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マーティン・イーデン (エクス・リブリス・クラシックス) 単行本 – 2018/9/19
絶望の青春──ジャック・ロンドン自伝的物語
20世紀初めのアメリカ西海岸オークランド。労働者地区で生まれ育った若者マーティン・イーデンは、船乗りとなり荒っぽい生活を送っていたが、裕福な中産階級の女性ルースに出会い、その美しさと知性に惹かれるとともに文学への関心に目覚める。生活をあらため、図書館で多くの本を読んで教養を身につけ、文法を学んだマーティンは作家を志し、海上での体験談、小説や詩、評論を次々に書いて新聞や雑誌に送るが一向に売れず、彼が人生の真実をとらえたと思った作品はルースにも理解されない。生活は困窮し、絶望にかられ文学を諦めかけたとき、彼の運命は一転する。
密漁者、船乗り、放浪者などを経て作家に転身、『野性の呼び声』で世界的名声を獲得したジャック・ロンドンが、自らの体験をもとに書き上げた自伝的小説。理想と現実のはざまで闘い続ける創作者の孤独な栄光と悲劇を圧倒的な熱量で描いたこの作品は、多くの作家や芸術家に影響を与え、読者の心を揺さぶり続けてきた。20世紀初頭アメリカの階級社会の中で、独学で自己向上を目指す主人公の苦闘は、苛酷な格差社会の入口に立つ現代の若い読者にも切実に受け止められるだろう。
20世紀初めのアメリカ西海岸オークランド。労働者地区で生まれ育った若者マーティン・イーデンは、船乗りとなり荒っぽい生活を送っていたが、裕福な中産階級の女性ルースに出会い、その美しさと知性に惹かれるとともに文学への関心に目覚める。生活をあらため、図書館で多くの本を読んで教養を身につけ、文法を学んだマーティンは作家を志し、海上での体験談、小説や詩、評論を次々に書いて新聞や雑誌に送るが一向に売れず、彼が人生の真実をとらえたと思った作品はルースにも理解されない。生活は困窮し、絶望にかられ文学を諦めかけたとき、彼の運命は一転する。
密漁者、船乗り、放浪者などを経て作家に転身、『野性の呼び声』で世界的名声を獲得したジャック・ロンドンが、自らの体験をもとに書き上げた自伝的小説。理想と現実のはざまで闘い続ける創作者の孤独な栄光と悲劇を圧倒的な熱量で描いたこの作品は、多くの作家や芸術家に影響を与え、読者の心を揺さぶり続けてきた。20世紀初頭アメリカの階級社会の中で、独学で自己向上を目指す主人公の苦闘は、苛酷な格差社会の入口に立つ現代の若い読者にも切実に受け止められるだろう。
- 本の長さ478ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2018/9/19
- ISBN-104560099111
- ISBN-13978-4560099117
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商品の説明
著者について
アメリカの作家。1876年、サンフランシスコ生まれ。工場労働者、アザラシ漁船の乗組員など多くの仕事に就いた後、『野性の呼び声』(光文社他)で一躍流行作家となる。アラスカの自然と生の苛酷さを描いた短編や、海洋小説、ボクシング小説、SF、幻想小説、ルポルタージュなど、多彩な作品を発表、世界的名声を博したが、1916年に急死。邦訳に『白い牙』(光文社他)、『火を熾す』『犬物語』(スイッチパブリッシング)他多数。
登録情報
- 出版社 : 白水社 (2018/9/19)
- 発売日 : 2018/9/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 478ページ
- ISBN-10 : 4560099111
- ISBN-13 : 978-4560099117
- Amazon 売れ筋ランキング: - 291,867位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,673位英米文学
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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4 星
40歳で早逝した作家の魂の叫び
ボクはジャック・ロンドンを読んだことがなかったのだけれど、無学の青年が教養に目覚め、作家を志した21歳の実体験を前にして、心が洗われるような体験をした。漁港育ちの荒くれ者が、ひとりの女性と出会って劇的な変化を遂げる。世界恐慌から第一次世界大戦へと、困窮を極めた世界経済が激動した時代に、かくも激しい生の軌跡を追体験出来るとは。強靱な肉体を持ったナイーヴな作家の告白は、今を生きる我々にも通じるテーマ「切実に生きる」ということを問いかけてくる。読むべき一冊だと思う。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2023年3月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とにかく底が深く、重厚な一冊だった。
肉体と精神を切り刻むように深刻な状態まで追い込みながら、知識を蓄え、文章を書き、愛と名誉を求めるマーティン•イーデンの姿は胸な迫るものがあった。
葛藤や、飢えや、同情や、憧憬など様々な感情や状態がうつろいながら、特徴的な幾つかの人物と交わりながら進行するストーリーが極めてリアルに感じられた。
最後に求めていた全てを得て、そしてそれら全てを失い、原点である海に生命を投げ出すマーティンの姿は儚くて美しい。
小説は普段ほとんど読まないので、手に取る機会があって幸運だった。
心に残る一冊となった。
肉体と精神を切り刻むように深刻な状態まで追い込みながら、知識を蓄え、文章を書き、愛と名誉を求めるマーティン•イーデンの姿は胸な迫るものがあった。
葛藤や、飢えや、同情や、憧憬など様々な感情や状態がうつろいながら、特徴的な幾つかの人物と交わりながら進行するストーリーが極めてリアルに感じられた。
最後に求めていた全てを得て、そしてそれら全てを失い、原点である海に生命を投げ出すマーティンの姿は儚くて美しい。
小説は普段ほとんど読まないので、手に取る機会があって幸運だった。
心に残る一冊となった。
2021年11月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
普段あまり夜更かししない私ですが、本書後半200ページくらいは読み止まらなくなり、深夜1時過ぎに読み終えた時、あまりのショックでその後1時間以上眠れなくなってしまいました。
本書の帯には「残酷なほど力強い本だ。パワフルな絶望。前向きな自滅」との村上春樹の言葉が記載されていますが、まさに言いえて妙。
労働者地区で生まれ、船乗りとなり、喧嘩では誰にも負けないマーティンが上流階級のルースと出会い、文学に目覚める。猛烈に読書にのめり込み、これまでの遅れを一気に取り戻すがごとく、睡眠時間を削り、未開墾の土地を耕し水をまき種をまくかのごとく、頭に知識をガンガン詰め込んでいく。
その原動力は、すべてルースに対する愛情なのだ
そしていつしか獲得した知識から創造的精神が燃え上がり、物を書いてみたいと思うようになる。
彼にとって書くということは、長い思考過程の最高の行為であり、ばらばらの思想の糸を寄せ集め、頭にしまい込んでいたあらゆる資料を最終的に概括することだ。心を開放し、あらたな材料や問題の準備をする意識的な努力だ。
そして自分の今の力をもってすれば、書くということを仕事とすることでルースを獲得する道も開ける、そう考えたマーティンは、猛烈な勢いで物語を次から次へと創作し、数々の雑誌社に送り付ける。
しかし書いても書いても採用されず、愛するルースからも作品は理解されない。ちゃんとした仕事につけと誰もに言われる。身の回りの物は質入れし、食べるものもない状態となっても、ある意味楽観的と言えるほど、自分の才能を疑わず、絶対に諦めようとしない。
ルースが自分を愛してくれる限りは・・・。
このあたりのマーティンの生きざまは信じられないほど実にパワフルだ。
それだけに、ラストの衝撃たるや・・。
本書は、著者ジャック・ロンドン自身の経験が元になっている自伝的小説ということで、本書を読んでいると、ロンドン自身のすさまじいまで密度の濃い人生と、数多くの短編小説を思い浮かべます。
柴田元幸翻訳による「火を熾す」「犬物語」といった短編集(スイッチパブリッシング社単行本)、深町真理子翻訳による「野生の呼び声」「白い牙」(光文社古典新訳文庫)、本書と同じ辻井栄滋翻訳による「赤死病」、などこれまで読んだロンドンの書く小説は多種多様で、いずれも素晴らしく魅力的です。
もっともっとロンドンの作品を読みたいと思うものの、辻井栄滋翻訳によるジャックロンドン選集などこれまでに出版されているロンドン作品は、Amazonでも(R3.11)現在入手困難となっており、本書同様復刊してもらえないでしょうか。復刊がかなわないなら、柴田元幸翻訳による短編第三弾が出ないものかと期待しています。さらに、最近古典の翻訳も少なくない村上春樹による翻訳も期待したいものです。
本書の帯には「残酷なほど力強い本だ。パワフルな絶望。前向きな自滅」との村上春樹の言葉が記載されていますが、まさに言いえて妙。
労働者地区で生まれ、船乗りとなり、喧嘩では誰にも負けないマーティンが上流階級のルースと出会い、文学に目覚める。猛烈に読書にのめり込み、これまでの遅れを一気に取り戻すがごとく、睡眠時間を削り、未開墾の土地を耕し水をまき種をまくかのごとく、頭に知識をガンガン詰め込んでいく。
その原動力は、すべてルースに対する愛情なのだ
そしていつしか獲得した知識から創造的精神が燃え上がり、物を書いてみたいと思うようになる。
彼にとって書くということは、長い思考過程の最高の行為であり、ばらばらの思想の糸を寄せ集め、頭にしまい込んでいたあらゆる資料を最終的に概括することだ。心を開放し、あらたな材料や問題の準備をする意識的な努力だ。
そして自分の今の力をもってすれば、書くということを仕事とすることでルースを獲得する道も開ける、そう考えたマーティンは、猛烈な勢いで物語を次から次へと創作し、数々の雑誌社に送り付ける。
しかし書いても書いても採用されず、愛するルースからも作品は理解されない。ちゃんとした仕事につけと誰もに言われる。身の回りの物は質入れし、食べるものもない状態となっても、ある意味楽観的と言えるほど、自分の才能を疑わず、絶対に諦めようとしない。
ルースが自分を愛してくれる限りは・・・。
このあたりのマーティンの生きざまは信じられないほど実にパワフルだ。
それだけに、ラストの衝撃たるや・・。
本書は、著者ジャック・ロンドン自身の経験が元になっている自伝的小説ということで、本書を読んでいると、ロンドン自身のすさまじいまで密度の濃い人生と、数多くの短編小説を思い浮かべます。
柴田元幸翻訳による「火を熾す」「犬物語」といった短編集(スイッチパブリッシング社単行本)、深町真理子翻訳による「野生の呼び声」「白い牙」(光文社古典新訳文庫)、本書と同じ辻井栄滋翻訳による「赤死病」、などこれまで読んだロンドンの書く小説は多種多様で、いずれも素晴らしく魅力的です。
もっともっとロンドンの作品を読みたいと思うものの、辻井栄滋翻訳によるジャックロンドン選集などこれまでに出版されているロンドン作品は、Amazonでも(R3.11)現在入手困難となっており、本書同様復刊してもらえないでしょうか。復刊がかなわないなら、柴田元幸翻訳による短編第三弾が出ないものかと期待しています。さらに、最近古典の翻訳も少なくない村上春樹による翻訳も期待したいものです。
2020年8月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ボクはジャック・ロンドンを読んだことがなかったのだけれど、無学の青年が教養に目覚め、作家を志した21歳の実体験を前にして、心が洗われるような体験をした。
漁港育ちの荒くれ者が、ひとりの女性と出会って劇的な変化を遂げる。世界恐慌から第一次世界大戦へと、困窮を極めた世界経済が激動した時代に、かくも激しい生の軌跡を追体験出来るとは。
強靱な肉体を持ったナイーヴな作家の告白は、今を生きる我々にも通じるテーマ「切実に生きる」ということを問いかけてくる。読むべき一冊だと思う。
漁港育ちの荒くれ者が、ひとりの女性と出会って劇的な変化を遂げる。世界恐慌から第一次世界大戦へと、困窮を極めた世界経済が激動した時代に、かくも激しい生の軌跡を追体験出来るとは。
強靱な肉体を持ったナイーヴな作家の告白は、今を生きる我々にも通じるテーマ「切実に生きる」ということを問いかけてくる。読むべき一冊だと思う。

ボクはジャック・ロンドンを読んだことがなかったのだけれど、無学の青年が教養に目覚め、作家を志した21歳の実体験を前にして、心が洗われるような体験をした。
漁港育ちの荒くれ者が、ひとりの女性と出会って劇的な変化を遂げる。世界恐慌から第一次世界大戦へと、困窮を極めた世界経済が激動した時代に、かくも激しい生の軌跡を追体験出来るとは。
強靱な肉体を持ったナイーヴな作家の告白は、今を生きる我々にも通じるテーマ「切実に生きる」ということを問いかけてくる。読むべき一冊だと思う。
漁港育ちの荒くれ者が、ひとりの女性と出会って劇的な変化を遂げる。世界恐慌から第一次世界大戦へと、困窮を極めた世界経済が激動した時代に、かくも激しい生の軌跡を追体験出来るとは。
強靱な肉体を持ったナイーヴな作家の告白は、今を生きる我々にも通じるテーマ「切実に生きる」ということを問いかけてくる。読むべき一冊だと思う。
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2018年11月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書はロンドンの半自伝小説である。貧しい労働者の家庭に生まれ、船乗りや牧童、密漁師、金採鉱人として各地を放浪していた若者がいかにして世界に名を知られる作家になったのかが語られる。時代を反映してか、大げさな表現や冗長な言い回し、哲学論争風の記述などがあり、読みやすい作品ではない。しかし、私は作者の熱量に押されて480ページを読みふけった。
貧しい若者マーティンがふとしたことで上流階級の家庭を訪ねるところから物語は始まる。そこで出会ったルースにマーティンは一瞬のうちに恋に落ちる。マーティンにとって彼女の気品ある美しさと知性はまばゆいものであった。何とかルースと対等に話がしたい。その一念でマーティンは猛勉強を開始する。文法を修め、発音を直し、ギリシャ神話、数学、地理学、英文学を学んでいく。やがて彼は作家をめざして自分の体験をもとにエッセイや小説を書き始めた。だが、彼が書く原稿は新聞社、出版社に拒否され、ルースにも理解されなかった。そして、カネが尽き絶望の底に沈んだ時に奇跡が起きる。彼のエッセイや小説が認められ、一躍人気作家となる。しかし、名声と富を得てもマーティンは満たされなかった。
無知無学であった若者がブルジョア階級への憧れから猛烈に勉学するなかで真の知性を獲得していく。艱難辛苦の末に作家として成功してみれば、皮肉なことにルースとの別離が待っていた。それはマーティンが階級意識に目覚めたからに他ならない。歴史や文学を学習し、友人から影響を受け、貧しい人々に接したことで彼は社会主義に惹かれていく。自分が労働者階級の出身であることを自覚した彼の知性はブルジョアの欺瞞や虚栄や退廃を見抜くまでになっていた。その結果、ルースへの自らの愛は偽りであったと気づくことになる。
若者が夢を抱き、その実現に奮闘する姿は美しい。恋に身を焦がし苦悩するのは青年の特権かもしれない。青年の夢の実現と恋の行方、この2つを主題に据えた物語が面白くないはずがない。マーティンの睡眠時間を削ってまで勉学に打ち込む姿は感動的である。また、マーティンのブルジョア階級への憧れが次第に後退し、ついには社会主義への共感に変わっていく。ルースとの恋も成就するかに見えて、価値観の違いが露になり別離へと向かう。これらはすべてロンドン自身の体験に基づくだけにその描写はリアルを極め、強い説得力をもつ。
本作品は、1900年代初頭のアメリカにおけるブルジョアとプロレタリア、2つの階級の相克を背景に置くことで骨太な教養小説として成功している。ロンドンは1902年にイギリスの貧困をルポして「どん底の人びと」を書いて為政者を告発した。同様に本作品においても労働者に温かい目を注ぎ、社会主義に共感を抱く作者の姿がマーティンに投影している。「マーティン・イーデン」は以後の世界中の作家や若者に大きな影響を与えたのだが、私もマーティンの情熱と闘いに圧倒された。ロンドンの著作は「荒野の叫び声」などの動物小説が日本ではよく知られているが、こううした名作も広く読まれるべきだと思う。
貧しい若者マーティンがふとしたことで上流階級の家庭を訪ねるところから物語は始まる。そこで出会ったルースにマーティンは一瞬のうちに恋に落ちる。マーティンにとって彼女の気品ある美しさと知性はまばゆいものであった。何とかルースと対等に話がしたい。その一念でマーティンは猛勉強を開始する。文法を修め、発音を直し、ギリシャ神話、数学、地理学、英文学を学んでいく。やがて彼は作家をめざして自分の体験をもとにエッセイや小説を書き始めた。だが、彼が書く原稿は新聞社、出版社に拒否され、ルースにも理解されなかった。そして、カネが尽き絶望の底に沈んだ時に奇跡が起きる。彼のエッセイや小説が認められ、一躍人気作家となる。しかし、名声と富を得てもマーティンは満たされなかった。
無知無学であった若者がブルジョア階級への憧れから猛烈に勉学するなかで真の知性を獲得していく。艱難辛苦の末に作家として成功してみれば、皮肉なことにルースとの別離が待っていた。それはマーティンが階級意識に目覚めたからに他ならない。歴史や文学を学習し、友人から影響を受け、貧しい人々に接したことで彼は社会主義に惹かれていく。自分が労働者階級の出身であることを自覚した彼の知性はブルジョアの欺瞞や虚栄や退廃を見抜くまでになっていた。その結果、ルースへの自らの愛は偽りであったと気づくことになる。
若者が夢を抱き、その実現に奮闘する姿は美しい。恋に身を焦がし苦悩するのは青年の特権かもしれない。青年の夢の実現と恋の行方、この2つを主題に据えた物語が面白くないはずがない。マーティンの睡眠時間を削ってまで勉学に打ち込む姿は感動的である。また、マーティンのブルジョア階級への憧れが次第に後退し、ついには社会主義への共感に変わっていく。ルースとの恋も成就するかに見えて、価値観の違いが露になり別離へと向かう。これらはすべてロンドン自身の体験に基づくだけにその描写はリアルを極め、強い説得力をもつ。
本作品は、1900年代初頭のアメリカにおけるブルジョアとプロレタリア、2つの階級の相克を背景に置くことで骨太な教養小説として成功している。ロンドンは1902年にイギリスの貧困をルポして「どん底の人びと」を書いて為政者を告発した。同様に本作品においても労働者に温かい目を注ぎ、社会主義に共感を抱く作者の姿がマーティンに投影している。「マーティン・イーデン」は以後の世界中の作家や若者に大きな影響を与えたのだが、私もマーティンの情熱と闘いに圧倒された。ロンドンの著作は「荒野の叫び声」などの動物小説が日本ではよく知られているが、こううした名作も広く読まれるべきだと思う。
2022年10月19日に日本でレビュー済み
強い。自己に誠実。美に感受性が強く、人に優しく、誇り高い。
無学で無教養の水夫がもがきながら自己を鍛錬し高みを目指す、その過程が詳細に描かれている。
一つ一つの言葉が適格。描写が実に美しい。
15章だけでも読む価値がある。中学生の時に「ロッキー」を見たが、それ以上の感動がある。活字でこの興奮と臨場感・ドラマ。圧倒的な言葉の力。暴力を去勢されてしまった現代社会の雄たちが何を失ったのかがよくわかる。
無学で無教養の水夫がもがきながら自己を鍛錬し高みを目指す、その過程が詳細に描かれている。
一つ一つの言葉が適格。描写が実に美しい。
15章だけでも読む価値がある。中学生の時に「ロッキー」を見たが、それ以上の感動がある。活字でこの興奮と臨場感・ドラマ。圧倒的な言葉の力。暴力を去勢されてしまった現代社会の雄たちが何を失ったのかがよくわかる。
2022年3月21日に日本でレビュー済み
「MARTIN EDEN」が2019年に、イタリア・フランス・ドイツの合作で映画化されている。こちらもぜひ見ていただきたい。プライム・ビデオのコメントを書いたので再掲しておきます。
~主演マリネッリは原作者ジャック・ロンドンにそっくり~
素晴らしい映画だ。見た後の余韻が長く続く。ありがちなストーリーの連続だが、ついつい引き込まれてしまう。原作はアメリカ人ジャック・ロンドン(1876-1916)が1909年に書いた『マーティン・イーデン』(白水社)である。ロンドンの自伝的小説である。日本語版ウィキペディア「ジャック・ロンドン」の項目に写真があったが、主人公マーティンにそっくりではないか。
貧しい環境から身を起こし、恋する女性と出会って自らの進むべき道を悟り、必死に努力して成功するというストーリーだ。どこかで見たことのあるストーリーだが、それらは原作の『マーティン・イーデン』がもとになっている。
ロンドンは1903年の『野生の呼び声』(光文社古典新訳文庫)以来、40歳で死ぬまでに53冊の小説と200以上の短編を著し、激しく燃えて散った。流行作家といわれ、その著作は自然主義文学と称えられた。しかし、この社会的成功は、最後の結論を避けることができなかった。
~主演マリネッリは原作者ジャック・ロンドンにそっくり~
素晴らしい映画だ。見た後の余韻が長く続く。ありがちなストーリーの連続だが、ついつい引き込まれてしまう。原作はアメリカ人ジャック・ロンドン(1876-1916)が1909年に書いた『マーティン・イーデン』(白水社)である。ロンドンの自伝的小説である。日本語版ウィキペディア「ジャック・ロンドン」の項目に写真があったが、主人公マーティンにそっくりではないか。
貧しい環境から身を起こし、恋する女性と出会って自らの進むべき道を悟り、必死に努力して成功するというストーリーだ。どこかで見たことのあるストーリーだが、それらは原作の『マーティン・イーデン』がもとになっている。
ロンドンは1903年の『野生の呼び声』(光文社古典新訳文庫)以来、40歳で死ぬまでに53冊の小説と200以上の短編を著し、激しく燃えて散った。流行作家といわれ、その著作は自然主義文学と称えられた。しかし、この社会的成功は、最後の結論を避けることができなかった。