむ、不平等の拡大と腐敗の進行という病弊の根本原因を喝破し、欧米の社会科学界を震撼させたベストセラー。
- 本の長さ360ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2021/6/18
- 寸法13.5 x 2.2 x 19.5 cm
- ISBN-104622090031
- ISBN-13978-4622090038
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商品の説明
著者について
ブランコ・ミラノヴィッチ(Branko Milanovic)
ルクセンブルク所得研究センター上級研究員、ニューヨーク市立大学大学院センター
客員大学院教授。ベオグラード大学で博士号を取得後、世界銀行調査部の主任エコノ
ミストを20年間務める。2003-05年にはカーネギー国際平和基金のシニア・アソシエ
イト。所得分配について、またグローバリゼーションの効果についての方法論的研究、
実証的研究を、Economic Journal, Review of Economics and Statistics などに多数
発表。著書『大不平等』(みすず書房、2017年)『不平等について』(みすず書房、20
12年)。
梶谷懐(かじたに・かい)
神戸大学大学院経済学研究科教授。専門は現代中国経済。神戸大学大学院経済学研究
科博士課程修了。神戸学院大学准教授などを経て現職。著書『中国経済講義』(中公
新書、2018)『日本と中国経済』(ちくま新書、2016)『現代中国の財政金融システム』
(名古屋大学出版会、2011、大平正芳記念賞)ほか。
西川美樹(にしかわ・みき)
翻訳家。パメラ・ロトナー・サカモト『黒い雨に撃たれて』(共訳、上下巻、慶應義
塾大学出版会、2020年)ウィットマン『ヒトラーのモデルはアメリカだった』(みす
ず書房、2018)バスコム『ヒトラーの原爆開発を阻止せよ! 』(亜紀書房、2017)ほ
か。
ルクセンブルク所得研究センター上級研究員、ニューヨーク市立大学大学院センター
客員大学院教授。ベオグラード大学で博士号を取得後、世界銀行調査部の主任エコノ
ミストを20年間務める。2003-05年にはカーネギー国際平和基金のシニア・アソシエ
イト。所得分配について、またグローバリゼーションの効果についての方法論的研究、
実証的研究を、Economic Journal, Review of Economics and Statistics などに多数
発表。著書『大不平等』(みすず書房、2017年)『不平等について』(みすず書房、20
12年)。
梶谷懐(かじたに・かい)
神戸大学大学院経済学研究科教授。専門は現代中国経済。神戸大学大学院経済学研究
科博士課程修了。神戸学院大学准教授などを経て現職。著書『中国経済講義』(中公
新書、2018)『日本と中国経済』(ちくま新書、2016)『現代中国の財政金融システム』
(名古屋大学出版会、2011、大平正芳記念賞)ほか。
西川美樹(にしかわ・みき)
翻訳家。パメラ・ロトナー・サカモト『黒い雨に撃たれて』(共訳、上下巻、慶應義
塾大学出版会、2020年)ウィットマン『ヒトラーのモデルはアメリカだった』(みす
ず書房、2018)バスコム『ヒトラーの原爆開発を阻止せよ! 』(亜紀書房、2017)ほ
か。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2021/6/18)
- 発売日 : 2021/6/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 360ページ
- ISBN-10 : 4622090031
- ISBN-13 : 978-4622090038
- 寸法 : 13.5 x 2.2 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 237,717位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 70位現代経済学
- - 11,540位投資・金融・会社経営 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1970年大阪府出身。戌年、牡牛座。神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。現在、神戸大学大学院経済学研究科教授。専門は現代中国経済論。
ウェブサイト:http://www2.kobe-u.ac.jp/~kaikaji/
ブログ「梶ピエールのブログ」http://kaikaji.hatenablog.com/
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年2月15日に日本でレビュー済み
ブランコ・ミラノヴィッチ(1953年~)は、ベオグラード生まれ、ベオグラード大学博士課程修了、世界銀行調査部主席エコノミスト、カーネギー国際平和基金シニア・アソシエイト等を経て、ルクセンブルク所得研究センター上級研究員、ニューヨーク市立大学大学院センター客員大学院教授。
本書は、2019年発表の『Capitalism, Alone:The Future of the System that Rules the World』の全訳で2021年に出版された。邦訳書では、『不平等について』(2012年)、『大不平等』(2017年)に次ぐもの。本書は、「エコノミスト」、「フィナンシャルタイムズ」、「フォーリン・アフェアーズ」等の雑誌・新聞でベストブックに選ばれている。
私は以前より、世界に広がる格差の元凶である資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、水野和夫、トマ・ピケティ、斎藤幸平、広井良典等の多数の著書を読んできたが、本書を手に取ったのもその流れによる。
本書の概要は概ね以下である。
◆資本主義は、我々の世界に、営利を目的とするという、共通の価値観・ルールを生み出すことに成功した、最も安定した社会経済システムである。現在の世界の資本主義の体制は、欧米諸国の「リベラル能力資本主義」と中国に代表される「政治的資本主義」に分けられる。「リベラル能力資本主義」は、民主主義と法の支配に結びつき、技術革新を奨励し社会的移動性をもたらすことで経済の発展を促し、かつ万人に概ね平等の機会を与えると考えられている。一方、「政治的資本主義」は、政治的エリート層を惹きつけるとともに、高い成長率を約束するかに見える。
◆「リベラル能力資本主義」は、第二次世界大戦後の「社会民主主義的な資本主義」を支える「4つの柱」となっていた、交渉力の強い労働組合、教育の大衆化、累進性の高い税負担、政府による大規模な所得移転が、次第に機能しなくなった結果生じ、不平等を不断に拡大させることとなった。
◆中国などの後進の被植民地国の多くが社会主義革命を起こしたのは、教条的なマルクス主義が主張するような資本主義の矛盾が原因ではなく、地主に代表される旧社会勢力を一掃し、かつ、外国資本による支配を覆すことができる、唯一の組織化された力が共産主義勢力であったためで、“資本主義的な経済発展を実現するために”社会主義革命が必要だった。こうして成立した「政治的資本主義」の特徴は、テクノクラート的な官僚システムの存在、そのシステムが邪魔されないよう法の支配が欠如していること、民間部門を統制できる国家の存在の3つであり、それ故に深刻な腐敗が生じやすいという矛盾を持つ。
◆「リベラル能力資本主義」と「政治的資本主義」で進行する不平等は、グローバル・チェーンの進化、即ち、モノと資本の移動が自由になり、先進国の工場が簡単に途上国に移転するようになったこと、情報通信技術の発展によって、事細かに国際分業することが可能になったことの2点を通じて有機的に結びついている。
◆様々な問題を孕む超商業化資本主義社会だが、これに代わる社会経済システムはない。資本主義に組み込まれた競争的かつ物質欲的精神を捨てれば、結局は所得が減り、貧困が拡大し、技術進歩が減速・逆転する。物質欲的精神を捨ててもなおかつそれらが維持できるなどと思うのは無理である。
◆「リベラル能力資本主義」がいかに進化していくかについては、資本所得の集中がより少なく、所得の不平等がより縮小し、世代間の所得の移動性がより高くなることにより、「民衆資本主義」に移行できるか否かにかかっている。仮に、「リベラル能力資本主義」が政治的な力と結びつき、金権主義的なものになれば、「政治的資本主義」に似通ったものとなるだろう。
本書の特徴は、何より、中国の社会経済システムを、日米欧諸国の「まともな資本主義」に対する「異形の資本主義」とは位置付けずに、その歴史に基づいた一つのシステムとして分析し、更に、日米欧諸国の「リベラル能力資本主義」でさえ、格差・不平等が拡大し、富裕層が政治的な力と結びつけば、そうしたシステムと似たものになると警鐘をならしていることだろう。
また、私が問題意識を持っている格差の是正については、「リベラル能力資本主義」から「民衆資本主義」への移行がポイントとしており、この点は同意する。(ただ、斎藤幸平氏が論じている地球環境の持続可能性を危うくする(資本主義と不可分の)物質欲的精神については否定していない)
資本主義の未来(ポスト資本主義)を考える上では一読の価値ある一冊といえる。
(2022年2月了)
本書は、2019年発表の『Capitalism, Alone:The Future of the System that Rules the World』の全訳で2021年に出版された。邦訳書では、『不平等について』(2012年)、『大不平等』(2017年)に次ぐもの。本書は、「エコノミスト」、「フィナンシャルタイムズ」、「フォーリン・アフェアーズ」等の雑誌・新聞でベストブックに選ばれている。
私は以前より、世界に広がる格差の元凶である資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、水野和夫、トマ・ピケティ、斎藤幸平、広井良典等の多数の著書を読んできたが、本書を手に取ったのもその流れによる。
本書の概要は概ね以下である。
◆資本主義は、我々の世界に、営利を目的とするという、共通の価値観・ルールを生み出すことに成功した、最も安定した社会経済システムである。現在の世界の資本主義の体制は、欧米諸国の「リベラル能力資本主義」と中国に代表される「政治的資本主義」に分けられる。「リベラル能力資本主義」は、民主主義と法の支配に結びつき、技術革新を奨励し社会的移動性をもたらすことで経済の発展を促し、かつ万人に概ね平等の機会を与えると考えられている。一方、「政治的資本主義」は、政治的エリート層を惹きつけるとともに、高い成長率を約束するかに見える。
◆「リベラル能力資本主義」は、第二次世界大戦後の「社会民主主義的な資本主義」を支える「4つの柱」となっていた、交渉力の強い労働組合、教育の大衆化、累進性の高い税負担、政府による大規模な所得移転が、次第に機能しなくなった結果生じ、不平等を不断に拡大させることとなった。
◆中国などの後進の被植民地国の多くが社会主義革命を起こしたのは、教条的なマルクス主義が主張するような資本主義の矛盾が原因ではなく、地主に代表される旧社会勢力を一掃し、かつ、外国資本による支配を覆すことができる、唯一の組織化された力が共産主義勢力であったためで、“資本主義的な経済発展を実現するために”社会主義革命が必要だった。こうして成立した「政治的資本主義」の特徴は、テクノクラート的な官僚システムの存在、そのシステムが邪魔されないよう法の支配が欠如していること、民間部門を統制できる国家の存在の3つであり、それ故に深刻な腐敗が生じやすいという矛盾を持つ。
◆「リベラル能力資本主義」と「政治的資本主義」で進行する不平等は、グローバル・チェーンの進化、即ち、モノと資本の移動が自由になり、先進国の工場が簡単に途上国に移転するようになったこと、情報通信技術の発展によって、事細かに国際分業することが可能になったことの2点を通じて有機的に結びついている。
◆様々な問題を孕む超商業化資本主義社会だが、これに代わる社会経済システムはない。資本主義に組み込まれた競争的かつ物質欲的精神を捨てれば、結局は所得が減り、貧困が拡大し、技術進歩が減速・逆転する。物質欲的精神を捨ててもなおかつそれらが維持できるなどと思うのは無理である。
◆「リベラル能力資本主義」がいかに進化していくかについては、資本所得の集中がより少なく、所得の不平等がより縮小し、世代間の所得の移動性がより高くなることにより、「民衆資本主義」に移行できるか否かにかかっている。仮に、「リベラル能力資本主義」が政治的な力と結びつき、金権主義的なものになれば、「政治的資本主義」に似通ったものとなるだろう。
本書の特徴は、何より、中国の社会経済システムを、日米欧諸国の「まともな資本主義」に対する「異形の資本主義」とは位置付けずに、その歴史に基づいた一つのシステムとして分析し、更に、日米欧諸国の「リベラル能力資本主義」でさえ、格差・不平等が拡大し、富裕層が政治的な力と結びつけば、そうしたシステムと似たものになると警鐘をならしていることだろう。
また、私が問題意識を持っている格差の是正については、「リベラル能力資本主義」から「民衆資本主義」への移行がポイントとしており、この点は同意する。(ただ、斎藤幸平氏が論じている地球環境の持続可能性を危うくする(資本主義と不可分の)物質欲的精神については否定していない)
資本主義の未来(ポスト資本主義)を考える上では一読の価値ある一冊といえる。
(2022年2月了)
2022年3月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書がいう、2つの資本主義ー中国型の政治的資本主義と欧米型のリベラル資本主義ーからみれば、歴史はいずれ政治的資本主義もリベラル資本主義に移行し、世界は共通の価値観にもとづく方向に進んでいるとみたら、本書の変え方と真っ向から対立する。リベラル資本主義は自由と民主化にたった平等主義の社会への構築するには、もはやどうしようもない程の富の格差がすすんでいる。
一方、政治的資本主義は党、官僚への賄賂が富の格差を生んではいるが、着実に経済成長率は上昇し、所得は増えているとしたら、国民はそれを指示し、彼らにゆだねるだろう。2つの資本主義がいま覇権を争っているのだ。事実、アジアの多くの国々は政治的資本主義の方にむかっているのではないか。
さて、リベラル資本主義の国々は腹をすえて、富の格差を解消するための根本的な施策をしないかぎり、つまりは移民を排除することなくジェンダー差別をすることなく、大投資家やビッグビジネスを優遇する政治とは真逆のシステムをつくらないかぎり、もはや取り返しのつかない段階にきていることを知らなければならない。
トランプの登場と国民の議会突入は、存外、リベラル資本主義の危機と政治的資本主義あるいは崩壊の扉をひらいた事件かもしれない。
そんな時、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。本書ではロシアではなく中国が主役ではあるが、時代の歯車は資本主義だけが残っただけでく、一方の資本主義の覇権が強化されている証しかもしれない。
一方、政治的資本主義は党、官僚への賄賂が富の格差を生んではいるが、着実に経済成長率は上昇し、所得は増えているとしたら、国民はそれを指示し、彼らにゆだねるだろう。2つの資本主義がいま覇権を争っているのだ。事実、アジアの多くの国々は政治的資本主義の方にむかっているのではないか。
さて、リベラル資本主義の国々は腹をすえて、富の格差を解消するための根本的な施策をしないかぎり、つまりは移民を排除することなくジェンダー差別をすることなく、大投資家やビッグビジネスを優遇する政治とは真逆のシステムをつくらないかぎり、もはや取り返しのつかない段階にきていることを知らなければならない。
トランプの登場と国民の議会突入は、存外、リベラル資本主義の危機と政治的資本主義あるいは崩壊の扉をひらいた事件かもしれない。
そんな時、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。本書ではロシアではなく中国が主役ではあるが、時代の歯車は資本主義だけが残っただけでく、一方の資本主義の覇権が強化されている証しかもしれない。
2022年3月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
所得格差分析などが専門のミラノヴィッチの書籍。内容が多く、理解が難しい部分も多く正直消化不良で終わった。主な主張は、資本主義の特性を、類型化して、米国に代表されるリベラル能力資本主義が、格差拡大、機会の不平等などの機能不全を起こしている。望ましい形態が、民衆資本主義や平等主義的資本主義、で資本の有無が所得格差を広げない状況が望ましいという事。また、中国を「政治的資本主義」の成功例と区分けしており、資本主義の範囲はとても広いが、やや空疎な議論を展開している印象を抱いた。
2022年1月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
共産主義の現実の姿は、単なる開発独裁にすぎない、と見るのはそう新しい視点でもない。ただアメリカに代表されるリベラル資本主義での格差拡大とその固定化のために、政治的自由が制限されていくと、それは共産党官僚に運営される中国型資本主義と似たものになってしまうという可能性の指摘には意義がある。ただしその未来予測は可能性にすぎない。また巻末解説で、中国をいびつな資本主義であって長続きしない例外として扱うよりも、本書のようにある種のタイプとして認定されたことに喜ぶ梶谷を見ることのできたのにも、ある種の興味深さを覚えた。著者のほとんどの論点は、経済的観点からは常識的なものと思うが、ただ一つ市民権をレントであるとみなす事には、グローバリストの観点からはそう見えるのか、という驚きを感じた。市民権がレントであるというのは、各国の歴史を全く無視したものであるし、レントであるからには早晩是正され、なくなるものという考えなのだろう。しかし、日本国内で所得の低い地方や災害で弱った県に資金を回すのは国民感情が許すが、EU内で財政破綻したギリシャにドイツが資金を回すのにはドイツ国民から反対が起きるという点で、市民権はレントであるとはとても言えないだろう。日本で生まれたがゆえに、自由と福祉が得られる権利があるというのは人類全体から考えれば不公平であっておかしいのだ、とは多くの人間は思わない。日本を含むそれぞれの国には固有の歴史があり、現状はその歴史経路依存性によって規定されている。したがって先人の成したことから現在の子孫が利益を得るのは不当ではない(逆に言えば不利益を被ることもあるわけで、例えば日中戦争を引き起こし結果として第2次世界大戦で敗北した、その固有の歴史を日本人はなかったことにはできないのと同じだ)。人間は家族もしくはせいぜい数百人のことしか考えられないようにできている生き物である。親の遺産は子に権利があると感じるのが人間のデフォルトの条件であって、この感情をもたらした人類進化という歴史は無視できない。そうでなければ相続という現象がなぜ世界中に存在するのか説明できない。